とちの実 食べ方/レシピの下処理のトチの栃の調理法

とちの実 食べ方/レシピの下処理のトチの栃の調理法

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とちの実の食べ方

とちの実の食べ方

栃の実の基本情報
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栃の実とは

トチノキ科トチノキ属の落葉樹の実で、見た目は栗に似ていますが強いアクを持ち、そのままでは食べられません。

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主な食べ方

アク抜き後、栃餅や栃の実煎餅、栃の実茶などに加工して食べられます。

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歴史と文化

縄文時代から食用とされ、飢饉の際の救荒食としても重要な役割を果たしてきました。

とちの実って何?

 

 

とちの実?なにそれ?

 

 

絵が独特な絵本として有名な「モチモチの木」のモデルが栃の木(とちのき)。栃の木になる実が「とちの実」というわけです。

 


モチモチの木

 

「ほっぺたが落ちるほどウマイ」と本の中で言われていますが、今はあまり出回っていません。なぜ?

 

実は、収穫時期が限られている上に、食べられるようにするためのアク抜きがめちゃめちゃ大変。そのままだと渋くて食べられないんですね。見た目もクリっぽいし、渋い栗という感じの栃の実。

 

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とちの実の特徴と栄養価

栃の実はトチノキ科トチノキ属の落葉樹の実で、外見は栗に似ていますが、そのままでは食べられないほど強いアクを持っています。このアクの正体は主にサポニンやタンニンといった成分で、これらが栃の実特有の苦みや渋みを生み出しています。

 

栄養面では、100gあたり約161kcalのエネルギーを持ち、炭水化物を主成分としながらも、タンパク質や脂質、さらにはカリウム、銅、マンガンなどのミネラルも豊富に含んでいます。特に注目すべきは、栃の実に含まれる天然の生理活性物質で、これには肌のキメを整える作用があるとされています。

 

古くから食用として重宝されてきた栃の実ですが、その強いアクゆえに、適切な処理をしないと食べられません。しかし、このアクの成分であるポリフェノールには高い抗酸化作用があり、アンチエイジング効果が期待できるという側面もあります。

 

栃の実は縄文時代から食べられていたという歴史があり、特に飢饉の時代には貴重な食料源として人々の命を支えてきました。現代では、その手間のかかる加工過程から食べる機会は減っていますが、伝統食としての価値は今なお高く評価されています。

 

とちの実のアク抜きの方法と手順

栃の実を食べるためには、徹底的なアク抜き処理が必要です。伝統的なアク抜きの方法は複数の工程を経て行われ、時間と手間がかかりますが、その過程は先人たちの知恵が詰まった貴重な食文化でもあります。

 

まず、栃の実の採取は9月から10月頃に行います。落下した実を集め、虫が入っていることもあるため、一晩水に浸けてから天日で十分に乾燥させます。この乾燥過程は保存のためにも重要です。

 

アク抜きの基本的な手順は以下の通りです。

 

 

  1. 水浸け処理: ボウルや大きな鍋に栃の実を入れ、水に2~3日間浸します。この間、定期的に水を交換します。
  2. 熱湯処理: 熱湯に栃の実を浸し、一晩置きます。
  3. 皮むき: 熱湯処理で柔らかくなった栃の実の皮を剥きます。千枚通しや金槌などの道具を使うと作業がしやすくなります。
  4. 水さらし: 皮を剥いた実を1週間から2週間程度、水にさらします。理想的には流水で行い、難しい場合はまめに水を交換します。この過程で大量の泡(アク)が出てきます。
  5. 熱湯浸け: 水さらしした栃の実に熱湯をかけて1時間以上置きます。
  6. 灰まぶし: 栃の実を容器に入れ、同量から2倍程度の木灰(楢灰など)をまぶします。熱湯を注いで全体をよく混ぜ、蓋をして1~3日間浸けておきます。
  7. 最終水さらし: 灰を洗い落とし、再度水に一晩さらします。この段階で泡(アク)は出なくなり、栃の実は黄色っぽく変色しています。

家庭で行う簡易的なアク抜き方法としては、重曹を使う方法もあります。たっぷりのぬるま湯に重曹を限界まで溶かし、栃の実を2日間浸けた後、よく洗って水にさらす方法です。ただし、鍋の材質によっては変質する可能性があるため注意が必要です。

 

アク抜きが完了した栃の実は、そのまま食べるとまだ舌にビリビリとした刺激を感じることがありますが、他の食材と混ぜ合わせることで美味しく食べられるようになります。

 

とちの実を使った栃餅の作り方と保存方法

栃の実の代表的な食べ方として知られる「栃(とちもち)」は、アク抜きした栃の実ともち米を組み合わせた伝統的な食品です。その作り方と保存方法について詳しく見ていきましょう。

 

【栃餅の基本的な作り方】
材料(4人分の目安):

  • アク抜きした栃の実: 650g
  • もち米: 1升(約1.4kg)
  • 小豆あん(お好みで): 適量

手順:

  1. アク抜きした栃の実を準備します。

     

  2. もち米を水に浸し、水気を切ります。

     

  3. 蒸し器に栃の実ともち米を層状に重ねて入れます。栃の実を下に敷き、その上にもち米を置くのが一般的です。

     

  4. 1時間程度蒸します。

     

  5. 蒸しあがったら、臼と杵でつきます。昔ながらの方法では、もち米よりも栃の実の量が多かったためあまりねばりがありませんでしたが、現代では栃の実の3倍程度のもち米を使い、ねばりのあるもちに仕上げることが多いです。

     

  6. のしもちにしたり、小豆あんを包んで丸めたりして形を整えます。

     

【栃餅の保存方法】
栃餅は、高温多湿を避け、冷暗所で保存することで約3ヶ月程度持ちます。市販の栃餅は、防腐剤や保存料を使わずに作られていることが多いため、購入後は冷蔵保存がおすすめです。長期保存する場合は冷凍保存が効果的です。

 

【栃餅の味わいと食べ方】
栃餅は独特のほろ苦さと風味が特徴で、「ホッペタがおっこちるほどうまい」と絵本「モチモチの木」にも描かれています。初めて食べる人は、その独特の味に戸惑うかもしれませんが、どこか懐かしい風味を持つ不思議な魅力があります。

 

栃餅は、そのままでは口に入れないよう注意が必要です。あく抜き栃の実の粒々が無くなるまで、もち米と綺麗に混ぜ合わせてから食べるようにしましょう。一般的には、お正月を中心に冬の時期に食べられることが多く、白い餅と同じように扱われます。

 

とちの実の他の食べ方と活用法

栃餅以外にも、アク抜きした栃の実はさまざまな形で食べることができます。その多様な活用法を紹介します。

 

1. 栃の実茶
栃の実茶は、栃の実の効能を手軽に摂取できる方法として人気があります。栃の木の芽は昔からお茶の代わりに飲まれてきましたが、最近では栃の実から作ったお茶も注目されています。独特のエグミはポリフェノールによるもので、抗酸化作用が高いとされています。

 

作り方は簡単で、アク抜きした栃の実を乾燥させて粉末にし、お湯で抽出するだけです。自宅でアク抜きするのが難しい場合は、市販の栃の実茶を利用するのも良いでしょう。

 

2. 栃の実煎餅
栃の実を粉末にして煎餅の生地に混ぜ込み、焼き上げた栃の実煎餅も伝統的なお菓子の一つです。サクサクとした食感と栃の実の風味が絶妙に調和した一品で、お土産としても人気があります。

 

3. だご汁
東北地方などでは、アク抜きした栃の実を粉にして「だご汁」を作る伝統があります。栃の実の粉を練って団子状にし、味噌汁に入れて食べる郷土料理で、栄養価が高く、腹持ちの良い一品です。

 

4. 栃の実団子
アク抜きした栃の実をつぶして白玉粉と練り、団子状にしてきな粉をまぶした「栃の実団子」も美味しい食べ方の一つです。栃の実の風味とほのかな甘みが楽しめます。

 

5. 製菓原料としての利用
栃の実は、和菓子や洋菓子の原料としても活用されています。栃の実の粉を生地に混ぜ込んだクッキーやケーキ、栃の実を砕いて混ぜ込んだアイスクリームなど、その活用法は多岐にわたります。

 

6. 健康食品としての活用
栃の実には様々な栄養素が含まれているため、健康食品としての活用も注目されています。特に、肌のキメを整える効果があるとされる成分は、美容目的での利用も増えています。

 

これらの活用法は、栃の実の独特の風味を生かしながら、より食べやすく、日常的に取り入れやすい形に加工したものです。伝統的な食文化を継承しつつ、現代の食生活に合わせた新しい活用法も模索されています。

 

とちの実の地域文化と伝統的な知恵

栃の実は日本各地で古くから食されてきましたが、特に栃の実文化が色濃く残っている地域があります。その地域の文化や伝統的な知恵について探ってみましょう。

 

山形県鶴岡市朝日地区の栃餅文化
山形県鶴岡市の朝日地区は、「国内で最も栃の実文化が色濃く残っている」と食文化の専門家から高く評価されています。この地域では、山に自生する栃の木を代々守り続け、国内随一の秘伝の製法でアク抜き栃の実を作り出しています。

 

朝日地区では、微生物農法を用いて「デワノモチ米」という品種を復活させ、そのもち米と栃の実だけを使用した伝統的な栃餅を作っています。防腐剤や保存料などの添加物は使わず、水の使用をできるだけ抑えた「杵つき製法」により、栃の実の風味を活かした上品な栃餅が作られています。

 

五箇山の栃餅
富山県南砺市の五箇山地域も、栃餅の伝統が残る地域として知られています。五箇山特産の栃餅は、ほろ苦く独特の香りがあるため、一度食べると忘れられないと言われています。この地域では、正月用に草もちや豆もちと一緒に栃餅を作る習慣があります。

 

栃の実と飢饉の歴史
栃の実は、見た目は栗に似ていますが、栗の実とは異なり、かなりアクの量が多くてそのままでは食べることができません。しかし、昔は飢饉をしのぐための大切な食べ物でした。アク抜きには多くの工程と時間、そして大量の水が必要なため、天然の清流に恵まれた地域でなければ作ることが難しい食べ物でした。

 

このような栃の実のアク抜き技術は、飢饉の時代に人々の命を救った重要な知恵として、地域の文化の中に深く根付いています。一度このアク抜きを経験すると、普段何気なく食べている「栃餅」が、どれほど手間がかかっていて、昔の人の生活の知恵が詰まったものかを実感することができます。

 

栃の木の文化的価値
栃の木自体も、日本の文化の中で重要な位置を占めています。栃の木は枝葉の茂り方が美しく、花は大輪で葉も大きいことから、生活のあらゆる方面で使われてきました。また、仏教との関わりも深く、中国では「沙羅の樹」として知られています。

 

初夏に咲く栃の花の形は仏塔やロウソク立てに似ており、手の形に似た葉が、あたかもこれらに向かって手を合わせているように見えることから、仏教の世界では特別な植物として扱われてきました。

 

このように、栃の実の食文化は単なる食べ物の域を超え、地域の歴史や文化、宗教的背景とも深く結びついています。そして、その伝統的な知恵は、現代においても大切に受け継がれています。

 

とちの実の現代的な活用と健康効果

栃の実は伝統的な食材としての価値だけでなく、現代においても様々な形で活用され、その健康効果にも注目が集まっています。ここでは、栃の実の現代的な活用法と科学的に裏付けられた健康効果について探ってみましょう。

 

美容と健康への効果
栃の実に含まれる天然の生理活性物質は、シワの原因となるコラーゲンタンパク酵素の生成を抑制し、肌のキメを整える作用があるとされています。このため、栃の実エキスを配合した化粧品や美容サプリメントも開発されています。

 

また、栃の実に含まれるポリフェノールには強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する効果が期待できます。これにより、老化防止やアンチエイジング効果が期待されています。

 

現代の食品加工技術による新たな展開
伝統的なアク抜き方法は時間と手間がかかりますが、現代の食品加工技術を活用することで、より効率的にアク抜きを行い、栃の実を活用した新しい食品開発が進んでいます。例えば、栃の実パウダーを使ったサプリメントや、栃の実エキスを配合した飲料など、手軽に栃の実の栄養を摂取できる商品が増えています。

 

栃の実の機能性成分研究
栃の実には、エスクリンやエスクレチンなどのクマリン誘導体が含まれており、これらの成分には血管強化作用や抗炎症作用があることが研究で明らかになっています。また、サポニンという成分も豊富に含まれており、これには血中コレステロールを低下させる効果があるとされています。

 

さらに、栃の実に含まれるフラボノイド類は、抗酸化作用だけでなく、抗アレルギー作用や抗腫瘍作用も持つことが報告されています。これらの研究結果から、栃の実は単なる食材としてだけでなく、機能性食品としての可能性も秘めていることがわかります。

 

環境保全と栃の実の持続可能な活用
栃の木は大気汚染に強く、都市部の緑化にも適していることから、環境保全の観点からも注目されています。また、栃の実の採取は森林の維持管理にもつながるため、持続可能な森林資源の活用方法としても評価されています。

 

一部の地域では、栃の実の採取から加工、販売までを地域ぐるみで行う取り組みも始まっており、地域振興や観光資源としての活用も進んでいます。例えば、栃の実の収穫体験ツアーや、アク抜き体験ワークショップなど、体験型の観光プログラムも人気を集めています。

 

家庭でできる栃の実活用法
家庭でも簡単に栃の実を取り入れる方法として、市販のアク抜き済み栃の実パウダーを使った料理があります。例えば、パンケーキやクッキーの生地に混ぜたり、スムージーに加えたりすることで、栃の実の栄養を手軽に摂取することができます。

 

また、栃の実茶は家庭でも簡単に作ることができ、日常的に飲むことで健康維持に役立てることができます。栃の実茶には、血圧を下げる効果や、血糖値の上昇を抑える効果があるとされており、生活習慣病の予防にも役立つと考えられています。

 

このように、栃の実は伝統的な食文化を継承しながらも、現代の科学技術や健康志向に合わせた新たな形で活用されています。その豊かな栄養成分と機能性は、これからも様々な分野での活用が期待される貴重な自然の恵みと言えるでしょう。

 

「モチモチの木」のとちもちを食べたい

「モチモチの木」で描かれる「とちもち」の作り方は、現代でもそのまま受け継がれています。アクが強いトチノキの実を灰でアク抜きし、その後粉にしてお餅にする。この一連の流れは、絵本の中で詳細に描かれています。

 

そして、最も重要なのは、おじいさんが実際に「とちもち」を作るシーンです。これは、読者に対して「とちもち」の作り方を直接示すと同時に、その作り方が実際に可能であることを示す証拠でもあります。

 

この絵本が描く「とちもち」の魅力は、その独特の製法と、それが生み出す深い味わいにあります。

 

とちもちは、イチから作るよりもできたものを買ったほうが安いし楽なんですよね。

 


とちもち