

脂たっぷりの鯨本皮は、たった約13gで1日分のDHA・EPAが摂れます。
鯨本皮(ほんかわ)とは、鯨の背中側の表皮とその直下にある皮下脂肪層がセットになった部位のことです。背中の黒い皮が付いているため、見た目は黒と白のコントラストが特徴的で、一切れのカステラのような断面になっています。部位の厚さはおよそ2〜5cm(指2〜4本分の厚み)あり、ずっしりとした存在感があります。
鯨の体全体を覆う脂肪層のうち、背側(頭から尾にかけて)の黒い部分が「本皮」と呼ばれ、腹側の白い部分は「畝須(うねす)」と呼ばれ区別されます。本皮は脂肪分とゼラチン質で構成されており、コリコリとした独特の弾力と、噛むほどに広がるまろやかな甘みが魅力です。クセや臭みが少なく、生食でも煮物でも楽しめます。
| 部位名 | 場所 | 色 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 本皮(ほんかわ) | 背側(頭〜尾) | 黒皮+白脂肪 | 刺身・汁物・煮物 |
| 畝須(うねす) | 腹側(へそ〜尾) | 白〜薄いピンク | 鯨ベーコン・刺身 |
| コロ(干し皮) | 本皮を加工したもの | 茶色〜黒 | おでん・うどん出汁 |
本皮は1頭の鯨から取れる量が限られており、中でも刺身に使えるほど品質の高いものはミンク鯨からわずかしか取れません。鯨専門店では「刺身用本皮はミンク鯨1頭からごくわずかしか採れない貴重品」とされるほどです。そのため、市場に出回る本皮の多くは加熱用として流通しています。貴重な部位だと知っておくと、購入する際の判断基準になりますね。
鯨本皮は「塩皮鯨(しおかわくじら)」として塩漬けにされた状態で売られることもあります。昔ながらの保存食として1ヶ月ほど塩に漬け込んだもので、くじら汁に入れると豚汁の豚肉のような役割を果たし、深いうまみを出してくれます。塩漬けと生・冷凍の違いを知っておくと、レシピに合わせた選び方ができます。
日本鯨類研究所:鯨の部位と栄養成分について(権威ある研究機関による解説)
鯨本皮が「栄養の宝庫」と言われる最大の理由は、DHA・EPA・DPAという3種類のオメガ3脂肪酸が非常に豊富な点にあります。文部科学省の日本食品標準成分表によると、鯨本皮100gあたりのカロリーは577kcalで、脂質は68.8gと高めですが、その脂の質が問題ではなく「どんな脂か」が重要です。
鯨の皮には100gあたりDHA+EPAが合計約7,700mgと大変豊富に含まれています。これは、約13g(名刺よりひとまわり小さな一切れ)を食べるだけで、厚生労働省が推奨する1日のDHA・EPA目標摂取量(約1,000mg)を軽く超える計算です。青魚の代表格であるサバの水煮缶1缶(約190g)に含まれるDHA・EPA合計が約5,000mg前後とされる点と比較すると、鯨本皮の密度の高さがよくわかります。
さらに、鯨は海に棲む哺乳類であるため、陸の動物にはない「DPA(ドコサペンタエン酸)」という成分を豊富に持っています。DPAの血行改善効果はEPA・DHAの10倍以上とも報告されており、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞の予防効果が期待されます。これは意外ですね。
コラーゲンが豊富な点も、本皮ならではの特徴です。鯨本皮のぷるぷるした食感そのものが、コラーゲンの豊富さを示しています。一方でカロリーは高めなので、食べすぎには注意が必要です。1日に食べる量の目安は20〜30g(名刺1〜2枚分)程度が適当でしょう。
くじらジャパン:鯨の皮のDHA・EPA含有量と1日の摂取目安量について(具体的な数値解説)
鯨本皮を初めて扱うとき、多くの方が心配するのが「臭みが出ないか」という点です。結論は、正しい下処理をすれば臭みはほぼ気になりません。下処理の手順が基本です。
冷凍で購入した本皮は、完全に解凍すると柔らかくなりすぎて切りにくくなります。まず半解凍の状態でお好みの厚さにスライスするのが鉄則です。薄く切るほどやわらかく食べやすく、厚く切るほどコリコリした食感が楽しめます。
刺身として生食する場合の手順はシンプルです。
汁物や煮物に使う場合は、湯引きに加えて「塩もみ」の工程を加えると効果的です。具体的には、湯引きして氷水でしめた本皮の表皮(黒い部分)をそぎ落とし、多めの塩をまぶして30分ほど置き、水洗いしてから使います。これにより余分な脂と独特のにおいが取れ、出汁に上品なうまみだけが残ります。
臭みをさらに消したいときは、調理酒を加えたお湯で湯引きする方法も有効です。お湯に対して大さじ1〜2程度の料理酒を入れて沸かし、そこに本皮をくぐらせるだけで効果があります。これは使えそうです。
くじら専門店いさな家:くじら汁の作り方(本皮の下処理手順が詳細に掲載)
鯨本皮は、その豊かなうまみと脂のコクから、さまざまな料理に応用できる万能食材です。代表的な4つの食べ方を押さえておくと、家庭料理の幅が広がります。
🔪 刺身(生食):下処理した本皮を薄切りにし、鯨の赤身肉と交互に重ねて盛り付けます。赤身単体では脂が少なくあっさりしすぎることがありますが、本皮と重ねて一緒に食べると尾の身(高級部位)のようにとろける食感になります。生姜醤油・ポン酢・辛子酢味噌がよく合います。
🍲 くじら汁(鯨汁):日本各地に伝わる郷土料理で、豚汁の豚肉の代わりに本皮を使ったイメージです。大根・にんじん・ごぼう・里芋などの根菜と一緒に煮込み、味噌で仕上げます。本皮から出る脂と出汁が野菜に染み込み、深みのある味わいになります。農林水産省の「うちの郷土料理」にも山形県の「塩くじら汁」として紹介されているほど、日本に根付いた料理です。
🥘 大根煮・煮物:砂糖・醤油・出汁で本皮と大根を一緒に煮る料理は、長崎や下関など鯨食文化の盛んな地域で昔から食べられています。弱火でじっくり煮込むほど本皮がやわらかくなり、脂が大根に染み込んでホロホロの食感になります。串を刺してすっと入るくらいが煮上がりの目安です。
🍢 おでん:鯨本皮を加熱して脂肪分を落とし乾燥させた「コロ(干しコロ)」もおでんの定番具材ですが、加熱前の本皮ブロックをそのままおでん鍋に加えても絶品です。昆布だし・醤油・みりんのおでんスープに本皮の旨みが溶け込み、大根や卵にもうまみが移ります。
農林水産省「うちの郷土料理」:山形県の塩くじら汁(塩くじらを使った郷土料理の詳細レシピ)
鯨本皮を扱い始めると、「コロ」や「塩皮鯨」など似たような商品と混同しがちです。それぞれの違いを理解すると、料理の目的に応じた選び方ができます。これが条件です。
「コロ」とは、鯨の本皮を加熱して脂肪分をある程度抜いた後に乾燥・加工した製品のことです。見た目は茶色〜黒色で固く、そのままでは食べられません。水で戻してから煮込むと大きく膨らみ(戻すと元の3〜4倍になることも)、おでんやうどんのトッピングとして使われます。本皮から脂の多くを抜いているため、カロリーは低めになりますが、出汁を吸い込む力が強く、料理に深みを出す脇役として優秀です。
「塩皮鯨(塩くじら)」は、本皮を約1ヶ月かけて塩に漬け込んだ保存食です。使う際はしっかりゆでこぼしをして塩分と臭みを抜く必要があります。くじら汁や煮物の具として昔から重宝されてきた食材で、独特の発酵した旨みがあります。
一方、通販などで手に入る「生(冷凍)本皮ブロック」は、加工していない状態のため脂質が最も豊富で、刺身や軽い湯引き料理など素材の味を活かした料理に向いています。
| 種類 | 状態 | 主な用途 | 下処理 |
|---|---|---|---|
| 生(冷凍)本皮 | そのまま冷凍 | 刺身・汁物・煮物 | 湯引き・塩もみ |
| 塩皮鯨(塩くじら) | 塩漬け約1ヶ月 | くじら汁・煮物 | ゆでこぼし |
| コロ(干しコロ) | 加熱脱脂→乾燥 | おでん・うどん | 水戻し→煮込み |
家庭での使い分けのコツは「料理の主役にするか脇役にするか」で決めることです。刺身や煮物の主役として使うなら生(冷凍)本皮、くじら汁や鍋物のうまみ出しに使うなら塩皮鯨かコロを選ぶと失敗しにくいです。塩皮鯨なら問題ありません。
購入先については、一般のスーパーでは鯨肉の取り扱い自体が限られていることが多く、本皮となるとさらに入手困難な場合があります。通販であれば、「くじら日和」「くじらにく.com」「いさな家(ISANAYA)」などの鯨専門店が信頼できます。価格帯は生本皮ブロック約100gで870円〜、約150g〜200gで1,500円〜3,700円程度が目安です(送料別)。初めて購入するなら少量のブロックタイプが試しやすいです。
くじらタウン(一般財団法人日本鯨類研究所 公認サイト):くじらの栄養・調理情報(部位別の栄養成分と料理のヒントが詳しく掲載)