

干物を焼く前に包丁を入れないと、身が波打って半分以上が食べにくくなります。
ヤナギムシガレイは、カレイの中でも「最も美味」と評される高級魚です。体が柳や笹の葉のように細長いため、地域によって「ヤナギガレイ」「ササガレイ」「若狭ガレイ」とも呼ばれます。新潟県や福井県(若狭湾)が代表的な産地で、どちらの地域でもブランド化が進んでいます。
旬は産卵期(2月ごろ)を前にした10月〜1月が特においしいとされています。この時期は身に旨みがたっぷり蓄えられ、メスはお腹に卵も持ちます。新潟県水産海洋研究所の調査でも、10〜12月に漁獲されたものが一夜干しの加工原料として最も品質が高いと確認されています。旬がはっきりしている魚です。
スーパーや鮮魚店で選ぶ際には、以下の点をチェックしましょう。
- 目が澄んでいること:目が濁っているものは鮮度が落ちている証拠です
- エラが鮮やかな赤色:エラ蓋を軽く持ち上げて、中が赤くきれいなものを選びましょう
- 身に張りがある:触ったときに固くて弾力のあるものが新鮮です
- なるべく大きいサイズ:ヤナギムシガレイはもともと身が薄い魚なので、小さいものは食べられる部分がごくわずかになってしまいます。同じ値段なら大きいほうがお得です
市場でも1〜2位を争うほど高値がつく魚で、「一度食べたら他のカレイは食べられなくなる」と語るプロもいるほど。干物として贈り物にも使われる、ちょっと特別な魚です。
なお、スーパーの干物コーナーには「ヒレグロ」という別種がヤナギムシガレイとして販売されていることもあります。見た目はよく似ていますが、ヒレグロは背ビレと臀ビレが黒っぽいのが特徴です。ヤナギムシガレイはヒレの縁がそれほど黒くならず、目の上に細かいウロコがあります。裏側(無眼側)の頭部を見ると、ヒレグロにはクレーターのような円形のくぼみがいくつかありますが、ヤナギムシガレイには見当たりません。値段が安すぎる干物は代用品の可能性があるため、購入前に確認してみましょう。
参考:ヤナギムシガレイとヒレグロの見分け方、目利きのポイントが詳しく解説されています。
柳がれいの目利きと料理:旬の魚介百科 - ヤナギムシガレイ(フーズリンク)
干物として購入した場合、購入後の処理は不要です。これが基本です。ただし、焼く前に「ひと手間」を加えることで、仕上がりが大きく変わります。
そのひと手間とは、焼く前に両面から包丁で切れ目を入れることです。身の中央に沿って包丁を軽く入れ、さらに縁側に添って刃先で切り込みを入れます。この処理をしておくと、加熱しても身が波打ちにくくなり、ほぐしやすさが格段に上がります。処理をしないまま焼くと、身が縮んで大きく波打ち、骨から外れにくくなってしまいます。ちょっとした一工夫で食べやすさが全然違います。
焼き方の火加減は弱火から中火が正解です。高温で一気に焼くと、皮が焦げても中まで火が通っていないということが起こりやすくなります。弱火からゆっくりと焼き始め、軽く焦げ目がつく程度でちょうどよい仕上がりになります。
冷凍の干物を焼く際は、冷蔵庫での自然解凍(4〜6時間)が推奨されています。電子レンジで解凍すると身が崩れやすくなり、せっかくの食感が台無しになってしまいます。前日の夜に冷蔵庫へ移しておくと、翌朝の朝食にすぐ焼けて便利です。
保存の際は、1枚ずつラップで空気に触れないように包み、保存袋に入れて中の空気を抜いてから冷蔵庫へ。冷凍保存も可能ですが、一度解凍したものの再冷凍は品質が大きく落ちるため避けましょう。
参考:プライドフィッシュ(農林水産省推進の産地ブランド認定)による柳カレイの一夜干しレシピです。
生鮮のヤナギムシガレイを購入した際の最初の下処理は、うろこ・エラ・内臓を取り除くことです。真子(卵巣)はおいしく食べられるので、残しておくのがおすすめです。処理後は流水でしっかりと洗い流し、キッチンペーパーで水分を丁寧に拭き取りましょう。
煮付けはヤナギムシガレイの定番料理のひとつです。ポイントは2つあります。
1つ目は、煮汁を十分に沸騰させてからカレイを入れること。水から入れてしまうと表面のたんぱく質が固まらず、旨みが煮汁に溶け出しすぎてしまいます。沸騰した煮汁に入れることで、表面が素早く固まって旨みが閉じ込められます。
2つ目は、薄味に仕立てること。ヤナギムシガレイは身が薄く、味が染みやすいという特徴があります。一般的な煮付けより醤油やみりんを控えめにしても、十分においしく仕上がります。味が濃くなりすぎると、この魚本来の上品な旨みが消えてしまいます。薄味が原則です。
煮付けの基本の味付けは酒・砂糖・醤油・みりんで、沸騰した煮汁にカレイを入れ、落とし蓋をして弱めの中火から弱火で10分ほど煮ます。落とし蓋で煮汁が対流し、少ない煮汁でもまんべんなく味が染みるのがポイントです。
臭みが気になる場合は、下処理の段階で70〜80℃のお湯を軽くかける「霜降り」処理が効果的です。これで魚の生臭みをほぼ取り除くことができます。
ヤナギムシガレイの唐揚げは、専門店でも人気のメニューです。驚くことに、上手に揚げると硬い中骨以外はヒレや皮ごとすべて食べられます。これは使えそうです。
下処理はうろこ・エラ・真子以外の内臓を取り除き、水分をキッチンペーパーでしっかり拭き取ります。水分が残っていると油が激しくはねてしまいます。下処理後は塩こしょうで下味をつけ、片栗粉を全体にまぶします。
揚げ方の最大のコツは「低温でゆっくり、最後に高温で仕上げる2度揚げ」です。最初にやや弱火でじっくりと揚げることで、中まで火を通しながら余計な水分を飛ばします。その後、高温に上げて短時間でカラッと仕上げると、外はサクサク、中はふわふわの唐揚げが完成します。高温で一気に揚げると、外が焦げても中に水分が残り、骨がカリカリになりません。焦らずじっくりが条件です。
揚げたてに塩こしょうをひと振りして完成。ヒレと身を一緒に口に入れると、香ばしさと上品な白身の旨みが同時に楽しめます。揚げ油の温度管理が難しければ、温度計付きの揚げ鍋を使うと失敗しにくくなります。
揚げるときに外した背ビレと臀ビレは、捨てずに片栗粉をまぶして低温でじっくり揚げてから、高温でカラッと揚げると骨せんべいになります。捨てていた部分がおいしいおつまみに変わる、一石二鳥の活用法です。
参考:唐揚げで骨まで食べる2度揚げのコツが詳しく紹介されています。
パリパリに揚げて骨まで食べられる!カレイの唐揚げレシピ(note)
ヤナギムシガレイ(ササガレイ)の干物は、100gあたり約104kcalと低カロリーでありながら、たんぱく質を約20.2g含む非常にバランスの良い食材です。ご飯茶碗1杯(約160g)が約269kcalなので、干物1尾で高たんぱくな主菜が低カロリーで実現できるということです。ダイエット中の方にも積極的に取り入れたい一品です。
特に注目したい栄養素はタウリンです。カレイにはタウリンが豊富に含まれており、動脈硬化の予防・血圧の正常化・コレステロール値の低下・血糖値の上昇抑制といった効果が期待されています。家族の健康を気にするご家庭にとってうれしい食材です。
また、ビタミンB群(B1・B2・B12・ナイアシンなど)も豊富で、エネルギー代謝を促進し疲労回復をサポートします。特に干物は加工の過程でナイアシンが生よりも増加し(100gあたり5.1mg)、エネルギー代謝の助けになります。毎日の食卓に取り入れやすいです。
ヤナギムシガレイは脂質が少なく消化に優れているため、胃腸に優しく病後の回復食や離乳食としても推奨されてきた歴史があります。子どもからお年寄りまで食べやすい淡泊な白身は、家族全員の食卓に向いています。クセがなく、味付けを問わずどんな料理にも合わせやすいことも大きな魅力です。
ビタミンDやカルシウムの吸収を助けるリン(100gあたり170mg)も含まれており、骨の健康維持にも貢献します。成長期のお子さんだけでなく、骨密度が気になる世代にもうれしい栄養面での強みがあります。健康効果は多方面にわたります。
参考:カレイの栄養成分と効用が日本食品標準成分表2020年版をもとに詳しく解説されています。