

あなたが「虫くさい」と思って避けていたタガメは、実はラ・フランスより香り高いフルーツ風味の食材です。
「タガメなんて、どうせ泥くさいんでしょ」と思っているとしたら、それは大きな誤解です。実はタガメ、特にオスの個体は、洋梨・パイナップル・バナナ・青りんごなどに例えられるほど、甘くフルーティーな香りをもっています。
この香りの正体は、オスのタガメが腹部の付け根にもつ「臭腺」から分泌されるフェロモンです。繁殖期のオスが強く放出する成分で、昆虫食の世界ではむしろ「高級な香料」として珍重されています。実際にタイでは、タガメのオス1匹あたりの値段はメスよりも高く、その希少な香りゆえに別格扱いされています。
食感については「エビの殻を何層も重ねたもの」に近いと表現されることが多く、背中の翅(はね)がパリっ、胴体がザクザクと、口の中で2種類の食感が楽しめます。これはまるで「食感のASMR」とも言えるユニークな体験で、噛みしめるほどに旨味がじわりと広がっていきます。
一方で、味そのものは「淡い海老の風味+わずかな甘み・旨み」が基本です。強烈な個性があるというよりも、あっさりした下地にフルーティーな香りが乗る、という構成に近いですね。お酒(とくにビール)との相性が良く、「食べる香料」として料理の風味付けに使われることも多い食材です。
昆虫食研究家や辺境探検家の高野秀行さんは、タガメを使ったタイの調味料「ナムプリックメンダー」について「ライムと茗荷と柚子が合わさったような風味」と表現しており、冷や奴に乗せたり、そばの薬味にしたりといった日本料理との組み合わせを提案するほど、その風味は日本人の舌にもなじみやすいものです。
つまり、「虫の臭さ」ではなく「フルーツの香り」が正解です。
タガメの味・匂い・食べ方について詳しく解説している記事(foodtech-hub.com)
「どうやって食べるの?」と思う方も多いはず。食用タガメにはいくつかの代表的な食べ方があり、それぞれ味と食感がガラリと変わります。これが基本です。
① 素揚げ・揚げ焼き 最も定番の食べ方です。タガメを素揚げにすると、表面はカリっと香ばしく、中はジューシーになります。海老のように香ばしくてさくさくした食感になり、塩や甘辛いタレとよく合います。タイの屋台ではこの形が一般的で、「メンダー」の名で親しまれています。
自宅で試すなら、ドライスナックタイプのタガメに片栗粉をまぶし、多めの油で揚げ焼きにする方法がおすすめです。香りとジューシーさがプラスされて、格段に食べやすくなります。
② 蒸し・タレ漬け 蒸したタガメはシーチキンに近い食感になります。しっとりとした仕上がりになり、ガーリックや唐辛子と合わせたタイのソース「ナムプリックメンダー」に仕立てると絶品です。このソースはペースト状で、焼いたタガメをニンニク・唐辛子・タイのエビペースト(ガピ)と石臼ですり潰して作ります。日本でも、豆腐や野菜に添えるディップとして意外なほどマッチします。
③ タガメサイダー(飲む昆虫食) 昆虫食専門店「TAKEO(タケオ)」が特許製法で作る「タガメサイダー」は、タガメエキス0.3%を配合した青りんご風味の炭酸飲料です。200ml×3本セットが約1,440円で購入でき、昆虫の姿は一切ありません。実際に飲んだ人の多くが「ラ・フランスサイダーみたい」「爽やかでフルーティー」と評しており、昆虫食に抵抗感がある方でも入りやすい一品です。
これは使えそうです。
TAKEO浅草本店(東京都台東区西浅草1-3-14 2F)では実店舗での体験も可能で、タガメを含む多種類の昆虫食をその場で試食・購入できます。
TAKEOによるタガメサイダーの製法・味・入門情報(takeo.tokyo)
「虫なんて栄養あるの?」という疑問、ごもっともです。しかし実際に数字を見ると、その優秀さに驚きます。
乾燥重量100gあたりの比較をすると、タガメのタンパク質は約47〜50gなのに対し、牛肉(肩ロース)は約17.8gです。つまりタガメは牛肉の約2.8倍のタンパク質を含んでいます。ちなみに乾燥重量というのは、水分をすべて抜いた状態の数値なので、実際に食べる量を正確に比べるには注意が必要ですが、それを差し引いても高タンパクであることに変わりはありません。
| 栄養素 | タガメ(乾燥100g) | 牛肉・肩ロース(100g) |
|--------|-------------------|----------------------|
| エネルギー | 約495〜527kcal | 約212〜258kcal |
| タンパク質 | 約47〜50g | 約17.8〜56g |
| 脂質 | 約27.5g | 約20.8g |
脂質もそこまで多くはなく、不飽和脂肪酸(コレステロールや中性脂肪を下げる働き)を含む点も注目されています。さらにビタミンB群・鉄分・マグネシウムなどのミネラルも豊富で、「昆虫食=スーパーフード」と呼ばれる理由がここにあります。
ただし、甲殻類(エビ・カニ)アレルギーを持っている方は注意が必要です。昆虫の外殻にはキチン質が含まれており、これが甲殻類アレルギーと同様の反応を引き起こすリスクがあります。実際、TAKEOや各昆虫食ショップは公式サイトで「甲殻類アレルギーの方は食べないでください」と明記しています。
甲殻類アレルギーが条件です。
タガメの栄養成分・食感・アレルギー情報を掲載しているbugoom食レポ記事(bugoom.jp)
タガメの食用を語るうえで見逃せないポイントが、オスとメスの違いです。同じタガメでも、食べ比べると明らかに体験が異なります。
オスは「臭腺」から洋梨・パイナップル・バナナ・青りんごを合わせたような複雑でフルーティーなフェロモンを放ちます。このフェロモンは繁殖期に特に強くなり、東南アジアの料理では「香料」として積極的に活用されます。タイワンタガメのオスは日本のタガメより香りが強く、1匹あたりの市場価値もメスより高いとされています。
一方、メスは香りが弱い代わりに、卵を持っている時期は食べ応えがあり、肉々しい旨味を楽しめるという評価があります。「しっかりした歯ごたえで肉のような味がする」「高級食材のような旨味がある」という食レポも存在します。
つまり、目的によって「選ぶべき性別」が変わります。香りを楽しみたいなら「オス」、食べ応えを重視するなら「卵持ちのメス」という選択になります。オンライン販売ではオス・メスを指定して購入できるショップもあるため、最初から好みに合わせて選んでみるのも良いでしょう。
なお、ドライスナックで市販されているものは加熱処理が施されているため、オスでも香りが飛んでしまっていることがほとんどです。より強い香りを楽しみたいのであれば、TAKEOのタガメサイダーのような、独自製法でエキスを抽出した加工品を選ぶほうが効果的です。
タイのタガメ(メンダー)のオスのフェロモンと香りについての専門コラム(suisaku.com)
タガメの味や栄養を知ったからといって、野外でタガメを捕まえてきて食べようとするのは絶対にダメです。
日本に生息するタガメは、環境省のレッドリスト2020において「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」に分類されています。さらに2020年2月10日以降は「種の保存法」の対象種となり、商業目的での採取・販売が法律で禁止されています。違反した場合、種の保存法により重い罰則の対象になりえます。
では、食用タガメはどこから来るのでしょうか?
日本で流通している食用タガメのほぼすべては、タイ産の「タイワンタガメ」です。タイ・インドシナ半島・中国南部などに生息するタイワンタガメは、古くから現地の食文化に根ざした食材で、養殖技術も確立されています。タイの市場では山盛りにされて販売されるほど一般的な食材で、日本のタガメとは別種の昆虫です。
バグズファームやTAKEOなどの国内昆虫食専門ショップで販売されているタガメは、すべてこのタイ産のタイワンタガメを使用しており、衛生管理や食品安全基準をクリアした商品です。安心して購入できます。
🛒 購入の際に確認しておきたいポイントは以下の通りです。
- 産地が「タイ産(タイワンタガメ)」であること
- 加熱処理済みかどうかの表示
- 甲殻類アレルギーの警告表示の有無
- 製造・販売元の信頼性(食品衛生法に基づく表示があるか)
野外でタガメを見かけても、採取は法律で禁じられていると覚えておけばOKです。食べたい場合は、必ず専門ショップで購入しましょう。
環境省「タガメの保全の手引き(令和5年5月作成)」PDF(env.go.jp)