

目玉焼きを乗せるだけで、食べ方もカロリーも名前の意味まで別の料理になります。
「クロックムッシュ」と「クロックマダム」は、名前こそ似ていますが、実はトッピング・食べ方・ソースの使い方に至るまで、複数の点で異なります。知っておくと、カフェでメニューを選ぶときも、おうちで作るときも楽しさが倍増しますよ。
最大の違いは「目玉焼き」です。クロックムッシュはハムとチーズをパンで挟み、ベシャメルソース(ホワイトソース)をかけてオーブンやフライパンで焼いたホットサンドです。そこに半熟の目玉焼きをトッピングしたものが「クロックマダム」と呼ばれます。
意外なのが、ソースの扱いの違いです。クロックムッシュには仕上げにたっぷりのベシャメルソースをかけるのが定番ですが、クロックマダムではベシャメルソースを省いて目玉焼きのみにすることが多いとされています。つまり「目玉焼きを乗せる分、ソースを省く」というバランス調整が行われているのです。これは知らない人が多いポイントですね。
食べ方にも違いがあります。クロックムッシュは手でそのままかじって食べるスタイルがフランスでは一般的で、サンドイッチ感覚で楽しめます。一方、クロックマダムは上に目玉焼きが乗っているためナイフとフォークを使わないと食べにくく、自然とテーブルマナーを意識した食べ方になります。
以下の表で、2つの料理の違いをまとめました。
| 比較項目 | クロックムッシュ | クロックマダム |
|---|---|---|
| トッピング | なし | 半熟の目玉焼き |
| ベシャメルソース | たっぷりかける | 省くことが多い |
| 食べ方 | 手づかみでOK | ナイフ&フォーク推奨 |
| カロリー目安 | 約450〜650kcal | 約530〜750kcal |
| 満腹感 | 軽やか | ボリュームあり |
つまり「目玉焼き1個」の差が、料理としてのキャラクターをガラッと変えてしまうということです。
「クロック(croque)」はフランス語で「カリカリとかじる」「カリッとした食感」を意味する動詞「croquer」に由来しています。そこに「ムッシュ(monsieur)=紳士」が組み合わさり、「クロックムッシュ」は直訳すると「カリッとした紳士」という意味になります。
発祥は1910年代のパリ。フランスのオペラ座近く、カピュシーヌ大通りにあったカフェで軽食として提供されたのが始まりとされています。忙しいパリジャンが手っ取り早く小腹を満たせるよう考案された料理でした。フランスでは今でも最も有名なサンドイッチの一つとして愛されています。
では、なぜ手づかみで食べる「ムッシュ(紳士)」という名前がついたのでしょうか?
実は、カリカリに焼いた食感ゆえに「食べると音が出て上品でない」という理由で、もともと男性向けの食べ物とみなされていたという説があります。「上品に静かに食べるマダム(淑女)には向いていない食べ物」ということから「紳士=ムッシュ」の名が付いたとも言われています。なかなかユニークな発想ですね。
「クロックマダム」という名前の由来にも諸説あります。最も知られているのは、目玉焼きの丸い形が婦人の帽子(つばの広いハット)に似ていることからという説です。また、目玉焼きが乗ることでナイフとフォークを使って「上品に食べるマダムのための料理」になったという説もあります。いずれにせよ、フランスらしいウィットに富んだ命名です。
参考リンク:クロックムッシュの語源や発祥についての詳細な解説記事です。
クロック・ムッシュとクロック・マダムの違いは?|フランス語.com
クロックムッシュに欠かせないのが「ベシャメルソース」です。別名「ホワイトソース」とも呼ばれ、フランス料理の母体となる5つの基本ソースのうちの一つです。バター・薄力粉・牛乳を合わせて作るシンプルなソースですが、これがクロックムッシュの「とろっとリッチな味わい」を生み出す鍵になっています。
ベシャメルソースが必須なのはクロックムッシュです。クロックマダムではソースを省くことが多いというのは前述の通りですが、その理由はもう一つあります。目玉焼きの卵黄を崩してパンに絡めると、そのまろやかさがソース代わりになるためです。卵黄がソースの役割を果たすということですね。
自宅でベシャメルソースを作るのが面倒な場合、電子レンジで簡単に作る方法があります。材料の目安はバター10〜15g・薄力粉大さじ1・牛乳150mlほどです。耐熱容器に薄力粉とバターを入れてよく混ぜ、牛乳を少しずつ加えながら600Wで1〜2分ずつ加熱してその都度混ぜる、という手順で完成します。塩・コショウ・ナツメグで味を調えれば本格的な仕上がりになります。これは使えそうです。
市販のクリームシチューのルーや、缶詰のホワイトソースを使っても十分においしく作れます。ポタージュスープの素で代用するレシピも人気があります。忙しい朝でもすぐに作れる手軽さが、主婦にとって大きなメリットですね。
ベシャメルソースを作ったら多めに仕込んでおくと便利です。グラタン・ドリア・ポテトグラタンなど、様々な料理に転用できます。冷蔵庫で2〜3日保存できるので、クロックムッシュを作るついでに週の献立を整える、という使い方もおすすめです。
参考リンク:ベシャメルソースの基本的な作り方と活用法について解説されています。
カフェで食べるイメージが強い両料理ですが、フライパン一つで自宅でも十分に再現できます。特別な器具もオーブンも不要なので、朝食やブランチにぴったりです。
まずはクロックムッシュから作ります。材料は食パン2枚・ハム2枚・とろけるチーズ(ピザ用チーズでOK)・バター少量・ベシャメルソースです。
クロックマダムを作る場合は、クロックムッシュを焼いた後、同じフライパンに少量の油をひいて半熟の目玉焼きを作り、上に乗せれば完成です。調理器具を増やさず一つのフライパンで完結できます。
チーズの種類を変えると味の幅が広がります。本場フランスではグリュイエールチーズやエメンタールチーズが使われます。これらはナッツのような芳ばしい香りと滑らかな溶け方が特徴で、日本のコンビニやスーパーでも手に入るようになってきました。手に入らない場合はスライスチーズや市販のピザ用チーズで代用しても美味しく作れます。
パンはパン・ド・ミ(食パン)が基本ですが、これにも意外な理由があります。「本場フランス料理なのにバゲットではないの?」と思う方も多いはずです。実はかつてクロックムッシュはバゲットで作られていたのですが、バゲットが足りなくなった際に食パンで代用したところ評判が良く、それが広まったという説があります。フランスなのにバゲットではなく食パンが正統派という、なんとも面白い逆転現象です。
ちなみにパン屋さんで見かけるクロックムッシュは、前日の食パンやバゲットのリメイクとして作られることもあります。パン屋さんにとって在庫管理の工夫でもありますが、「前日のパン」とは全く別物のリッチな味わいに生まれ変わっています。鮮度が少し落ちたパンの方がソースを吸いやすく、むしろ美味しくなる側面もあるのです。
クロックマダムとクロックムッシュは、どちらもパン・チーズ・ハム・バターと、エネルギーの高い食材が揃っています。カロリーが気になる方も多いでしょう。
1食あたりの目安カロリーはクロックムッシュで約450〜650kcal、クロックマダムでは卵が加わる分、約530〜750kcalとなります。これは一般的な成人女性の1食分の摂取目安が約600〜700kcalであることを踏まえると、1食としてほぼちょうど良い範囲に収まるメニューと言えます。
クロックマダムに卵が加わることで、単なるカロリー増加だけでなく栄養面のメリットもあります。卵にはタンパク質・ビタミンD・ビタミンB群・コリン(脳の神経伝達に関わる栄養素)が豊富に含まれており、チーズだけのクロックムッシュと比べて栄養バランスが改善されます。これはいいことですね。
カロリーを抑えたいときのコツをいくつか紹介します。
また、塩分についても注意が必要です。ハムとチーズはどちらも塩分が高い食材です。1食で塩分2〜3gを超えることも珍しくないため、付け合わせやスープを選ぶ際は塩分控えめのものにすると安心です。特に塩分を気にしている方は、ハムを無塩タイプやサーモンに変えるアレンジもおすすめです。
市販品の参考として、有名ベーカリー「アンデルセン」のクロックマダムは1個あたり287kcalとされています。これは手作りよりかなり小さいサイズでのカロリーなので、自家製はそれより多くなることがほとんどです。数字を知っておくことが大事です。
参考リンク:食品ごとの栄養成分を詳しく確認できる、文部科学省の公式データベースです。
基本の作り方を覚えたら、次はアレンジを楽しむ段階です。クロックムッシュとクロックマダムは「ハム+チーズ+パン」というシンプルな構造だからこそ、具材の組み合わせを変えるだけで無限にバリエーションが広がります。
最も手軽なアレンジはパンに粒マスタードを薄く塗ることです。ほのかな酸味と辛みがチーズの濃厚さを引き締めてくれ、大人向けの風味になります。子どもがいる家庭では、マスタードなしのハーフと、マスタードありのハーフで作り分けるのもよいでしょう。
具材のアレンジ例としては、以下のようなものが人気です。
チーズを変えるアレンジも試してみてください。本場フランスでは「グリュイエール」や「エメンタール」が使われますが、日本の家庭では市販のスライスチーズやピザ用ミックスチーズで十分です。少しだけ本格派を目指したいときには、カルディやコストコで手に入る「グリュイエール」のブロックをすりおろして使うとぐっと風味が増します。
食べる時間帯によって、組み合わせを変えるのも賢い使い方です。朝食ならシンプルなクロックムッシュ、ランチにはサラダを添えたクロックマダム、週末のブランチなら具材を豪華にしたアレンジ版というように、その日のシーンに合わせて楽しむことができます。
フランス本場では「パン・ド・ミ」という食パンが使われますが、日本でいう「超熟」や「ヤマザキの食パン」がこれに相当します。ふんわりとした食感と程よい厚みがソースをよく吸って、外はカリッと中はしっとりの仕上がりになります。普段のトーストとはひと味違う、リッチな朝食体験ができます。

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