
「メロ」と「銀むつ」は同じ魚を指しています。この魚の正式な和名(標準和名)は「マジェランアイナメ」といい、スズキ目ノトテニア科マジェランアイナメ属に分類される白身魚です。
以前は「銀むつ」という名前で日本の市場に流通していましたが、2003年にJAS法が改正され、「銀むつ」という名称での販売が禁止されました。これは、本来のムツやアカムツなどとは分類が異なる魚であり、「消費者に混乱をもたらしている」との判断からでした。
現在では「メロ」という流通名(市場名)で販売されていますが、「銀むつ(メロ)」といった表記も認められています。ただし、現在でも料理店などでは「ムツ」と称して提供されることも少なくありません。
「メロ」という名称の由来は、この魚がチリで「メロ」と呼ばれていたことに由来します。スペイン語で「メロ」はハタ類の総称を指し、チリ北部ではマジェランアイナメをメロと呼んでいました。一方、アメリカでは「Chilean Seabass(チリアン・シーバス)」という名称で流通しています。
メロ(マジェランアイナメ)は、網目状の銀色の鱗が特徴的な大型の深海魚です。水深50m~3kmという非常に深い海域に生息しており、南極近辺の寒冷な海域が主な生息地となっています。
この魚の最大の魅力は、抜群の脂のノリと純白な白身にあります。寒冷な環境に適応するため、体内に脂肪を蓄えており、その脂は上品で臭みがなく、様々な調理法に適しています。
栄養面では、良質なタンパク質を豊富に含み、DHAやEPAといった不飽和脂肪酸も含まれています。これらの栄養素は、脳の機能向上や血液循環の改善に役立つとされています。
また、メロは成熟するまでに12~15年ほどかかり、寿命は最長で35年ほどと推定されています。成長が遅い分、身に脂がのっているのが特徴です。オーストラリア政府の調査によると、9年間で66.5cm/3.31kgから118.9cm/19.15kgにまで成長した個体も確認されており、その成長の遅さが高級魚としての価値を高めています。
メロ(マジェランアイナメ)の主な産地は、アルゼンチンやチリなどの南米諸国です。日本近海には生息しておらず、すべて輸入に頼っています。
南極大陸周辺の寒冷な海域で漁獲され、はえ縄・トロール・かご漁などの方法で捕獲されます。水深1,200~1,800メートルという深海での漁は非常に困難で、暗く、寒く、高圧という特殊な環境下で行われます。
メロの旬は、大きさによって異なります。幼魚は6月頃が旬とされていますが、一般的には成魚になるほど脂がのって美味しくなると言われています。成魚は年間を通して安定した品質を保っていますが、特に冬場は脂のノリが良いとされています。
近年、メロの漁獲量自体は1980年代や90年代よりも増加傾向にありますが、日本への輸入量は激減しています。1998年には約2万トンだったメロの輸入量が、2017年にはわずか300トン未満と、約100分の1にまで減少しました。これは日本が国際市場での「買い負け」を起こしているためで、現在日本に輸入されているのはほとんどが「カマ」の部分のみとなっています。
メロ(マジェランアイナメ)は、脂がのった白身魚で様々な調理法に適しています。代表的な調理法をいくつかご紹介します。
調理のポイントとしては、メロは脂がのっているため、焼きすぎると脂が流れ出てしまいます。中火でじっくりと焼くことで、ジューシーな食感を保つことができます。また、臭みがほとんどないため、下処理は簡単で、水洗いして水気を拭き取るだけで調理可能です。
かつて日本の食卓や高級料亭で人気を博したメロ(マジェランアイナメ)ですが、近年日本のスーパーや魚市場から姿を消しつつあります。その理由はいくつかあります。
最も大きな要因は、国際市場での「買い負け」です。1998年には約2万トンあった日本のメロ輸入量が、2017年にはわずか300トン未満と激減しました。これは漁獲量の減少が原因ではなく、中国、香港、米国などが主要な輸入国となり、日本が国際市場での価格競争に敗れたためです。
特に中国の経済発展に伴い、高級食材としてのメロの需要が急増しました。中国市場では高値で取引されるため、漁獲されたメロの多くが中国へ輸出されるようになりました。
また、日本に輸入されているメロも、かつてのような切り身(フィレー)ではなく、主に「メロカマ」と呼ばれるカマの部分が中心となっています。カマはステーキカットに向かないため比較的安価で取引されますが、フィレー部分は世界中で需要が高く、価格高騰により日本にはほとんど輸入されなくなりました。
さらに、2003年のJAS法改正により「銀むつ」という名称が使用できなくなったことも、消費者の混乱を招き、認知度の低下につながった可能性があります。「メロ」という名称は日本人にとってなじみが薄く、「銀むつ」時代のブランド力が失われた面もあるでしょう。
持続可能な漁業への取り組みとして、南極周辺の漁場では漁獲枠が設定されており、乱獲を防ぐ対策が取られています。オーストラリア政府は1997年から3万匹を超えるメロにタグを付けて生態調査を行っており、資源保護と持続可能な漁業の両立を目指しています。
このように、メロが日本から消えつつある背景には、単なる資源枯渇ではなく、国際的な需要の変化や経済的要因が大きく関わっています。日本で手軽にメロを楽しむには、比較的入手しやすい「メロカマ」を活用するのが現実的な選択となっています。
メロと銀むつの名称変更には興味深い歴史があります。この魚が日本で「銀むつ」として流通し始めたのは比較的新しく、主に輸入魚として知られるようになりました。
「銀むつ」という名称が問題視されるようになったのは、この魚が本来のムツ科の魚とは全く異なる種類だったためです。マジェランアイナメはスズキ目ノトテニア科に属し、ムツ科のアカムツやクロムツとは分類学上の関係がありません。この誤解を解消するため、2003年にJAS法(日本農林規格法)が改正され、「銀むつ」という名称での販売が禁止されました。
名称変更の背景には、消費者保護の観点があります。誤った名称で販売されることで消費者が混乱し、適正な判断ができなくなる恐れがあったためです。実際、1990年頃には、マジェランアイナメのみりん漬などを「クエ」と詐称して販売していた水産加工業者もあったとされています。
「メロ」という名称は、この魚の原産地であるチリでの呼び名に由来します。スペイン語で「メロ」はハタ類の総称を指し、チリ北部ではマジェランアイナメをメロと呼んでいました。日本に輸入される際に、この呼称が採用されたのです。
興味深いのは、同じ魚が国によって全く異なる名称で流通していることです。アメリカでは「Chilean Seabass(チリアン・シーバス)」という名称が採用されており、これもマーケティング上の理由から付けられた商業名です。
また、「メロ」という名称で流通している魚の中には、マジェランアイナメだけでなく、その近縁種であるライギョダマシ(学名:Dissostichus mawsoni、英語名:Antarctic Toothfish)も含まれていることがあります。これらの魚は見た目や味が似ているため、同じ「メロ」として販売されることがあります。
名称変更から約20年が経過した現在でも、料理店などでは「ムツ」と称して提供されることがあり、完全に「メロ」という名称が定着したとは言い難い状況です。このように、一つの魚をめぐる名称の変遷には、分類学的な正確さと商業的な利便性のバランスが反映されています。