

甘酒で漬けたべったら漬けは、大根100gあたりの糖質が大根そのものの約4倍になります。
べったら漬けは、江戸時代中期に生まれたとされる東京発祥の大根漬けです。塩で下漬けした生の大根を、甘酒(米麹を発酵させたもの)に漬け込んで作るのが本来のスタイルで、その名前の由来は漬けた大根の表面がベタベタとしていることからきています。江戸の商人たちが縄で束ねたべったら漬けを手に提げ、「べったら、べったら!」とはやしながら売り歩いていたという記録も残っており、庶民にも将軍にも愛された漬け物です。実は江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜の好物だったともいわれています。
味の決め手は、なんといっても「甘酒」の自然な甘みです。三五八漬けのように米麹をそのまま使うレシピとは違い、べったら漬けは米麹を甘酒として発酵させてから漬け床に使います。この一手間がぽりぽりとした食感と品のある甘さを生み出す秘訣です。
江戸時代は砂糖が高価で庶民にとって甘みは貴重なものでした。一方、甘酒はすでに庶民に親しまれていた飲み物で、塩漬け大根を甘酒に漬けて甘くするという発想は当時の知恵から生まれたといえます。毎年10月19日・20日に東京・日本橋宝田恵比寿神社で開かれる「べったら市」は、江戸時代から続く秋の風物詩として今も続いています。
現代では市販のべったら漬けも多く出回っていますが、甘味料や保存料が使われているものも少なくありません。甘酒で手作りすることで添加物を気にせず、自分好みの甘さに調整できるのが一番の魅力です。
| 漬け物の種類 | 主な漬け床 | 食感の特徴 | 甘みの有無 |
|---|---|---|---|
| べったら漬け | 甘酒(米麹を発酵) | シャキシャキ・ポリポリ | あり(自然な甘み) |
| 沢庵 | ぬか・塩 | 硬め・歯ごたえ強 | ほぼなし |
| 浅漬け | 塩のみ | みずみずしい・柔らか | なし |
| 三五八漬け | 塩・米・米麹(3:5:8) | しっかりした食感 | ほぼなし(うまみあり) |
べったら漬けは「甘い漬け物」として他の大根漬けと明確に差別化されていることがわかります。浅漬けとの違いは甘みと発酵の深さ、沢庵との違いは下処理(沢庵は大根を干す)と漬け床にあります。つまり甘酒が主役です。
甘酒べったら漬けに必要な材料はとてもシンプルです。大根と塩、そして甘酒の3つが基本で、お好みで昆布・鷹の爪・ゆずの皮を加えると風味が増します。材料が少ないぶん、それぞれの質が仕上がりを大きく左右します。
下漬けは「塩分濃度3%」が原則です。この工程で大根の余分な水分を抜きつつ、適度に塩気を染み込ませることが目的になります。ポリ袋に大根と塩を入れてよく揉み込み、大根の重量の2倍以上の重しをのせて1〜2日置きます。ペットボトルに水を入れたものでも十分代用できます。
重しを使う理由は、浸透圧で水分を効率よく引き出すためです。重しなしでは大根の中まで塩が行き渡りにくく、べったら漬け特有のポリポリとした食感が出にくくなります。重しはしっかりかけることが条件です。
また、下漬けをする場所の温度も重要です。塩分濃度3%は塩っぱくならないメリットがある一方、腐敗リスクも高まります。暖かい時期に作る場合は必ず冷蔵庫に入れてください。冬の寒い時期は室温10℃以下の場所でも問題ありません。
下漬けが終わったら、いよいよ本漬けのステップです。ここで甘酒の選び方を間違えると、せっかくの手間が水の泡になります。この点が最も重要といっても過言ではありません。
下漬けした大根は、ポリ袋から取り出してキッチンペーパーで塩水をしっかり拭き取ります。水で洗い流す必要はありません。洗ってしまうと折角染み込んだ塩気まで落ちてしまうので注意が必要です。
拭き取った大根を新しいジッパー付き保存袋に入れ、濃縮タイプの甘酒を加えてよく揉み込みます。空気を抜いてチャックをしっかり閉め、冷蔵庫で2日以上置けば完成です。
甘酒の選び方について、特に注意したいのが「濃縮タイプか否か」という点です。市販の甘酒には大きく2種類あります。
大根から漬け込んだ後も水分がさらに出てくるため、漬け上がりに甘さが物足りないと感じたら、漬け床の甘酒ごと大根にかけて食べるのがおすすめです。これは「追い甘酒」とも呼ばれる食べ方で、甘さをプラスしながら甘酒の栄養も摂れる一石二鳥の方法です。
甘さをもう少し加えたい場合は、砂糖を大さじ1程度追加するか、みりんシロップ(本みりんを半量になるまで煮詰めたもの)を大さじ2ほど加えると風味豊かになります。逆に甘さを抑えたい主婦の方にとって、甘酒だけで漬ける方法はメリットが大きいです。市販品に多い砂糖や水あめを不使用にでき、自然な甘さに仕上がります。
本漬けの時間の目安は以下の通りです。大根の厚さで調整しましょう。
| 大根の切り方 | 本漬けの目安時間 | 食感の特徴 |
|---|---|---|
| 薄切り(3〜5mm) | 30分〜数時間 | 柔らかめ・即席向き |
| いちょう切り(6〜7mm) | 半日〜1日 | ポリポリ食感・バランスが良い |
| 縦半分の大きめカット | 2日以上 | しっかり食感・本格的な味わい |
急いで作りたい場合は薄切りが有効です。逆に「本格的なシャキシャキ感」を楽しみたいなら縦半分のままや厚めのいちょう切りで2日以上漬けるのが基本です。
べったら漬けは「発酵食品」として腸内環境への効果が期待できる食べ物です。ただし、健康食として毎日食べるなら気をつけたいポイントもあります。
甘酒に使われる米麹には、腸内の善玉菌を増やす麹菌と、消化を助ける消化酵素が含まれています。べったら漬けを食べることで便秘解消の効果も期待できるといわれています。また、大根自体にも消化を助ける酵素「ジアスターゼ」が含まれているため、腸内環境の改善をサポートする食材の組み合わせといえます。
さらに甘酒の甘みの成分は「ぶどう糖」です。砂糖と違いすでに最も単純な形まで分解されているため体への吸収が早く、疲労回復に向いています。「飲む点滴」とも呼ばれるゆえんです。
一方で、食べ過ぎには注意が必要です。大根そのものの糖質量は100gあたり約2.8gですが、べったら漬けにすると1本あたり(200g換算)の糖質量は約24.4gと、なんと4倍近くまで跳ね上がります。東京ドーム5つ分…とまではいいませんが、数字で見ると意外と大きな変化です。
カロリーも同様で、大根1本分(200g)が約36kcalなのに対し、べったら漬けにすると約114kcal程度になります。大根そのものの約3倍のカロリーになるということです。
糖質が気になる場面では、次のような工夫が有効です。
なお、高血圧の方は塩分量にも注意が必要です。下漬けで大根の重量の3%の塩を使うため、食塩相当量は市販品で100gあたり約2.0g程度あります。塩分制限をしている方は、下漬けの塩を2%程度に減らしたり、食べる量を控えたりする工夫をしてみてください。
べったら漬けの栄養・効果効能・保存方法などをまとめた詳しい解説(マイナビ農業)
手作りべったら漬けの面白さは、食べ方と漬け床のどちらにも工夫の余地があるところです。定番の食べ方以外に、少しのアレンジで食卓が一気に豊かになります。
まず仕上がったべったら漬けのアレンジです。ポリポリとした食感を活かしながら、様々な食べ方ができます。
次に、漬け終わった漬け床の活用法です。べったら漬けを作ったあとの甘酒漬け床は、甘みに塩気と大根のエキスが溶け込んだ「うまみ液」です。捨てるのはもったいないです。
こうした「二次利用」を考えると、作る量を少し多めにしておくのも賢い選択です。漬け床のまま冷蔵庫で保存すれば数日は使えるので、作った週のうちに活用するとよいでしょう。
保存方法について最後に整理しておきます。完成したべったら漬けは必ず冷蔵庫(0〜10℃程度)で保存してください。甘酒に漬けたままの状態で保存袋や密閉容器に入れておくと、冷蔵で1週間〜10日間は保存できます。室内の暖かい場所に置くと発酵が進みすぎて酸味が出てきてしまうため注意が必要です。また、冷凍保存はNGです。大根は水分が多い野菜のため、冷凍すると解凍後に食感が大きく損なわれてしまいます。これだけは覚えておけばOKです。
麹甘酒のみで作るべったら漬けの詳しい手順・ポイント(麹の仲間たち)