

インドのスイーツは甘いものが苦手な人でも一度は食べたいと思えるほど奥深いのに、カレーの影に隠れてほとんど知られていません。
ラスマライ(Ras Malai)は、インドのベンガル地方とバングラデシュで特に愛されている伝統的な乳製品デザートです。名前はヒンディー語で「ラス(रस)=ジューシーな、ジュース」「マライ(मलाई)=クリーム」を意味し、名前の通りクリーミーなミルクソースに浸したスポンジ状のチーズ団子が特徴です。
インドではカレーのイメージが強いですが、実はスイーツ文化も非常に豊かです。インドのお菓子は「ミターイ(Mithai)」と総称され、ラスマライはその中でも「ミルクベースのミターイで最も人気が高い」と言われています。
原材料はパニール(カッテージチーズ)またはチェナと呼ばれる新鮮なフレッシュチーズで、これをカルダモンで風味付けした濃厚なクリームソース(ラス)に浸して冷やして食べます。類似デザートとして「ラスグッラー(Rasgulla)」がありますが、ラスグッラーは砂糖シロップ漬けであるのに対し、ラスマライは濃厚なミルクソースを使う点が大きな違いです。つまり風味と濃度が全く異なります。
日本ではまだまだ知名度が低いスイーツですが、東京・西葛西の「トウキョウ ミタイワラ」や、新大久保のインド食材店などで実際に購入・試食できる店舗が存在します。インドスイーツに興味を持ったら一度足を運んでみる価値は十分あります。
インドでは「世界一甘い」と言われるグラブジャムン(100gあたり約410kcal)に比べ、ラスマライはクリーミーながら比較的すっきりした甘さで、初めてインドスイーツに挑戦する方でも食べやすいとされています。これは嬉しいポイントですね。
ラスマライのレシピを聞いて「難しそう」と思う方も多いかもしれませんが、実はチーズ作りとシロップ作りの2工程に分けて考えると、家庭のキッチンで十分に再現できます。所要時間は約70分です。
チェナ(チーズ団子)を作る工程
まず牛乳500mlを小鍋で沸騰直前まで温め、酢(大さじ2)を加えて静かにかき混ぜます。牛乳が分離してホエーとチーズ状の固形物に分かれたら、キッチンペーパーを敷いたざるに静かに注いで水気を切ります。
水で酢の匂いを洗い流したら、再びキッチンペーパーで包んで吊るすように1時間水分を抜きます。水分が十分に抜けたら、薄力粉を少量振って手のひらで丁寧にこね、滑らかな生地に仕上げます。このこねる工程が食感を決める大事なポイントです。
こねた生地を小さじ2杯分ずつ取り分け、直径約2.5cm(親指の爪ほどの大きさ)の平べったい丸形に成形します。水200mlと砂糖50gで作ったシロップを沸騰させ、そこにチェナを静かに入れて弱火で10分茹でます。茹で上がったら氷水に10分浸けて冷やします。
ラス(ミルクソース)を作る工程
牛乳500mlをフライパンで加熱し、アーモンド・ピスタチオ各適量・カルダモンパウダー・サフランひとつまみを加えます。弱火で5〜10分ほどかき混ぜながら煮詰め、量が最初の半分程度になったら砂糖60gを加えてさらに5分加熱します。これだけで完成です。
冷ましたチェナを器に並べ、粗熱が取れたラスを上から注いで完成です。刻んだピスタチオやアーモンドを散らすと、本場インドのラスマライと見た目も遜色ない仕上がりになります。冷蔵庫で一晩冷やしてから食べると、チェナがラスをしっかり吸ってさらに美味しくなります。
ラスを作るときはミルクパンよりも浅めのフライパンを使うと、水分の蒸発効率が上がって時短になります。覚えておけばOKです。
TIRAKITA(インド食材専門店)による詳細なラスマライレシピ
ラスマライを理解するには、インドのスイーツ全体の中での位置づけを知っておくと便利です。インドには「ミターイ(Mithai)」と総称される伝統菓子が数十種類以上あり、結婚式や祭りのお供えから日常のおやつまで様々な場面で活躍しています。
その中でミルク系スイーツの代表格は以下の4つです。
| スイーツ名 | 特徴 | 甘さの強さ |
|---|---|---|
| ラスマライ | チーズ団子+濃厚ミルクソース漬け | ★★★☆☆ |
| ラスグッラー | チーズ団子+砂糖シロップ漬け | ★★★★☆ |
| グラブジャムン | 揚げドーナツ+砂糖シロップ漬け | ★★★★★ |
| バルフィ | 牛乳を煮詰めて固めたミルク菓子 | ★★★★☆ |
ラスグッラーとラスマライは原材料がほぼ同じですが、決定的な差は「漬け込む液体」です。ラスグッラーは砂糖水のシロップのみを使うのに対し、ラスマライは牛乳を丁寧に煮詰めたリッチなクリームソースを使います。食感もラスグッラーがぷるぷると弾力があるのに比べ、ラスマライはしっとりやわらかく、クリームをたっぷり吸い込んだ濃厚な口当たりが楽しめます。
また、ラスマライはウエストベンガル州を中心に北インドでも広く食べられており、インド国内では「ベンガルの最高傑作スイーツ」として位置づけられることもあります。バングラデシュでも非常に人気が高く、国民的デザートといっても過言ではありません。意外ですね。
日本でも東京・西葛西の「トウキョウ ミタイワラ」では本場のラスマライをはじめ、15〜20種類ものインドスイーツが常時並んでいます。また楽天市場などのネット通販でも、インド製のラスマライ(NANAKブランドの冷凍品など)が1kgあたり約2,000〜3,000円台で購入可能です。まずは市販品で味を確認してから自作にチャレンジするのも一つの方法です。
東京・渋谷系インドスイーツ専門店「Mithai」のラスマライ紹介ページ
ラスマライは単においしいだけでなく、使われるスパイスが体に嬉しい効能を持っているという点でも注目されています。特に主婦の方には知っておいて損のない情報です。
サフランの健康効果
サフランは世界でも有数の高価なスパイスで、5gで約4,000〜5,000円することも珍しくありません。しかしその価値は味と香りだけではありません。サフランに含まれる「クロセチン」という成分には、強い抗酸化作用と血行促進効果があります。
特に女性に嬉しい効能として、月経不順の改善や生理痛の緩和に伝統的に用いられてきた歴史があります。漢方では「番紅花(ばんこうか)」として知られており、鎮痛・鎮静・月経の調整作用があるとされています。また、サフランに含まれる「サフラナール」には気分を落ち着かせる作用も報告されており、睡眠の質改善にもつながる可能性があります。
カルダモンの健康効果
「スパイスの女王」と呼ばれるカルダモンはインドでは古くからアーユルヴェーダの消化促進薬として使われてきました。カルダモンに豊富に含まれる「1,8-シネオール」には殺菌・抗炎症作用があり、口臭予防にも有効です。さらにカルダモンの香りを嗅ぐだけで脳の血流が約3%改善されるという研究結果も発表されています。
高血圧の抑制・コレステロール低下・むくみ改善・脂肪燃焼のサポートなど、多岐にわたる効果が期待できます。体にとっても優しいスパイスです。
ラスマライ1人前で摂取できるサフランやカルダモンはごく少量ですが、習慣的に食生活に取り入れることで体へのサポートが期待できます。もちろん糖分も含まれているので、食べ過ぎには注意が必要ですが、おやつの一つとして楽しむ分には十分な価値があるといえるでしょう。
自宅でラスマライを作るとき、少し工夫をするだけで一気に本場インドの味に近づけることができます。細かいポイントを知っておくと、仕上がりが格段に変わります。
チェナをふわふわに仕上げるコツ
チェナを茹でる前のこね工程が、ラスマライの食感を左右する最重要ポイントです。手のひらの親指の付け根を使い、粒がなくなるまで約3〜5分かけてしっかりとすりつぶすように丁寧にこねましょう。こねが足りないと茹でたときに割れやすく、食感が粗くなってしまいます。チェナのこねが基本です。
また、薄力粉を加えすぎると固くなりすぎるため、小さじ1/2程度を目安に少量ずつ加えるのが安全です。
サフランの色と香りを最大限に引き出す方法
サフランはそのまま加えても色が出にくいことがあります。使う前に大さじ1程度の温かいミルクか水にサフランをひとつまみ浸して5〜10分おくと、鮮やかな黄金色と香りが水分に溶け出します。このサフランミルクをラスに加えると、色も香りも格段に豊かになります。
アレンジ例:抹茶ラスマライ・ピスタチオクリームラスマライ
本場インドのレシピをベースにしながら、日本向けのアレンジも楽しめます。ラスに抹茶パウダーを小さじ1加えると和風テイストのラスマライになります。また、ピスタチオをフードプロセッサーで細かくペースト状にしてラスに混ぜると、ナッツの風味が強い豪華なバージョンになります。これは使えそうです。
仕上げに乗せるナッツはピスタチオとアーモンドの定番に加え、ドライローズペタルを散らすと一気に見た目が華やかになります。インドのお祝い菓子らしい雰囲気が出るので、おもてなしにもぴったりです。
ラスマライは作り置きも可能で、冷蔵庫で2〜3日は美味しく保存できます。翌日以降はチェナがラスをさらに吸い込んで味がなじみ、むしろ作りたてより美味しくなることも多いです。まとめて作って少しずつ楽しむ使い方もおすすめです。
インド食材専門店アンビカによるラスマライの食べ方・特徴の解説