

加熱すると風味がとぶと思っていたら、実はアッペンツェラーは加熱するほど香りが3倍増しになります。
アッペンツェラーチーズは、スイス北東部のアッペンツェル地方で700年以上作り続けられてきた、歴史的なハードタイプのチーズです。文献に初めてその名が登場するのは1282年のこと。ザンクト・ガレン修道院がアッペンツェル農家に対し、納税の10分の1をチーズで支払うことを認めた記録が残っており、当時からいかに価値あるものとして扱われていたかがわかります。
このチーズが特別な理由のひとつは、製造地域が厳格に限定されている点です。アッペンツェラーはスイスの州政府が製造を管理しており、数あるスイスチーズの中でも唯一この体制をとっているチーズとされています。現在、約50の家族経営の工房がアッペンツェル地方およびトゥールガウ、ザンクト・ガレンに点在し、いずれも昔ながらの製法を守りながら作られています。
スイスという土地柄も、このチーズの品質を高めています。国土の多くがアルプスの山岳地帯に覆われたスイスでは、酪農に適した牧草地が広がり、春から夏にかけて豊富な牧草を食べた乳牛から質の高い牛乳が得られます。特に春に搾乳された牛乳を原料としたアッペンツェラーは、夏から冬にかけて市場に出回るころには最も美味しい状態になるといわれています。
ハードチーズのため保存性が高く、山岳地帯で長期保存できる食品として発展してきた背景もあります。つまり、スイスの厳しい自然環境と歴史的なニーズが合わさって生まれた、必然の産物ともいえるチーズです。
参考:アッペンツェラーチーズの歴史と産地に関する詳細情報
世界のチーズ アッペンツェラーEXTRA – arrecria.jp(チーズ専門店による解説)
アッペンツェラーチーズの最大の特徴は、「ハーバルブライン(Herbal Brine)」と呼ばれる秘伝のハーブ塩水にあります。これがアッペンツェラーを他のチーズと一線を画す存在にしている核心です。
このハーバルブラインには、白ワインやリンゴ酒(シードル)のほか、レモンバーム・マジョラム・ラベージ・オレンジバルサムタイム・ペパーミントといった複数のハーブ、さらにショウガ・オレガノ・フルーツセージなども使われているとされています。そのレシピは30年間変更されておらず、現在もスイスの銀行の金庫に厳重に保管されており、世界でわずか2人のマスターチーズ職人だけがその内容を知っているというほどの秘密です。
チーズの熟成中、職人はこのハーバルブラインに浸した布でチーズの表面を定期的に拭き続けます。この作業を3〜9ヶ月かけて繰り返すことで、表皮からじわじわとハーブやスパイスの風味が染み込み、アッペンツェラーならではの複雑な香りとコクが生まれます。熟成が長くなるほどスパイシーさが増すのはこの工程によるものです。
加えて、スイス連邦の農業研究機関「Agroscope(アグロスコープ)」が開発した独自の乳酸菌が原料乳に添加されており、この特別な乳酸菌によってアッペンツェラーは科学的な分析でも本物と偽物を判別できるようになっています。これが重要なポイントです。つまり、アッペンツェラーとして流通する製品には、偽造できない生物学的な証明が刻まれているわけです。
防腐剤・香料・着色料といった添加物はもちろん、乳糖やグルテン、遺伝子組み換え作物も含まれていません。自然由来の素材だけで作られているため、食品の品質にこだわる方にも安心して選べるチーズです。
アッペンツェラーチーズを購入するときに必ず確認したいのが、ラベルの色です。ラベルは熟成期間に応じて4色に分けられており、色によって味わいがまるで別物のように異なります。初めて購入する際にはどれを選べばよいか迷いやすいため、それぞれの特徴を理解しておくと選びやすくなります。
まず最も熟成期間が短い銀ラベル(Silver Label)は、熟成3ヶ月のものです。「マイルド・ヴュルツィヒ(Mild-Würzig)」とも呼ばれ、フルーティーでクリーミーな味わいが特徴です。チーズ特有のクセが少なく、はじめてアッペンツェラーを試す方や、お子さんと一緒に食べたいときにも向いています。
次の金ラベル(Gold Label)は熟成4〜5ヶ月の「クレフティヒ・ヴュルツィヒ(Kräftig-Würzig)」です。爽やかで香ばしい風味が増し、ハーブの香りがより前面に出てきます。料理に使うとこのくらいの熟成が最もバランスよく仕上がるとされており、フォンデュやホットサンドに向いています。
黒ラベル(Black Label)は熟成6ヶ月保証の「エクストラ・ヴュルツィヒ(Extra-Würzig)」です。シャープで力強い風味があり、スパイシーさが際立ちます。5ヶ月半の熟成段階で専門家による品質チェックを受け、選ばれたものだけが6ヶ月の熟成に進める、いわばアッペンツェラーの「選抜品」です。
最も熟成が長い紫ラベル(Purple Label)は熟成9ヶ月の「エーデル・ヴュルツィヒ(Edel-Würzig)」で、複雑な余韻が長く続く最高峰の味わいです。日本での入手はやや難しいですが、チーズ専門店やオンラインショップで見つけることができます。
| ラベル | 熟成期間 | 味の特徴 |
|-------|---------|---------|
| 🥈 銀 | 3ヶ月 | マイルドでフルーティー・クリーミー |
| 🥇 金 | 4〜5ヶ月 | 爽やかで香ばしい・バランス型 |
| 🖤 黒 | 6ヶ月 | シャープでスパイシー・力強い |
| 💜 紫 | 9ヶ月 | 複雑で深い余韻・最高峰 |
ラベルの色だけ覚えておけばOKです。初心者は銀か金から始めて、慣れてきたら黒ラベルにステップアップするのがおすすめです。
参考:ラベル別の味わいの比較について
伝統的なチーズ【アッペンツェラー】とは?特徴やおすすめの食べ方 – オリーブオイルをひとまわし(管理栄養士監修)
アッペンツェラーは「特別な日にそのまま食べるもの」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実は日常の家庭料理に取り入れやすいチーズです。加熱すると表面がしっかり溶けながらも香りが立ち、料理全体がワンランク上の仕上がりになります。これは使えそうです。
以下の3つのレシピは、特別な材料を揃えなくても手軽に試せるものばかりです。
① 本格チーズフォンデュ
アッペンツェラーの真骨頂ともいえる使い方です。スイスの本場レシピでは、グリュイエールとアッペンツェラーを組み合わせるのが定番です。白ワイン150〜200mlとチーズ400gを合わせ、にんにくを擦り付けた鍋でゆっくり溶かすだけで出来上がります。金ラベルのアッペンツェラーを使うと、ほどよいスパイシーさが白ワインと合わさり、深みのある仕上がりになります。フランスパンやブロッコリー、じゃがいもを付けて楽しみましょう。
② アッペンツェラーのホットサンド
食パン2枚に薄切りのアッペンツェラー(銀か金ラベル)とハムを挟み、ホットサンドメーカーまたはフライパンで焼くだけです。チーズが溶けてとろりとした食感になり、ハーブの香りがほわっと立ちます。粒マスタードを少量塗ると大人向けの風味に仕上がります。朝食や週末のランチに最適です。
③ アッペンツェラーのじゃがいもグラタン
薄切りにしたじゃがいも300gを塩茹でし、バターを塗った耐熱皿に並べます。その上に生クリームまたは牛乳100mlを回しかけ、おろしたアッペンツェラー(黒ラベルがおすすめ)をたっぷり乗せてオーブン200℃で20分焼きます。表面がこんがり焦げたら完成です。シンプルな材料でも、アッペンツェラーのスパイシーな風味が全体にコクをプラスします。
どの料理も「アッペンツェラーを使うと格段においしくなる」という体験ができるはずです。加熱によって香りが引き立つのがアッペンツェラーの特徴で、日常使いすることでその個性を十分に楽しめます。
参考:チーズフォンデュのレシピについて
あつあつ、とろ〜りチーズフォンデュ – SWI swissinfo.ch(スイス政府系メディアによる解説)
購入後の保存方法を間違えると、風味が落ちるだけでなく、早めにカビが発生してしまいます。アッペンツェラーはハードチーズに分類されますが、適切な保存をしないとせっかくの風味が台無しになるので注意が必要です。
冷蔵保存が基本です。未開封の状態では製造日から約90日(3ヶ月)が賞味期限の目安とされています。ただし、開封後は約14日以内に食べきるのが理想です。開封後はラップかワックスペーパーで表面をしっかり包み、密閉容器またはジッパーバッグに入れて冷蔵庫の野菜室(5℃前後)で保存しましょう。直接プラスチックのラップだけで包む場合、チーズが呼吸できず風味が変わることがあるため、ワックスペーパーを使うのがベストです。
注意が必要なのは、においの強い食品(にんにく、たくあんなど)と一緒に保存しないことです。アッペンツェラーはにおいを吸収しやすく、一度ほかのにおいがついてしまうと風味が損なわれます。
もし食べきれない量が残っているなら、冷凍保存も有効です。スライスした状態か小分けにしてラップで包み、密封容器に入れれば-18℃以下で最大6ヶ月保存できます。ただし、解凍はかならず冷蔵庫内でゆっくり行ってください。電子レンジで急解凍すると食感が変わり、風味も落ちます。
表面にカビが生えた場合の対処法も覚えておくと安心です。アッペンツェラーはハードチーズのため、表面だけにカビが発生した場合はカビ部分を中心から2cm以上の範囲を切り取れば、残りは安全に食べられます。広範囲にわたる場合は廃棄してください。
保存容器の選択も重要な条件です。チーズ専用の保存容器(チーズドーム型など)があればベストですが、一般的なガラス製密閉容器でも十分代用できます。100均でも購入できるチーズ保存用ワックスペーパーを活用すると、コストをかけずに最適な保存環境を作れます。
参考:チーズの正しい保存期間について(管理栄養士監修)
アッペンツェル(チーズ)の賞味期限と正しい保存方法 – TABEDOKI(管理栄養士・食品衛生専門家チーム監修)

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