鯨汁の地域と正月・夏の食べ方や伝統の違いを比較

鯨汁の地域と正月・夏の食べ方や伝統の違いを比較

鯨汁の地域ごとの違いと伝統・正月や夏の食べ方を徹底比較

実は鯨汁は「冬の季語」なのに、新潟では真夏に食べるスタミナ食として根付いています。


🐋 この記事でわかること
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鯨汁を食べる地域はどこ?

北海道道南・青森・岩手・山形・新潟・福島・島根など、実は日本各地に鯨汁文化が存在します。

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地域によって季節も具材も全然違う!

北海道は正月の冬料理、新潟・山形は夏のスタミナ食。具材も根菜から夏野菜まで地域差があります。

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塩くじらはどこで買えるの?

地元のスーパー以外でも、楽天・Yahoo!ショッピングなどの通販で全国から取り寄せ可能です。


鯨汁の地域分布と北前船による広がりの歴史


鯨汁と聞いて「どこかの地方の郷土料理だろう」と思う方は多いでしょう。しかし実際には、北は北海道から南は島根まで、驚くほど広い範囲で独自の形で受け継がれています。


かつては日本各地でごく普通に食べられていた庶民の料理でした。江戸時代、鯨汁1椀の値段は16文で、当時の蕎麦1杯と同じ価格だったと記録されています。それほど身近で、庶民のソウルフードだったのです。


鯨汁がこれほど広い地域に根付いた背景には、「北前船」の存在があります。江戸後期から明治にかけて、西日本で獲れたクジラの肉は塩漬けにされ、北前船に積まれて日本海沿岸各地に運ばれました。新潟・山形・青森・北海道の道南地方へと、保存の効く塩くじらが流通したことで、海から離れた山間部の地域にまで鯨汁文化が定着していったのです。つまり、沿岸部に限らず内陸の家庭にも届いていたというわけです。


現在確認されている主な鯨汁の伝承地域は、北海道(道南:函館・松前・江差)、青森(八戸市・下北半島)、岩手(九戸郡)、山形(県内全域)、新潟(中越・下越地方)、福島(会津地方)、島根などがあります。それぞれの地域で味付けも食べる季節も異なるのが面白いところです。


日本の商業捕鯨は1988年にいったん禁止となり、2019年に再開されるまで長い空白期間がありました。この間に若い世代へのクジラ食文化の継承は難しくなりましたが、各地では学校給食のメニューとして取り入れるなど、伝統を絶やさない取り組みが続いています。


農林水産省「うちの郷土料理」では、北海道・青森・山形・新潟の鯨汁が登録されています。各地域の詳しいレシピや由来も確認できます。


農林水産省「うちの郷土料理」検索ページ(各地域の公式レシピを確認できます)


鯨汁の地域ごとの具材・味付けの違い一覧

同じ「鯨汁」という名前でも、地域によって具材も味付けも大きく異なります。これが知られていないと、初めて作るときに「正解がわからない」という状況になりがちです。ここで地域別の違いを整理しておきましょう。


まず北海道道南(函館・松前・江差)では、塩くじらの脂身に大根・人参・ごぼう・わらび・ふき・豆腐・こんにゃくを合わせます。味付けは醤油仕立てが基本ですが、家庭によって味噌仕立てにすることもあります。何度も温め直して三が日かけて食べるため、煮崩れしにくい根菜や山菜が選ばれているのが特徴です。


青森(八戸・下北半島)は、かつて八戸市に捕鯨基地があったことからクジラ食文化が発達した地域です。根菜たっぷりの具だくさんが特徴で、大根・人参・ごぼう・じゃがいもなどを入れます。正月には焼いた角を加えて「くじら雑煮」にする風習もあります。


山形では県内全域で「塩くじら汁」として親しまれています。地域によって呼び方が異なるのも面白いポイントです。


| 地域 | 呼び名 | 主な具材 | 食べる季節 |
|------|--------|----------|------------|
| 北海道道南 | くじな汁 | 大根・人参・ごぼう・わらび・豆腐 | 正月(冬) |
| 青森 | くじら汁/くじら雑煮 | 根菜・じゃがいも・角餅 | 正月(冬) |
| 山形(村山) | いるか汁 | なす・じゃがいも・サヤインゲン | 夏 |
| 山形(最上) | もぎりみず汁 | 山菜(ミズ)・夏野菜 | 夏 |
| 新潟(新潟市周辺) | くじら汁 | 丸なす・みょうが・玉ねぎ | 夏 |
| 新潟(中越) | くじら汁 | ゆうがお・なす | 夏 |
| 福島(会津) | くじら汁 | じゃがいも・こんにゃく・玉ねぎ | 夏・秋 |


新潟では丸なすを使うのが地元らしい一工夫です。中越地方ではゆうがお(夕顔)を入れるなど、地元で採れる旬の野菜が自然に組み合わさっています。同じ新潟でも地域によって具材が変わるのが興味深いですね。


農林水産省の山形県版レシピでは、塩くじらの下処理から仕上げまで丁寧に解説されています。


農林水産省「塩くじら汁 山形県」公式レシピ(下処理の詳細も確認できます)


鯨汁の正月料理としての由来と縁起の意味

北海道道南で鯨汁が正月料理として定着しているのには、明確な歴史的理由があります。これを知っておくと、単なる食事以上の深みが感じられます。


江戸後期から明治時代にかけて、函館・松前・江差から利尻に至る日本海沿岸は、ニシン漁で栄えていました。その漁師たちの間で「クジラが来るとニシンが岸に寄る」という言い伝えがあり、クジラは豊漁をもたらす神様のような存在として崇められていたのです。縁起の良い動物だということです。


そのため、新春のニシン漁の豊漁を願って正月に鯨汁を食べる習慣が生まれました。また「大きなクジラにあやかって大物になるように」という願いも込められ、年越しや正月三が日に家族そろって大鍋の鯨汁を食べるのが道南の正月の風景となりました。


正月三が日に同じ鍋を何度も温め直して食べるスタイルは、理にかなっています。冷蔵庫のない時代、塩くじらと根菜の組み合わせは保存性が高く、元日から三日間かけて少しずつ食べ進められる実用的な料理でもありました。煮崩れしない大根・人参・ごぼうが選ばれてきた理由もここにあります。


青森でも同様に「大きな獲物にありつけるように」「大物になるように」という縁起担ぎとして正月に食べる慣習があります。地域は違っても、クジラへの敬意と新年への祈りが重なっているのは共通しているのです。


地元の年配の方々の間では今も根強い文化ですが、鯨肉の入手機会が減った現代では正月以外に家庭で作られることはほとんどなくなっています。道南の鯨汁文化については、函館市公式観光情報サイトや北海道栄養士会でも詳しく紹介されています。


北海道栄養士会「くじら汁」(道南の正月料理としての由来を詳しく解説)


鯨汁が新潟・山形で夏のスタミナ食になった理由

「鯨汁は冬の料理」という常識を持っている方にとって、新潟や山形で夏に食べると聞くと不思議に感じるかもしれません。しかしこれには、きちんとした理由があります。


クジラの皮の脂身には、体に良いとされる不飽和脂肪酸(DHA・EPA・DPAなど)が豊富に含まれています。特にDPA(ドコサペンタエン酸)はEPAやDHAと比較して10倍以上の血流改善効果があると報告されており、これが夏バテ防止のスタミナ食として重宝された根拠となりました。高温多湿で厳しい夏を乗り切るための食の知恵が、鯨汁にぎゅっと詰まっているということです。


新潟では夏、なすやみょうが、ゆうがおといった夏野菜と塩くじらを合わせた味噌仕立てで食べます。地元のスーパーでも夏場になると塩くじらが鮮コーナーに並ぶほどで、居酒屋でもメニューとして提供されます。朝日新聞の2023年の記事でも「暑い季節こそ鯨汁」というテーマで新潟の食文化が紹介されています。


山形でも夏野菜(なす・じゃがいも・サヤインゲン)と組み合わせて食べるスタイルが定着しています。塩漬けのクジラは保存が効くため、海のない内陸の山間地にまで北前船を経由して届き、冷蔵設備のない時代でも安心して使えるタンパク源として定着したのです。


会津(福島)でも夏バテ防止と秋の新米収穫後に食べる風習があります。新米で作った「しんごろう(エゴマ味噌を塗って焼いたおにぎり風の料理)」と一緒に鯨汁を合わせて食べるのが会津の秋の味覚です。塩分と脂肪分を適度に補給できる組み合わせとして先人の知恵が息づいています。


くじらの栄養成分について詳しく知りたい場合は、以下のページが参考になります。


くじらタウン「くじらの栄養・調理情報局」(DPA・DHA・EPAなどの栄養価を詳しく解説)


鯨汁を家庭で作るための塩くじら入手と下処理のポイント

鯨汁を作りたいと思っても、塩くじらがどこで手に入るのかわからないという方は少なくありません。実は地元のスーパーでは取り扱いがない場合でも、いくつかのルートで手に入れることができます。


まず入手方法ですが、新潟・函館・八戸など鯨汁文化のある地域のスーパーでは夏や年末に鮮魚コーナーに並ぶことがあります。一方、それ以外の地域ではネット通販が確実です。楽天市場やYahoo!ショッピングでは「塩くじら」「塩皮鯨」で検索すると複数の専門店から取り寄せが可能です。下関の鯨専門店「関太郎」や長崎の「くじら日和」、千葉のハクダイ食品など、各地の専門店が冷凍で発送しています。100gあたり1,000〜1,500円程度が相場です。


次に、最も重要な下処理のポイントを押さえましょう。塩くじらはそのままでは塩分が非常に強く、脂も多すぎて食べにくくなります。下処理が肝心です。


  • 🧂 塩抜き:表面の塩を水で洗い流し、ぬるま湯(約38℃)に10〜30分浸けて塩分を抜く。お湯が白っぽくなるのが塩が抜けたサイン。
  • 🔥 茹でこぼし:熱湯で1〜2回ゆでこぼすことで余分な脂と臭みを取り除く。これを省くとしつこくなりやすい。
  • 🔪 薄切り:2〜3mm程度の薄切りにすることで、汁に脂とうま味がしっかり溶け出す。


下処理後の塩くじらを汁に入れると、溶け出した脂がコク深いスープを作り出します。新潟スタイルでは塩くじらに小麦粉をもみ込んでから水で洗い流す一工夫もあり、脂がよく絡んで汁にとろみが出るのが特徴です。これは使えそうです。


塩くじらの脂身(皮付き)100gあたりの栄養成分は、熱量689kcal・たんぱく質9.7g・脂質49.6g・食塩相当量15.1gとなっています(丸宗水産の製品例)。脂質と塩分がかなり高いため、下処理でしっかり塩と脂を落とすことが健康面でも重要です。一方で鯨の赤肉はたんぱく質24.1%・脂質0.4%と非常に低脂肪・高たんぱくで、コレステロールも牛のサーロインの38mgに対し同量で38mgとほぼ同水準です。


塩くじらの下処理方法の動画解説は、くじらタウンの公式PDFでも確認できます。


くじらタウン「塩くじらのもどし方」(下処理の手順を図解で説明)


鯨汁の地域ごとの違いを活かした「わが家流アレンジ」の提案

各地のレシピを知ると、「どのスタイルで作ればいいの?」と迷ってしまうかもしれません。実は地域のスタイルを混ぜてアレンジするのが、現代の家庭料理としての鯨汁の楽しみ方のひとつです。


基本的な考え方はシンプルです。塩くじらの脂身と好みの野菜を、だし汁で煮て味噌か醤油で味をつけるだけです。それだけ覚えておけばOKです。


季節ごとのアレンジ例としては、夏は新潟・山形スタイルを参考に、なす・みょうが・じゃがいもを入れた味噌仕立てがおすすめです。さっぱりとした夏野菜がクジラの脂のコクを引き立て、スタミナが出る一品になります。みょうがは仕上げに加えると爽やかな風味がアクセントになります。


冬や正月には北海道道南スタイルを参考に、大根・人参・ごぼうにわらびや豆腐を加えた具だくさんの醤油仕立てがぴったりです。煮崩れしにくい根菜を選べば、お正月三が日を通して温め直して食べられます。


一つだけ独自のポイントを加えるなら、「くじら雑煮」への応用です。青森スタイルを参考に、正月にくじら汁の中に焼いた角餅を入れる食べ方は、他の地域の方には馴染みがなくても試してみる価値があります。クジラのコクとお餅の組み合わせは食べ応えがあります。


塩くじらの入手が難しい場合、くじらタウンや関太郎など鯨専門のECサイトでは、用途に応じて皮付き脂身(本皮)と赤肉(赤身)を選んで購入することができます。本皮はくじら汁専用、赤肉は竜田揚げステーキに向いています。まず本皮(塩くじら)を100g程度取り寄せて試してみることをおすすめします。


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