

ニゴロブナを普通の魚と同じように下処理すると、臭みが取れず料理が台無しになります。
ニゴロブナは、滋賀県の琵琶湖にのみ生息する固有種のフナです。学名は *Carassius auratus grandoculis* で、体長は成魚で約25〜35cm、重さは400〜800g程度になります。
大きさのイメージとしては、A4用紙を縦に並べたくらいの長さです。
琵琶湖固有種であるため、漁獲量は年々減少しており、滋賀県の統計によると2000年代初頭には年間約400トン以上あった漁獲量が、近年は100トンを下回る年も出ています。希少性が高まっているため、市場での流通価格も1匹あたり500〜2,000円程度とやや高値になっています。
注目すべきはその脂のりです。
ニゴロブナは、琵琶湖の豊かなプランクトンを食べて育つため、身に適度な脂が乗っています。この脂質のバランスが、長期発酵させる鮒寿司(ふなずし)に最適とされる理由のひとつです。一方で、淡水魚特有のクセも持ち合わせており、下処理の巧拙が料理の仕上がりを大きく左右します。
コイ科の魚ですが、一般的なコイよりも身が繊細です。
また、ニゴロブナは春に産卵期を迎えるため、3〜5月に漁獲されたものは卵(子持ち)を持っていることが多く、この卵入りのものが鮒寿司の最高級品とされています。料理する際にはこの卵の扱い方も重要なポイントです。
ニゴロブナ料理で失敗する原因の9割は、下処理にあります。
淡水魚に共通する臭みは、主にエラ・内臓・皮のぬめりの3箇所から発生します。ニゴロブナも同様ですが、特にエラ周辺の処理が甘いと、加熱後も強い泥臭さが残ってしまいます。丁寧にここを処理するかどうかで、料理の質が大きく変わります。
下処理の基本手順
塩水の濃度は「海水より少し薄め」が目安です。
なお、子持ちのニゴロブナを処理する場合は、腹を切り開いたときに卵が見えます。卵は煮付けや炒め物に使えるため、傷つけずに取り出して別の器に保管しておきましょう。捨てるのはもったいないです。
下処理さえ丁寧にすれば、ニゴロブナは家庭料理に十分活かせます。
ここでは、主婦が実践しやすい「煮付け」と「唐揚げ」の2レシピをご紹介します。
🍲 ニゴロブナの煮付け(2〜3人分)
作り方:
煮立て過ぎると身が崩れます。
ポイントは「強火で短時間」ではなく「中火でじっくり」。ニゴロブナの身は淡白でほろほろと崩れやすいため、煮立て過ぎると盛り付け時に形が崩れてしまいます。落とし蓋は、アルミホイルで代用できます。
🍟 ニゴロブナの唐揚げ(2〜3人分)
作り方:
二度揚げが骨まで食べるコツです。
二度揚げをすることで骨が香ばしくサクサクになり、小骨まで食べられるようになります。ニゴロブナは骨が多い魚ですが、唐揚げにすることでその骨がカルシウムごと摂れる一品に変わります。これは使えそうです。
鮒寿司は、日本最古の「なれずし」の一種で、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている「和食」の文化的背景を持つ発酵食品です。
一般に「鮒寿司は専門店でしか作れない」と思われがちですが、実際には家庭でも仕込むことができます。ただし、適切な知識と管理が必要です。ここでは基礎的な工程と注意点を整理します。
鮒寿司の基本工程(概要)
発酵期間中の管理が命です。
注意点として、発酵中に異常な悪臭(腐敗臭)やカビが発生した場合は廃棄してください。正常な発酵では「チーズのような乳酸臭」が出てきます。初めて挑戦する場合は、滋賀県の農業技術振興センターや地域の鮒寿司製造組合が公開しているレシピを参考にすることをおすすめします。
いきなり本格仕込みに挑戦する前に、まずは市販の鮒寿司を味わって発酵具合の「正解の味」を覚えておくと、失敗リスクを大幅に下げられます。近江の老舗・総本家喜多品老舗や魚治(うおじ)などの製品をオンラインで取り寄せる方法も手軽です。
ニゴロブナ料理の献立を考えるとき、多くの方が「何を合わせればいいかわからない」と感じるようです。
実は、ニゴロブナの料理は「淡白+発酵系の風味」という特徴があるため、献立全体のバランスをとりやすい食材です。煮付けや唐揚げの場合は淡白な仕上がりになるため、濃いめの味の副菜が合います。鮒寿司の場合は発酵の風味が強いため、シンプルな副菜が引き立てます。
ニゴロブナ料理別おすすめ献立
| メイン料理 | おすすめ副菜 | 汁物 |
|---|---|---|
| 煮付け | ほうれん草の胡麻和え・きんぴらごぼう | 豆腐と わかめの味噌汁 |
| 唐揚げ | 大根おろし・キャベツの塩もみ | なめこの味噌汁 |
| 鮒寿司(薄切り) | 茹でたてのご飯・漬物 | シンプルな澄まし汁 |
鮒寿司はご飯と一緒が王道です。
また、あまり知られていない活用術として「鮒寿司茶漬け」があります。薄く切った鮒寿司をご飯の上に乗せ、熱いほうじ茶や番茶をかけるだけで、滋賀の郷土料理「鮒寿司茶漬け」として楽しめます。発酵食品のコクとお茶の香りが合わさり、消化にも良いとされています。意外ですね。
さらに、ニゴロブナの骨や頭部を素揚げにして「骨せんべい」にする方法も実は家庭向きです。下処理後に残った骨や頭部を乾燥させて片栗粉をまぶし、低温(160℃)でじっくり揚げると、カルシウム豊富なおつまみになります。揚げた後に塩や青のりを振ると食べやすく仕上がります。捨てる部分を活かせるので経済的です。
ニゴロブナは滋賀県以外のスーパーではほぼ流通していません。
入手方法は大きく3つに分けられます。①滋賀県内の直売所・道の駅での購入、②オンラインショッピングでの取り寄せ、③漁師や知人からの直接入手、です。
オンラインでは、楽天市場やAmazonでも「ニゴロブナ 生」「ニゴロブナ 冷凍」で検索すると、滋賀県の業者から送料込み1,500〜3,500円程度で購入できます。冷凍発送品を選ぶと鮮度が安定しており、初めての購入に向いています。
冷凍品の解凍は冷蔵庫内でゆっくりが基本です。
保存期間の目安
冷凍保存する場合、下処理を済ませてから冷凍するのが鉄則です。内臓が残った状態で冷凍すると、解凍後に臭みが身に染み込んでしまいます。購入後すぐに調理しない場合は、その日のうちに下処理を終えて冷凍するようにしましょう。
また、解凍時は「冷蔵庫内で8〜12時間かけてゆっくり解凍」するのが最もおすすめです。電子レンジ解凍は身が固くなりやすく、風味も落ちるため避けるのが無難です。冷凍・解凍の方法ひとつで美味しさが変わります。
滋賀県漁業協同組合連合会の公式情報では、ニゴロブナの資源保護と流通に関する取り組みについて確認できます。購入前に旬の時期(4〜6月の子持ち時期)を把握しておくと、より美味しいものを選びやすいです。
滋賀県漁業協同組合連合会|琵琶湖の魚の旬・漁獲情報(ニゴロブナを含む湖魚の流通・資源保護の参考に)
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