遺伝子組み換え作物メリットデメリット徹底解説

遺伝子組み換え作物メリットデメリット徹底解説

遺伝子組み換え作物のメリット デメリット

この記事でわかること
📊
遺伝子組み換え作物の基礎知識

技術の仕組みから日本での利用状況まで網羅的に解説

メリットとデメリット

収穫量増加や農薬削減などの利点と健康・環境への懸念点を比較

🛒
日常生活での選び方

表示制度の理解から家庭での賢い選択方法まで実践的に紹介

遺伝子組み換え作物の種類と日本の利用状況

遺伝子組み換え作物とは、ある生物の遺伝子を別の生物に組み込んで新しい性質を持たせた作物のことです。日本では食品として安全性が確認されている遺伝子組み換え作物には、トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ワタ、テンサイ、ジャガイモ、パパイヤなどがあり、これらは全て輸入によるものなんです。
参考)よくある質問|日本で流通している遺伝子組み換え食品にはどのよ…

実は日本は世界有数の遺伝子組み換え作物の輸入大国で、2024年9月時点で334品目の遺伝子組み換え食品を食品用途として承認しています。トウモロコシは年間約1,500万トン、大豆は約330万トン、ナタネは約200万トンが輸入されてり、日本の年間穀物輸入量(約3,000万トン)の半分以上を遺伝子組み換え作物が占めると推定されているんです。
参考)GMOとゲノム編集食品の現状と消費者意識|ヒロクリニック

日本国内での栽培については、政府が205件の環境安全性審査を通じて157品目の国内栽培を承認していますが、実際に栽培している農家はゼロという状況です。消費者からの強い拒否感や農家の風評リスクへの懸念が、承認されているのに栽培されないという矛盾を生んでいます。​

遺伝子組み換え作物のメリット収穫量と農薬削減

遺伝子組み換え作物の最大のメリットは、収穫量の大幅な増加です。病気や害虫に強い遺伝子を組み込むことで、単位面積あたりの収量を増やすことができるんです。実際に1996年から2011年までの累積で、トウモロコシは約1億9,500万トン、大豆は約1億1,000万トン増産され、世界の食糧安全保障に大きく貢献しています。
参考)https://rdsupport-haken.jp/column/000121.html

農薬使用量の削減も重要なメリットです。除草剤に強い遺伝子を組み込んだ作物は、除草剤を散布しても枯れないため雑草除去の手間が大幅に軽減されます。1996年以降の農薬使用量は重量ベースで8.9%減少し、環境影響指数も18.3%低下したという英国の経済学者による分析結果があります。
参考)遺伝子組み換え野菜のメリットデメリット - アジアインタート…

経済的な効果も見逃せません。生産コストの削減や収量増加による経済的収益は、2011年単年で約1兆9,400億円、1996年以降の累積で約9兆6,200億円に達し、その51%が発展途上国で生じています。除草剤に関しては、遺伝子組み換え作物では1エーカーあたり18ドルなのに対し、非遺伝子組み換え作物では40ドルかかるというデータもあり、コスト削減効果が明確です。
参考)GMO(遺伝子組み換え作物)とそうでない作物の生産コスト|バ…

遺伝子組み換え作物のデメリット健康への影響

遺伝子組み換え作物の健康への影響については、アレルギーの原因になるのではないかという指摘が根強く存在します。フランスのカーン大学が実施した2年間のラット実験では、遺伝子組み換えトウモロコシを含んだエサを食べたラットにがん細胞の大きな増殖が見られたという報告もあります。
参考)「遺伝子組み換え」の安全性とは? なぜ賛否両論を巻き起こして…

ただし厚生労働省は厳しい安全性審査を行っており、アレルギーを引き起こす可能性がある作物は市場に出回らないとしています。具体的には、挿入遺伝子の安全性、産生されるタンパク質の有害性の有無、アレルギー誘発性の有無などを確認し、従来の食品と同じように食べても安全であることが確認された遺伝子組み換え食品だけが日本での販売や輸入が許可される仕組みになっているんです。
参考)生物機能利用研究部門:QV- 1 遺伝子組換え食品の人への安…

事実として、これまでに商品化された遺伝子組み換え食品の中で、新たに作られたタンパク質が原因でアレルギーが引き起こされた事例はありません。しかし長期的な影響についてはまだ「今後も検証が必要」と主張する研究者も多く、安全性についてはグレーという見方も存在しているのが現状です。
参考)よくある質問|「承認されている遺伝子組み換え作物も、アレルギ…

遺伝子組み換え作物のデメリット環境への影響

生態系への影響として最も懸念されているのが、除草剤に強い雑草の出現です。除草剤に耐性を持った遺伝子組み換え作物と周辺の雑草が交配することで、除草剤に強い雑草ができてしまった例がアメリカで実際に起きています。その結果、除草剤の使用量が以前より増加したり、複数の除草剤に耐性のある遺伝子組み換え作物を作らざるを得なくなったことが問題となっています。
参考)遺伝子組み換え作物の安全性はどうなの?環境と健康への影響につ…

病害虫への抵抗性も新たな課題を生んでいます。病害虫に耐性を持った遺伝子組み換え作物は、病害虫が作物を食べることで殺虫する効果がありますが、病害虫の中には遺伝子組み換え作物に耐性を持ったものも現れてしまい、他の作物に被害を及ぼす危険があるんです。ブラジルでは遺伝子組み換え作物に抵抗性を持った病害虫が現れ、政府が承認していない殺虫剤を散布した例もあります。​
在来種への影響も懸念されており、遺伝子組み換え作物の遺伝子が周辺の在来作物に移ることで、在来種が滅んでしまう可能性が指摘されています。環境省の報告によれば、野生動植物の地域個体群や微生物相が健全に維持されるかどうかが、生物多様性保全の観点から重要な評価視点となっています。
参考)https://www.env.go.jp/council/former2013/13wild/y131-02/mat03_1.pdf

遺伝子組み換え作物の表示制度と家庭での選び方

日本の遺伝子組み換え表示制度は非常に複雑で、消費者にとって分かりにくいものになっています。表示義務があるのは、大豆・トウモロコシ・馬鈴薯・てん菜など9種の作物とそれを原料とする加工食品33品目のみです。さらに醤油や油など組み換えたDNAやそれに由来するタンパク質が検出されないものは表示しなくてよいルールになっているんです。
参考)遺伝子組み換え対策|生協の食材宅配 生活クラブ生協

2023年4月からは任意表示に関するルールが改正され、適切に分別生産流通管理された旨の表示が可能になりました。原材料表示の上位4位以降、もしくは加工食品全体の重量の5%未満の場合も表示義務はないため、知らないうちに遺伝子組み換え作物を食べている可能性は十分にあります。
参考)【2023年4月1日施行】遺伝子組換え表示制度の改正内容や対…

家庭での選び方としては、大豆製品(豆腐・納豆・味噌・醤油)やトウモロコシ加工品を購入する際に、「遺伝子組み換えでない」という表示を確認することが基本です。ただし表示されていないからといって必ずしも遺伝子組み換え作物が使われていないわけではないことを理解しておく必要があります。日本では大豆使用量の75%、トウモロコシ使用量の80%が遺伝子組み換え作物と推定されているため、完全に避けることは現実的に難しいのが実情です。
参考)どう変わる? 「遺伝子組換え表示制度」改正で変わる食品選びの…

遺伝子組み換え作物開発の費用と時間の実態

遺伝子組み換え作物を市場に投入するまでには、莫大な費用と時間がかかります。2008年から2012年までの間に市場に導入された作物が実際に農家の畑に植えられるまでには、約1億3,600万ドル(約150億円)の費用と平均で13年という時間が必要だったんです。
参考)バイオテクノロジー関連資料|遺伝子組み換え作物を市場に投入す…

開発プロセスで最も時間と費用がかかるのが規制・承認段階であることが判明しています。2002年以前は企業は約4年をかけて政府と調整していましたが、現在では環境上および安全上のあらゆる規制要件を満たすのに5年半以上を費やしており、新製品が規制当局の承認を得るまでにかかる時間は2002年以降47%も増加しています。​
この規制のハードルの高さと時間の長さが、イノベーションのサイクルを遅らせ、農家が生産性を改善するために必要な技術を適切な時期に入手できなくなる恐れを生んでいます。特に公的機関や中小企業が実施している重要な研究にマイナスの影響が及ぶ可能性があり、世界の食糧需要が増加傾向にある中で大きな課題となっているんです。​