スギノリ・ツノマタの栄養と食べ方・アガーの原料の秘密

スギノリ・ツノマタの栄養と食べ方・アガーの原料の秘密

スギノリ・ツノマタの栄養と食べ方・アガーの原料の秘密

毎日のお菓子作りで使うアガーは、実はスギノリ・ツノマタという海藻が原料で、知らないうちにあなたはもう食べています。


この記事でわかる3つのポイント
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スギノリ・ツノマタとは?

日本沿岸に生育する紅藻類で、漢字では「角又」と書く。高さ5〜20cmほどの海藻で、鹿の角のように二股に分岐する独特の形状が特徴です。

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驚きの栄養成分

水溶性食物繊維「カラギーナン」と亜鉛を豊富に含む。亜鉛不足は味覚障害の原因になるため、食卓に取り入れることで健康維持に役立ちます。

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日常生活での活用法

アガー(凝固剤)の主原料として、ゼリーやデザート作りに活用可能。郷土料理「海藻よせ」としてそのまま煮て固めて食べる伝統的な食べ方もあります。


スギノリ・ツノマタとはどんな海藻なのか?基本の特徴

スギノリ・ツノマタは、日本全国の沿岸に生育する紅藻類の海藻です。正式な分類では「スギノリ目スギノリ科ツノマタ属」に属し、学名は *Chondrus ocellatus* といいます。名前の由来となっているとおり、漢字で「角又」と書き、鹿の角のようにY字型・二又状に分岐していく形が特徴的です。


体は膜質で厚みがあり、扁平な構造をしています。通常の大きさは高さ5〜10cmほどで、大きい個体では15cmに達することもあります。はがきの短辺(約10.5cm)くらいまで育つイメージです。色は生育場所や時期によって赤みがかったものから暗褐色まで幅広く変化します。磯の潮間帯の干潮時に干上がる岩場に張り付いて生育し、弾力のある質感が特徴です。


よく似た仲間に「オオバツノマタ」もありますが、ツノマタはひとまわり小さいことで区別されます。また、海藻サラダの盛り付けによく使われる「トサカノリ」とは別の種類です。お菓子店などでは乾燥させた状態のツノマタが「花桜藻(はなさくらも)」という名前で販売されており、水で戻すと桜の花のようにふわっと広がる美しい見た目になります。


乾燥状態では小さく丸まっていますが、水戻しをすると約6〜7倍に膨らむのも特徴のひとつです。海藻サラダや刺身のつまとして、料理を彩るアクセントとしても活用されています。


参考:ツノマタの基本的な栄養や特徴について詳しく解説しています。


カネリョウメディア|つのまたの基本情報・栄養


スギノリ・ツノマタに含まれる栄養成分と健康への効果

ツノマタが注目される理由は、その豊富な栄養成分にあります。特に代表的なのが水溶性食物繊維の「カラギーナン」と、ミネラルの「亜鉛」の2つです。


カラギーナンとは、スギノリやツノマタなどの紅藻類から抽出される多糖類です。水溶性食物繊維として腸内で働き、便秘の予防や整腸効果が期待できます。また、血糖値の急激な上昇を抑えたり、血中コレステロール値を下げたりする働きも報告されています。つまり生活習慣病の予防に役立つ成分です。


もうひとつの注目成分が亜鉛です。他の海藻類と比べて、ツノマタは亜鉛を多く含んでいます。亜鉛は体内で合成できない「必須微量ミネラル」で、タンパク質の合成や免疫機能の調節に深く関わっています。特に大事なのが、味覚に関わる細胞をつくる働きです。亜鉛が不足すると味覚が鈍くなり、料理の味付けがうまくできない「味覚障害」につながるリスクがあります。これは食事が美味しく感じられなくなるだけでなく、家族の健康管理にも影響する話です。


100gあたりのツノマタ(塩蔵・塩抜き後)の栄養成分は以下のとおりです。




























成分 含有量(100gあたり)
エネルギー 137kcal
タンパク質 15.5g
脂質 2.2g
炭水化物 47.8g
食塩相当量 13.0g(塩蔵品のため)


塩蔵品は塩分量が高いため、使う前にしっかり水で塩を抜くことが必要です。乾燥タイプのものを選ぶと塩分の心配が少なく、日常使いがしやすくなります。


さらに、ツノマタに含まれるカラギーナンには腸内環境を整える働きがあり、毎日の腸活を意識している方にも取り入れやすい食材です。過度な摂取は控える必要がありますが、料理のトッピングや副菜として少量ずつ取り入れる分には問題ありません。亜鉛と腸活が同時に意識できるのは、なかなかお得ですね。


参考:亜鉛をはじめとする海藻の栄養素について詳しく比較しています。


BEYOND FREE|海藻類の五大栄養素を比較・調理のコツと食べ方


スギノリ・ツノマタが原料!アガーと寒天・ゼラチンの違い

お菓子作りをする方なら「アガー」という名前を聞いたことがあるかもしれません。実はこのアガーの主原料のひとつが、スギノリやツノマタから抽出されるカラギーナンです。


アガーとは、カラギーナン(紅藻類の抽出物)とローカストビーンガム(マメ科の種子から抽出した多糖類)を混合した植物性の凝固剤です。ゼリーや羊羹、プリンなどを固めるために使われます。


寒天・ゼラチン・アガーは「固める素材」として同じように使われますが、それぞれ特性が大きく異なります。
































種類 原料 固まる温度 食感 透明度
アガー スギノリ・ツノマタ(紅藻類)+マメ科種子 30〜40℃(常温) ぷるん・なめらか 非常に高い(透明)
寒天 テングサオゴノリ(海藻) 40℃前後 ほろっと歯切れよく崩れる 白濁
ゼラチン 動物の骨・皮膚(コラーゲン) 10〜15℃(冷蔵) とろっと柔らか・口溶けよし うっすら黄みがかる


アガー最大の特長は「常温で固まる」点です。30〜40℃程度で固まるため、冷蔵庫を使わなくても固めることができます。夏場のキャンプや持ち寄りデザートに向いているのは、この理由からです。これは使えそうです。


また、アガーは無味無臭・無色透明に近い仕上がりになるため、フルーツの鮮やかな色をそのまま生かしたゼリーを作るのに最適です。ゼラチンが動物性であるのに対し、アガーは完全に植物由来なので、ベジタリアン・ヴィーガンの方でも使用できます。


アガーを使う際の注意点が2つあります。①ダマになりやすいため、あらかじめ砂糖と混ぜてから液体に加えること、②レモン汁などの酸味が強い果汁は、アガーを溶かした後に火を止めてから加えることです。この2点を守るだけで失敗がぐっと減ります。


参考:アガーの特徴と、失敗しない使い方について詳しく解説されています。


服部栄養専門学校|「アガー」の特徴と失敗しない使いかた


スギノリ・ツノマタを使った郷土料理「海藻よせ」の作り方

ツノマタはお菓子の材料としてだけでなく、そのままの海藻として食べる地域もあります。千葉県銚子市や茨城県鹿嶋市・行方市などの鹿島灘沿岸では、ツノマタ(コトジツノマタ)を煮溶かして固めた「海藻よせ(海藻こんにゃく)」という郷土料理が正月の定番として今も作られています。


この料理は農林水産省の「うちの郷土料理」にも掲載されており、地域の食文化として長く継承されてきました。茨城県の鹿行(ろっこう)地域では、おせち料理の箸休めとして年末に必ず作る家庭が多いといいます。味が濃くなりがちなおせち料理の中で、さっぱりとした磯の風味が重宝されているのです。


基本の作り方は非常にシンプルです。



  • 🌊 海藻をきれいに洗い、水300ccに一晩つけておく(正味400g分)

  • 🔥 鍋に入れて火にかけ、とろりとなるまで煮る

  • ❄️ 流し箱(バットや型)に流し入れ、冷やして固める

  • 🍽️ 食べやすい大きさに切り、醤油・七味・わさびでいただく


仕上がりは透明感のある暗褐色で、磯の香りが広がります。薬味には刻みネギ・鰹節・唐辛子が合います。また、細かく刻んだにんじんやごぼうを一緒に固めると、食感と風味のアクセントが加わり、栄養バランスも高まります。


一般のスーパーではツノマタの乾物は見かけにくいですが、銚子・九十九里エリアの乾物屋では1袋600円前後で販売されており、Amazonや楽天などの通販でも入手可能です。乾燥品「花桜藻(赤・ツノマタ)」として販売されているものが使いやすく、海藻サラダのトッピングにも転用できます。


郷土料理の基本が原料のよさをそのまま生かした料理ということですね。特別な調味料が不要で、素材そのものの味を楽しめるのがこの料理の魅力です。


参考:農林水産省が掲載する「海藻よせ」の正式レシピ・歴史・由来が確認できます。


農林水産省 うちの郷土料理|海藻よせ(茨城県)


スギノリ・ツノマタのカラギーナンの安全性、正しく知って使いこなす

「カラギーナン=体に悪い」という情報をネットで見かけたことがある方もいるかもしれません。これは少し注意が必要な情報です。


カラギーナンをめぐる安全性の議論は、主に動物実験(ラット・マウス)の結果に基づいています。一部の研究では、腸内細菌に分解された「低分子カラギーナン(分解カラギーナン)」に炎症や発がん性が認められたとする報告があります。ただし、これは①消化管を経ない注射実験である、②ヒトとは異なる腸内細菌を持つ動物での話である、という点が重要です。


実際に食品として使用される「未分解カラギーナン」については、国際機関の評価は安全としています。FAO/WHO合同食品添加物専門委員会(JECFA)では1日摂取許容量の設定が不要なほど安全性が高いと評価され、欧州食品安全機関(EFSA)やアメリカFDAも同様の結論を示しています。腸潰瘍を引き起こすとされる実験上の量は約45,000mgで、これは大人が1日に45kgものゼリーを食べ続けた場合に相当します。つまり普通の食事量では問題ありません。


ただし、EUが幼児用粉ミルクへの使用を禁止しているように、乳児や胃腸が弱い方への使用には一定の注意が必要です。0歳〜1歳の乳児に与える離乳食や調製粉乳を選ぶ際は、カラギーナン不使用のものを選ぶという判断もあります。


日常の料理でアガーを使ったゼリーを作ったり、ツノマタを副菜として少量取り入れる分には、安全性の心配をする必要はありません。気になる方は、原材料表示でカラギーナンを確認する習慣をつけておくとよいでしょう。


参考:カラギーナンの安全性評価に関する詳しい解説が掲載されています。


Gino Biotech|カラギーナンは安全か?カラギーナンの安全性評価