

スーパーのスープパスタを毎回「ただ茹でるだけ」で出していると、家族に飽きられて損します。
「ミスタコルタ」という名前を初めて見たとき、「変わった名前のパスタだな」と感じた方も多いはずです。実はこの名前、イタリア語がそのまま商品名になっています。「ミスタ(Mista)」は「混ぜた・ミックスの」、「コルタ(Corta)」は「短い」という意味で、つまり「短いパスタのミックス」を指しています。
このパスタの面白い点は、もともとは商品として作られたものではなく、ナポリの家庭料理の知恵から生まれたものだということです。南イタリアのナポリ周辺では昔から、台所に残った様々な種類のパスタを一緒に鍋に入れてスープ料理にする習慣がありました。フジッリ、ペンネ、コンキリエなど、種類も形も違うものが混在している状態がむしろ当たり前だったのです。それが今では「ミスタコルタ」として商品化され、意図的に複数形状がブレンドされた状態で販売されています。
代表的なブランドはナポリ近郊の町グラニャーノに拠点を置く「ディ・マルティーノ社」の製品(No.184)です。グラニャーノはパスタの聖地として知られ、500年以上の製麺の歴史を持ちます。同社のミスタコルタは茹で時間10〜11分が目安で、1袋500gで販売されています。
つまりミスタコルタとは「余り物の知恵」が商品になったパスタです。
知っておくと食材への見方が変わりますね。
ディ・マルティーノ社の公式紹介(モンテ物産):IGP認証やブロンズダイスなどの詳細情報が掲載されています
スーパーで売っている安いパスタとミスタコルタのようなグラニャーノ産パスタは、何がそんなに違うのでしょう?実はこの差は「製法」の違いに集約されます。
まずグラニャーノI.G.P.(地理表示保護)認証について説明します。IGPはEUが認定する品質保証のマークで、特定の地域で特定の製法に従って生産されたことを証明するものです。パスタでこの認証を受けているのは、グラニャーノ産パスタのみとされています。認証の条件は主に3つあります。①グラニャーノの町での生産、②ブロンズ製のダイスを使用、③タンパク質(プロテイン)含有量13%以上。ディ・マルティーノ社は自社基準として14%以上をクリアしています。
次に「ブロンズダイス」の話です。ブロンズダイスとは、パスタを成形するときに使う青銅製の押し出し型のことです。多くの量産品パスタではステンレス製のダイスが使われています。ステンレスで作ると表面がツルツルに仕上がるのに対し、ブロンズダイスで作ると表面がザラザラになります。このザラザラが非常に重要で、ソースや煮汁がパスタ表面に絡みやすく、一口ごとに味わいが深まるのです。
低温長時間乾燥も外せません。高温で急いで乾燥させると小麦本来のタンパク質やアミノ酸が失われてしまいます。ゆっくり時間をかけて乾燥させることで、小麦の香りと旨みがパスタの中に留まります。
これが基本です。
つまりIGP認証パスタは「産地・製法・原料」のすべてにこだわった、言わば「パスタの最高基準」を満たした製品だと言えます。タンパク質が14%という数値は、一般的なパスタの平均11〜12%に比べてひと回り高く、これがアルデンテを長く維持できる理由でもあります。
カ・モンテ:ディ・マルティーノ ミスタ・コルタ商品ページ。IGP認証・製法・栄養情報の詳細が確認できます
ミスタコルタが最も生きるレシピが「パスタ・エ・ファジョーリ(Pasta e Fagioli)」です。イタリア語で「パスタと豆」という意味そのままの料理で、ナポリを代表する冬の家庭料理です。日本で言えば豚汁のような、体を温める定番の煮込み料理に相当します。
材料(2人分)はこちらです。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| ミスタコルタ | 160g |
| ボルロッティ(うずら豆)水煮 | 400g |
| タマネギ | 1/2個 |
| セロリ | 1/2本 |
| ニンジン | 1/2本 |
| ニンニク | 1/2片 |
| オリーブオイル | 大さじ2.5 |
| 塩・コショウ | 適量 |
| イタリアンパセリ(みじん切り) | 適量 |
作り方の流れはシンプルです。
ポイントは工程⑤です。お湯で別茹でするのではなく、スープの中でパスタを直接炊き込む点がイタリア流です。こうすることでパスタがスープの旨みを吸い込み、より深い味わいになります。
これは使えそうです。
うずら豆はボルロッティ豆が本格ですが、手に入らない場合は白いんげん豆の水煮(市販缶詰)でも十分おいしく作れます。ベーコンを少量加えるとコクが増すのでおすすめです。ミスタコルタがない時は、手元のロングパスタを4cmほどに折ってオリジナルミックスにするのもアリです。
モンテ物産公式レシピ:パスタ・エ・ファジョーリの詳細手順と合わせるワインも掲載
パスタ・エ・ファジョーリに並んでナポリ伝統のミスタコルタ活用法が、「じゃがいもとチーズのパスタ(Pasta e Patate con Provola)」です。これはあまり日本では知られていませんが、ナポリでは秋冬の定番メニューのひとつです。
素材はじゃがいも・ミスタコルタ・チーズだけとシンプルながら、トロトロに溶けたチーズとじゃがいものとろみがパスタに絡む、満足感の高い一品です。本場ではプローヴォラという牛乳のモッツァレラを熟成・スモークさせたチーズを使いますが、日本ではスモークチーズや溶けるチーズで代用できます。
作り方の基本的な流れはこうです。
この料理の面白いポイントは「じゃがいものでんぷんがスープをとろとろにする」点です。スープのとろみに異なる形状のミスタコルタが絡まると、一口ごとに違う食感を楽しめます。フジッリ型はとろみをよく抱え込み、ペンネ型は中に具材が入り込む感じが楽しいです。
ミスタコルタならではの食感が条件です。
このレシピの魅力は予算が安く済むことです。じゃがいも・チーズ・パスタと、どこのスーパーでも手に入る食材で作れます。2人分の材料費は概ね300〜400円程度に収まります。料理しながら「こんなシンプルな材料でこれだけ美味しくなるの?」と驚くはずです。
料理研究家ブログ:ナポリ伝統のパスタ・ミスタ・コルタを使ったじゃがいもチーズパスタの詳細解説
ミスタコルタを実際に使うにあたって、知っておくと便利な情報をまとめます。
保存方法について
乾麺のミスタコルタは未開封の状態であれば常温保存が可能で、賞味期限は通常2〜3年と長めに設定されています。開封後はジッパー付き袋や密封容器に移して保管し、高温多湿を避ければ問題ありません。湿気を吸うとカビの原因になるため、水回りの近くへの保管は避けましょう。
茹で方のコツ
ミスタコルタはパスタ・エ・ファジョーリのようなスープ料理では「スープの中に直接入れて炊く」のが正しいナポリ流ですが、サラダやグラタンなどに使う場合は別茹でが必要です。その際の茹で時間の目安は10〜11分です。
短文で言えば「塩と湯量が基本です」。
ミスタコルタはスープの中でゆっくり火を入れると、でんぷんが溶け出してスープにとろみが加わるという特性があります。これはミスタコルタをスープ料理に使う最大の理由のひとつで、別茹ではせずに直接投入する調理法が理にかなっています。
どこで購入できるか
国内での入手方法はいくつかあります。
500g入り1袋が500〜600円程度で購入できるため、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。同価格帯の国産パスタと比較しても、ブロンズダイス・IGP認証という付加価値を考えれば、むしろ割安感があります。
まとめると、スープ料理への活用と通販購入が最もおすすめの使い方です。
ミスタコルタ パスタは「見た目が地味でも、使うと世界が変わる」食材です。複数の形状が混在しているため、スープの中で食感が多彩になり、毎ひと口が少し違うのが楽しいポイントです。ナポリの家庭では余り物の知恵から生まれたパスタが、今やIGP認証を受けた本格食材として世界中のテーブルに並んでいます。定番のパスタ・エ・ファジョーリから、じゃがいものチーズ煮込み、グラタンへのアレンジまで、一袋あるだけで料理の幅が広がります。まずは通販で1袋お試しから始めてみてください。