

実は野外でタガメを販売目的で捕まえると500万円の罰金が科されます。
水生昆虫とは、一生のうちのいずれかの時期に水中や水面で生活する昆虫の総称です。池、沼、田んぼ、川など、あらゆる水辺に多くの種類が生息しています。世界には昆虫全体で約150万種が知られており、そのうちおよそ4万種が水生昆虫とされています。身近な存在でありながら、その多様性は驚くほど豊かです。
水生昆虫は大きく2つのグループに分けられます。ひとつは「幼虫期のみ水生」のグループで、カゲロウ・トンボ(ヤゴ)・カワゲラ・トビケラなどが代表です。成虫になると陸上や空中で生活します。もうひとつは「幼虫期・成虫期ともに水生」のグループで、タガメ・ゲンゴロウ・アメンボ・ミズスマシ・ガムシなどが含まれ、これらは特に「真正水生昆虫」とも呼ばれます。
つまり、水生昆虫といっても一口にはまとめられません。
以下に、池・沼・田んぼでよく見られる代表的な種類を一覧でまとめました。
| 虫の名前 | 生息場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 🦟 タガメ | 田んぼ・池沼 | 日本最大の水生昆虫(体長6cm超)。カエルや魚も捕食する |
| 🪲 ゲンゴロウ | 池沼・田んぼ | 楕円形でツルツルした体。泳ぎが得意 |
| 🦟 アメンボ | 池・水たまり | 水面を滑る。実は翅があり飛べる |
| 🪲 ミズスマシ | 池・緩やかな川 | 水面を高速で円を描くように泳ぐ |
| 🦟 ミズカマキリ | 田んぼ・池沼 | カマキリに似た前肢を持つ細長い虫 |
| 🦟 タイコウチ | 田んぼ・池沼 | 泥の中に潜む。呼吸管を水面に出す |
| 🪲 ガムシ | 池沼・水田 | ゲンゴロウに似るが草食傾向が強い |
| 🦟 コオイムシ | 田んぼ | オスが卵を背負って育てる珍しい習性 |
| 🦟 マツモムシ | 池・水田 | 仰向けで泳ぐ変わり者。刺されると痛い |
これらは止水(流れのない水)を好む種類が多いです。川など流れのある場所(流水)を好む種は、次のセクションで詳しく紹介します。
参考:池や田んぼの水生昆虫の生態・種類について詳しく解説されています。
川の石をひっくり返すと、小さな虫がうごめいているのを見かけたことはないでしょうか。それらの多くは「水生昆虫の幼虫」です。成虫になると陸上や空中で生活しますが、幼虫期は川の中で過ごします。これが流水性の水生昆虫の特徴です。
代表的なグループとして、カゲロウ(カゲロウ目)・カワゲラ(カワゲラ目)・トビケラ(トビケラ目) の3種類があり、「川虫界の御三家」と呼ばれるほど種数が多く、川の生態系を支える重要な存在です。これが川の基本です。
それぞれの特徴を見てみましょう。
- 🌿 カゲロウの幼虫:尾が3本あることが多く、体の側面に葉っぱのような形のエラ(葉状エラ)がある。川底の石の裏に多く生息。体長は数mmから15mm程度。
- 🌿 カワゲラの幼虫:尾が2本で、カゲロウよりも平たい体型。石の裏や落ち葉の下に棲む。カゲロウに比べて足が太くしっかりしている。
- 🌿 トビケラの幼虫:イモムシ型で、小石・砂・落ち葉などを組み合わせた「巣」を作るのが最大の特徴。動いている「小石のかたまり」に見えることも。
川底でよく動いている「砂粒でできた筒」を見かけたら、それはトビケラの巣です。これは使えそうです。
また、川の水生昆虫として「ヤゴ(トンボの幼虫)」も代表格です。ヤゴは種類によって体形が大きく異なり、細長いものや丸みのあるものまでさまざまです。水中で小さな魚や他の昆虫を捕食する肉食性で、なかなかたくましい存在です。
さらに「ヘビトンボの幼虫」も見逃せません。体長3〜4cmほど(名刺の短辺くらい)になる大きな幼虫で、川底の石の下でカゲロウやトビケラを食べます。見た目は少しこわいですが、後述する水質指標では「きれいな水」のサインになる重要な昆虫です。
参考:川に棲む水生昆虫の幼虫の種類と同定方法を写真付きで紹介しています。
身近な川の水生昆虫を調べてみよう!|兵庫県立人と自然の博物館
川に棲む水生昆虫の種類を調べると、その川の水がどのくらいきれいかがわかります。これが「水生生物による水質調査(生物指標法)」で、環境省も実施している全国規模の調査手法です。特別な試薬や機械が不要なので、子どもと一緒にできる点が魅力です。
水質は4つの階級に分けられており、それぞれに「指標生物」が設定されています。
| 水質階級 | 水の状態 | 代表的な指標生物 |
|---|---|---|
| 🌟 水質階級Ⅰ | きれいな水 | カワゲラ、ヒラタカゲロウ、ナガレトビケラ、ヘビトンボ、サワガニ、ブユ |
| 🔵 水質階級Ⅱ | 少し汚れた水 | ゲンジボタル、コガタシマトビケラ、ヒラタドロムシ、カワニナ |
| 🟡 水質階級Ⅲ | 汚れた水 | ミズカマキリ、タイコウチ、ミズムシ、タニシ、ヒル |
| 🔴 水質階級Ⅳ | 大変汚れた水 | セスジユスリカ、アメリカザリガニ、サカマキガイ、エラミミズ |
水質階級Ⅰの生物が多く見られる川は、飲み水の水源にもなりうるほど清澄な環境です。川底の石をひっくり返して、カワゲラやヒラタカゲロウが出てくれば大当たりです。意外ですね。
一方、アメリカザリガニが大量にいる場合は水質階級Ⅳのサインです。最近では特定外来生物にも指定されており、河川環境の悪化との関係が指摘されています。
調査のポイントは「浅くて石の多い流れのある場所」を選ぶことです。流れが速い瀬のある場所が最適で、深さは30cm以下が目安です。子どもと川に行くときは必ず大人が同伴し、滑りにくい靴を着用しましょう。安全が条件です。
参考:環境省が実施している全国水生生物調査の方法と指標生物一覧が掲載されています。
「子どものころ田んぼで見た」という人も多いタガメやゲンゴロウ。しかし現在、これらは環境省のレッドリストで「絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)」に指定されています。痛いですね。
かつては日本中の田んぼや池で当たり前に見られた水生昆虫が、なぜここまで減ってしまったのでしょうか?
主な原因は以下の3つです。
- 🏗️ 開発・圃場整備:ため池や水路のコンクリート化により、産卵・生育場所が激減した。
- 🧪 農薬の普及:1950年代以降に普及した化学農薬が、水生昆虫を一気に減らした。特にネオニコチノイド系農薬の影響が各地で報告されている。
- 💡 街灯・灯火の増加:夜行性のタガメは灯りに引き寄せられる習性がある。街灯の増加により、生息地から遠い場所に迷い込んで死亡するケースが増えた。
その結果、タガメは2020年2月10日から「特定第二種国内希少野生動植物種(種の保存法)」に指定されました。販売・頒布を目的とした捕獲・飼育・譲渡は法律で禁止されています。違反した場合、個人であれば5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されます。趣味や研究目的での観察・飼育は規制対象外ですが、注意が必要です。
ただし、ゲンゴロウについては現時点で種の保存法の適用対象外のものも多いため、都道府県の条例による規制も確認しておくと安心です。
子どもが「田んぼでタガメを見つけた!」と喜んで持って帰りたがる場面もあるかもしれませんが、その前に「観察して逃がす」というルールを家族で共有しておくことが大切です。
参考:タガメが絶滅危惧種に至った経緯と現在の法的規制について詳しく解説されています。
【FAQ】販売・飼育禁止?!タガメの規制で何が許され何が禁止か
夏休みの自由研究や家族でのお出かけで、「川や田んぼで生き物を観察したい」と思うこともあるでしょう。水生昆虫の観察は理科的な学びと自然体験を同時に得られる、コストゼロの最強アクティビティです。これは使えそうです。
ただし、いくつか知っておくと役立つポイントがあります。
【観察前の準備】
- 🥾 長靴または水辺用サンダル:素足での入水は怪我・感染リスクあり。必ず靴を着用する。
- 🥄 タモ網(虫取り網)と白いバット(またはバケツ):白いバットに水と虫を入れると見やすい。100円ショップでも揃う。
- 🔍 ルーペまたはスマホカメラ:小さな幼虫の特徴を確認するのに役立つ。
【採集時のルール】
- 必要以上に採集しない(川の生態系を守るため)
- 観察後は元の場所に逃がす(特に希少種は絶対に持ち帰らない)
- 私有地や農地の田んぼには無断で立ち入らない
【見分けのコツ】
水生昆虫を白いバットに移すと、脚の本数・尾の本数・形でグループが絞れます。足が6本あれば昆虫、8本ならクモ・ダニの仲間、それ以上ならサワガニやエビの仲間です。足の数が条件です。
また、スマートフォンの生き物判別アプリ(例:「バイオーム」)を使うと、写真から種類が調べられて便利です。子どもが写真を撮ってアプリで調べるだけで自由研究の記録になります。確認するだけでOKです。
なお、マツモムシは仰向けで泳ぐ珍しい水生昆虫ですが、刺すことがあります。素手でつかまないよう注意しましょう。小さな子どもがいる場合は特に気をつけたい種類です。
川や田んぼ周辺は急に足元が滑ったり、水深が深くなる場所もあります。子どもだけでの観察は絶対に避け、大人が必ず同行することが大前提です。
参考:子どもでもわかる水生昆虫の分類法と観察のポイントが詳しく掲載されています。