

実は米ナスは水にさらすと栄養が逃げて損をします。
米ナスは、アメリカ原産の「ブラックビューティー」という品種を日本向けに改良したナスです。ヘタが緑色で、ころんと丸くずんぐりとした形が特徴で、一般的な長ナスと比べてかなり大ぶりです。大きさで言うと、直径8〜10cm程度、重さは350〜500g前後になるものも珍しくありません。はがきほどの幅に収まらないくらい存在感があります。
果肉はしっかりとしていて煮崩れしにくく、加熱するとねっとりとしたクリーミーな食感に変わります。これが田楽との相性抜群な理由のひとつです。一般的なナスで田楽を作ると火通りが早い反面、すぐにくたっとしてしまうことがあります。しかし米ナスは肉厚ゆえにじっくり加熱できて、甘みと旨味が凝縮しやすいのです。
田楽に向いている理由がもうひとつあります。アクが少ない品種だということです。つまり下ごしらえが基本です。加熱調理に使う場合は水さらし不要で、切ってすぐオーブンへ入れることができます。実はナスを水にさらしてしまうと、皮に含まれる「ナスニン」という水溶性のポリフェノールが流れ出てしまいます。ナスニンは強力な抗酸化作用を持ち、動脈硬化や老化を防ぐとも言われています。知らずに長時間水につけていると、せっかくの栄養素を捨てているのと同じことになります。
旬は夏、7〜9月ごろです。この時期はスーパーで手ごろな価格で手に入ることが多く、家庭料理でもっと活躍させたい食材のひとつと言えるでしょう。
なすのアクや栄養については、こちらのDelishKitchen記事でも詳しく解説されています。
材料はシンプルです。2人分で、米ナス1本、みそ大さじ1と1/2、みりん大さじ1、砂糖小さじ1、酒大さじ1、ごま油大さじ2があれば作れます。ほかに仕上げ用の白ごまや薬味のネギを用意しておくと、見た目もグッと引き締まります。
下ごしらえで大事なのは「格子状の切り込み」です。米ナスを縦半分に切ったら、まず皮の縁に沿って1周切り込みを入れます。続けて果肉部分にたて・よこと格子状に深く切り込みを入れてください。格子の間隔は1〜1.5cmほどが理想です。深さは皮に達するギリギリまで入れるイメージで、浅すぎると油と味が内部まで届きません。
切り込みを入れたら格子部分にごま油をかけます。ごま油が切り込みの中に入り込むようにすることがポイントです。ごま油を塗ることで表面の乾燥を防ぎ、香ばしい風味ととろっとした仕上がりに近づきます。ここで役立てたいのが料理用のシリコンブラシです。刷毛で塗るように全体に広げると油が均一に行き渡ります。
一方、ナスを水にさらしたり、塩をふってしばらく置いたりする必要はありません。これが基本です。調理直前に切ってすぐ油を塗り、オーブンへ入れる、このスピード感が米ナス田楽を美味しく作るコツです。切り口が空気にさらされる時間が短いほど変色も防げます。
なお、電子レンジで先に少し加熱しておく方法も有効です。600Wで約2分間ラップをかけて蒸しておくと、オーブンでの焼き時間を短縮でき、ナスの中まで均等に火を通しやすくなります。
田楽味噌の失敗で一番多いのが「焦げ」です。砂糖やみりんを含む味噌は非常に焦げやすく、最初からナスの上に塗った状態でオーブンに入れると、ナスに火が通る前に味噌だけが黒く焦げてしまいます。これは痛いですね。だからこそ「先にナスを焼き、後から味噌を塗る」という順序が原則です。
田楽味噌の黄金レシピは次のとおりです。
これを混ぜ合わせ、電子レンジ600Wで1分ほど加熱してから使うと、まろやかさが増してナスへの馴染みが良くなります。みその種類は「合わせ味噌」が最も扱いやすく、どんな家庭にもある定番です。コクを出したいなら赤みそをベースにするのがおすすめで、まろやかさや甘みを求めるなら西京みそを少し加えるのも一手です。赤みそに西京みそを1:1で合わせると、深い甘みとコクが両立します。
塗るタイミングは、210℃のオーブンでナスを20〜25分焼いた後です。一度取り出して田楽味噌を格子部分にたっぷり塗り、再びオーブンに戻してさらに5〜8分焼けば完成です。2回に分けて焼くことで、ナスはしっかりトロトロに仕上がり、味噌は焦がさずに香ばしく仕上げられます。これが条件です。
仕上げに白ごまをたっぷり散らすと香りが増します。千切りの青ジソをのせると彩りも良く、食卓に映える一皿になります。
田楽みそについての詳しい解説はこちらも参考になります。
オーブンで米ナスの田楽を作るときの最大の悩みは「ちゃんと中まで火が通っているか」という点です。中が生焼けだと食感が固く、まったくトロトロになりません。かといって焼きすぎると崩れすぎてしまいます。どいうことでしょうか?
基本の温度と時間の目安はこちらです。
| 工程 | 温度 | 時間 |
|---|---|---|
| ①予熱 | 210〜230℃ | 5〜10分(事前に実施) |
| ②ナスのみ焼き(第1フェーズ) | 210℃ | 20〜25分 |
| ③味噌を塗って追加焼き(第2フェーズ) | 210℃ | 5〜8分 |
なお、事前に電子レンジで2分加熱してからオーブンに入れる場合は、①②の工程をそれぞれ5分程度短縮できます。総調理時間はレンジ下ごしらえあり・なしで異なりますが、おおよそ30〜40分が目安です。
火通りの確認は竹串または細い箸を使います。ナスの中央に刺して「すっと抵抗なく入る」なら完成のサインです。まだ少し固さがある場合は5分追加してください。一般的な長ナスに比べ、米ナスは肉厚なぶん火が通りにくいため、少し長めに設定するのが安心です。
予熱はかならずしてください。予熱なしで入れると温度が安定するまでの間に「外は乾燥、中は生」という状態になりやすく、仕上がりがパサつきます。予熱ありとなしでは食感に大きな差が出ます。これは使えそうです。
もうひとつのポイントは耐熱皿の選択です。深さのある耐熱皿に皮面を下に向けて並べると、果肉面の水分が飛びすぎず、ジューシーさを保てます。天板にクッキングシートを敷いて置く方法でも問題ありませんが、周囲への油と汁の飛び散りが少ない耐熱皿の方が後片付けは楽です。
基本の田楽が作れるようになったら、次はアレンジです。米ナスはどんな食材とも相性が良く、バリエーションを広げやすい素材です。いいことですね。
まず人気の「味噌チーズ田楽」です。田楽味噌を塗った後にピザ用チーズを大さじ2〜3ほど散らし、再びオーブンで5〜8分焼くだけです。チーズがとろけて味噌と一体化し、コクと旨味が倍増します。子どもにも好まれやすく、夕食のおかずとして食卓に出しやすいアレンジです。
次に「肉みそ田楽」です。フライパンで豚ひき肉(100〜150g)を炒め、田楽味噌ダレで味つけした「肉みそ」を作り、焼き上げた米ナスの上にたっぷりのせます。ボリュームが増してメインのおかずになります。ご飯が2杯は進む力強い一品です。
献立への取り入れ方としては、米ナス田楽をメインに据えて、汁ものと白米、さっぱりした副菜(冷奴やおひたし)を合わせると夏らしい定食になります。油を使いすぎないオーブン仕上げなのでカロリーも比較的抑えられています。夏場に食欲が落ちがちなときでも、みその香りとナスの甘みで食が進みます。
田楽は冷やしても美味しい料理です。作り置きとしても活用できます。粗熱を取ってから密閉容器に入れ、冷蔵庫で2〜3日間保存可能です。翌日のお弁当の一品にも使えます。ただし電子レンジで再加熱する場合は、味噌が固まりやすいため600Wで30〜40秒ほど短時間で温めるようにしてください。
米ナスは価格が普通のナスより少し高め(1本150〜300円前後)ですが、1本でふたり分のおかずが完成します。コスパは悪くありません。特売日に買ったときにオーブン田楽を仕込んでおくと、食卓に変化が生まれて飽きのこない夕食づくりにつながります。
「米なすのみそチーズ焼き」- みんなのきょうの料理(NHK)|味噌とチーズの組み合わせを使った米ナスの実践的アレンジレシピ