マルトースの構造式と二糖類の基本知識を徹底解説

マルトースの構造式と二糖類の基本知識を徹底解説

マルトースの構造式と二糖類の基本を理解する

「水飴は血糖値が上がりにくい」は間違いで、マルトースのGI値は砂糖より高い約105です。


この記事の3つのポイント
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マルトースの構造式とは

α-グルコース2分子がα-1,4-グリコシド結合でつながった二糖類。化学式はC₁₂H₂₂O₁₁で、分子量は342.3。

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身近な食品との関係

水飴・甘酒・焼き芋の甘みの正体はマルトース。デンプンが酵素で分解されて生まれる自然な甘みです。

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健康と血糖値の注意点

マルトースのGI値は約105と砂糖(約65)より高め。血糖値管理が必要な方は摂りすぎに注意が必要です。


マルトースの構造式とα-グルコースの関係


マルトース(麦芽糖)の構造式を理解するには、まず「構成するパーツ」を把握することが大切です。マルトースは、α-グルコース(ブドウ糖)2分子が脱水縮合してできた二糖類です。


α-グルコース1分子の化学式はC₆H₁₂O₆ですが、2分子が結合するときに水(H₂O)が1分子抜け出す「脱水縮合」が起こります。そのため、マルトースの化学式はC₁₂H₂₂O₁₁(分子量342.3)となります。


$$2\text{C}_6\text{H}_{12}\text{O}_6 - \text{H}_2\text{O} = \text{C}_{12}\text{H}_{22}\text{O}_{11}$$


この結合の特徴はα-1,4-グリコシド結合と呼ばれます。左側のグルコースの1位の炭素についているOH基(ヒドロキシ基)と、右側のグルコースの4位の炭素についているOH基が、水を1分子放出して結合するのがその仕組みです。つまり構造式は、6員環(ピラノース環)の形をした2つのグルコースが酸素原子(-O-)を橋渡し役にして連結した形になっています。


結合の形が「α型」か「β型」かというのも重要なポイントです。マルトースはα-1,4結合であるのに対し、セルロース(植物の繊維)を構成するセロビオースはβ-1,4結合。この「α」と「β」という小さな違いが、消化できるかどうかの大きな差を生みます。つまりα結合のマルトースは人間が消化できますが、β結合のセルロースは消化酵素で分解できないということです。


なお、マルトースの構造式を書く際のポイントとして「右側のグルコースのヘミアセタール構造がそのまま残っている」という点があります。これが後述するマルトースの還元性につながる重要な要素です。


参考:マルトースの構造式や性質について詳しく解説している高校化学の参考サイト

二糖類(マルトース/スクロースなどの還元性・構造式・結合・覚え方)- kimika.net


マルトースの還元性とフェーリング反応の仕組み

マルトースの大きな特徴のひとつが還元性を持つという点です。還元性とは、他の物質を還元(電子を与える)する性質のこと。高校化学でよく登場する「フェーリング反応」や「銀鏡反応」で陽性を示します。


なぜマルトースに還元性があるのかというと、構造式の右側のグルコース単位にヘミアセタール構造(環が開いてアルデヒド基 -CHO が生じやすい部分)がそのまま残っているからです。水溶液中でこの部分が環状構造から鎖状構造に変化し、アルデヒド基(-CHO)が生じることで還元性を発揮します。


これはスクロース(砂糖)との大きな違いです。スクロースはグルコースとフルクトース(果糖)が1位同士で結合しているため、ヘミアセタール構造がどちらにも残らず、還元性を示しません。試験や食品の分析でマルトースとスクロースを区別できるのは、まさにこのフェーリング反応を使うためです。


還元性の有無をまとめると以下のようになります。


































二糖類 構成糖 結合 還元性
マルトース(麦芽糖) α-グルコース+グルコース α-1,4 ✅ あり
スクロース(砂糖) α-グルコース+β-フルクトース α-1,β-2 ❌ なし
ラクトース(乳糖) β-ガラクトース+グルコース β-1,4 ✅ あり
セロビオース β-グルコース+グルコース β-1,4 ✅ あり


還元性を持つかどうか、が原則です。日常生活でも「砂糖は還元性なし、水飴の主成分マルトースは還元性あり」と覚えておくと、料理での焦げやすさの違いを理解するのに役立ちます。マルトースがグルコースほどメイラード反応(加熱による着色)を起こしにくいという特徴もここから来ています。


マルトース構造式の加水分解とデンプンとの関係

マルトースは加水分解(水を加えて化学結合を切る反応)を受けると、グルコース2分子に分解されます。


$$\text{C}_{12}\text{H}_{22}\text{O}_{11} + \text{H}_2\text{O} \xrightarrow{\text{マルターゼ}} 2\text{C}_6\text{H}_{12}\text{O}_6$$


この分解を担うのがマルターゼという消化酵素で、小腸粘膜に存在しています。つまり、食事でマルトースを摂取すると小腸でグルコースに分解され、血液中に吸収されます。これが食後の血糖値上昇につながります。


マルトースとデンプンの関係も理解しておくと、食品への理解が深まります。デンプンは多数のα-グルコースがα-1,4-グリコシド結合でつながった多糖類で、これをβ-アミラーゼという酵素が端から順番に分解していくと、マルトースが生成されます。


この反応が日常のあちこちで起きています。


- 🍠 焼き芋が甘い理由:さつまいもに含まれるβ-アミラーゼが、約70℃付近で最も活発に働き、デンプンをマルトースに変換します。70℃をゆっくり長く保つほど、甘い焼き芋になります。


- 🍶 甘酒の甘みの理由:米のデンプンに麹の酵素が作用し、マルトースやグルコースが生成されます。砂糖を一切使っていないのに甘いのはそのためです。


- 🍬 水飴の主成分:デンプンをアミラーゼで分解して作られる水飴の主成分がマルトースです。昔ながらの「麦芽水飴」はその名の通り、麦芽のβ-アミラーゼを利用して製造されます。


また、唾液に含まれるα-アミラーゼも同じ働きをします。よく噛んでご飯を食べると甘く感じるのは、デンプンがアミラーゼによってマルトースへと分解されるためです。これは食品科学的に非常に興味深い現象です。


参考:マルトースとデンプンの関係、麦芽糖の健康効果について

麦芽糖(マルトース)とは|血糖値への効果や小麦アレルギーについて – かわしま屋


マルトースのGI値と血糖値への影響—「砂糖より安全」は誤解

ここが最も多くの方に誤解されているポイントです。「水飴や甘酒は自然な甘みだから砂糖より体にやさしい」と思っている方が多いですが、実はGI値(血糖値の上がりやすさの指標)で見ると、マルトースは砂糖を上回る場合があります。


































甘味料・糖の種類 GI値(目安) 特徴
ブドウ糖(グルコース) 100 基準値
マルトース(麦芽糖) 約105 ブドウ糖より高いとされる
白砂糖(ショ糖) 約65 中GI
果糖(フルクトース) 約23 低GI(ただし肝臓負担あり)
還元麦芽糖(マルチトール) 約35 糖尿病食事療法で使用


マルトースは小腸でグルコース2分子に分解されてから吸収されるため、砂糖よりもわずかにゆっくり吸収される場合もあります。しかし最終的にはブドウ糖として吸収され、血糖値を上昇させます。砂糖より安全とは言えないわけです。


ここで混同しやすいのが「還元麦芽糖(マルチトール)」との違いです。よく食品の成分表示に「還元麦芽糖水飴」と書いてある商品を見かけますが、これはマルトースを高圧下で水素化処理した糖アルコールの一種で、まったく別の物質です。還元麦芽糖はGI値35程度と低く、血糖値への影響も少ないため、糖尿病の食事療法に用いられています。砂糖の約8割の甘さでカロリーは約半分という特徴もあります。


一方、マルトース(麦芽糖)自体は砂糖の約3割の甘さしかなく、カロリーは砂糖とほぼ同じです。「甘さが控えめ=カロリーも低い」というわけではないので注意が必要です。


血糖値の管理が気になる方は、甘味料の成分表示を確認する習慣をつけましょう。「麦芽糖水飴」と「還元麦芽糖水飴」は見た目が似ていますが、体への影響が大きく異なります。


マルトースの構造式から見る「主婦が知らない意外な食品知識」

マルトースの構造式と性質を理解すると、日常の料理や食品選びに役立つ知識が見えてきます。このセクションでは、検索では出てこないような実生活への応用を紹介します。


焼き芋の甘さを最大化する温度管理


焼き芋が甘くなるのはマルトースの生成によるものですが、さつまいものβ-アミラーゼが最も活発に働く温度は約60〜70℃です。ところが、この酵素は80℃以上になると失活(働かなくなる)してしまいます。急いで高温で加熱すると、マルトースが十分に生成される前に酵素が壊れてしまうため、甘みが少ない焼き芋になってしまいます。


低温でじっくり(60〜70℃を長く保持する)ほど、デンプンがマルトースに変換され、甘くなります。石焼き芋が甘いのは、この温度帯をゆっくり通過するためです。これは原則です。


料理の「照り・ツヤ」に水飴が使われる理由


水飴(マルトース)が照り焼きや煮物のツヤ出しに使われるのも、マルトースの化学的性質が関係しています。マルトースはグルコースに比べてメイラード反応(加熱による褐変)が起きにくく、結晶化もしにくい性質を持ちます。そのため、加熱してもカラメル状に焦げにくく、透明感のあるきれいなツヤが出るのです。


また、水分を保持する保湿効果も高く、和菓子や煮物の乾燥を防ぐ役割もあります。「料理のツヤには水飴」という昔の知恵には、マルトースの構造的な特性が根拠として存在していたわけです。これは使えそうです。


甘酒の「砂糖不使用」は化学的に正確


市販の甘酒(米麹甘酒)のラベルには「砂糖不使用」と書かれていますが、これは化学的に正確な表現です。甘酒に含まれる甘みの主体はマルトースとグルコースであり、ショ糖(砂糖・スクロース)は含まれていません。ただし前述のようにマルトースも血糖値を上昇させます。「砂糖不使用だから健康的」という認識は半分正解・半分誤解です。


糖質制限を意識している方が、甘酒を代替の甘味料として多用している場合、思わぬ血糖値上昇につながる可能性があります。摂取量に注意することが大切です。


お子さんの便秘薬「マルツエキス」との関係


意外に知られていないのが、乳幼児向けの便秘薬「マルツエキス」の主成分がマルトースだという事実です。マルトースが腸内で発酵する際に生じる有機酸が、腸の運動を促進し、穏やかな排便効果をもたらします。副作用の記載もほとんどなく、1歳以上3歳未満の乳幼児向けに使用される安全性の高い成分です。


「麦芽糖は化学の話」と思いがちですが、実は赤ちゃんのケアにも使われている身近な物質であるということです。


参考:マルトースの食品・健康への応用について

マルトース – Wikipedia(化学的特性・医療応用の参考)




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