

市販の甜麺醤を1本使い切る前に捨てている人の8割は、実は代用品の方が料理に合っています。
甜麺醤(ティエンメンジャン)は、小麦粉を主原料に発酵させた中国の甘口味噌です。独特のコクと甘み、そして深い旨みが特徴で、麻婆豆腐・回鍋肉・北京ダックのタレなど、さまざまな中華料理に使われています。
日本のスーパーでも購入できますが、1本100〜150g入りで価格は300〜500円前後。問題は、一度開けたあとに使い切れないことです。
実は使い切れない。これが多くの家庭での悩みです。
1回のレシピで使う量は大さじ1〜2杯程度が多く、残りはそのまま冷蔵庫の奥へ…という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。開封後の賞味期限は冷蔵で約1〜2ヶ月とされており、使い切れずに廃棄してしまうケースが後を絶ちません。
だからこそ代用品の知識が役立ちます。
家にある調味料で代用できれば、わざわざ買い物に行く手間もなく、食材の無駄も減らせます。次のセクションからは、具体的な代用品の作り方を分量つきで紹介していきます。
甜麺醤の代用として最もポピュラーで、再現性が高いのが「みそ+砂糖+ごま油」の組み合わせです。これが基本です。
日本のみそと甜麺醤はどちらも発酵した大豆・穀物由来の調味料ですが、甜麺醤の方が甘みが強く、塩気がまろやかです。この差を砂糖やみりんで補うのが代用のポイントになります。
基本の代用レシピ(大さじ2杯分)
| 材料 | 分量 |
|------|------|
| 信州みそ・合わせみそなど(赤みそは避ける) | 大さじ1と1/2 |
| 砂糖 | 大さじ1 |
| ごま油 | 小さじ1/2 |
| 醤油 | 小さじ1/4 |
作り方はシンプルで、すべての材料をよく混ぜ合わせるだけです。加熱して使う場合は、焦げやすいため弱火でゆっくり炒めることを意識してください。
赤みそは塩気が強く苦みが出やすいため、甜麺醤の代用には向きません。白みそや合わせみそが最適です。白みそを使うと、より甜麺醤に近い甘みとまろやかさが出ます。
これは使えそうです。
なお、みその種類によって塩分量が異なるため、最初は少量ずつ作って味を確認しながら調整するのがおすすめです。砂糖の代わりにみりんを使うと、より上品な甘みになります(みりん大さじ1/2に置き換え可能)。
みそが手元にないときや、よりシャープな風味が欲しいときは、醤油をベースにした代用レシピが役立ちます。
醤油ベースの代用レシピ(大さじ2杯分)
| 材料 | 分量 |
|------|------|
| 醤油 | 大さじ1 |
| 砂糖 | 大さじ1 |
| 豆板醤(辛みが必要な場合) | 小さじ1/4〜1/2 |
| ごま油 | 小さじ1/2 |
| 片栗粉(とろみをつけたい場合) | 少々 |
醤油と砂糖を小鍋で弱火にかけ、砂糖が溶けてとろっとしてきたら火を止め、ごま油を加えて完成です。豆板醤を加えることでコクと辛みが出て、より本格的な風味に近づきます。
豆板醤は辛みを出すための調味料です。
甜麺醤自体には辛みがありませんが、中華料理では豆板醤と一緒に使われることが多いため、あえて少量加えることで「中華料理らしい風味」を出す効果があります。辛みが苦手な場合は省いても問題ありません。
この醤油ベースのレシピは、回鍋肉や炒め物など「たれをからめる料理」に特に向いています。みそベースに比べてさらっとした仕上がりになるため、素材への絡まりがよく、見た目も美しく仕上がります。
代用品を作ったとしても、料理ごとに最適な代用品は異なります。これが条件です。
麻婆豆腐の場合
麻婆豆腐では甜麺醤のコクと甘みがスープ全体の底味になります。この場合は「みそ+砂糖+ごま油」の基本レシピが最も適しています。豆腐の水分と混ざることを考慮して、みそは少し多めにすると味がぼやけません。
回鍋肉(ホイコーロー)の場合
回鍋肉では甜麺醤の甘みとコクがキャベツや豚肉にからむことが重要です。醤油ベースのレシピ+みりんの組み合わせが適しています。火力が強い炒め料理のため、焦げにくい醤油ベースがおすすめです。
ジャージャー麺の場合
ジャージャー麺(日本では「ジャージャー麺」「じゃじゃ麺」とも)は肉みそが命です。みそ+砂糖の基本レシピに、にんにく・生姜を加えて炒めると本格的な肉みそが完成します。
北京ダック風のたれとして使う場合
甜麺醤は北京ダックを包む際のたれとしても有名です。この場合は甘みが重要なので、ハチミツを少量(小さじ1/4)加えたみそベースのレシピが近い風味を再現できます。
料理の用途に合わせて選ぶのが基本です。
代用品を作る際に最も多い失敗が「塩気が強すぎる」「甘みが足りない」の2つです。
塩気が強すぎる原因は、みそや醤油の塩分量を考慮せずに作ることにあります。みそは製品によって塩分濃度が大きく異なり、赤みそで塩分13〜14%、白みそで5〜7%程度の差があります。はがき1枚分(約14g)の重さで比べると、赤みそは塩分が約1.8g、白みそなら約0.7gと2倍以上の差があります。
甘みが足りない場合は砂糖を少しずつ足して調整します。
代用品を作りすぎた場合の保存方法も重要です。みそベースの代用品は清潔な密閉容器に入れ、冷蔵で3〜5日間は保存できます。ただし、砂糖や砂糖を含む調味料を加えているため、傷みやすい点に注意が必要です。長期保存したい場合は製氷皿に入れて冷凍保存する方法もあります。大さじ1杯ずつ冷凍しておけば、使いたいときに必要な分だけ取り出せて便利です。
保存には清潔な容器が必須です。
なお、代用品は加熱することで風味がまとまりやすくなります。炒め料理で使う際は、最初から食材と一緒に加熱するのではなく、食材に火が通ってから加えて短時間で炒めることで、焦げつきを防ぎつつコクを引き出せます。
ここからは、代用品を使う際にあまり語られない視点をお伝えします。
甜麺醤の代用にみそを使う場合、市販の甜麺醤より塩分が高くなるケースがあります。市販の甜麺醤(例:ユウキ食品・丸美屋など)の塩分量は100gあたり約7〜10g程度ですが、赤みそを使った代用品では同じ量で13〜14gに達することもあります。
意外ですね。
毎日の料理で代用品を使い続ける場合、塩分の取りすぎにつながるリスクがあります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人女性の1日あたりの塩分目標量は6.5g未満とされています。代用品1回分(大さじ2)だけで塩分2〜3gを超えるケースもあるため、全体の献立の塩分バランスを意識することが大切です。
塩分を抑えたいなら、代用品に使うみそを「減塩みそ」(塩分8〜9%程度)に切り替えるだけで、塩分を約30〜40%カットできます。スーパーで入手しやすく、風味の差も少ないため、代用品作りに非常に向いています。
まずは減塩みそへの切り替えを検討してみてください。
また、代用品を作る際に砂糖の量が増えると甘みは出ますが、カロリーも上昇します。ダイエット中の方や血糖値が気になる方は、砂糖の代わりに羅漢果甘味料やエリスリトールを少量使うことで、甘みを維持しながらカロリーを抑える工夫もできます。
代用品と本物の甜麺醤の間には、どうしても風味のギャップが生まれます。このギャップを縮めるための「隠し味」を知っておくと、代用品の完成度が格段に上がります。
オイスターソース(少量)
甜麺醤特有の深いコクと旨みを補うのに効果的です。代用品に小さじ1/4〜1/2のオイスターソースを加えるだけで、旨みの奥行きが増します。ただし、オイスターソース自体に塩分があるため、みそや醤油の量を少し減らして調整することがポイントです。
黒砂糖(またはきび砂糖)
白砂糖の代わりに黒砂糖を使うと、甜麺醤に近いコクのある甘みが出ます。これは知っておくと得です。
甜麺醤はもともと小麦の発酵由来のコクがあり、その香ばしさに近い風味を黒砂糖が補ってくれます。白砂糖より量を2〜3割減らして使うと、甘みのバランスが取りやすくなります。
にんにく・生姜の炒め油を活用
代用品を作る前に、みじん切りのにんにくと生姜をごま油で炒めた油に代用品を加えると、香り全体がぐっと中華料理らしくなります。材料費は10円以下で実践でき、仕上がりの風味が大きく変わります。
これだけで十分変わります。
このような隠し味テクニックを1〜2個取り入れるだけで、「代用品っぽさ」がかなり消えます。料理ごとに試してみて、自分好みの配合を見つけていくと、毎日の調理がより楽しくなります。
参考情報:みその塩分量と栄養成分について
みその種類別の塩分・カロリーのデータは、文部科学省の食品成分データベースで確認できます。代用品の塩分計算に役立ててください。
参考情報:塩分摂取目標量の根拠
成人女性の1日あたりの塩分目標量(6.5g未満)は以下のページで確認できます。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書