

臭みがあると思ったニタリクジラ、実は生なら100g当たりたった100kcalで鶏ささみ並みのヘルシー食材です。
ニタリクジラは、ナガスクジラ科に属するヒゲクジラの一種で、体長は最大約14〜15メートルにもなります。これはバス2台分以上の長さに相当する大型の生き物です。名前の由来はイワシクジラに「似たり(ニタリ)」から来ており、かつてはイワシクジラと区別されていませんでした。
主な生息域は熱帯域から温帯域の太平洋・インド洋に広がっています。日本の商業捕鯨では北西太平洋で捕獲されており、2019年7月に日本が商業捕鯨を再開して以降、流通量が少しずつ増えてきました。北西太平洋産のニタリクジラが現在の主力です。
食材としては希少な存在です。市場に出回るクジラ肉のほとんどは一度冷凍されたものですが、生(無凍結)のニタリクジラは年間生産量の1%以下とも言われています。スーパーで見かけたときはかなり貴重な機会と思っていいでしょう。
一般的なスーパーでは冷凍解凍品のニタリクジラが1kg当たり3,600円前後で販売されることがあります。1パック275g程度で1,000円前後が目安です。ミンククジラより若干手に入りやすいこともあり、商業捕鯨再開後に注目度が上がっています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 正式名称 | ニタリクジラ(学名:Balaenoptera brydei) |
| 分類 | ナガスクジラ科ヒゲクジラ亜目 |
| 体長 | 最大約14〜15メートル |
| 生息域 | 熱帯域・温帯域(太平洋・インド洋) |
| 日本での捕獲海域 | 北西太平洋(商業捕鯨) |
| 市場への流通状況 | 主に冷凍品、生は希少(年間生産の1%以下) |
参考:ニタリクジラの生態・流通状況について詳しく解説されています。
ニタリクジラを刺身で食べると、多くの人が「カツオに近い」と表現します。旨味がしっかりしていて、思ったほどクセがなく食べやすいのが特徴です。特に生(無凍結)の場合は、ドリップが出ないため柔らかさと旨味が際立ち、薬味の生姜やニンニクが「浮いて見える」ほど素材そのものの甘い脂の香りが感じられるという声もあります。
刺身の食感は馬刺しに近いもちっとした柔らかさです。切り方は5mm程度の削ぎ切りが基本で、スライスした玉ねぎやカイワレと合わせると食べやすくなります。生姜醤油や酢醤油、ごま油に塩・こしょうのタレもよく合います。
加熱するとやや変わります。ステーキや揚げ物にすると「牛のレバーに似た風味」になり、旨味は保たれますが食感が硬くなりやすいです。焼きすぎが大敵なのはここがポイントです。
竜田揚げの場合は揚げる前に筋を断ち切るように飾り包丁を入れると硬くなりにくく、噛み締めるたびに旨味が溢れてきます。レバーに近いほろ苦い香りがマヨネーズや七味と絶妙に合うため、揚げ物でもおいしく仕上がります。
つまり、食べ方によって全く違う顔を見せる食材です。
参考:刺身・ステーキ・竜田揚げの味の違いがリアルな食レポで紹介されています。
くじら公式情報サイト「クジラの本当のおいしさを知ったのは大人になってから」
クジラ肉の中で「一番おいしい」と評価されることが多いのはミンククジラです。肉の繊維が細かくクセが少なく、マグロや牛肉に近い感覚で食べられます。発色も鮮やかな赤で、見た目の美しさも人気の理由のひとつです。
一方ニタリクジラは、魚屋のプロの間でも「味のクオリティはミンクと変わらんくらい」と評されることがあります。発色はミンクより若干劣るものの、旨味や柔らかさは遜色ないという声も少なくありません。ニタリクジラが独特の臭みがあって食用に向かないというのはやや過去の評価で、血抜き技術が向上した現在の商業捕鯨品はかなり高い品質に仕上がっています。
比較のポイントをまとめると下記のとおりです。
| 比較項目 | ニタリクジラ | ミンククジラ |
|---|---|---|
| 味の特徴 | カツオ・馬刺し風、旨味が深い | マグロ・牛肉風、クセが少ない |
| 臭み | 適切な処理でほぼなし | もともと少ない |
| 発色 | 赤茶系でやや暗め | 鮮やかな赤 |
| 食感 | もちっと柔らか | 繊維が細かく滑らか |
| 入手しやすさ | 商業捕鯨再開後やや増加 | 比較的流通あり |
どちらが好みかは食べてみなければわかりません。意外ですね。
ニタリクジラは「固い・臭い」という先入観を持たれがちですが、名古屋の魚屋「寿商店」代表の森嶢至さんが「想像以上においしかった、びっくりした」とコメントしているように、食べてみると先入観が覆されることが多い食材です。クジラ肉全体の品質向上を支えているのが、船上での血抜き技術の進化です。これが鯨肉の味に大きな影響を与えています。
ニタリクジラの赤身は、100gあたりカロリーが約100kcalと非常に低く、たんぱく質は約24.1gも含まれています。これは鶏ささみとほぼ同等の数値で、脂質はわずか0.4gと鶏ささみの約半分以下です。家族の食事を管理する立場から見ると、かなり魅力的な食材と言えます。
鉄分の含有量も注目です。鯨肉の赤身100gあたりの鉄分は馬肉と並んで食肉の中でトップクラスです。女性が1日に必要な鉄分は10〜11mg程度とされており、月経で鉄を失いやすい女性にとって効率よく補給できる食材と言えます。貧血が気になる方にも向いています。
さらに鯨肉にはバレニンというアミノ酸が豊富に含まれています。これはクジラ特有の成分で、筋肉の疲労回復効果があるとされており、農林水産省の情報でも抗疲労機能成分として紹介されています。主婦として家事や育児に追われる日々に、地味に嬉しい栄養成分です。
これは使えそうです。
参考:農林水産省公式サイト。バレニンやDHAなど鯨肉の栄養成分について詳しく説明されています。
また、低カロリーで高たんぱくなため、ダイエット中の方や筋トレをしている方のたんぱく源としても優秀です。鶏ささみに飽きたときの代替として取り入れるのも選択肢のひとつです。
参考:下関市の鯨情報サイト。鯨肉のDHA・EPA・DPAや栄養価について詳しく解説されています。
ニタリクジラの臭みが気になる場合、最も手軽な対処法は「すりおろした玉ねぎに30分漬ける」方法です。玉ねぎの酵素が臭みの成分を分解し、同時に肉を柔らかくしてくれます。見た目が黒っぽく変色しますが、味には影響ありません。下処理はこれだけでOKです。
刺身で食べる場合は、解凍後にドリップ(余分な水分)をキッチンペーパーでしっかり拭き取ることが重要です。ドリップに臭みの成分が含まれているため、これだけで臭いがかなり軽減されます。解凍は冷蔵庫でゆっくり行うのが鉄則です。
加熱調理の場合、火が通りすぎると急激に硬くなります。竜田揚げや炒め物をする際は高温で短時間が原則です。繊維に対して直角に飾り包丁を入れて筋を断ち切っておくと、加熱後も柔らかく仕上がります。
また、みそや塩麴などの発酵調味料、にんにく・しょうが・ローズマリーといった香りの強い食材で下味をつける方法も効果的です。特に竜田揚げの漬けダレにしょうがとしょうゆを合わせるのは定番で、クジラ肉のクセとよく馴染みます。
ニタリクジラを初めて調理する方には、まず刺身から試すことをおすすめします。加熱より臭みが出にくく、素材本来の旨味を最もシンプルに楽しめるからです。薬味は生姜・ニンニク・小ねぎ・カイワレなどが定番で、醤油・酢醤油・ごま油塩のどれでも合います。
参考:くじら公式サイト。臭み取りの具体的な方法やレシピが豊富に掲載されています。
ニタリクジラはスーパーでも購入できます。ただし全国どこでも手に入るわけではなく、取り扱いのある店舗は限られています。豊洲市場などの大型市場に近い小売店や、海産物に力を入れているスーパーで見かけることが多いです。冷凍の柵(サク)状で販売されていることがほとんどで、刺身用・加熱用の2種類が並ぶこともあります。
価格帯は冷凍解凍品で1kg当たり3,000〜4,500円が目安です。牛肉の赤身やマグロに比べると割高に感じるかもしれませんが、高たんぱく低脂肪という栄養面の価値を考えると食べ応えのある食材です。
通販でも購入可能です。共同船舶株式会社(日本の商業捕鯨の中心的な会社)の定期通販サイトでは、北西太平洋産のニタリクジラ赤肉が定期購入できます。回数縛りなしのコースも用意されているため、初めてでも試しやすいです。楽天などのECサイトでも取り扱いがあります。
生のニタリクジラに出会える確率が最も高いのは9月4日「くじらの日」前後です。この日は豊洲市場に生のクジラ肉が大量に入荷される慣例があります。近くに大型鮮魚店や市場がある方は、チェックする価値があります。
通販で購入する際は、「北西太平洋産」「商業捕鯨」と記載のある製品を選ぶのがポイントです。産地と捕獲方法が明記されているものは品質管理が信頼しやすいです。また、解凍済みの製品を購入した場合は再凍結を避け、冷蔵保存で2〜3日以内に食べきることを心がけてください。鮮度が落ちると臭みが出やすくなるため、これが条件です。