

農林水産省の調査によると、有機栽培品と国産標準品(慣行栽培品)の価格には明確な差があります。平成28年のデータでは、だいこんが1.55倍、にんじんが1.74倍、トマトが1.55倍、ピーマンが1.87倍という結果でした。
参考)https://www.maff.go.jp/tokai/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/yuukiforum2024-19.pdf
実際の価格で見ると、有機栽培のだいこんは1kgあたり315円に対して国産標準品は204円、有機にんじんは685円に対して標準品は394円となっています。この価格差は野菜の種類によって変動し、概ね1.4倍から1.9倍の範囲に収まっているんです。
台湾の事例ではさらに価格差が大きく、有機農産品は一般農産品の2倍から3倍の価格で販売されているとの調査結果もあります。たまねぎは3.6倍、白菜は4.28倍という高い価格差も見られました。
参考)https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/yuuki_sijyou_jittai.pdf
有機JAS認証を取得するには初年度で10万円から15万円程度の費用がかかります。申請手数料、検査料、判定手数料、認証書発行手数料、講習会費用、審査員交通費など、名目はさまざまなんです。
参考)https://gn.nbkbooks.com/?p=46434
認証機関によって費用は異なり、地方自治体の場合は3万円程度から、民間の場合は11万円以上かかるケースもあります。さらに、認証は1回取得すれば終わりではなく、年次監査があり、そのたびにコストがかかるのが実情です。
参考)https://www.noukaweb.com/organic-jas/
有機JAS認証には詳細な記録の提出や登録認証機関の現地調査を受けることが必須で、規模の小さな生産者や高齢者では認証取得をあきらめるケースも珍しくありません。国や地方自治体から補助金が出る場合もありますが、それでも生産者にとっては大きな負担となっています。
参考)https://www.mix-nuts.ichoice-coop.com/organic/yukiyasai-2/
農林水産省の有機農業に関する情報は以下のサイトで詳しく確認できます。
市場に出回っている一般的な野菜と有機野菜を比べたとき、最も大きく価格に影響しているのが労働コストです。除草剤を使えない有機栽培では、勢いよく伸びてくる草をせっせと刈ったり削ったりと、人力でなんとかしなければいけません。
参考)https://matsu-farm.com/buy03/
有機農業は「草との戦いである」ともいわれており、手間がかかることによる人件費の増加は避けられないんです。病気が出た際も、農薬で抑えることができないため、広がる前に手作業で対処する必要があります。
長い時間と手間をかけて土作りをすること、農薬や化学肥料に頼らないため同じ面積あたりの収穫量が少なくなる場合が多いことも、価格上昇の要因となっています。除草作業が重労働であることも、生産者側の大きな負担です。
参考)https://j-organic.jp/news/cpt_news/vol-8%E3%80%80%E6%9C%89%E6%A9%9F%E8%BE%B2%E7%94%A3%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%80%A4%E6%AE%B5%EF%BD%9E%E3%80%8C%E3%81%AA%E3%81%9C%E9%AB%98%E3%81%84%EF%BC%9F%E3%80%8D%E3%80%8C%E5%AE%89%E3%81%8F%E8%B2%B7/
有機農業による作物収量は、慣行農業に比べて通常20%前後低いことが広く知られています。世界62か所、34の作物種、316事例の収量比較データを解析した研究では、全作物平均で有機収量は慣行よりも25%低いという結果が出ました。
参考)https://lib.ruralnet.or.jp/nisio/?p=2130
作物別に見ると、穀物はマイナス26%、根菜はマイナス26%、野菜はマイナス33%と、作物によって収量差は異なります。ただし、有機の収量比は転換後年数が長くなるほど向上し、転換後7年超の場合は0.84(マイナス16%)まで改善するとのデータもあります。
収量が少ないということは、同じ面積の農地から得られる収入が少なくなることを意味します。化学肥料は早い速度で野菜を成長させることができますが、有機野菜は自然に沿った栽培であり、作物の成長に長い時間がかかってしまうケースがあるんです。
参考)https://www.moarc.co.jp/hpgen/HPB/entries/212.html
日本有機農業研究会の情報も参考になります。
まだまだ生産量が少ないため、通常の流通システム(市場経由)にはフィットせず、生産者から利用者(お店・レストラン・個別の消費者)へ宅配便などで直送しており、配送コストが高くつくという物流面での事情があります。
市場出荷では規格外品は価格が下がりますが、有機農産物の直販では「大きさや形が不ぞろいなもの」「泥がついたままのもの」「少し傷がついているけれど食味には影響がないもの」なども出荷することで、工夫している生産者もいます。
その時期に畑でとれた様々な野菜を詰め合わせた「野菜セット」を定期的に消費者に販売することで、売れ残りを失くしたり、発送する曜日を決めて一度に大量発送したりして合理化をはかる取り組みも広がっています。
有機農産物の購入先は多様化しており、スーパーのオーガニックコーナー、自然食品店、産直市場、朝市、ネット通販などで買えるようになっています。それぞれにメリットや特徴があるので、自分に合ったスタイルで取り入れるのがおすすめなんです。
参考)https://sa-si-su-se-so.com/organic-dokodekaeru/
主な購入先の比較表
| 購入先 | メリット | デメリット | おすすめの人 |
|---|---|---|---|
| スーパー | 実物を確認できる、当日入手可能 | 品揃えが限定的 |
緊急で必要な時 |
| 自然食品店 | 専門知識のあるスタッフに相談可能 | 価格が高めの傾向 | こだわりの商品を選びたい人 |
| 野菜セット宅配 | 規格外品も含むため比較的安価、配送が便利 | 野菜の種類は選べない | コスパ重視の人 |
| 直売所・道の駅 | 生産者と直接やり取り可能、新鮮 | 営業時間や品揃えが限定的 |
地元の農家を応援したい人 |
| ネット通販 | 品揃え豊富、自宅まで配送 | 送料がかかる、実物確認不可 | 重い野菜を運びたくない人 |
野菜セットは消費者が野菜の種類を選ぶことができず、何が届くかは"畑におまかせ"になりますが、規格外品も含まれるため価格を抑えられるメリットがあります。
ビオ・マルシェのような有機野菜専門の宅配サービスも選択肢の一つです。
有機農産物を食べる人々が増えることで生産農家数や生産量も増え、流通コストが抑えられれば、今よりもずっと安い価格で販売されるようになるはずです。いま流通している有機農産物の多くは契約栽培であり、事前に取引価格を決めているため、市場のように価格が変動することがなく、年間を通じて安定した価格で取引されます。
台風・大雨・渇水など天候の事情で市場価格が高騰している時などは、有機農産物の方が安価になるという場合もあるんです。ヨーロッパと比較すると日本ではまだまだオーガニック食品の価格が高い状況ですが、海外では有機農産物の需要拡大により価格差が縮小している事例もあります。
参考)https://nekase-genmai.com/column/18172.html
フランスでの調査では、全粒粉スパゲティはほぼ同価格、マスタードや豆乳に関してはBIO食品の方が安いという結果も出ており、全体的には大体1.2~1.5倍くらいの価格だったとされています。世界がオーガニック需要拡大の方向に動いている中、日本にもいずれ需要拡大による価格の変化が訪れるのではないかと期待されているんです。
生産者の約65%は有機農産物等の販売価格について満足しているというデータもあり、適正な価格での取引が広がることで持続可能な有機農業が実現していくと考えられます。
まずは毎日必ず食べる"お米"と"野菜"から有機農産物に切り替えてみることで、無理なく有機農業を応援できます。