

臭みが気になって敬遠していたイワシクジラの刺身、実は解凍を間違えるだけで旨みが半減しています。
「イワシクジラ」という名前を聞いても、馴染みがないという方も多いかもしれません。その名の由来は、イワシの群れと共に回遊してイワシを主食とすることから。日本では江戸時代から食用として親しまれてきた、歴史ある鯨種です。
体長は最大で18メートルにも達する大型のヒゲクジラで、シロナガスクジラ・ナガスクジラに次いで3番目の大きさを誇ります。通常でも15〜16メートル級なので、1頭からとれる肉の量が非常に多く、流通しやすいという特徴があります。
では、気になる「お味」はどうなのでしょうか?
イワシクジラの赤身は、肉の繊維がやや粗めで、しっかりとした歯ごたえが特徴です。これはミンククジラが細かい繊維で柔らかいのとは対照的ですが、その分だけ「噛むほどに旨みが増す」という深い味わいがあります。調理するとみるみる味を染み込ませる性質があり、煮物や鍋料理でも非常においしく仕上がります。
刺身として食べる場合、やや厚めに切るとよく食べ応えのある一切れになります。薄切りではせっかくの旨みが感じにくくなってしまうため注意が必要です。霜降り状のサシが入った「特選赤身」の場合は、口の中でじゅわっとまろやかな味が広がり、これはいわゆる「ハイランク品質」の食体験です。
| 比較項目 | イワシクジラ | ミンククジラ |
|---|---|---|
| 肉の繊維 | やや粗め | 細かく柔らかい |
| 味の特徴 | 噛むほどに旨みが出る深い味 | さっぱり・クセが少ない |
| 刺身の向き不向き | 霜降り部位は刺身に最適 | どの部位も刺身向き |
| 体の大きさ(最大) | 約18メートル | 約10メートル |
| 人気度 | 食通に人気・価格は高め | 日本でもっとも人気の鯨種 |
つまり、「手軽に美味しく食べるならミンク、旨みの深さを楽しみたいならイワシクジラ」が基本です。
特に、赤身の中でも「鹿の子(かのこ)」と呼ばれる部位は、クジラのアゴ付け根にある非常に希少な部位で、1頭からとれる量がごくわずかしかありません。クセがなく独特の旨みがあるため、刺身の最高峰として位置づけられています。入手できた際にはぜひ刺身で味わってみてください。
参考:イワシクジラを含む鯨の種類ごとの特徴についての詳細な解説があります。
おそらく多くの方が、冷凍のイワシクジラを通販や鮮魚店で購入するケースが多いと思います。この解凍のやり方を間違えると、せっかくの旨みが大幅に損なわれてしまいます。これは痛いですね。
鯨の赤身は、急激な温度変化に非常に敏感な食材です。常温に置いたり、電子レンジで解凍してしまうと、肉の細胞が壊れてドリップ(肉汁)が大量に流れ出します。ドリップには旨みや栄養素が溶け込んでいるため、これが出れば出るほど味が落ち、パサつきの原因になります。
正しい解凍方法は、冷蔵でゆっくりです。
手順はシンプルです。真空パックのまま新聞紙などで包み、冷蔵庫のチルド室に入れて丸1日かけてじっくり解凍します。時間がある場合は前日から解凍しておくと安心です。こうすることで、ドリップの発生を最小限に抑えられます。
解凍後の下処理にも少し手間をかけると、臭みがぐっと減ります。
さらに「上級テクニック」として、解凍後にさらに1日冷蔵庫で寝かせる「低温熟成」という方法があります。合計2日間の低温環境に置くことで、旨みがより深まります。この場合はトリミングを1cm程度と少し厚めにすることをおすすめします。
臭みが気になる場合のもう一つの対策として、すりおろした玉ねぎに30分ほど漬けるという方法が有効です。玉ねぎに含まれる成分が臭みを和らげてくれます。また味噌や塩こうじに漬けた場合も、独特の臭みが大幅に緩和されます。
流水解凍は鯨肉には向かない方法です。
水に触れると表面の温度が急上昇し、ドリップが余分に流れ出てしまいます。見た目は早く解凍できたように見えても、旨みの損失は大きくなりますので避けましょう。
参考:鯨赤肉の解凍の詳しい手順・熟成方法について解説されています。
くじら japan – 鯨の赤肉の解凍方法|美味しく食べるための基本ガイド
刺身として食卓に並べるとき、「薬味は何を合わせればいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
イワシクジラの刺身には、薬味が非常に重要な役割を果たします。定番は「おろし生姜」と「ニンニク醤油」の2択です。生姜は鯨肉独特の香りを和らげ、後味をさっぱりさせてくれます。ニンニク醤油は逆に肉の旨みをしっかり引き立て、食べ応えのある大人向けの味わいになります。
切り方のポイントも大切です。イワシクジラの赤身は、半解凍の状態(中心部がまだやや硬い状態)で包丁を入れると、きれいな断面に仕上がります。完全に解凍しきってからだと身が崩れやすくなるため、半解凍の段階でスパッと切るのが正解です。厚さは2〜3mmが食べやすく、薄すぎると食感が物足りなくなります。
これは使えそうです。
盛り付けの際は、スライスした玉ねぎを下に敷いてから刺身を並べると、見た目も美しく食卓が華やかになります。また、玉ねぎが臭み取りの役目も果たすので一石二鳥です。赤みが鮮やかなうちに早めに食べましょう。
食べ方のバリエーションとして、刺身に醤油ベースのたれを和えた「漬け」や、細かく叩いた「なめろう風」に仕上げるのもおすすめです。特になめろうは、みそ・大葉・ネギ・生姜を混ぜ込むことで旨みが何倍にも増し、鯨肉を食べ慣れていない方にも食べやすい一品になります。
参考:鯨肉の美味しい食べ方・調理レシピについてわかりやすく紹介されています。
イワシクジラをはじめとする鯨肉には、実は現代の健康維持にとって注目すべき栄養素が豊富に含まれています。意外ですね。
まず注目したいのが「バレニン」です。バレニンはイミダゾールジペプチドという物質の一種で、クジラの骨格筋に大量に含まれています。その含有量は、鯨の筋肉100gあたり1,200〜1,800mgという驚異的な数値です(ミンククジラの場合)。これはマグロやカツオに含まれる同種の抗疲労成分「アンセリン」よりも多い量です。
バレニンには、肉体的・精神的な疲労を回復させる効果があることが研究で確認されています。さらに、強い抗酸化作用があり、認知機能の維持にも関連するという研究結果も出始めています。つまり、日々家事や仕事でお疲れの方にとって、鯨の刺身は「食べる疲労回復ドリンク」ともいえる食品なのです。
次に注目すべきはDHA・EPA・DPAの含有量です。
鯨は哺乳類でありながら、マグロやブリと同様のDHA・EPAを豊富に含む稀有な食材です。DHAは脳の健康や記憶力維持、EPAは悪玉コレステロールの低減や血流改善に効果があるとされています。さらに鯨肉には「DPA」と呼ばれる海洋哺乳類特有の成分も含まれており、その血行促進効果はDHAやEPAの10倍以上ともいわれています。
赤身部分は特に「高たんぱく・低脂肪・低カロリー」なのが特徴です。
ダイエット中の方や筋トレをしている方にも、鯨の赤身刺身は非常に優秀な食材といえます。牛肉や豚肉に比べてカロリーを抑えながらも、しっかりとたんぱく質と鉄分を補給できます。鉄分が豊富なので、貧血を気にする女性にも心強い食材です。
バレニンだけ覚えておけばOKです。それだけで「鯨を食べる理由」が十分に揃います。
参考:鯨肉のバレニン含有量や栄養成分の詳細データが掲載されています。
参考:鯨肉の栄養価全般(DHA、EPA、DPAなど)についてわかりやすく解説されています。
スーパーでイワシクジラの刺身をなかなか見かけない、という方は多いはずです。全国的に鯨肉を常時扱うスーパーは限られており、産地(長崎・下関・太地など)以外では入手が難しい状況です。そのため、通販を活用するのが実質的には一番スムーズな方法です。
通販で購入する際に確認しておくべきポイントは以下の通りです。
また、商品によっては「半解凍のルイベ状で食べる」という食べ方を推奨しているものもあります。ルイベとは、半解凍のまま薄く切って食べる北海道の食べ方で、シャリっとした独特の食感が楽しめます。冷凍のイワシクジラ刺身ならではの楽しみ方のひとつです。
通販で鯨肉を扱う店舗はいくつかあります。「くじら日和」「〆谷商店(太地町直送)」「くじらにく.com」などが代表的な専門店として知られています。いずれも産地直送に近い形で流通しているため、品質の信頼度は高いです。定期的に食べるなら、まとめ買いして冷凍保存するのが経済的です。
使わない分は再冷凍して保存が基本です。
ただし、一度解凍したものを再冷凍すると品質が落ちるため、購入後は必要な量だけをその都度解凍する運用が理想的です。真空パックのまま冷凍庫に入れておけば、賞味期限は通常6ヶ月〜1年程度の商品が多いため、慌てて使い切る必要はありません。
参考:イワシクジラを含む刺身用鯨肉の通販情報・選び方について参考になります。