
悪質業者による健康食品詐欺の第一段階は、巧妙な集客手法から始まります。コンビニの空き店舗や商店街の空き店舗に「健康食品」と書かれたのぼり旗を掲げ、パンや洗剤、卵などの日用品を「100円」や「無料」で配布するというチラシを配布します。
参考)https://www.pref.gunma.jp/page/8385.html
このチラシには以下の特徴があります。
特に注目すべきは、これらの業者が2ヶ月ごとに各地を転々とするという点です。関西地方に本社を置く健康食品販売会社の元販売員の証言によると、短期間で会場を移転することで、被害が拡大する前に逃げ切る戦略を取っています。
参考)https://toyokeizai.net/articles/-/663165?display=b
実際の集客現場では、閉め切った会場にパイプ椅子を並べ、続々と集まる高齢者たちが「講師」の小話で盛り上がる光景が見られます。暇つぶしやお土産目当てで通い始めた高齢者が、徐々に会場の雰囲気に飲み込まれていく構造になっています。
健康食品販売業者が使用する催眠商法は、高齢者の心理を巧妙に操作する手法です。元販売員の証言から、その詳細なテクニックが明らかになっています。
参考)https://withnews.jp/article/f0201009000qq000000000000000W0f010301qq000021899A
感情的な結びつきの構築:
集団心理の利用:
販売現場では「講師」と「アシスタント」の販売員が連携し、会場の雰囲気を盛り上げます。「いつもだったら50万円のところ、きょうは特別に、たったの40万円でご提供します」という講師の言葉に対し、社員たちが「うわー」と拍手し、軽快な音楽を流して熱気を演出します。
さらに、一人が商品購入を決めると「○○さんお買い上げです!みんなで万歳をしましょう!万歳!万歳!万歳!」と騒ぎ立て、他の参加者にも購入への心理的圧力をかけます。
健康不安の増幅:
参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/o070120/shouhi/jorei_johoteikyo/sfsyouho.html
これらの手法により、普段は慎重な高齢者でも正常な判断能力を失い、高額商品の購入に至ってしまいます。
健康食品を使った催眠商法を行う会社には、明確な組織構造と役割分担があります。元販売員の証言から、その内部構造が詳細に明らかになっています。
経営陣と本社機能:
現場での役割分担:
販売会場には以下の役割を持つスタッフが配置されます。
報酬システム:
会場ごとに目標販売額が設定され、それを超えると臨時ボーナスが支給される仕組みです。実際の元販売員は「多いときは月収70万円近くになった」と証言しており、高額な報酬で販売員のモチベーションを維持しています。
法的回避策:
これらの会社は以下の方法で法的な規制を回避しようとします。
しかし、これらの手法は特定商取引法の訪問販売規制に該当し、効果効能をうたった販売や過量販売は明確な法律違反です。
健康食品を使った催眠商法による高齢者の被害額は、想像を絶する規模に達しています。国民生活センターの集計データと実際の相談事例から、その深刻な実態が明らかになっています。
参考)https://www.kokusen.go.jp/t_box/data/t_box-faq_qa2019_13.html
平均被害額と最大被害額:
具体的な被害事例:
実際の相談事例では以下のような深刻な状況が報告されています。
被害の特徴:
高齢者の被害には以下のような特徴があります。
地域別の被害状況:
大阪府の消費生活相談窓口には、高額な健康器具や多量の健康食品を購入してしまったなどの苦情相談が毎年90件前後寄せられています。これは大阪府だけの数字であり、全国規模では被害はさらに深刻と推測されます。
また、橿原市では「同様の事例が急増している」と報告されており、被害の拡大傾向が確認されています。
参考)https://www.city.kashihara.nara.jp/kurashi_tetsuzuki/anshin_anzen/6/4/1/7567.html
健康食品詐欺による高齢者被害を防ぐためには、具体的な対策と正しい対処法を理解することが重要です。消費生活センターや行政機関が推奨する防止策をまとめます。
高齢者本人ができる防止策:
家族・周囲の人の見守り対策:
高齢者本人は販売会場に通うことを楽しんでいることが多いため、家族や周囲の見守りが極めて重要です。
法的対処法:
もし被害に遭ってしまった場合の対処法。
意外な防止ポイント:
従来の注意喚起では触れられにくい、実効性の高い防止策。
これらの対策を総合的に実施することで、高齢者を健康食品詐欺から守ることができます。特に重要なのは、高齢者の尊厳を保ちながら適切なサポートを提供することです。