

「冬至かぼちゃ」は煮物だけとは限りません。地域によってはかぼちゃをまったく使わない「冬至食」が正式な風習として受け継がれています。
「冬至にはかぼちゃを食べる」というイメージは広く定着していますが、実は地域によってその「食べ方」はまったく異なります。大きく分けると、シンプルな煮物が中心の地域と、かぼちゃ+小豆を組み合わせた料理が定番の地域、そしてかぼちゃそのものを使わない地域の、大きく3パターンが存在します。
以下に、主な地域の冬至かぼちゃをまとめました。
| 地域 | 冬至かぼちゃの料理名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 北海道・東北(山形・秋田・福島北部など) | いとこ煮(小豆かぼちゃ) | かぼちゃと小豆を甘く煮たもの。邪気払いと栄養補給を兼ねる |
| 北海道(一部)・福島 | かぼちゃのおしるこ | 小豆汁の中にかぼちゃを入れた甘い汁物 |
| 青森県 | かぼちゃ粥 | 冬至の朝食として食べる。やさしい甘さのお粥 |
| 岩手県 | かぼちゃひっつみ | 小麦粉生地の汁物にかぼちゃを加えた岩手の郷土料理 |
| 長野県(安曇野・松本地域) | かぼちゃ団子 | かぼちゃ・小豆・小麦粉のお団子を煮た料理。学校給食にも登場 |
| 関東(茨城を中心に) | かぼちゃのいとこ煮 | 農林水産省「うちの郷土料理」にも掲載されている正式な郷土料理 |
| 群馬県 | 冬至うどん | 「ん」のつく具材をたくさん入れたうどん。学校給食にも出ることがある |
| 関西地方 | 小豆粥・かぼちゃと「ん」野菜の煮物 | かぼちゃ以上に小豆が主役になる地域もある |
| 香川県 | しっぽくそば | 「ん」のつく具材を豊富に入れた香川独自の郷土そば |
| 山口県 | かぼちゃぜんざい | かぼちゃを練り込んだお団子を入れたぜんざい |
| 沖縄県 | トゥンジージューシー(冬至炊き込みご飯) | かぼちゃを使わず、田芋(ターンム)・里芋・肉類を炊き込んだご飯 |
この表を見ると、「かぼちゃと小豆の組み合わせ」が北海道から九州の一部まで広く見られることがわかります。これが基本です。
地域の産物と気候が、料理の形を決めてきた歴史があります。寒さが厳しいほど温かく甘い汁物が多く、温暖な地域ではよりシンプルな煮物や炊き込みご飯が根付いています。
農林水産省「うちの郷土料理」では、茨城県の「かぼちゃのいとこ煮」が正式な郷土料理として記録されています。
農林水産省「うちの郷土料理」茨城県 かぼちゃのいとこ煮(作り方・背景を確認したい方はこちら)
全国の冬至かぼちゃを眺めると、かぼちゃ単体より「かぼちゃ+小豆」のセットが圧倒的に多いことに気づきます。なぜこの組み合わせが全国に広まったのでしょうか?
理由は大きく2つあります。
1つ目は「保存性」です。かぼちゃも小豆も、冷蔵技術がなかった時代に冬まで保存できる貴重な食材でした。夏に収穫したかぼちゃは、適切に保管すれば冬至の頃まで栄養価をほとんど失わずに保存できます。小豆は乾燥豆の状態で長期間保存が利くため、組み合わせとして定着したのは自然なことです。
2つ目は「縁起・魔除けの意味」です。小豆の赤い色は、古来から中国・日本において「邪気を払う」色とされてきました。冬至は「一陽来復」、つまり陰の気が最も強まる日であると同時に、翌日から陽の気が戻り始める転換点です。この節目に邪気を払う意味を持つ小豆と、太陽の黄色を象徴するかぼちゃを合わせることで、無病息災を願う「最強コンビ」が誕生しました。
つまり、栄養と縁起のダブルの理由が組み合わさって定着したということですね。
北海道や東北では「いとこ煮」と呼ばれますが、「いとこ」という名前の由来については諸説あります。代表的なのは、「かたいものから順番に入れていくから、追い追い(甥々)煮る→いとこ煮」という語呂合わせ説です。こういうユーモアのある命名センスも、日本の食文化の面白さのひとつです。
冬至かぼちゃの風習が日本全体に広まった背景には、江戸時代の暮らしの知恵があります。冬至に「ん(運)」のつく食べ物を食べると運が開けるという言い伝えが江戸期に広まり、かぼちゃ=「なんきん(南瓜)」の「ん」が重なっていることから、縁起の良い食材として定着しました。
「冬至の七種」と呼ばれる食材があり、「なんきん(南瓜)」「れんこん」「にんじん」「ぎんなん」「きんかん」「かんてん」「うんどん(うどん)」の7つが代表的です。これらはすべて「ん」が二つ入ることから、特に縁起が良いとされてきました。これは使えそうです。
一方で、現代栄養学の観点から見ても、冬至にかぼちゃを食べることは理にかなっています。西洋かぼちゃ100gあたりに含まれるβ-カロテン(体内でビタミンAに変換)は約2,600μg、ビタミンEは約4.9mgと非常に豊富です。β-カロテンは粘膜を強化してウイルスの侵入を防ぎ、ビタミンEは末梢血管の血行を促進して冷え性改善にも効果的です。
冬至は1年で最も日照時間が短い日であり、寒さも本格化する時期です。この時期にビタミンAとEを豊富に含むかぼちゃを食べることは、「風邪をひかないための先人の知恵」として、現代医学的にも裏付けられています。栄養と縁起が一致しているということが大切です。
かぼちゃの皮には果肉よりも多くのβ-カロテンが含まれているため、皮ごと調理することでさらに栄養価を高めることができます。煮物や汁物で皮ごと柔らかく煮ると、体への吸収効率も上がります。これは今すぐ使えそうです。
同じ「冬至かぼちゃ」でも、地域ごとに料理の形は大きく異なります。自分の地元の風習を知ることで、より意味のある冬至が過ごせます。
北海道・東北のいとこ煮(小豆かぼちゃ)
かぼちゃと小豆を醤油・砂糖・塩でやさしく甘く煮た料理です。かぼちゃは一口大(約3〜4cm角)に切り、先に小豆をやわらかくゆでてから合わせるのがポイントです。小豆はかたいものから先に煮るという工程が「いとこ煮」の名前の由来にもなっています。
栄養面では、かぼちゃのビタミンC(熱に弱い)を補うように、小豆のビタミンB1・B2・鉄分が加わり、相乗効果が期待できます。かぼちゃのビタミンCは鉄分の吸収を助けるため、小豆との組み合わせは理にかなっているということですね。
長野・安曇野の「かぼちゃ団子」
長野県の安曇野・松本地域では、かぼちゃと小豆を煮て、小麦粉で作ったお団子を加えた「かぼちゃ団子」が冬至の定番料理です。地域の学校給食にも冬至の時期に登場するほど地元に根付いた郷土料理で、長野県ホームページや市民タイムス(2025年12月報道)でもその継承が紹介されています。
お団子の歯ごたえとかぼちゃの甘さ、小豆の風味が三位一体となった独特の食感が特徴です。白玉粉を使うとよりもちもちとした仕上がりになります。
沖縄の「トゥンジージューシー」
沖縄県ではかぼちゃを使わず、田芋(ターンム)や里芋、豚肉などを炊き込んだ「トゥンジージューシー」が冬至の伝統食です。「トゥンジー」は沖縄方言で「冬至」のこと。この日はヒヌカン(火の神)や仏壇にジューシーをお供えしてから家族で食べる「家拝みの日」とされており、沖縄では冬至が「冬至正月(トゥンジーショーグヮチ)」とも呼ばれるほど大切な節目の日です。
田芋は「子株が次々に生まれる」ことから子孫繁栄の象徴とされており、かぼちゃとはまったく異なる文化的背景を持つ冬至食です。意外ですね。
安曇野市公式サイト「食の歳時記・冬:冬至にかぼちゃだんごを食べる習わし」(長野・安曇野の冬至かぼちゃ団子の詳細はこちら)
冬至かぼちゃを現代の食卓に活かすには、「地域の知恵をベースにしながら、家族の好みや栄養ニーズに合わせてアレンジする」という考え方が便利です。
冬至かぼちゃの核心は「栄養補給」と「邪気払いの縁起」です。この2点を押さえれば、どんな形の料理でも冬至らしさが出せます。
以下に、地域風習をヒントにした「現代版・冬至かぼちゃ」のバリエーションを紹介します。
かぼちゃを選ぶ際は、表面が濃い緑色でかたく、切り口のワタが厚いものを選ぶと甘みが強くなります。スーパーでは11月〜12月にかけて北海道産の西洋かぼちゃが多く出回り、この時期は甘みが増して煮崩れもしにくいのが特徴です。
「今年の冬至は何地域の料理を作るか」という視点で選ぶだけで、食卓に新しい会話が生まれます。これは使えそうです。
食物アレルギーのある家族がいる場合、小豆ではなく黒豆(「くろまめ=まめに生きる」という縁起物でもある)に替えても、縁起の意味を損なわずに調理できます。
venuswatcher「冬至にカボチャと柚子湯だけじゃない?地域に残る冬至の習慣」(各地域の冬至習慣の詳細が参考になります)