

実は、生のトマトで作るガスパチョよりもトマト缶で作った方がリコピンの吸収率が高くなります。
ガスパチョとは、スペインのアンダルシア地方で生まれた冷製野菜スープのことです。トマトを主役に、きゅうり・ピーマン・玉ねぎ・にんにくなどの生野菜をミキサーで攪拌し、オリーブオイルと酢で味を整えた料理で、「飲むサラダ」とも呼ばれています。
実は1200年以上の歴史を持つ料理で、もともとはローマ時代に起源をもつとされています。ただし、当初の姿は現在のものとは全く異なっていました。最初のガスパチョは「パン+にんにく+塩+酢+水」だけという、非常にシンプルな構成でした。現在馴染み深いトマトやきゅうりが加わったのは、実は19世紀になってから。トマトが新大陸(南米)から伝わった後も、観賞用として扱われていた時期が長く、食材として普及するまでに時間がかかったからです。
「ガスパチョ」という名前の語源には諸説あります。代表的なものとして、ポルトガル語の「断片・かけら」を意味する言葉に由来するという説があります。またアラビア語の「びしゃびしゃしたパン」から来ているという説、ヘブライ語の「ばらばらにちぎる」を意味する言葉に由来するという説もあります。いずれの説も「食材を細かくして混ぜ合わせる」という特徴を表しており、興味深いところです。
つまりガスパチョとは、農民の知恵から生まれた庶民の料理です。スペイン南部の夏は気温が40℃を超えることも珍しくなく、そんな過酷な環境で火を使わずに水分・塩分・栄養を補給するために発展してきました。現在では世界中のレストランで提供され、日本でも夏の定番スープとして親しまれています。
なお、2013年には京都のスペイン料理界の有志グループ「D.O.KIOTO」によって、8月1日が「ガスパチョの日」として制定されています。日本でも着実に認知が広がっているのですね。
ガスパチョの歴史を専門家が詳説(スペインワインとガストロノミー界の巨匠フアン・ムニョス先生による解説)
「ガスパチョ=赤い冷たいスープ」と思っているなら、それは大きな思い込みかもしれません。実際のガスパチョの世界は、驚くほど多彩です。
まず見た目から。最もよく知られる赤いガスパチョ(アンダルシア風)の他に、白いガスパチョ「アホブランコ」も存在します。アーモンド・パン・にんにく・オリーブオイルで作られ、ぶどうを添えて食べることが多い白いスープで、実はこちらの方が歴史が古いとされています。さらに、きゅうりやグリーンペッパー、ハーブを使った緑のガスパチョ(ガスパチョ・ベルデ)、にんじんやオレンジを使ったオレンジ色のガスパチョもあります。
次に温度から。「冷製スープ」と思われがちですが、スペインのラ・マンチャ地方では今も「温かいガスパチョ」が作られています。ラモン文学の名作『ドン・キホーテ』に登場するガスパチョも、実はウサギ肉や鶏肉を煮込んだ温かい料理です。冷たいのが当たり前というのは、あくまで現代の話なのです。意外ですね。
さらに地域ごとの違いも面白い点です。
| 地域 | ガスパチョの特徴 |
|---|---|
| アンダルシア(スペイン) | 赤いトマトベース、ミキサーで滑らかに仕上げる |
| コルドバ(スペイン) | アーモンドを加えたアホブランコが代表的 |
| アレンテージョ(ポルトガル) | パンの比率が高く、オレガノ・コリアンダーを効かせる |
| ラ・マンチャ(スペイン) | ウサギ肉・鶏肉入りの温かいガスパチョ |
家庭ごとにレシピが異なるのも、このスープの大きな魅力です。スペインでは「最高のガスパチョは母の味」とことわざにもなっているほど、いわば「おふくろの味」として各家庭に受け継がれています。日本でいえば、家庭ごとに異なる肉じゃがのレシピのようなものですね。
ガスパチョの種類・地域差・歴史を詳しく解説(シェフレピ:料理専門メディア)
ガスパチョが「飲むサラダ」と呼ばれるのには、しっかりした理由があります。主役であるトマトに含まれる「リコピン」は、抗酸化作用がビタミンEの約100倍ともいわれる強力な成分で、シミ・シワの予防や老化防止への効果が期待されています。
ここで一つ、重要なポイントがあります。リコピンは加熱することで吸収率が大幅にアップするということです。生のトマトの細胞壁はリコピンをしっかり閉じ込めているため、生のまま食べても体内に吸収されにくい状態になっています。ところが、加熱加工されたトマト缶は細胞壁が壊れてリコピンが出やすくなっており、生のトマトより吸収率が高くなります。
つまりリコピン吸収が目的なら、生トマトよりトマト缶を使う方がお得です。
さらに、ガスパチョにはオリーブオイルが入ります。リコピンは脂溶性の成分のため、油と一緒に摂取することで吸収率がさらに高まります。生野菜を使いながらもオリーブオイルが入るガスパチョは、リコピン摂取の観点からも理にかなったレシピといえます。これは使えそうです。
主な栄養素をまとめると以下の通りです。
夏バテで食欲が落ちているときにも、飲むだけで一度に複数の野菜の栄養をまとめて摂れるのは大きなメリットです。フライパンも鍋も使わずに作れる点も、暑い夏の台所で調理する主婦にとってはうれしいポイントといえます。
ガスパチョの栄養価と健康効果を詳しく解説(管理栄養士監修コンテンツ)
ガスパチョの作り方は、ミキサーがあれば驚くほど簡単です。ここでは2人分の基本レシピと、おいしく作るためのコツをご紹介します。
【基本材料(2人分)】
【作り方】
1. パンはちぎって水に5分ほど浸し、軽く絞っておく。
2. トマト・きゅうり・ピーマン・玉ねぎ・にんにくをざく切りにする。
3. すべての材料(パン、野菜、オリーブオイル、酢)をミキサーに入れ、滑らかになるまで攪拌する。
4. 塩で味を整え、好みの濃さになるよう水を加える。
5. 冷蔵庫で最低2〜3時間、できれば一晩冷やす。
6. 器に盛り、クルトンや刻み野菜・オリーブオイルをトッピングして完成。
⭐ 失敗しないためのコツ3つ
保存は冷蔵庫で3〜5日、冷凍庫であれば約3週間保存可能です。まとめて作り置きしておくと、忙しい朝の一杯や夕食の一品としてすぐに使えるので非常に便利です。ミキサーがない場合は、野菜を細かく刻んですりおろすか、トマトジュースをベースにして作る方法もあります。
ガスパチョは「アレンジ自由な料理」として、日本でも様々なバリエーションが生まれています。基本の赤いガスパチョをマスターしたら、ぜひ試してほしい応用レシピを5つご紹介します。
① スイカ×トマトのガスパチョ
スイカを加えると、トマトの酸味とスイカの甘さが絶妙にマッチします。スイカにはビタミンCやアミノ酸が豊富に含まれており、夏バテ対策に最適です。さらに、スイカのリコピン含有量はトマトの約1.5倍ともいわれています。夏野菜をフルに活用した、まさに夏らしい一杯です。
② トマト缶で時短ガスパチョ
生トマトが手に入りにくい季節や時間がないときは、ダイストマト缶400gを使うと手軽に作れます。しかもトマト缶はリコピンの吸収率が高く、栄養面でも有利です。缶のまま使えるので洗い物も減ります。
③ アボカド入りガスパチョ
アボカドを加えることでクリーミーな口当たりになります。良質な脂質が豊富なアボカドはオリーブオイルとの相性もよく、リコピンの吸収をさらに高める効果も期待できます。まろやかさが増して子供にも食べやすくなるのがポイントです。
④ 梅×和風ガスパチョ
酢の代わりに梅干し(1〜2個)を加えると、さっぱりとした和のテイストになります。クエン酸による疲労回復効果も期待でき、夏の暑い日に体が欲しがる味わいです。
⑤ 白いガスパチョ(アホブランコ)
アーモンド50g・食パン2枚・にんにく1片・オリーブオイル大さじ3・酢大さじ2・水200ml・塩で作ります。トマトを使わないため赤くならず、見た目も新鮮です。ぶどうやメロンを浮かべて提供すると、おしゃれなおもてなし料理になります。
どのアレンジも、冷蔵庫で3〜5日保存できます。週の初めにまとめて作り置きしておくと、忙しい平日の夕食に一品追加するのがグッと楽になります。
アレンジを試す際、ミキサーやハンドブレンダーがあると作業が格段に楽になります。特にハンドブレンダーは鍋や容器に直接入れて撹拌できるため、洗い物が少なく済む点でおすすめです。