飼料米食用米違いとは|品種や栄養価、価格補助金を徹底解説

飼料米食用米違いとは|品種や栄養価、価格補助金を徹底解説

飼料米と食用米の違い

飼料米と食用米の主な違い
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目的と品種

飼料米は家畜のエサ用に多収性品種を栽培、食用米は人の食用に食味重視品種を栽培

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価格と流通

飼料米は補助金制度で収入を確保、食用米は市場価格で流通し価格変動がある

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栄養と利用法

飼料米は牛・豚・鶏などに給与され、タンパク質重視の栄養設計がされている

飼料米の基本的な特徴と定義

飼料米とは、牛や豚、鶏など家畜の飼料として用いられる米のことです。同じ水田で栽培されたイネから収穫される点は食用米と同じですが、家畜のエサとして効率的に利用するために品種改良されているという特徴があります。
参考)https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/brand.html

飼料用米は玄米の形態で利用され、その栄養価は家畜飼料として主に用いられているとうもろこしと同程度であり、家畜にとって優れたエネルギー供給源となっています。現在、家畜飼料として広く利用されている「とうもろこし」は約9割を輸入に頼っているため、日本政府や農林水産省は飼料の自給率向上や経営リスクの分散を目的に、主食用米から飼料用米への転換を推進しています。
参考)https://shizenenergy.net/re-plus/column/management/method/feed_rice/

飼料用イネは「稲発酵粗飼料」と「飼料用米」に大別され、稲発酵粗飼料はイネの子実だけでなく茎葉部をまるごと使うので粗飼料、飼料米は子実だけ使うので濃厚飼料として利用されます。飼料米専用品種は多肥栽培条件で多収を達成するために、耐倒伏性・耐肥性が強い品種が育成されてり、良食味品種とは全く違う性質を持っています。
参考)https://agri.mynavi.jp/2024_09_30_281205/

飼料米の品種と収量の違い

飼料用米は食用米に比べ茎葉や稲穂が大きく、たくさんの収穫ができるという特徴があります。10アール当たり1,000kgを超える収穫ができる品種も開発されており、普通の食用品種の1.2倍から1.4倍程度の収量が期待できます。
参考)https://www.naro.go.jp/laboratory/nilgs/project/files/ricm2016-1.pdf

代表的な飼料米専用品種には「べこあおば」「モミロマン」「夢あおば」などがあり、それぞれ地域や栽培条件に合わせて選定されています。例えば「モミロマン」は粗玄米収量が主食用品種よりも2〜3割多収で、倒伏しにくく、直播栽培にも適していますが、米飯の食味は極めて不良です。
参考)https://www.jeinou.com/benri/rice/2009/04/241730.html

一方、主食用品種を飼料用米として栽培する農家もいます。主食用品種のうち収量が比較的多い品種も飼料用米としての使用が可能ですが、専用品種と比べると収量面で劣ります。ただし、2024年度から主食用品種(一般品種)を飼料米として栽培する場合の補助金が段階的に引き下げられており、令和6年産では10アールあたり55,000円から95,000円、令和8年産では55,000円から75,000円になる予定です。
参考)https://note.com/eytn_1a5zb7x/n/nc21a6fa350ab

農林水産省が認める多収品種として、夢あおば、べこあおば、モミロマン、きたあおば、北陸193号など全国で20品種以上の専用品種が推奨されています。
参考)https://www.ibaraki-suiden.jp/post-5328/

飼料米の栄養価と食味の違い

飼料用米は人が食べるとおいしくありませんが、これは家畜の成長に重要なタンパク質を多く含むように改良されているためです。人にとってはおいしくなくても、家畜にとっての嗜好性は高く喜んで食べるという特性があります。​
飼料米の栄養価は、とうもろこしとほぼ同等で、家畜にとって優れたエネルギー供給源となります。ちなみに、とうもろこしは炊いたお米よりもタンパク質が豊富で、100gあたり生のとうもろこしには3.6g、炊いたお米には2.5gのタンパク質が含まれています。飼料米はこの特性を活かし、家畜への栄養供給を効率的に行えるよう設計されています。
参考)https://www.naro.go.jp/laboratory/tarc/contents/feed/index.html

飼料米は食味をさておきモミの生産量を高めることを目標とした品種改良が進められており、一方でWCS用イネは牛の胃で消化されないモミの着粒量を極力少なくし、その分茎や葉に栄養をため込むことを目標としています。飼料米は鶏や豚などに、WCS用イネは牛へと、摂取効率の観点からそれぞれの畜種へ給与されるのが一般的です。​
食用米は「おいしさ」を重視するため、味や粘り、香りなどの食味を向上させる品種改良が行われていますが、飼料米は味や品質を気にする必要がないため、多収性で病気や風雨に強い品種を選ぶのが普通です。
参考)https://question.realestate.yahoo.co.jp/knowledge/chiebukuro/detail/14204751224/

飼料米の価格と補助金制度の違い

飼料用米の栽培に活用できる交付金として「水田活用の直接支払交付金」があり、食料自給率の向上に向けた飼料用米を含む戦略作物の本作化や、地域の特色を活かした産地づくり、低コスト生産の取り組みなどを目的としています。​
販売目的で飼料用米などの対象作物を生産する農家であれば、交付を受けることが可能で、上限はあるものの収量に応じて交付単価が上がる仕組みになっています。具体的には、飼料用米(多収品種)を作付けすると、戦略作物助成として収量に応じて55,000円〜105,000円/10a、産地交付金として複数年契約の取組で12,000円/10a、生産性向上等の取組で6,000円以内/10aなどの支援が受けられます。
参考)https://www.ibaraki-suiden.jp/post-2785/

飼料米専用品種への交付金は従来通りの水準が維持されていますが、主食用品種については支援水準が段階的に引き下げられており、令和6年産では10アールあたり55,000円から95,000円、令和8年産では55,000円から75,000円となります。
参考)https://www.town.tako.chiba.jp/docs/2024083000014/

一方で、飼料用米は輸入穀物と代替であるため、利益を求めることはできず、食用米と比べても低価格です。同じ条件で生産したときの飼料用米の所得は主食用米と遜色ありませんが、これは補助金によって収入が確保されているためです。また、交付金の支払根拠として検査機関による検査が義務付けられています。
参考)https://www.zennoh.or.jp/hr/iine/img/siryou.pdf

飼料米の流通と識別方法の違い

作付の時点で飼料用として計画された米は主食用米とは区別して保管・流通・利用されなければならないため、できるだけ生産者に近い段階で飼料用米を区別し、区別を保ったまま効率的に流通させるための方法を確立させることが必要になります。
参考)http://www.nohken.or.jp/NOGYOKENKUYU/No.34-2021/2021-12_yamanokaoru.pdf

飼料用米を主食用米として販売することは食糧法違反であり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる場合があります。そのため、ほ場を特定し、主食用米と明確に区分して生産、収穫、乾燥・調製を行う「区分管理方式」が採用されており、収穫された時点で「ふるい下米」を含む全量が用途限定米穀となり、全量を出荷しなければなりません。
参考)https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/noen/files/H29siryouyoumaitoukeihatutirashi.pdf

飼料米の専用品種は、見た目でその識別が可能なものもあり、味が悪いという特徴もあります。流通経費を節約するためにも、地域内循環を目指す取り組みが推進されています。また、飼料用米の流通体制は食用米とは異なり、米の生産周期と畜産飼料の消費ペースが異なるため、収穫後の米を保管するための倉庫等が必要になります。
参考)https://e-doto.com/hdms/pdf/kome01.pdf

飼料米専用品種の中には、食用米と識別可能な品種が開発されており、安定多収性(飼料米なら1トン/10a以上)のある品種、低コスト生産できる品種(耐病・直播適性等)、主食用米と識別可能な品種などが、各地域の栽培条件に合わせて選定されています。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/kome_seisaku/pdf/arikata_sanko.pdf

飼料米の利用方法と畜産への活用法

飼料用米は牛や豚、鶏など家畜のエサとして、モミ米や玄米をそのまま、あるいは破砕、圧ぺんなどの加工処理したものやモミ米をサイレージに調製したものを与えます。家畜の種類に応じて給与方法が異なるのが特徴です。​
牛への給与では、籾は消化されにくい籾殻や玄米表皮に覆われているため、破砕処理等の加工を行い、消化性を向上させる必要があります。肉用牛の場合、3ヶ月齢(離乳)から28ヶ月齢(出荷)まで、肥育用配合飼料の30〜40%代替え分の圧ぺん玄米を、育成期は配合飼料と混合し、肥育期は配合飼料の上にふりかけて給与する方法が実証されています。
参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/201299.pdf

豚への給与では、破砕した籾米をトウモロコシの代わりに飼料に30%配合し、肥育後期または肥育全期間に給与すると、肥育豚の発育が良好で、ロースの肉質もトウモロコシ主体の慣行飼料で肥育した豚のものと同等という結果が得られています。​
鶏の場合は、砂のうを有するため未破砕でも給与できるという特徴があります。飼料用米を利用した鶏卵は生協などで販売されており、飼料用米を利用して生産していることが鶏卵商品を差別化するための要素となっています。​
飼料用米を活用した畜産物のブランド化も進んでおり、国内飼料用米を給与した豚肉、鶏卵等の普及のための展示会が実施され、消費者に対して飼料用米に関するアンケート調査も行われています。京都府では飼料用米を活用した地域資源循環ビジネスモデルが提案されており、消費者に飼料用米活用の畜産物であることを周知し、消費者から取組への理解を得る取り組みが進められています。
参考)https://www.pref.kyoto.jp/chikken/documents/h30_6.pdf

飼料用米に関する農林水産省の参考資料
飼料用米活用畜産物のブランド化関連情報
水田活用の直接支払交付金の詳細情報
水田活用の直接支払交付金
東北農業研究センターによる飼料用イネの解説
家畜のエサにする飼料用イネ