

炒めるだけではマスタケで腹痛になることがあります。
マスタケは、秋を代表する野生キノコのひとつです。名前の由来は、傘の色が魚のマス(鱒)の身に似たサーモンピンク色をしていることから。広葉樹や針葉樹の倒木、枯れた老木に扇型の傘が重なり合って群生し、遠くからでも鮮やかな色が目を引きます。
まず最初に押さえておきたい大原則があります。マスタケは必ず加熱して食べることです。生食すると吐き気・腹痛などの中毒症状を引き起こすことが報告されており、これは多くの食べ方情報サイトでも共通して記載されているルールです。
そして、ここが多くの人が見落としがちなポイントです。「火を通せばOK」と思って軽くフライパンで炒めただけでは、加熱が不足してしまう可能性があります。実際に、きのこ料理に詳しい専門家のレポートでは「炒めるだけでは不十分で、煮込んだり炊き込みご飯にしないといけない」と指摘されています。つまり、揚げ物(フライ・天ぷら)や煮物・炊き込みご飯のように、中心までしっかり火が通る調理法を選ぶことが大切です。
また、近年は微量の毒成分が確認されているとの報告もあるため、一度にたくさん食べるのは避けたほうが無難です。初めて食べるときは少量から試し、体に異変がないかを確認するのが安心です。これが基本です。
さらに、外国では毒キノコ扱いとされているケースが多いことも覚えておいてください。日本では古来から食用とされてきた歴史がありますが(江戸時代の紀行家・菅江真澄の遊覧記にも朝食として登場します)、だからといって過信は禁物です。食べられる「幼菌のうち」だけが対象であること、そして必ず十分な加熱を行うことが最低限のルールです。
あきたの森づくり活動サポートセンター|マスタケの採り方・料理・保存法について詳しく解説
せっかくマスタケを手に入れても、下処理を間違えると食感が落ちたり、体調不良の原因になることがあります。正しい下処理の手順を把握しておきましょう。
まず大前提として、食べられるのは幼菌のみです。見分け方のポイントは「指で押したとき、耳たぶくらいの柔らかさ」があること。成長すると傘が白っぽくなり、カチカチに固くなります。大きいものは30cm近くになることもありますが、固くなったものはパサつきが強く食べるには不向きです。耳たぶの柔らかさが条件です。
色の目安としては、サーモンピンク〜オレンジ色をした状態が食べごろのサイン。白っぽくなってきたら成長しすぎのサインなので、採らないようにしましょう。
下処理の手順はシンプルです。まず採ってきたマスタケをざっと洗い、一口大に手で裂くか包丁で切り分けます。次に塩水(水1リットルに対して塩大さじ1程度)に15〜20分ほど漬けると、中に潜んでいる小虫を追い出せます。これが虫抜きのコツです。
その後、沸騰したお湯でしっかり下茹でします。再度沸騰したらザルに上げ、冷水にとって洗い、水気をキッチンペーパーでしっかり拭き取ります。この下茹での工程を省かず行うことで、毒成分を軽減しながら、仕上がりの食感も安定します。下茹でが基本です。
マスタケはスポンジ状の構造をしているため、周りの味を吸収しやすい性質を持っています。下茹で後に水気をしっかり取ることで、揚げ物にしたときにカラリと仕上がり、炒め物にしたときもべちゃつきを防げます。この一手間が完成度を左右します。
マスタケの食べ方の中で、最も人気が高く、また食べやすいのが揚げ物です。特にフライと唐揚げは「鶏肉の味がする」と感じる人が続出するほど、驚くほど鶏肉に似た食感と風味が楽しめます。
🍗 マスタケの唐揚げ(ナゲット風)の作り方
| 材料 | 量の目安 |
|------|---------|
| マスタケ(幼菌・下処理済み) | 適量 |
| おろしニンニク | 小さじ1 |
| 醤油・料理酒 | 各大さじ1 |
| 片栗粉 | 適量 |
| 揚げ油 | 適量 |
- 下処理済みのマスタケを一口大に切る
- ニンニク・醤油・酒を1:1で混ぜたタレに30分〜1時間漬け込む
- 水気を切って片栗粉をしっかりまぶす
- 180℃の油でカラッと揚げる(揚げ時間の目安:2〜3分)
食べてみると、ムチっとしたしっかりとした食感に油の旨みが加わり、「薄切りにした鶏むね肉のフライ」と言われたら信じてしまうほどの完成度です。これは使えそうです。バーベキューソースやシラチャーソースとの相性が特に良く、普通のチキンナゲットソースをかけるとほぼマクドナルドのナゲットです。
🌿 天ぷらにする場合は、下茹でしたマスタケを薄切りにして天ぷら衣をつけ、160〜170℃の油でじっくり揚げます。揚げ立てに中濃ソースをかけると、「これが本当にキノコ?」と驚く美味しさです。天ぷら粉を使うと衣が均一につきやすくサクサクに仕上がります。
揚げ物調理は中心温度が上がりやすく、加熱の点でも安心感があります。マスタケ初挑戦の方には揚げ物から試すのがおすすめです。
おいしい山菜&きのこ図鑑|マスタケのフライ レシピと実食レポート
揚げ物以外にも、マスタケはバター炒めや炊き込みご飯との相性が抜群です。地元・秋田の山村では「煮物に入れるとマイタケより美味しくなる」と昔から言い伝えられていたほど、煮込み系の料理でも高い評価を得てきました。
🧈 バター炒めの作り方
マスタケを食べやすい大きさに裂いてから、バターを熱したフライパンに入れます。中火〜強火でしっかりと炒め、醤油を少量回しかけて香りをつけます。ベーコンや玉ねぎと一緒に炒めると旨みがさらにアップします。仕上げに黒コショウや刻みネギを散らせば洋風にもなります。
バター炒めは香りが立ちやすいため、食欲をそそる仕上がりになります。ただし「炒めるだけ」で調理を終わらせると加熱が不十分になりやすいため、最低でも5〜7分程度はしっかりと炒め続けることが大切です。事前に下茹でを済ませておけば加熱時間の不安が減るため、特に初めて作る方には下茹で後に炒める方法をおすすめします。下茹での下処理を済ませてからが原則です。
🍚 炊き込みご飯の作り方
炊き込みご飯は、マスタケの食べ方の中でも最も「加熱が十分になる」調理法のひとつです。下茹でしたマスタケを手で裂いて炊飯器に入れ、醤油・酒・だし汁を加えて炊くだけで完成します。
| 材料(2合分) | 量の目安 |
|------|---------|
| 米 | 2合 |
| マスタケ(下処理済み) | 100〜150g |
| 醤油 | 大さじ2 |
| 酒 | 大さじ1 |
| だし汁(または鶏がらスープの素) | 適量 |
| バター(仕上げ用) | 10g |
炊き上がったらバターを加えて全体を混ぜると、コクと香りが一段とアップします。加熱が不充分だと腹痛が起きることがあるマスタケですが、炊き込みご飯は中まで火が通りやすく、安全面でも安心できる調理法です。地元の産直食堂では昔から炊き込みご飯として提供されてきた伝統の味です。
マスタケは生のままでの長期保存は難しいキノコです。採ったら早めに調理するか、正しい方法で保存しましょう。保存法は大きく分けて「冷凍保存」「塩漬け」「味噌漬け」の3種類があります。
❄️ 冷凍保存
最も手軽な方法が冷凍保存です。下処理を済ませ、沸騰したお湯でサッと茹でてから冷ましてラップで包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫へ。保存期間の目安は約1〜2ヶ月です。調理するときは凍ったまま鍋やフライパンに投入できます。
🧂 塩漬け
秋田の山村で古くから行われてきた保存法が塩漬けです。下茹でしたマスタケを塩でしっかり漬け込んで数ヶ月間保存し、食べる前に塩出し(塩抜き)してから料理に使います。いったん塩漬けにして塩出しした後のマスタケは、出汁の味がしみ込みやすく「美味しいキノコに変身する」と言われています。意外ですね。塩漬けすることで保存性が大幅に上がり、長期の保存食として重宝します。
🫙 味噌漬け
秋田では昔から代表的な保存食として親しまれてきたのが味噌漬けです。下茹でしたマスタケを手で食べやすい大きさに裂き、水気を切ってから味噌に漬け込みます。漬け込む期間は最低でも半日以上、3〜4日目が最も美味しいと言われています。長期保存も可能で、食べるときに取り出してそのまま副菜として食卓に並べられます。
いずれの保存方法でも、生のまま保存するのはNGです。必ず下茹でしてから保存してください。生のままだと傷みが早く、毒成分が残ったままになります。下茹でしてからが条件です。
山形鶴岡大鳥てんご|マスタケの保存方法(塩漬け・冷凍)と食べ方の解説
ここからは、検索上位の記事ではあまり語られていない、マスタケならではの独自視点の活用法をご紹介します。
マスタケは、海外では「チキンマッシュルーム(Chicken Mushroom)」と呼ばれています。アメリカのWikipediaでは「チキンやロブスターの味に似ており、ソテーが美味しい」とも記されています。つまり、鶏肉の代替食材として非常に優れたポテンシャルを持つキノコです。
特に注目したいのが、ベジタリアンやヘルシー志向の食生活との相性です。マスタケは脂質がほとんどなく、しっかりとした肉質を持つため、唐揚げやフライに仕立てると鶏肉と見分けがつかないほどの仕上がりになります。「お肉を減らしたいけど食べ応えも欲しい」という場面で、マスタケは非常に頼もしい存在になります。
また、スポンジ状の組織を活かした「マスタケのクリームソースパスタ」も試してみる価値があります。細切りにしたマスタケをバターでソテーし、牛乳で煮詰めてミキサーにかけると、コクのあるキノコクリームソースが完成します。パスタや米料理のソースとして使うのが現代的な活用法です。
さらに、ニンニク醤油漬けにしたマスタケをバーベキューで焼くと、鶏肉そっくりのジューシーな味わいになります。家族でのアウトドアやBBQのシーンで「これ何の肉?」と聞かれるほどの完成度になることも。これはまさに「食材クイズ」としても楽しめるユニークな使い方です。
ただし、どんな調理法であっても、食べすぎは避けることと十分な加熱は忘れずに守ってください。これだけは例外なく必須です。初めて食べるときは数口程度から始め、体に異変がなければ次から量を増やすというアプローチが安全です。
マスタケは「見た目がキノコだから地味」と思われがちですが、使いこなせば食卓の主役になれる食材です。鶏肉のような食感と、和・洋・どちらの味付けにも対応できる懐の深さは、日々の料理のバリエーションを広げてくれます。
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