

アンチョビ入りパスタにチーズをかけると台無しになります。
プッタネスカをご存じない方でも、「ジョジョの奇妙な冒険」というマンガ作品を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。荒木飛呂彦さん原作のこの人気漫画、第4部「ダイヤモンドは砕けない」の第33巻に「イタリア料理を食べに行こう」という印象的なエピソードがあります。その回に登場するのが、スタンド使いのイタリア人シェフ・トニオ・トラサルディーです。
トニオは故郷ナポリの名物料理を提供するレストランを杜王町で経営しており、客の体調に合わせて料理を決めるという独特のスタイルで知られています。彼のスタンド「パール・ジャム」は、プチトマトのような小さな姿をしており、料理の中に潜んで食べた人の身体の不調を修復するという能力を持っています。主人公の友人・虹村億泰がこの料理を食べると、虫歯が全て健康な歯に生え変わるという描写があり、読者に強烈な印象を与えました。
そのコース料理の「プリモ・ピアット(第一の皿)」として出されたのが、今回のテーマであるプッタネスカ(娼婦風スパゲティ)です。作中では「あまりにも忙しい娼婦がてきとーに作ったらうまかったというのがこの名の起源(らしい)」とも説明されており、読者の記憶に残る一皿となっています。
漫画の発行部数は累計1億2000万部を超えるジョジョシリーズ。そのグルメ描写は「再現したい!」という強い動機を読者に与えており、プッタネスカも例外ではありません。これが「プッタネスカ ジョジョ」というキーワードで検索する人が増えた背景です。
プッタネスカという名前を初めて見て、「なんだか独特な響き…」と感じた方も多いはずです。イタリア語で「puttana(プッターナ)」は「娼婦」を意味するスラングで、そこから派生した「Puttanesca」が「娼婦風」となります。
その名前の由来については、大きく分けて5つの説があります。
個人的に料理ファンの間で人気が高いのは「刺激的な味わいが娼婦を思わせる」説です。アンチョビの塩気、ケーパーの酸味、唐辛子の辛さ、トマトの甘酸っぱさが複雑に絡み合う、大人の味わいというイメージにぴったりです。
なお、プッタネスカの発祥はイタリアのナポリ湾に浮かぶ火山島「イスキア島」とされており、誕生は1950年代以降という比較的新しい料理です。長い歴史を持つように思われがちですが、実は戦後の庶民料理が起源という意外な事実があります。
ジョジョの原作に登場するプッタネスカは、以下の食材が描かれています。
| 食材 | 役割 | 入手難度 |
|---|---|---|
| 🍅 プチトマト(または缶トマト) | ソースのベース・甘みと酸味 | ★☆☆ 簡単 |
| 🧄 にんにく | 香り・風味の土台 | ★☆☆ 簡単 |
| 🐟 アンチョビ(フィレ) | うまみ・塩気のコア | ★★☆ やや専門店 |
| 🫒 ブラックオリーブ(種なし) | ほのかな苦みと食感 | ★★☆ 大型スーパーで入手可 |
| 🌶️ 唐辛子(鷹の爪) | 刺激的な辛さ | ★☆☆ 簡単 |
| 🌿 ケーパー(酢漬け) | 酸味と独特の風味 | ★★☆ イオン・カルディで入手可 |
| 🍝 スパゲッティ(1.7〜1.9mm) | 本体パスタ | ★☆☆ 簡単 |
ケーパーは「家庭にはない食材」として省略されているブログも多く見かけます。実際、カルディやイオンの輸入食品コーナーで瓶詰め(約300〜400円)が入手できますし、一度買えばかなり長期間保存できます。本場の味を目指すなら、ケーパーは省略しないことをおすすめします。
ここで大切な注意点があります。
プッタネスカにはチーズをかけないというルールです。原作のジョジョでも「にんにくを使ったパスタにはチーズを普通かけないがこのパスタは例外でかけて食べる」と補足されていますが、実は本場イタリアでは、魚介系の食材を使ったパスタにチーズはかけないというルールが厳然と存在します。アンチョビはれっきとした魚介食材ですから、パルメザンチーズをかけると風味が崩れてしまうのです。ジョジョ再現という意味でチーズをかけるのは「邪道」であることを覚えておきましょう。
代わりに使うと本格的に仕上がるのが炒めたパン粉(ブリーチェ)です。オリーブオイルで軽く炒めたパン粉をトッピングすると、食感のアクセントになり、チーズなしでも満足感が高まります。これが原則です。
それでは実際に、家庭で作れるジョジョ版プッタネスカのレシピを紹介します。調理時間は約30分です。
【材料(2人分)】
【下ごしらえ】
最初の工程はプチトマトの湯むきです。包丁でヘタに十字の切れ目を入れてから沸騰したお湯に10秒ほど入れ、すぐ氷水に取ると皮がつるんとむけます。これは手間に感じるかもしれませんが、仕上がりの口当たりが格段に変わるのでぜひ試してみてください。缶トマトを使う場合は、この工程は省略できます。
にんにくは皮をむいて包丁の腹で軽く叩き潰し(またはみじん切り)、唐辛子は半分に切って中の種を取り除いておきます。種を除くと辛みが少し和らぎます。
【ソースの作り方】
フライパンにオリーブオイルを大さじ2ほど入れ、にんにくと唐辛子を加えて弱火でじっくり炒めます。焦がさないことが大切です。ここが香りの土台になります。
にんにくが薄く色づいてきたらアンチョビを加え、木べらで崩すようにしてオイルにしっかり溶かし込みます。アンチョビが溶けたら、湯むきして粗く潰したプチトマト(または缶トマト)を加えて中火に上げます。
ブラックオリーブ(半分にカット)とケーパーを加え、全体をさっくり混ぜながら5〜8分ほど煮ます。トマトを煮詰めすぎないことがポイントです。煮詰めると整いすぎた味になり、プッタネスカ特有の「荒々しさ」が失われてしまいます。
【パスタを茹でる】
大きな鍋に湯1リットルあたり10g強の塩を入れてスパゲッティを茹でます。表示茹で時間より1〜2分早く上げ、ソースと絡める時間を作りましょう。茹で上がる直前に茹で汁をお玉1杯だけソースに加えておくと、乳化してソースが麺に絡みやすくなります。
【仕上げ】
茹でたパスタをソースに投入し、フライパンを揺さぶりながら手早くあえます。器に盛り、イタリアンパセリを散らして完成です。チーズはかけず、炒めたパン粉があればトッピングします。最後に良質なオリーブオイルをひと回しかけると、風味がぐっと引き立ちます。
実際に「作ってみたけど味がぼやけた」「なんかお店の味と違う」という感想を持った方も多いはずです。プッタネスカを美味しく再現するには、いくつかのポイントを外さないことが大切です。
❌ ミス1:アンチョビをきちんと溶かしていない
アンチョビはプッタネスカのうまみの核心です。「魚が苦手…」と少量しか使わなかったり、形が残ったまま加熱を止めてしまうと、塩気は出るもののうまみが不足します。弱火〜中火でじっくり炒め、形が完全に消えるまで溶かし込むことで、オイル全体にうまみが広がります。これが基本です。
❌ ミス2:ケーパーをすぐ入れすぎる
ケーパーは塩漬けタイプの場合、そのまま使うと塩辛くなりすぎます。使う前に流水で軽くすすぎ、10分ほど水に浸して塩抜きしておきましょう。酢漬けタイプはその工程は不要ですが、液をよく切ってから使います。塩加減に注意すれば問題ありません。
❌ ミス3:トマトを煮詰めすぎる
「しっかり煮込んだほうが美味しいはず」と長時間煮詰めるのはNGです。プッタネスカはソースがある程度「荒々しい」のが魅力。トマトが崩れ始めたら、あとはパスタを絡める段階に進みましょう。プチトマトを使う場合は特に、2回に分けて入れる(最初に半量だけ煮てソース状にし、残りは後から加えてフレッシュ感を残す)テクニックが有効です。
パスタの太さに関しても一言。プッタネスカのような濃厚で具だくさんのソースには、1.7〜1.9mmのスパゲッティが最もよく合います。細すぎると麺がソースに負け、太すぎると絡みにくくなります。また、フジッリ(らせん状ショートパスタ)もソースが絡みやすく、非常によく合います。
プッタネスカの本格レシピとバリエーション(pasta-bible.com)
せっかくプッタネスカを作るなら、ジョジョファンとして「パール・ジャム感」も演出したいところです。トニオのスタンド「パール・ジャム」は料理の中に潜んで食べた人の不調を修復するという能力。つまり、「この料理は食べると体が元気になる」という設定です。
実は、プッタネスカの食材は栄養の観点でも非常に優れています。
これは使えそうです。「パール・ジャム」のように食べる人の体に嬉しい作用をもたらす食材が揃っています。
さらに「ジョジョ感」を高めるアレンジとしては、トマトにシシリアンルージュ(イタリア・シチリア島原産の品種)を使う方法があります。水分が少なく加熱後のうまみが濃厚なため、ソースの味が格段に深まります。大型スーパーや産直市場で見かけたら、ぜひ試してみてください。
もう一つ、ジョジョの原作に「にんにくを使ったパスタにはチーズをかけないがこのパスタは例外でかけて食べる」という注記がありますが、先述の通り本場流は炒めたパン粉が正解です。フライパンにオリーブオイル少々を引き、パン粉をきつね色になるまで炒めたものをトッピングするだけ。カリカリの食感が加わり、ジョジョのトニオさながらのひと手間感が出ます。
家族で食べる場合、辛みの唐辛子は量を調整すれば子どもにも食べやすくなります。アンチョビも少量にして塩加減をやさしくすれば、お子さんも一緒に「ジョジョごはん」を楽しめます。