

干ししいたけを調理に使う際、多くの人が悩むのが「戻し方」ではないでしょうか。ただ水に浸しておくだけでは、その豊富な栄養と特有の旨味を最大限に引き出すことはできません。ここでは、基本の戻し方から、忙しい現代人にぴったりの時短テクニック、さらには意外な裏技まで、栄養を逃さずに美味しさをアップさせる方法を詳しくご紹介します。
干ししいたけの旨味成分の正体は「グアニル酸」です 。このグアニル酸は、しいたけが持つ酵素の働きによって生成されますが、この酵素は低温(5℃前後)で最も活発に働きます 。そのため、美味しさを最大限に引き出すための基本は、冷蔵庫で一晩(約10〜24時間)かけてじっくり冷水で戻すことです 。時間はかかりますが、このひと手間が、料理の味を格段にレベルアップさせてくれます。戻し汁は、旨味と栄養が溶け出した黄金のだし汁になるので、捨てずに料理に活用しましょう 。
「今すぐ使いたい!」という時には、時短テクニックが役立ちます。ただし、冷水戻しに比べて風味や食感が若干劣る場合があることも覚えておきましょう。
電子レンジを使う方法
耐熱容器に干ししいたけと水を入れ、ラップをして電子レンジ(600W)で30秒〜3分ほど加熱する方法です 。加熱しすぎると硬くなることがあるので、様子を見ながら調整してください。粗熱が取れるまでそのまま置いておくと、味がなじみます。
ぬるま湯(50℃程度)を使う方法
ぬるま湯で戻すと、30分~3時間程度で戻ります 。ただし、60℃以上のお湯を使うと、旨味成分を分解する酵素が働いてしまい、かえって旨味が減ってしまうので温度には注意が必要です 。
日光浴でビタミンDを増やす ☀️
調理前に1〜2時間、干ししいたけの裏側(ひだの部分)を日光に当てるだけで、ビタミンDの量が格段にアップすることが分かっています 。ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける重要な栄養素です。天気の良い日にはぜひ試してみてください。
炭酸水で戻す 🧪
あまり知られていませんが、水のかわりに炭酸水(無糖)で戻すと、純水で戻すよりも「うま味」が強く感じられるという研究結果があります 。炭酸水で抽出しただしは、雑味が少なく、うま味が際立つ上品な味わいになるため、お吸い物など、だしの味を活かしたい料理に特におすすめです。
以下の農研機構のページでは、干ししいたけの旨味成分について科学的に詳しく解説されています。
うま味成分グアニル酸の生成機構の解明
干ししいたけの魅力は、何と言ってもその芳醇な香りと深い旨味にあります。戻し汁は、それ自体が素晴らしい「だし」となり、様々な料理の味の基盤を支えます。ここでは、干ししいたけの旨味を最大限に活かすための「だし」の取り方と、他のだし素材との組み合わせによる相乗効果について掘り下げていきます。
干ししいたけには、三大旨味成分のうちの二つ、「グアニル酸」と「グルタミン酸」が含まれています 。特に、乾燥させる過程で生成されるグアニル酸は、干ししいたけ特有の強い旨味の元です 。この二つの旨味成分が合わさることで、単体で使うよりも何倍も強く旨味を感じる「旨味の相乗効果」が生まれます。
干ししいたけの旨味をさらに引き立てる最高のパートナーが「昆布」です。昆布には、もう一つの主要な旨味成分である「グルタミン酸」が豊富に含まれています。干ししいたけのグアニル酸と昆布のグルタミン酸が組み合わさることで、爆発的な旨味の相乗効果が生まれるのです。その旨味は、単独で使う場合に比べて7〜30倍にもなると言われています 。
干ししいたけと昆布の合わせだしの作り方(水出し)
この水出し方法は、火を使わないため雑味が出にくく、非常にクリアで上品なだしが取れるのが特徴です。
料理によって、だしの風味のバランスを調整することで、さらに完成度を高めることができます。
| 料理の種類 | だしの特徴 | おすすめの比率(水1Lに対して) |
|---|---|---|
| お吸い物、茶碗蒸し | 上品な香りとクリアな味 | 干ししいたけ 1枚、昆布 10g、かつお節 20g |
| 煮物、炊き込みご飯 | コクと深い味わい | 干ししいたけ 2〜3枚、昆布 15g、煮干し 30g |
| うどん、そばのつゆ | しっかりとした風味 | 干ししいたけ 3枚、昆布 10g、かつお節 30g |
市販のだしパックや白だしも便利ですが、自分で引いた一番だしの香りと風味は格別です 。ぜひ、料理に合わせて素材の組み合わせや比率を変えて、自分だけの「黄金比」を見つけてみてください。
干ししいたけというと、煮物や炊き込みご飯、ちらし寿司といった和食の定番料理を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、その強い旨味と独特の食感は、和食だけでなく洋食や中華料理とも相性抜群。ここでは、いつもの使い方から一歩踏み出して、マンネリを打破する意外な活用レシピをご紹介します。
時間がない時でも、干ししいたけの旨味を存分に楽しめるレシピがあります。ポイントは、細かく砕いたり、調理しながら水分を吸わせたりすることです。
干ししいたけと根菜の具だくさんスープ
干ししいたけをハサミで細かくカットし、玉ねぎやごぼう、ベーコンと一緒に煮込むだけの簡単スープです 。事前に戻す必要がなく、調理中にしいたけから出る旨味がスープ全体に広がります。トマト缶を加えれば、ミネストローネ風にもアレンジ可能です。
干ししいたけの旨味は、チーズやオリーブオイルともよく合います。意外な組み合わせで、新しい美味しさを発見できます。
干ししいたけのアヒージョ
戻した干ししいたけを、ニンニクと鷹の爪を効かせたオリーブオイルで煮込むだけ。しいたけがオイルの旨味を吸い、ジューシーな食感になります。戻し汁を少し加えると、さらに風味豊かになります。バゲットを添えてお召し上がりください。
干ししいたけのクリームパスタ
戻した干ししいたけを薄切りにし、ベーコンや玉ねぎと一緒に炒め、生クリームと戻し汁でソースを作ります。干ししいたけの深いコクが、クリームソースに奥行きを与え、まるでお店のような本格的な味わいになります。
戻した干ししいたけを使って、作り置きできる万能調味料を作っておくと非常に便利です。
しいたけ醤油
戻した干ししいたけと戻し汁、醤油、みりんを鍋に入れ、弱火で煮詰めるだけ。冷奴や卵かけご飯にかけるのはもちろん、炒め物の味付けにも使えます。
しいたけふりかけ
戻したしいたけをみじん切りにし、だし殻やおかかと一緒に、醤油、砂糖、みりんで甘辛く炒り煮にすれば、ご飯が進む自家製ふりかけの完成です。食物繊維も豊富で、栄養満点です。
干ししいたけは乾物なので長持ちするイメージがありますが、実は保存方法を間違えると、湿気てしまったり、虫が湧いてしまったり、風味が落ちてしまうことがあります。ここでは、干ししいたけの品質を長期間保つための正しい保存方法と、賞味期限を延ばすためのコツをご紹介します。
干ししいたけの保存で最も重要なのは「湿気を避けること」です。湿気を吸うとカビが生えたり、品質が劣化する原因になります 。
特に梅雨時期など湿気が気になる季節や、開封後に長期間使い切れない場合は、冷蔵庫や冷凍庫での保存が安心です。
冷蔵保存
密閉容器に入れて冷蔵庫の野菜室などで保存します。常温保存よりもカビや虫の発生を防ぎやすくなります。
冷凍保存
実は、干ししいたけは冷凍保存も可能です 。冷凍することで、湿気や虫の心配が完全になくなり、風味の劣化も防げます。保存期間は約1年が目安です。
さらに、一度水で戻した干ししいたけも冷凍保存が可能です 。使いやすい大きさにカットしてから、水気をよく拭き取り、ラップに包んで冷凍用保存袋に入れておけば、使いたい時にすぐに使えて非常に便利です。戻し汁も製氷皿などで凍らせておけば、自家製の万能だしキューブになります。
保存している干ししいたけを使う前には、状態を確認しましょう。
もし悪い状態になっていたら、残念ですが食べるのはやめましょう。正しい保存方法を実践して、干ししいたけの美味しさを長く楽しんでください。
干ししいたけを戻して調理する際、傘の部分だけを使い、硬い「軸(石づき)」の部分を捨ててしまっていませんか?実は、その捨ててしまいがちな軸にも、旨味と栄養がたっぷりと詰まっているのです。ここでは、料理のプロも実践する軸の驚きの活用法と、その知られざる栄養価についてご紹介します。SDGsが叫ばれる現代、食材を余すことなく使い切ることは、家計にも環境にも優しい選択です。
しいたけの軸は、傘を支えるための土台であり、食物繊維が傘よりも密に詰まっています。特に干ししいたけの軸は、乾燥することで繊維が凝縮され、硬い食感になります。しかし、この硬い部分こそが、旨味と栄養の宝庫なのです。じっくり火を通したり、細かく刻んだりすることで、美味しく食べることができます。
干ししいたけは、生しいたけに比べて栄養価が格段に高いことで知られています 。ビタミンDは約10倍、食物繊維は約2倍にもなります 。そして、これらの栄養素は、傘だけでなく軸にも豊富に含まれています。特に、腸内環境を整える効果が期待される食物繊維は、軸の部分に多く含まれています。旨味成分であるグアニル酸も、もちろん軸からもしっかりとだしが出ます。
硬いからと諦めずに、ひと手間加えて美味しい一品に変身させましょう。
絶品!自家製「軸だし」
戻した後の軸の硬い先端部分(石づき)だけを切り落とし、残りの軸の部分を昆布や野菜くずと一緒に煮出すと、非常に濃厚で美味しいだしが取れます。この「軸だし」は、味噌汁やスープのベースに使うと、いつもの料理にぐっと深みを与えてくれます。
食感が楽しい「軸のきんぴら」
戻した軸を手で細かく割き、ごぼうや人参と一緒に炒めてきんぴらにします。コリコリとした独特の食感がクセになる一品です。ごま油で炒めれば、風味もアップします。
ご飯のお供に「軸の佃煮」
細かく刻んだ軸を、戻し汁、醤油、みりん、砂糖でじっくり煮詰めれば、自家製の佃煮が完成します。生姜の千切りを加えれば、さらに風味豊かなご飯のお供になります。
ミートソースや餃子の具に
軸をみじん切りにして、ひき肉の代わりに使ったり、ひき肉に混ぜてかさ増ししたりするのもおすすめです。ミートソースや餃子のタネ、ハンバーグなどに加えると、旨味と食感がプラスされ、ヘルシーにボリュームアップできます。
このように、干ししいたけの軸は、決して捨てるべき部分ではありません。工夫次第で、料理のレパートリーを広げ、栄養価を高めてくれる万能食材に変わります。ぜひ、今日から「もったいない」を「おいしい」に変えてみてください。
以下のリンクでは、しいたけ専門店の干ししいたけの戻し方やレシピが紹介されており、軸の活用についてもヒントが得られます。
寿しいたけ レシピ

大洋物産 干し椎茸 しいたけ スライス 業務用 業務用お徳用(1kg/お出汁/沼に) 乾燥シイタケ スライス 減量食に活用