

市販のだしパックに「さばのふし」と書いてあっても、ほぼ全員がそのまま捨てています。
鯖節の原料は、私たちがスーパーでよく見かける「マサバ」ではなく、「ゴマサバ」という種類の鯖です。おなかに黒っぽい斑点(ごまのような模様)があるのがゴマサバで、マサバにはその斑点がありません。一見すると地味な違いに思えますが、この原料の選択が鯖節の品質を大きく左右しています。
ゴマサバがなぜ節づくりに向いているかというと、脂質の量にあります。日本食品分析表によると、ゴマサバの脂質は100gあたり約5.1g、マサバは約16.8gとおよそ3倍もの差があります。脂質が多すぎると節が硬くなりにくく、だしを取ったときに濁りが出てしまうのです。つまり「脂の少なさ」こそが良い節を作る条件の一つです。
ただし、脂質がゼロではいけません。適度な脂質があるからこそ、鯖節特有の「コク」と「甘み」が生まれます。これが原則です。この脂質に含まれる旨み成分が、料理全体をぐっと引き締める力強いだしの源になっているのです。
鯖節の形は大きく2種類あります。鯖1匹をまるごと乾燥させた「丸さば」と、製造の途中で半分に割り、中骨を取り除いた「割さば」です。市販の削り節やだしパックには割さばを削ったものが多く使われており、だいたい15〜20cm(はがきの長辺くらいの長さ)が一般的なサイズです。
ゴマサバは季節によって脂質量が大きく変わり、脂が少ない時期は約5%、脂が乗る秋ごろには20%近くになることもあります。節づくりには脂質が少ない時期のものが使われるため、産地と漁獲時期の管理が鯖節の品質において非常に重要なポイントになっています。
鯖節とかつお節、どちらも「節」ですが、実際にだしを取ってみると驚くほど味と香りが異なります。この違いを知っておくと、料理の仕上がりが大きく変わります。
鯖節のだしの一番の特徴は「コクと甘み」です。味が濃く、醤油やみりんに負けない力強さがあります。一方で香りはあっさりしており、かつお節のような燻製の香りがあまり感じられません。意外ですね。「味は強いのに香りは控えめ」というのが鯖節の個性です。
かつお節は正反対の性質を持っています。だしは透き通って上品で、燻製の香りがしっかりと立ちます。味はすっきりしており、素材の味を邪魔しないお吸い物や繊細な和食に最適です。下の表で簡単に整理してみましょう。
| 比較項目 | 🐟 鯖節 | 🐠 かつお節 |
|---|---|---|
| 味わい | コクと甘みが強い | すっきり上品 |
| 香り | あっさり・控えめ | 燻製の香りが強い |
| だしの色 | やや濁り・色が濃い | 透明感がある |
| 向く料理 | うどん・味噌汁・煮物・おでん | お吸い物・茶碗蒸し・繊細な和食 |
このように、鯖節は味の濃い調理に使うと真価を発揮します。お吸い物には鯖節のだしは主張が強すぎて向きません。それが条件です。逆に、めんつゆや煮物のように醤油・みりんで仕上げる料理には、鯖節のコクが加わることで格段に奥行きが出ます。
そばのだしには「かつお節:そうだかつお節:鯖節=1:1:1」で合わせる配合が使われることがあります。それぞれが「よい香り:濃厚なコク:コクと甘み」という役割を担っており、3種類の節が組み合わさることで初めてプロのだしに近づくのです。これは使えそうです。
参考として、節の種類と使い分けに詳しい専門情報はこちらも確認できます。
さば節とは?コクの強いさば節の味わい、香り、使い方まで徹底解明|小林食品株式会社(鰹節専門)
鯖節を使ったことがない方でも、実は市販のだしパックを通してすでに鯖節のだしを口にしているはずです。多くのだしパックの裏面を見ると「さばのふし」と記載されています。つまり、鯖節は家庭の台所に意外なほど近いところにあるのです。
鯖節からだしを取る基本の方法は以下のとおりです。
鯖節だしは作りたてが一番おいしいです。その日のうちに使うのが原則です。長時間煮出すほど鯖特有の魚臭さが強くなりやすいため、30分を目安に火を止めることをおすすめします。
家庭で一番取り入れやすいのは、だしパックを活用することです。鯖節入りのだしパックは茅乃舎・にんべん・業務スーパーなど、スーパーや通販で幅広く手に入ります。裏面の原材料欄に「さばのふし」または「さば節」と書かれているものが該当します。特に「かつお節+さば節+昆布」の組み合わせは合わせだしの基本形で、味噌汁や煮物のだしとして非常に使いやすいです。
鯖節だしをとった後の出しがらも無駄にしないで活用できます。フライパンで炒り、醤油とみりんで味付けすれば「だしがらふりかけ」として使えます。DHA・EPAが含まれているため、捨てるのはもったいない素材です。
鯖節はだしを取るための食材と思われがちですが、栄養面でも見逃せない素材です。100gあたりのタンパク質含有量は約73.9gと非常に高く、エネルギーは約360kcalです。節として乾燥・濃縮された結果、栄養素が高密度に詰まった状態になっています。
特に注目したいのがEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)です。これらはサバ科の魚に豊富に含まれる必須脂肪酸で、体内では作り出すことができません。EPAは血液をサラサラにして動脈硬化や心筋梗塞のリスクを下げる働きが期待されており、DHAは脳の機能維持や記憶力のサポートに役立つことが知られています。
EPAとDHAは女性にとっても特に意識したい栄養素です。更年期の自律神経の乱れを整えたり、肌の血行を促して美肌・むくみ対策につながるとも言われています。朝食時に摂取すると夕食時より血液中の濃度が高まりやすいという研究もあります。
また、鯖節にはビタミンB12やナイアシンも含まれており、疲労回復や貧血の予防にも役立ちます。鯖節を使っただしでお味噌汁を作るだけでも、これらの栄養素を手軽に毎日の食卓に取り入れられます。これはいいことですね。
| 栄養成分(100gあたり) | 鯖節 | かつお節 |
|---|---|---|
| エネルギー | 360kcal | 356kcal |
| タンパク質 | 73.9g | 77.1g |
| 脂質 | 5.1g | 2.9g |
| 食塩相当量 | 0.9g | 0.3g |
(出典:日本食品分析表)
鯖節はかつお節に比べて脂質が約1.8倍多く、その脂質にEPA・DHAが含まれています。脂質が多い分、保存には注意が必要です。開封後は冷凍保存が鮮度を保つのに最適で、使う分だけ取り出して使えば品質が長持ちします。
サバの栄養と効果まとめ|DHA・EPAを含む驚きの健康効果と注意点(仙令鮮魚市場)
「鯖節はプロの料理人が使うもの」と思っている方も多いかもしれませんが、実は日常の家庭料理にこそ活躍します。かつお節と使い方が少し違うだけで、コツさえつかめば主婦の味方になる食材です。
① 味噌汁・煮物のだしとして
鯖節はコクが強いため、味噌汁のだしに使うと旨みが深まります。特に大根・じゃがいも・豆腐など、味が淡白な食材との相性が抜群です。煮物にも向いており、醤油・みりんで仕上げる筑前煮や肉じゃがに使うと、だしの風味がしっかり素材に染み込みます。つまり「濃い味の料理」には鯖節が一番合います。
② うどん・そばのつゆとして
うどんのつゆには特に鯖節が力を発揮します。関東・関西どちらでも昔からそばやうどんのだしに鯖節が使われてきた歴史があります。市販のめんつゆの多くも実は鯖節が配合されており、あの「コク」の正体が鯖節だったというケースは少なくありません。
③ ふりかけ・トッピングとして
鯖節の削り節をそのままご飯にかけて、醤油をたらすだけでも立派なふりかけになります。また、静岡のおでんでは「だし粉」と呼ばれる鯖節の粉末をトッピングするのが定番で、コクと甘みが料理を引き立てます。スーパーで「さば削り節」として販売されているものを購入し、納豆に混ぜたり冷奴にかけるだけでも日々の食卓に取り入れやすいです。これは意外と知られていない活用術です。
鯖節を単独で使うと生臭さが気になる場合があります。そのようなときは、かつお節やいりこと合わせて「混合だし」にするのがおすすめです。臭みを補いながら、互いの旨みを引き出しあうことができます。だしパックを使う場合は、最初から複数の節が配合された商品を選ぶのが最もハードルが低く、手軽に始められる方法です。
その他の節(雑節)について詳しく解説|株式会社にんべん(創業300年以上の鰹節専門メーカー)