

その独特な臭いこそ、実は旨味成分そのものです。
ソウハチガレイ(宗八カレイ)という名前を初めて聞く方も多いかもしれません。その名前の由来は、江戸時代の「総髪(ソウハツ)」という髪型を正面から見た際の形と、カレイの模様が似ていることから付けられたといわれています。地域によって呼び名が異なり、兵庫県や福井県では「エテガレイ」、島根県や山口県などの山陰地方では「キツネガレイ」とも呼ばれています。
大きいものでは体長40cm前後(はがきの長辺の約2.7倍)になるひし形の魚で、下顎が少し突き出た大きな口が特徴的です。カレイの仲間ですが、ソウハチガレイは裏向きにしても片目が見える点で通常のカレイと区別できます。
旬の時期は漁獲される海域によって大きく異なります。北海道周辺では6〜7月が旬で、山陰沿岸では2〜3月が旬のシーズンです。北海道稚内や根室、新潟の笹川流れなどが産地として知られています。
鮮魚の状態では強いぬめりと独特の臭いがあるため、スーパーの鮮魚コーナーよりも干物(一夜干し)として流通することがほとんどです。つまり干物が「本来の食べ方」なのです。皮目付近の脂に渋みのある特有の風味があり、鮮魚の段階では敬遠されがちですが、干物に加工することでその個性が「クセになる旨味」に変わります。干物好きにはたまらない一品です。
鮮魚を選ぶ際は、目が澄んでいて身の表面に透明感のあるぬめりがあり、エラが鮮やかな赤色のものを選びましょう。干物を購入するときは、色がくすんでいないもの、ヒレがきれいなものが新鮮な証拠です。
ソウハチガレイの干物は楽天市場などの通販でも350件以上の商品が出品されており、北海道産の特大サイズ3枚入りセット(350〜400g前後)などが人気を集めています。産地から直送される真空パックの冷凍干物が主流です。
参考:ソウハチカレイの特徴・旬・選び方についての詳しい解説はこちら
ソウハチガレイの干物(一夜干し)は、主婦目線でいうと「家族に食べさせたい食材」として非常に優秀な魚です。100gあたりの主な栄養成分は以下の通りです。
| 栄養成分 | 100gあたりの目安量 |
|---|---|
| 熱量(カロリー) | 約104〜117kcal |
| タンパク質 | 約18.3〜20.2g |
| 脂質 | 約2.0〜3.4g |
| 炭水化物 | 0〜Tr(ほぼゼロ) |
| 食塩相当量 | 約0.6〜1.1g |
注目すべきはタンパク質の量です。100gで約18〜20gのタンパク質が摂れます。これは鶏むね肉と同等クラスの高タンパク質です。しかも脂質は2〜3g台と非常に低く、カロリーも100kcal台に収まります。ダイエット中の方や、子どものたんぱく質補給を考えている方にも向いています。
炭水化物がほぼゼロという点もポイントです。糖質制限を意識している方にとって、干物は主菜として取り入れやすい食材といえます。
また、干しカレイにはビタミンB12が特に豊富です。ビタミンB12は神経機能を正常に保ち、貧血の予防にも関わる栄養素で、野菜や植物性食品からはほとんど摂れないため、魚から積極的に補うのが効率的です。ナイアシン(代謝に関わるビタミン)やビタミンE(抗酸化作用)も含まれています。
低カロリー・高タンパク・低糖質、これが基本です。一般的なカレイの白身魚の性質に加え、干物にすることで水分が飛んで旨味成分が濃縮されるため、少量でも満足感の高い食事になります。
参考:干しカレイの栄養成分の詳細な数値はこちらで確認できます
干しカレイの栄養成分表(食品成分表)
ソウハチガレイの干物は「焼き過ぎ」が最大の失敗原因です。焼きすぎると身が固くなりパサパサした食感になってしまいます。ここでは主婦が使いやすいフライパンとグリルそれぞれの焼き方を整理します。
グリルで焼く場合
グリルで焼く際は、まず網にサラダ油または酢を薄く塗っておくと皮が網にくっつきにくくなります。冷凍のままでも解凍してからでも焼けますが、解凍する場合は冷蔵庫に移して30分〜1時間が目安です。
白い面(身の側)を下にして中火で7〜8分焼き、その後裏返して皮面を2〜3分焼けばOKです。グリルの受け皿に水を入れておくと、温度が上がりすぎず、仕上がりがジューシーになります。
フライパンで焼く場合
フライパンの場合は、クッキングシートを敷いてから焼くのが基本です。クッキングシートがないときは、くしゃくしゃにしたアルミホイルを広げて油を塗ると代用できます。
臭いが気になる方には「ふた焼き」がおすすめです。フライパンに少量の水を垂らしてすぐにふたをすることで、水蒸気がふっくらと仕上げてくれるうえ、臭いの広がりも抑えられます。最後にふたを外して皮面を少し焼き直すと、水分が飛んでカリッと仕上がります。
さらに臭いを抑えたいときの裏ワザ
焼く直前にキッチンペーパーに料理酒を含ませて干物の表面をサッと拭くと、アルコールが臭み成分を揮発させてくれます。アルミホイルで包んで蒸し焼きにする方法も、部屋への臭い広がりを大幅に抑えられます。
皮はカリッと焼き上げて、皮ごと食べるのがおすすめです。皮にも旨味が凝縮されており、表面をしっかり焼くことで香ばしい風味が増します。これが宗八カレイの醍醐味といえるでしょう。
参考:フライパンでの干物の焼き方と臭い対策の詳細
干物はフライパンで簡単においしく焼ける!グリル不要で後片付けも便利 – 越前宝や
釣りでたくさん釣れたときや、鮮魚が安く手に入ったときに自家製の一夜干しを作れると、ぐっとお得感が増します。ソウハチガレイは特に自家製干物との相性が良い魚です。
必要なもの
- ソウハチガレイ(内臓・エラを処理したもの)
- 水 1リットル
- 塩 40〜70g(濃度4〜7%)
- 料理酒(あれば少量)
- 魚干し網または干物シート
塩水濃度の目安
塩水濃度は仕上がりの好みで調整します。干物屋さんの標準は水1リットルに塩40g(4%)です。しっかり塩気のある昔ながらの干物を作りたいなら水1リットルに塩70g(7%)が目安です。ちょうど海水の塩分濃度(約3.5%)より濃いめにするのがポイントです。初めての方は5%(水1リットルに塩50g)から試してみてください。
手順
冷蔵庫干しが衛生的でおすすめです。室内の風通しが悪い日は、扇風機で風を当てながら干すと仕上がりがしっとりふっくらし、焼き上がりもきれいになります。夏場は特に冷蔵庫での乾燥が安心です。
一夜干しの特徴は食感のやわらかさです。長時間しっかり乾燥させた干物よりも水分が多く残り、焼いたときにふっくらジューシーに仕上がります。
できた干物は1枚ずつラップで密閉して冷凍保存すれば、最長3ヶ月ほど楽しめます。これは使えそうです。
参考:干物屋さんが教える干物の作り方・塩分濃度の詳細
干物屋さんの干物の作り方!魚の捌き方から塩分濃度まで解説します – 越前宝や
ソウハチガレイの干物を美味しく長持ちさせるには、保存方法が重要です。間違った保存や解凍をすると、せっかくの旨味が流れ出てしまいます。
冷蔵保存の場合
解凍後や購入した冷蔵品は、冷蔵庫で1〜2日以内に食べ切るのが原則です。冷蔵でも日を置くと表面が乾燥し、臭いが出やすくなります。すぐに食べない場合は、必ず冷凍に切り替えましょう。
冷凍保存の場合
通販などで届いた冷凍の宗八カレイ干物は、家庭用冷凍庫(-18℃以下)で保存できます。メーカーや産地によっては冷凍保存で3〜6ヶ月と記載されていますが、家庭用冷凍庫は開け閉めのたびに温度が上がるため、到着後1ヶ月以内を目安に食べ切るのがおすすめです。
解凍のコツ
冷凍干物は解凍せず、凍ったまま直接焼くのがベストです。先に解凍してしまうと、旨味成分がドリップ(水分)として流れ出てしまい、味が落ちます。凍ったままフライパンで焼く場合は、中火で身面を下にして10分ほど、焼き色が付いたら裏返し、酒と水(各大さじ1程度)を加えてふたをして4分ほど蒸し焼きにすると、ふっくらジューシーに仕上がります。
急いでいるときは流水解凍も可能です。フリーザーバッグに入ったまま流水に当てると7〜10分程度で解凍できます。電子レンジ解凍や常温解凍は品質が落ちやすいのでおすすめできません。
冷凍したまま焼く、これが旨味を逃さない鉄則です。
参考:干物の冷凍保存方法・賞味期限についての解説
干物は日持ちしない?賞味期限や冷凍保存のコツを分かりやすく解説 – いずもあん
ソウハチガレイの干物というと「焼くだけ」というイメージを持たれがちです。しかし実は、干物ならではの旨味を生かしたアレンジ料理がいくつかあります。主婦の日常メニューに取り入れやすいものを紹介します。
フライパンソテー(洋風アレンジ)
干物のクセのある香りは、オリーブオイルとニンニクとの相性が意外なほど良いです。フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて弱火で香りを出したら、宗八カレイ一夜干しをソテーします。表面を焼いたら裏返し、シイタケやシメジなどきのこ類を加えて炒め合わせると、香りが絶妙な洋風の一皿になります。白ワインに合う酒肴にもなります。
ほぐし身ごはんや混ぜご飯
焼き上げた干物の身をほぐし、ご飯に混ぜるだけでもシンプルな旨味が楽しめます。大葉や炒りごまを加えると、風味豊かな混ぜご飯になります。お弁当のおにぎりの具にも向いています。
唐揚げ(フライ)にする
干物を唐揚げにするのもおすすめの食べ方です。臭みが強いソウハチガレイは、生姜などの香味野菜を使った下味をしっかりつけることで、揚げると香ばしく食べやすくなります。薄い魚なので火通りも早く、揚げ時間は比較的短くて済みます。
卵とじ・炒め物
身をほぐして卵とじにする、または野菜と炒め合わせるのも手軽なアレンジです。干物の塩気がすでについているので、余分な調味料は不要な場合がほとんどです。塩分のあわせ過ぎに注意すれば問題ありません。
ソウハチガレイ干物の独特の香りは「加熱調理」でこそ映える個性です。焼く・揚げる・炒めるなど、火を通す調理法なら幅広く活用できます。煮付けには臭みが強く出やすいため、初心者には塩焼きかソテーから試すのがおすすめです。
なお、ごく新鮮な鮮魚が手に入った際は刺身でも食べられますが、市場には干物がほとんどで鮮魚の流通量は少なく、関東ではとくに認知度が低い魚でもあります。干物での提供が、ソウハチガレイ本来の旨味を最大限引き出す「王道」といえます。
参考:宗八カレイの干物の食べ方とアレンジレシピのヒント
宗八かれい一夜干しキノコガーリックソテー – 佐伯屋