

揚げてないのに、ソムサのカロリーはインドのサモサより高くなる場合があります。
「ソムサ」と聞いて、インド料理のサモサを思い浮かべる方も多いかもしれません。確かに語源は同じで、中世ペルシア語で「三角形」を意味する「サンボサグ(Sambosag)」にさかのぼります。しかし、味も調理法も、実はまったくの別物です。
インドのサモサはカレー風味の野菜や豆を包み、油でカラッと揚げるのが特徴です。一方、ウズベキスタンのソムサ(サムサ)は羊肉や牛肉を主な具材とし、タンドール(粘土窯)か家庭用オーブンで「焼く」のが基本です。揚げ油を一切使いません。
つまり焼き料理ということですね。
しかし、ここに意外な落とし穴があります。ソムサの具材には羊肉の脂(ドゥンバ)が多く使われており、揚げていないにもかかわらず、1個あたりの脂質はインドのサモサを上回るケースがあると言われています。「揚げてないから低カロリー」とは限らない点は、覚えておきたいポイントです。
生地の面でも違いがあります。ウズベキスタンのソムサは、薄く伸ばした生地にバターを塗って巻き、それをカットして断面から伸ばすという独特の製法でパイ生地状に仕上げます。焼き上がりはサクサクとした食感で、肉汁がじゅわっとあふれるのが醍醐味です。
これは使えそうです。ソムサを食べる機会があるなら、サモサとの食べ比べも楽しいかもしれません。ウズベキスタン料理店が近くにある場合は、ぜひ注文してみてください。
ウズベキスタン文化観光局によるソムサ(サムサ)の公式紹介はこちらで確認できます。
ウズベキスタン文化観光局 フード・Foods(サムサの項目あり)
ソムサがウズベキスタンに根付いた背景には、シルクロードの歴史が深く関わっています。サマルカンドやブハラ、タシケントといった都市は、紀元前2世紀頃から東西交易の中継地として栄えたオアシス都市でした。中国とローマをつなぐ交易路のど真ん中に位置するこの地域には、多様な文化・食文化が流入し、独自に発展していきました。
サモサの原型である「サンボサグ」も、交易商人たちによってペルシアから中央アジアへ、さらにインドへと伝播したと考えられています。ウズベキスタンではその後、遊牧民文化の影響を受けて羊肉が主役となり、タンドール(土窯)で焼く調理法が定着しました。
シルクロードが育てた料理ということですね。
特に注目したいのは「タンドール」という調理器具です。タンドールはインドのナン焼きでもおなじみですが、ウズベキスタンでは円筒形の粘土窯の内壁に生地を直接貼り付けて焼くという独特の使い方をします。窯の内部温度は300℃を超えることもあり、短時間で外はパリッと、中はジューシーに仕上がります。これは家庭の普通のオーブンでは簡単に再現できない温度帯です。
ウズベキスタンは現在も親日国として知られており、2024年時点で在日ウズベキスタン人は増加傾向にあります。日本国内でもウズベキスタン料理店が都市部を中心に増え、東京・大阪・名古屋などでソムサを食べられる機会は以前より格段に増えました。
シルクロードとウズベキスタンの歴史的つながりについての詳しい解説はこちら。
Advantour Japan|シルクロードに連なるウズベキスタンの都市
「ソムサ」と一言で言っても、ウズベキスタン国内には地域ごとに驚くほど多様なバリエーションが存在します。形・生地・具材・調理法がすべて異なり、別料理といっても過言ではないほどです。
まず最も広く食べられているのがタンディールソムサです。首都タシケントではこれが定番で、タンドール窯の内側に貼り付けて焼きます。しずく型が羊肉入り、たわら型がジャガイモ入りというルールがあり、見た目で中身が判断できるようになっています。
次に独特なのがジザフソムサです。ジザフ州の名物で、その大きさは手のひらほど(約15〜16cm)もあります。ビジネスサイズのスマートフォンを少し超えるくらいの大きさに、具がみっちり詰まっており、1個でお腹がいっぱいになります。このサイズでもタンドールに貼り付けて焼くというのだから驚きです。
ギジュドゥヴァンソムサはブハラ州の地方都市ギジュドゥヴァンの名物で、薄い生地で大ぶりの三角形に具を包んで焼いたものです。肉汁がたっぷりで評判が高く、「美食の都」と呼ばれる地域の誇りでもあります。
その他にも以下のような種類があります。
バリエーションが豊富なのがソムサの魅力です。ウズベキスタンを旅するなら、各地域のソムサを制覇するのも面白い旅の楽しみ方です。
タンドール窯がなくても、家庭のオーブンで本格的なソムサは作れます。ここでは、中央アジアで実際に教わったレシピをベースに、日本の家庭でも挑戦しやすいよう整理してご紹介します。
材料(14個分)
作り方のポイント
まず具材から作ります。玉ねぎ2個をみじん切りにして塩・コショウと混ぜ、粗挽き牛ひき肉600gを加えてざっくりと合わせます。ハンバーグのようにこねる必要はありません。むしろ、まとまらないくらいでちょうど良いです。粗挽きにこだわる理由は肉感と肉汁のためです。
生地は薄力粉と水を混ぜてこねるだけです。ここではねかせません。こねた生地を薄く広げ、溶かしたバター50gを全体に塗り、端からのり巻きのように巻いて14等分します。断面を上にして手のひらで軽く押しつぶし、そこから直径20cm(ハガキの横幅の約2倍)ほどに伸ばすのがポイントです。この「断面を上からつぶす」工程がパイ生地っぽい食感を生み出します。
生地に具を乗せて三角形に包み、生地の端に水をつけてしっかり閉じます。表面に卵黄を塗り、250℃のオーブンで20〜25分、きつね色になるまで焼けば完成です。
市販のパイシートを使う場合は、生地作りをそのままスキップできます。手軽に作りたい場合は冷凍パイシートが便利で、仕上がりもサクサクになります。クミンパウダーを小さじ1/2ほど具材に加えると、より中央アジアらしい香りに近づきます。
焼き立てがベストです。冷めてからでも美味しいですが、再加熱するなら230℃のオーブンで5分ほど温めると生地のサクサク感が戻ります。
トルクメニスタンの現地おばちゃん直伝のソムサレシピ(note記事)はこちら。生地のこね方・巻き方の詳細写真あり。
note|【レシピ】トルクメニスタンのおばちゃん直伝、激うまソムサ
現地では、ソムサは「ストリートフード」の感覚で日常的に食べられています。日本でいえばコンビニのまんじゅうやおにぎりに近い存在で、街角のキオスクや市場(バザール)で1個単位で買って、その場で立ち食いするのが定番です。
熱々のうちに食べるのが一番です。
現地での合わせ方として定番なのが緑茶(煎茶に近い発酵グリーンティー)です。こってりした肉の脂をさっぱりと流してくれる相性の良さから、ソムサには必ずチャイ(ここでは緑茶のこと)が添えられます。コーラと組み合わせるのも意外なほど合うと現地在住者の間でも人気です。
日本でアレンジするなら、以下の食べ方がおすすめです。
日本でウズベキスタン料理を食べられるレストランは、東京・新大久保や上野エリアを中心に増えています。メニューにソムサが載っているお店もあるので、まず外で一度食べてから自宅で再現するという順序が、レシピのイメージをつかみやすくておすすめです。
また、ウズベキスタン料理教室を開催している方も都内にいます。実際に習ってみると生地の感触や包み方のコツが体で覚えられるので、動画だけでは掴みきれないポイントが身につきやすいです。
独自の工夫を加えてみるのも楽しみ方の一つですね。たとえば具材にじゃがいもを加えた「ポテト入りソムサ」は日本人の口に合いやすく、子どもにも食べやすいバリエーションとしておすすめです。