化学調味料一覧と表示名や代用品の選び方

化学調味料一覧と表示名や代用品の選び方

化学調味料一覧と基本知識

化学調味料の基礎知識
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うま味調味料の分類

アミノ酸系・核酸系・有機酸系の3つのグループに分けられ、それぞれ異なる成分と特徴を持っています

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主な成分

グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなどの成分で構成されています

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食品表示での見分け方

「調味料(アミノ酸)」「調味料(核酸)」「調味料(アミノ酸等)」という表記で記載されています

化学調味料とは、一般的に「うま味調味料」と呼ばれる調味料のことを指します。平成元年にJAS規格から「化学調味料」という用語が削除され、現在は公式には使われていない言葉となっています。これらは昆布やかつお節などのうま味成分を人工的に抽出・製造した調味料で、さとうきびなどの天然原料を発酵させて作られています。
参考)「化学調味料 無添加」を正しく理解!選び方とおすすめポイント…

食品衛生法では食品添加物として分類されており、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムといった物質で構成されています。これらの成分は法に定められた安全性を満たしている調味料として認められています。
参考)化学調味料とは?|健康管理ラボ by ヤクルト本社

うま味調味料の製造過程では、さとうきびやとうもろこしなどの農産物を原料とし、発酵法によって作られるため、「化学」という言葉のイメージとは異なるものです。化学構造は昆布やチーズに含まれる「グルタミン酸」と全く同じであり、自然由来成分と同等の安全性を持っています。
参考)化学調味料は本当に身体に悪いのか?真実を解説|大豆に関するお…

化学調味料の種類と成分の一覧表

うま味調味料は成分によって大きく3つのグループに分類されます。それぞれの特徴と主な成分を詳しく見ていきましょう。
参考)https://media.fitfood.jp/columns/10232

うま味調味料タイプ 主な成分 食品表示での記載 含まれる主な食材
アミノ酸系 グルタミン酸ナトリウム 調味料(アミノ酸) 昆布、トマト、チーズ、緑茶など
核酸系 イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、リボヌクレオチドナトリウム 調味料(核酸) かつお節、牛肉豚肉鶏肉、干ししいたけ、のりなど
有機酸系 コハク酸ナトリウム 調味料(有機酸) かき、あさり、しじみなどの貝類
複合うま味調味料 2種類以上のうま味調味料の混合 調味料(アミノ酸等)

グルタミン酸は体内のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうちのひとつで、人は体内で自然とグルタミン酸を合成するシステムを持っています。母乳にも含まれており、赤ちゃんはこのグルタミン酸によって初めてうま味と出会います。
参考)三大うま味成分は【イノシン酸】【グルタミン酸】ともう一つ何だ…

イノシン酸は肉類や魚類に多く含まれており、かつお節やにぼし、肉などに含まれているうま味成分の一つです。グアニル酸は干ししいたけに特に多く含まれている成分で、ほぼ干ししいたけにしか含まれていないという特徴があります。
参考)Q 添加物はどのように表示されていますか|食の安全安心とくし…

リボヌクレオチドナトリウムはイノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムの混合物で、相乗効果によってうま味が強くなるように工夫されています。
参考)うま味調味料ってなんだろう?

化学調味料の食品パッケージでの表示と見分け方

食品パッケージで化学調味料を見分けるには、原材料名欄をチェックする必要があります。2015年に制定された食品表示法により、原材料名と食品添加物を区別して表示することが義務付けられました。
参考)食品添加物の表示のルールは?食品表示のお役立ちガイド|有機野…

食品パッケージでの表示方法は主に3つのパターンがあります。最もよく見かけるのが、原材料名の後に「/(スラッシュ)」などの記号を挿入して、その後ろに食品添加物をまとめて表記する方法です。たとえば、「小麦粉、砂糖、食塩/乳化剤、膨張剤」のように記載されます。
参考)食品添加物の見分け方と表示ルール|スラッシュの意味や表示義務…

調味料の表示は、使用される成分の種類や組み合わせによって異なる名称で表記されます。それぞれの構成に応じて4つのグループに分類されます。​

  • アミノ酸系を単独で使用した場合:「調味料(アミノ酸)」​
  • アミノ酸系と他の成分を併用した場合:「調味料(アミノ酸等)」​
  • 核酸系を単独で使用した場合:「調味料(核酸)」​
  • 核酸系と他の成分を併用した場合:「調味料(核酸等)」​

原材料と食品添加物の間に改行や段落を入れて区別する方法もありますが、この形式ではスラッシュなどの明確な目印が使われないため、境界がわかりにくくなることが欠点です。包装に十分なスペースがある商品では、「原材料:小麦粉、砂糖、食塩」「食品添加物:乳化剤、膨張剤」といったように、タイトルを付けて明確に区分するケースもあります。​
厚生労働省が公表する食品添加物の情報を参考にすることで、より詳しい知識を得ることができます。

 

食品添加物 |厚生労働省
食品添加物全般について、保存料甘味料着色料・香料など、食品の製造過程または加工・保存の目的で使用される添加物の安全性について情報が掲載されています。

 

化学調味料の相乗効果と配合比率

うま味成分は単独で使うよりも、複数を組み合わせることで「相乗効果」が生まれ、うま味が強くなると言われています。特にグルタミン酸とイノシン酸、グルタミン酸とグアニル酸の組み合わせで相乗効果が高まります。
参考)うま味倍増!イノシン酸・グルタミン酸・グアニル酸の相乗効果と…

グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果によるうま味の強さは、配合比によって変化します。全体のうま味物質の濃度が一定になるようにし、グルタミン酸とイノシン酸の配合比を少しずつ変化させた水溶液を用いて官能評価を実施したところ、グルタミン酸とイノシン酸がちょうど1:1のときにもっともうま味が強くなることがわかりました。これは単独で味わうときに比べ、およそ7〜8倍とされています。
参考)うま味の基本情報

実際にある老舗料亭の一番だしを分析してみたところ、グルタミン酸とイノシン酸の配合比はちょうど1:1でした。長年だしの味を追求しつづけるなか、もっともうま味が強くなる配合にたどり着いたのでしょう。​
うま味受容体のメカニズムを見ると、舌が味を感じ取ることができるうま味受容体は、ちょうど双葉のような形をしています。グルタミン酸は双葉の枝分かれする根元に、イノシン酸は双葉の葉の先端にくっつきます。イノシン酸がくっつくと、双葉が2枚合わさり、グルタミン酸が安定してとどまります。​
グアニル酸はうま味受容体を変形させ、グルタミン酸をより長時間保持させるので、うま味を強く感じさせるのです。市販されているうま味調味料のほとんどは、この相乗効果を活かした複合うま味調味料と言えます。​

化学調味料無添加表示の実態と注意点

「化学調味料無添加」と表記されていても、実際には酵母エキスやたん白加水分解物といった別の添加物が使用されていることがあります。これは、これらの成分が厳密には化学調味料に分類されないためです。
参考)https://www.umamikyo.gr.jp/ideas/pdf/shouhin_jittai_chousa2024.pdf

2024年の調査によると、「化学調味料無添加」表示をしながら酵母エキスやたん白加水分解物を使用した商品が多数確認されています。これらの成分もうま味調味料と同じ成分(グルタミン酸・核酸)を含んでいます。​
たん白加水分解物の原料に使うのは、肉や魚を加工した時に出来る残渣や、大豆油を採取したあとの残りかす(脱脂加工大豆)などです。塩酸や酵素でたんぱく質を分解してアミノ酸液にしたりアミノ酸粉末にしたりするのです。
参考)http://blog.nekkoya.shop-pro.jp

酵母エキスは、ビール工場から出る廃液の酵母やパン酵母など食品の残りカスに含まれる酵母を培養し、そのたんぱく質を加水分解したアミノ酸です。酵母と酵母エキスは全くの別物です。名前に酵母がついていてナチュラルな感じなので分かりにくいですが、これもやはり強いうま味であることには変わりありません。​
「無添加」は、「保存料」「着色料」など特定の添加物が含まれていないことを指しますが、無添加という表現は非常に曖昧で、何を加えていないのかが明確でない場合も多いです。無添加だからといって必ずしも安全・健康的とは限らないため、表示を鵜呑みにせず、原材料を確認することが重要です。​
消費者庁より「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が公表されており、化学調味料は食品表示基準などの行政上の用語としても使われておらず、定義も存在せず、不明確な言葉となっています。
参考)消費者庁より「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が…

消費者庁より「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」 ...
日本うま味調味料協会のサイトで、消費者庁のガイドラインについての解説が掲載されています。

 

化学調味料の安全性と健康への影響

化学調味料の主成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)は、適切な量を使用すれば健康に悪影響を及ぼさず、むしろ料理の「うま味」を引き出す便利な存在です。世界保健機関(WHO)や国際連合食料農業機関(FAO)が設置した合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、MSGの大量摂取による健康リスクを精査した結果、一日の摂取許容量(ADI)を設定する必要がないと結論付けています。​
米国食品医薬品局(FDA)はMSGを「一般に安全と認められる物質(GRAS)」に分類しています。これにより、MSGは世界中で安全に使用されている調味料であることが証明されています。1980年にアメリカ合衆国食品医薬品局(FDA)により、グルタミン酸ナトリウムは安全な物質であると評価されました。
参考)調味料として使われる食品添加物は体に悪い?使用目的と使用食品…

「化学調味料は発がん性物質を含む」という噂が一部で広まりましたが、これに科学的な根拠はありません。国際機関である世界保健機関(WHO)や米国食品医薬品局(FDA)は、グルタミン酸ナトリウム(MSG)の安全性を確認しており、通常の摂取量であれば人体に害を及ぼすことはないと結論づけています。​
ただし、食品添加物としてのアミノ酸は厳しい安全試験をクリアしたうえで使用されているものの、高温調理において特定のアミノ酸(アスパラギン酸)と果糖やブドウ糖が化学反応を起こすと、発がん性物質であるアクリルアミドが生成されることがあります。アクリルアミドは摂取量を適切に管理することが推奨されています。​
どんな調味料でも過剰に摂取すれば健康に悪影響を及ぼす可能性があります。塩や砂糖、そして油も摂り過ぎたら体に悪いことと同じです。「調味料(アミノ酸)」は食品の味を引き立てる重要な存在ですが、過剰摂取を避け、バランスよく食事を楽しむことが大切です。
参考)【なぜ悪者扱い?】美食家が考える「化学調味料」の是非

化学調味料の代用品と無添加だしの選び方

化学調味料を使わずに料理を美味しくするには、天然のうま味成分を含むだしや調味料を活用することがポイントです。和食におすすめの代用品として、かつお節・かつおだし、昆布だし、いりこだし(煮干しだし)、あごだし、干ししいたけなどがあります。
参考)https://media.fitfood.jp/columns/10831

市販の無添加だしの素を選ぶ際は、原材料をしっかり確認することが大切です。顆粒タイプのだしの素は計量がしやすく、汁物やスープ以外にも炒め物などにもそのままなじむので旨みを料理に加えることができます。
参考)無添加だし|顆粒で美味しくて安全なだしの素の市販おすすめラン…

リケンの「素材力だし 本かつおだし」は、スティックタイプで使いやすく、スーパーなどでも見かけるので入手しやすい点がおすすめです。あごだしは手軽に本格的な和食の出汁が取れる無添加のだしで、あごとかつおがベースとなっており、塩味がマイルドなのでほかの調味料とも合わせやすいです。​
化学調味料などは一切使用せずに無添加で作られただしの素もあり、国産のあごをふんだんに使用した風味豊かで旨みたっぷりのコク深い美味しさが楽しめます。ユウキ食品の「化学調味料無添加のガラスープ」は、中華料理やエスニック料理にも活用できます。​
シマヤの無添加だしコンブは顆粒タイプでサッと使いやすく、うま味がぐっと増します。洋風料理には、玉ねぎやセロリ、人参など野菜の旨味がしっかり感じられる無添加の欧風だしがおすすめです。​
食品本来のうま味を活かす調理を意識し、素材本来の味わいを大切にすることで、健康的な食生活を送ることができるでしょう。​