

実はスップリを揚げすぎると、中のモッツァレラが溶けて空洞になり、せっかくの「糸引き」が消えてしまいます。
スップリ(Supplì)はイタリア・ローマで生まれた揚げライスボールで、その歴史は19世紀初頭にまでさかのぼります。フランス語の「surprise(サプライズ)」が語源という説が有力で、食べると中からモッツァレラチーズが糸を引いて伸びる「驚き」がそのまま名前になったとされています。
ローマっ子にとってスップリは日常のストリートフードです。街角のピッツェリアやフリトゥーラ(揚げ物専門店)では1個1.5〜2ユーロ(日本円で約250〜350円)で販売されており、学校帰りの子どもも、買い物途中の主婦も立ち寄って気軽に食べる国民食です。
よく混同されるのが「アランチーニ」との違いです。アランチーニはシチリア島が発祥で、形が丸くサフランで色づけした米を使います。一方、スップリ ローマは細長い俵型が特徴で、トマトソースで炊いたリゾットを使う点が決定的に異なります。つまり形と産地が違います。
スップリ ローマに使う米はイタリア産のカルナローリ種やアルボリオ種が本場流です。これらはでんぷん質が高く、冷えても粘りが出やすいためライスボールに向いています。日本のジャポニカ米(コシヒカリなど)は粘りがあるため、代用品として実は非常に相性が良いとされています。意外ですね。
| 項目 | スップリ ローマ | アランチーニ(シチリア) |
|---|---|---|
| 発祥地 | ローマ(ラツィオ州) | シチリア島 |
| 形 | 細長い俵型・楕円形 | 丸型(三角形もあり) |
| 米の味付け | トマトソース | サフラン入りブロード |
| 中の具 | モッツァレラ(フィラッタ) | ミートソース+えんどう豆など |
| サイズ | 手のひらサイズ(約10cm) | こぶし大(直径7〜9cm) |
スップリが主婦に人気な理由のひとつは、残りご飯の活用レシピとして優秀な点です。前日の晩ご飯で余ったご飯にトマト缶とチーズを加えるだけで、翌朝のお弁当おかずや子どものおやつに変身します。これは使えそうです。
本場に近い味を出すためには、材料選びが味の8割を決めます。順番に確認していきましょう。
まずお米は日本のうるち米(コシヒカリ・あきたこまち)で問題ありません。2合分(約300g)で10〜12個のスップリが作れます。大人2人・子ども2人の家族なら1回分としてちょうどよい量です。
トマトソースはホールトマト缶(400g缶)1缶が基本です。市販のパスタソース(トマト系)を代わりに使う方法もありますが、塩分が高めなので量を半分程度に抑えるのがポイントです。塩分過多に注意が必要です。
チーズはモッツァレラ一択です。スライスタイプではなく、水分を少し切ったブロックタイプ(フィオル・ディ・ラッテ)を1cm角に切って使います。加熱するとよく伸び、「電話線」と呼ばれる糸引きが楽しめます。
衣の材料は小麦粉・溶き卵・パン粉の3層構造です。
パン粉は粗いほど食感が出るというイメージがありますが、スップリの場合は細かい方が均一な衣になりモッツァレラを包む力が強くなります。これは意外なポイントです。
揚げ油はサラダ油またはひまわり油が適しています。オリーブオイルは風味が強くコストも高いため、家庭では混ぜる程度(全体の20%まで)に抑えるのが現実的です。1回の揚げ作業で必要な油量は約500ml〜800ml(深さ4cm程度)が目安です。
工程は「ご飯を味付けする → 成形する → 衣をつける → 揚げる」の4ステップです。シンプルですね。
① ご飯を味付けする
フライパンにオリーブオイル大さじ1を熱し、みじん切りの玉ねぎ(1/4個)をしんなりするまで中火で3分炒めます。ホールトマト缶を加えて木べらでつぶし、塩小さじ1/2、砂糖ひとつまみを加えて5分煮詰めます。ここに炊いたご飯2合分を加えてよく混ぜ、パルミジャーノ・レッジャーノ(すりおろし、大さじ2)を加えたら火を止めます。粗熱を取ってから冷蔵庫で30分冷やすと成形しやすくなります。
② 成形する
手を水で濡らし、ご飯を手のひらに50〜60g(直径5〜6cmのボール)程度取ります。真ん中を指で押してくぼみを作り、1cm角のモッツァレラを2〜3個入れます。周囲のご飯を閉じるように包み込み、全体を握りながら俵型(約10cm)に整えます。はがきの横幅くらいの長さが目安です。
冷やしたご飯の方が成形しやすいということですね。
③ 衣をつける
小麦粉 → 溶き卵 → パン粉の順に、各工程でしっかりとまぶします。衣が薄い部分があると揚げている最中にご飯が割れてチーズが漏れ出してしまいます。特に端の部分は丁寧に押さえながらパン粉をつけてください。
④ 揚げる
油温は170〜175℃が正解です。菜箸を入れて小さな泡がシュワシュワと出るくらいが目安です。1回に2〜3個ずつ入れ、途中でゆっくり転がしながら4〜5分揚げます。全体がきれいなキツネ色になったら取り出してOKです。
揚げ後はキッチンペーパーに立てて並べると、底面に油が溜まらず衣がサクサクのまま保てます。横に寝かせると蒸れて衣が柔らかくなりがちです。これだけ覚えておけばOKです。
cucina.jp – スップリ ローマの基本レシピ(材料・工程の参考)
基本レシピをマスターしたら、家族の好みに合わせたアレンジが楽しくなります。
子ども向け:チーズ増量+ミートソース入り
中に入れる具材をモッツァレラだけでなく、市販のミートソース(小さじ1)も一緒に包む方法です。子どもが好きな濃いめの味になり、タンパク質と野菜も自然に摂取できます。市販のミートソースを使えば追加の調理が不要なため、時短にもなります。
大人向け:カチョカヴァッロ+生ハム
チーズをカチョカヴァッロ(イタリア産の熟成チーズ)に変え、中に生ハムのかけらを加えると、塩味とうま味が増した大人向けの味わいになります。カチョカヴァッロはスーパーのチーズコーナーか輸入食材店で200g前後・600〜900円程度で入手できます。
冷凍保存するなら揚げる前
スップリは作り置き・冷凍に向いています。ただし冷凍するタイミングは揚げる前が正解です。衣までつけた状態で1個ずつラップに包み、冷凍用袋に入れて保存します。冷凍のまま170℃の油に入れ、6〜7分かけてゆっくり揚げれば完成します。
揚げた後に冷凍すると衣が油を吸ってべちゃべちゃになります。冷凍は揚げる前が原則です。
オーブン焼きバージョン(油を使わない方法)
ダイエット中の方や揚げ物が苦手な方には、オーブン焼きも選択肢です。成形したスップリ全体にオリーブオイルをスプレーし、200℃に予熱したオーブンで20〜25分焼きます。衣のサクサク感は揚げたものより控えめになりますが、カロリーを約30〜40%カットできるというメリットがあります。
この差は小さく見えますが、3個食べると合計で200kcal以上の差になります。意識しておくと得です。
実際にローマへ行ってスップリを食べてみたい、という方のために現地情報もまとめました。
ローマでスップリを食べられる有名店として「フォルノ・カンポ・デ・フィオーリ(Forno Campo de' Fiori)」があります。1890年代創業の老舗で、カンポ・デ・フィオーリ広場のすぐ隣に位置しています。毎朝焼き立てのスップリが並び、観光客だけでなくローマ市民も日常的に利用します。値段は1個1.8〜2ユーロ(2025年現在)が相場です。
ローマ中心部の観光エリアにあるレストランでスップリを前菜として頼むと、1皿(2個)で8〜12ユーロ(約1,400〜2,000円)することもあります。一方、路面のピッツェリアやテイクアウト専門店なら1個1.5〜2.5ユーロで食べられます。これは知っておくと得する情報です。
ローマ旅行に家族で行く場合、スップリを買い食いしながら歩くのは子どもも喜ぶ体験になります。ただし、揚げたてのスップリは中のモッツァレラが90℃近くになっていることがあるため、子どもに渡す前に1〜2分冷ます習慣をつけることが大切です。熱さに注意が必要です。
現地でスップリを注文するときに使えるイタリア語フレーズを覚えておくと便利です。
フレーズは3つだけ覚えれば十分です。これだけで現地での買い物がスムーズになります。
ローマのスーパーマーケット(コープやエッセルンガなど)では、冷凍スップリが4〜6個入りで2〜3ユーロ程度で販売されています。日本への持ち帰りは液体・生鮮品の規制に引っかからないため問題ありませんが、保冷が必要な点と機内持ち込みの温度管理に注意が必要です。帰国後に自宅のオーブンで焼けば、ローマの味を自宅で再現できます。
イタリア政府観光局(ENIT)公式サイト – ローマの食文化・観光情報の参考