

実は、毎日食べているピザ用チーズの約10〜20%が食べられない木材由来の成分でできています。
食品のパッケージ裏を見たとき、「セルロース」「微結晶セルロース」という表示に目が留まったことはないでしょうか。添加物と聞くだけで不安になる気持ちはよくわかります。ただ、この成分の正体を知ると、印象がガラッと変わるはずです。
微結晶セルロース(Microcrystalline Cellulose、略称:MCC)は、木材パルプや植物の細胞壁から得られるα-セルロースを、希塩酸などの鉱酸で部分的に分解(解重合)して精製した白色の粉末状物質です。原料はあくまで植物そのもの。合成化学物質ではありません。
化学的には、ブドウ糖(グルコース)が鎖状に結びついた多糖類であるセルロースの一種です。人間の消化酵素では分解できないため、体内でカロリーにはなりません。つまり、不溶性食物繊維に分類されます。
日本の食品添加物公定書にも収載されており、食品安全委員会や厚生労働省が認可した正規の食品添加物です。医薬品の錠剤製造においては「賦形剤(フィラー)」として20年以上の使用実績があり、信頼性の高い素材として位置づけられています。これが基本です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 別名 | 結晶セルロース、MCC |
| 原料 | 木材パルプ・植物由来α-セルロース |
| 性状 | 白色・無味・無臭の粉末 |
| 分類 | 不溶性食物繊維 |
| 日本での位置づけ | 食品添加物公定書収載・既存添加物 |
参考:日本食品化学研究振興財団「既存添加物リスト」に微結晶セルロースが収載されています。
「食品添加物」という言葉には、なんとなくネガティブなイメージがつきまといます。でも、微結晶セルロースの安全性評価は、世界レベルで「問題なし」という結論が出ています。
世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)が共同で設置した食品添加物評価機関、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)は、微結晶セルロースについてADI(一日摂取許容量)を「特定せず(not specified)」としています。これは毒性が極めて低いため、摂取量の上限を設ける必要がないという意味です。いいことですね。
また、日本の公益財団法人日本食品化学研究振興財団も、加工セルロース類7種類について「安全性に懸念がない」と評価しています。複数の動物実験においても、発がん性・遺伝毒性・催奇形性はいずれも検出されませんでした。
ヒトへの毒性を示すデータも見当たらず、長期投与試験でも重篤な異常は確認されていません。大量に摂取した場合でも、見られるのはせいぜい「軟便」程度の消化管への軽度な影響にとどまります。ただし、これはセルロース以外の不溶性食物繊維(ごぼうや大豆の食物繊維)を大量に食べた場合と同じ反応です。特別に怖いものではありません。
欧州でも食品添加物番号「E 460(i)」として認可されており、アメリカではFDAの「GRAS(一般的に安全と認められる成分)」リストに掲載されています。つまり、日本・欧米の主要な食品安全機関が横並びで「安全」という評価を下している成分です。
安全性に注意が必要なのは、大量に継続摂取した場合のミネラル吸収の変化です。動物実験では食餌の20%をセルロースに置き換えたときにマグネシウムや亜鉛の吸収がやや低下した報告がありますが、実際の食品に含まれる量はこの数値とは比べ物にならないほど少量です。通常の食事で問題になるレベルではありません。
参考:食品安全委員会(FSC)が微結晶セルロースの安全性に関する欧州評価を紹介しています。
食品安全委員会|微結晶セルロースの成分規格変更に関するEFSA評価(2017年)
微結晶セルロースは、日常のさまざまな食品に使われています。原材料表示では「セルロース」「微結晶セルロース」と記載されているので、パッケージを見てみると気づくことができます。
まず、最もよく知られているのがチーズ類です。粉チーズやシュレッドチーズ(ピザ用チーズ)に添加されており、その目的はチーズ同士がくっついて固まるのを防ぐことです。微結晶セルロースの粉末をチーズにまぶすことで、さらさらとした使いやすい状態を保てるわけです。四つ葉乳業など複数のメーカーが「チーズ同士の結着を防ぐ目的」と説明しています。
アイスクリームやゼリー、清涼飲料水には、安定剤として使われます。微結晶セルロースは三次元的な網目構造を形成する性質があり、これが食品成分を均一に安定させ、具材の沈殿や油脂の分離を防いでくれます。ドレッシングがよく振らなくても分離しにくいのも、このような安定剤の働きのおかげです。
パンやカステラなどのベーカリー製品では、小麦粉の一部をセルロース粉末と置き換えることで食物繊維量を増やした「食物繊維強化食品」が作られることがあります。置換率が20%程度までであれば、食べた人の多くが高評価を与えたという研究結果も報告されています(日本食品保蔵科学会誌 VOL.45 NO. 1, 2019年)。
そしてサプリメントや健康食品の錠剤・カプセルの成分表示にも、微結晶セルロースは登場します。この場合は食品添加物というよりも医薬品添加物・賦形剤として機能し、錠剤をまとめる「つなぎ」の役割を担っています。
原材料表示を確認したい場合、添加物はスラッシュ(/)以降に記載されているのが一般的です。「セルロース」「結晶セルロース」という表記があれば微結晶セルロースが使われている可能性があります。これは覚えておけばOKです。
参考:薬学会による「結晶セルロース」の添加物解説ページ。医薬品での幅広い用途が確認できます。
微結晶セルロースは体に吸収されない成分ですが、だからこそ腸にとってうれしい働きをします。これは意外な事実です。
不溶性食物繊維の性質として、腸内に入ると水分を含んで膨張し、便のかさを増やします。便がある程度の量になると、腸が刺激されて蠕動(ぜんどう)運動が活発になります。結果として、排便がスムーズになるというわけです。便秘がちな方にとって、食物繊維の摂取が推奨されるのはこうした理由からです。
さらに、食物繊維は腸内の善玉菌のエサ(プレバイオティクス)としても機能します。善玉菌が増えると腸内フローラ(腸内環境)が整い、免疫機能の維持や生活習慣病予防にも貢献するとされています。
また、食物繊維には食後の血糖値の急激な上昇を抑える働きも期待されています。糖質の吸収スピードを緩やかにする効果が知られており、糖尿病や肥満が気になる方には特に注目したい点です。コレステロール値の抑制や動脈硬化予防への寄与も報告されています。
ただし、不溶性食物繊維を水分不足の状態で過剰に摂ると、腸の中で膨張したまま滞り、かえって便秘を悪化させることがあります。管理栄養士の川野恵氏も「セルロースの腸内お掃除効果を高めたい場合は、たっぷりの水分と一緒に摂ることが大切」と指摘しています。セルロースを多く含む食品を食べるときは、水分補給もセットで意識するのが条件です。
現代の日本人は食物繊維の摂取量が慢性的に不足していると言われています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」では、成人女性の1日あたりの食物繊維目標量は18g以上ですが、実際の平均摂取量は14〜15g程度にとどまっています。
参考:厚生労働省による食物繊維と健康の関係についての公式解説ページです。
ここまでお伝えしてきたように、微結晶セルロースの安全性は国際的に認められています。ただ、「それでも添加物はできるだけ避けたい」という方の気持ちも十分理解できます。そういう考え方も、一つのライフスタイルの選択です。
微結晶セルロースを避けたい場合に、まずやるべきことは原材料表示のチェックです。食品パッケージの原材料欄(スラッシュより後の部分)に「セルロース」「微結晶セルロース」の記載がなければ、その食品には含まれていません。チーズであれば「セルロース不使用」と明記している製品も市販されているので、見比べてみるといいでしょう。
一方で、微結晶セルロースが入っていない粉チーズやシュレッドチーズは、チーズ同士がくっついてしまうことがあります。これは添加物を使っていないことの裏返しであり、品質としての問題ではありません。使う前に手でほぐせば問題ありません。
添加物の選別よりも、実際の健康への影響という観点から見れば、砂糖・塩・飽和脂肪酸の過剰摂取の方がリスクの高いテーマです。食品添加物への過剰な不安が、かえって食生活の多様性を狭めてしまうこともあります。バランスよく考えることが重要です。
サプリメントの錠剤に含まれる微結晶セルロースが気になる場合は、カプセルタイプや粉末タイプのサプリを選ぶことで量を減らすことができます。サプリを選ぶ際に成分表示を確認する習慣をつけると、自分の体に入れるものをコントロールしやすくなります。
「添加物が気になるけれど、何を信じればよいかわからない」という場合は、農林水産省や消費者庁の公式情報を参照するのが確実です。信頼できる情報源を持っておくことが大切です。
参考:農林水産省の食品添加物に関する基本情報ページ。日本の許可制度や安全性審査の仕組みが解説されています。

NICHIGA(ニチガ) 微粉末セルロース(国内製造) 1.5kg 不溶性食物繊維 カロリー・糖質0 ・食物繊維豊富 TK1