

カタプラーナ鍋は、IHには対応していないので購入前に要確認です。
カタプラーナ鍋とは、ポルトガル最南部のアルガルヴェ地方に古くから伝わる、独特な円盤型(UFO型)の銅製鍋です。上下ふたつの半球が蝶番(ちょうつがい)でつながれており、パチンとサイドロックを閉めると2枚貝のような形になります。この構造が、食材の蒸気をほどよく鍋の中で循環させ、濃厚なスープと豊かな風味を生み出してくれるのです。
もともとはアラブ世界の支配下にあったポルトガルに、18世紀ごろムーア人を通じて伝来したとされています。モロッコの「タジン鍋」と調理法がよく似ているのもそのためで、どちらも密閉蒸気調理法を使ってゆっくり低温で仕上げる料理です。
昔のアルガルヴェ地方では、漁師たちがカタプラーナ鍋をお弁当箱代わりに使っていたという記録があります。自宅で玉ねぎ・ニンニク・オリーブオイル・野菜などを詰めて漁に出かけ、海で獲れたばかりの魚介を帰りに加えて、砂に埋めた熱い炭の上で調理したそうです。つまり、歴史上最初のおもてなし鍋でもあります。
銅の特性として、ステンレスの約25倍、鉄の5倍、アルミの2倍という圧倒的な熱伝導率を持ちます。打ち出し加工による表面積の広さが、熱を鍋全体にすばやく均一に伝え、食材の火通りを安定させます。魚介が10〜15分の短時間でふっくら仕上がるのは、この熱伝導のよさが理由です。
また圧力鍋と違って「完全密閉」ではなく、ほどよく蒸気が抜ける構造なので、魚介が圧力で崩れたり硬くなったりすることがありません。余分なカロリーと脂肪も調理中に落ちるため、ヘルシーな調理法としても注目されています。つまり健康にも時間にも優しい鍋です。
カタプラーナ鍋の歴史と特徴について詳しく解説(アライマート)
カタプラーナ料理の基本は、重ねて閉じて蒸すだけ。それが原則です。難しそうに見えますが、工程はとてもシンプルで、手順を一度覚えれば繰り返し作れます。
まず鍋を開いた状態でオリーブオイルとスライスにんにく、薄切り玉ねぎ、赤パプリカを入れて弱めの中火で軽く炒めます。玉ねぎがしんなりしたら、一口大に切ったじゃがいもを加えてさらに1〜2分炒めましょう。次にカットトマト缶を1缶分入れてざっと混ぜます。
魚介類(あさり・エビ・白身魚・イカなど)を上に並べ、白ワインを50〜80ml程度加えたらフタを閉めてサイドロックをかけます。弱めの中火で10〜15分、蒸し煮にします。時間が来たら火を止め、塩で味を整えて、仕上げにパクチーを散らして完成です。
材料は2〜3人前で以下が目安です。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 魚介類(あさり・エビ・白身魚など) | 合計300〜400g |
| 玉ねぎ | 1個 |
| 赤パプリカ | 1個 |
| じゃがいも | 2個 |
| カットトマト缶 | 1缶(400g) |
| にんにく | 1〜2かけ |
| オリーブオイル | 大さじ2 |
| 白ワイン | 50〜80ml |
| パクチー | お好みで |
| 塩 | 少々 |
よく失敗しがちなのが「途中でかき混ぜること」と「火を入れすぎること」です。フタを開けた瞬間の香りとスープの旨みが最高のごちそうなので、蒸し煮中はフタを開けないのが鉄則です。途中でかき混ぜない、が基本です。
仕上がったら、スープをたっぷり器に注いでカリッと焼いたバゲットを添えると、ポルトガルの食卓スタイルになります。残ったスープはパスタやリゾットのベースにも活用できて、食費の節約にもつながります。これは使えそうです。
カタプラーナで冬のポルトガル鍋・詳細レシピ(メルカード・ポルトガル公式)
「カタプラーナ鍋は高い」「どこで買えばいいかわからない」という不安を持つ方も多いはずです。そもそも、専用鍋が絶対に必要かというと、そうではありません。
カタプラーナ料理を家庭で再現する際に大切なのは、次の2点だけです。フタがきちんと閉まること、そして蒸気を逃しにくいこと。この2点を満たせば、蓋つきの両手鍋・土鍋・ダッチオーブン・ル・クルーゼのような鋳鉄鍋で代用できます。味そのものは「魚介の鮮度・火加減・蒸し時間」で決まるため、鍋の形状より素材の質を優先しましょう。
ただし、本場のカタプラーナ鍋を使いたい場合はAmazonや楽天市場などで国内通販でも購入可能です。価格は直径21cm(1〜2人用)で約5,000〜8,000円程度、直径26〜27cm(3〜4人用)は約10,000〜15,000円程度が相場です。銅製・ステンレス製・アルミ製の3種類があり、銅製が最も熱伝導に優れていますが、お手入れの手間もかかります。
注意が必要なのが熱源の問題です。銅製のカタプラーナ鍋はIHには対応していません。IHコンロをお使いの場合は、ステンレス製やIH対応プレートを別途用意するか、IH対応と明記されたモデルを選ぶ必要があります。購入前にかならず確認が必要です。
サイズ選びの目安として、2人家族なら直径21〜22cm、3〜4人家族なら直径26〜27cmが使いやすいサイズです。直径26cmはちょうどA4用紙の長辺ほどの大きさで、食卓にもしっかり存在感が出ます。「大は小を兼ねる」という口コミも多く、迷ったら大きいサイズを選ぶとよいでしょう。
カタプラーナ鍋のサイズ・素材別の違いと選び方まとめ(konpeito blog)
銅製のカタプラーナ鍋を購入したら、長く使うためのお手入れ知識がとても重要です。銅は使い続けると熱や酸化で変色し、緑青(ろくしょう)と呼ばれる緑色の酸化物が発生します。
以前は「緑青は有毒」と言われていましたが、現在では日本でも「人体への無害性」が認められています。つまり過剰に心配しなくて大丈夫です。それでも見た目が気になる場合や、鍋を清潔に保ちたい場合には、定期的なお手入れが大切です。
銅製カタプラーナ鍋の変色・緑青落としには、レモンの搾りかす+塩を使う方法がポルトガルでも昔から伝わる定番の手入れ方法です。手順は以下のとおりです。
レモンの酸が銅の酸化物に化学反応を起こし、塩が研磨剤の役割を果たします。魔法のようにさっとは落ちませんが、1時間ほど根気よく磨くと表面がピカピカに戻ります。根気が必要です。
購入直後の銅製カタプラーナ鍋には、保護用の薄膜コーティングが施されているものがあります。この膜は調理前に必ず除去する必要があります。鍋に重曹と水を入れてグツグツと煮て、膜を溶かし落としてから使い始めましょう。この手順を省略すると、調理中に膜が食材に混入する可能性があるため、注意が必要です。
また、食器洗い機の使用は金属を傷めるため禁止です。使用後は食器洗い機に入れず、手洗いで優しく洗いましょう。内側には錫(すず)メッキが施されているモデルが多く、金属たわしや強い研磨剤で擦ると錫が剥がれてしまうため、柔らかいスポンジを使うのが原則です。
カタプラーナ(銅鍋)のお手入れ実践レポート・レモン+塩の効果(Ola Portugal ブログ)
「カタプラーナは魚介料理だけ」と思われがちですが、実はそれは大きな誤解です。鍋の構造上、どんな食材でも旨みを閉じ込めて蒸し煮にできるため、魚介以外のレシピにも幅広く応用できます。
たとえば、定番以外で試してほしいのが次のようなアレンジです。
実は、カタプラーナの「旨みを閉じ込める」仕組みは、ダッチオーブンやル・クルーゼが得意とするブレイズ料理(蒸し焼き・蒸し煮)とほぼ同じ原理です。ダッチオーブンレシピを参考にすると、カタプラーナ用にアレンジしやすいので試してみてください。これは使えそうです。
ひとつ注意したいのが食材の重ね方で、「水分が多い食材を下、火の通りにくいものを下層」に置くのがコツです。じゃがいもや根菜類は一番下、玉ねぎやパプリカは中層、魚介や肉は一番上に置くと、均一に火が通ります。下から水分が対流して全体を蒸し上げる、という構造を利用するのが基本です。
カタプラーナ鍋を食卓に直接置いてフタを開ける「演出」も、おもてなしの醍醐味です。ふわりと立ち上がる香りと蒸気が食卓に広がる瞬間は、特別な日の料理にぴったりで、ホームパーティーでも大きな盛り上がりが期待できます。コルク製の専用鍋敷き(メルカード・ポルトガルなどで販売)を一緒に用意すると、テーブルが焦げる心配もなく安心して食卓に置けます。
カタプラーナ鍋を使ったレシピ一覧・魚介以外のアレンジも多数掲載(メルカード・ポルトガル公式)