

キアマダイは「アカアマダイより味が落ちる」と言われているが、実食した専門家の多くは「味の差はほぼない」と口をそろえる。
キアマダイは、正式名称「黄尼鯛(黄甘鯛)」と書き、学名は Branchiostegus auratus。スズキ目アマダイ科アマダイ属に分類される白身魚です。日本で流通するアマダイは主に「アカアマダイ・シロアマダイ・キアマダイ」の3種ですが、そのなかでキアマダイはもっとも知名度が低く、スーパーで目にする機会も限られています。
体の大きさは最大40cmほどで、アカアマダイ(最大60cm)よりひと回り小ぶりです。体色はアカアマダイに似た赤みがかった色ですが、顔・背びれ・尾びれがはっきりした黄色をしており、目の下から口先にかけて白いアーチ状のラインが入っているのが特徴。この「目の下の白いライン」がアカアマダイとの見分けポイントです。
| 種類 | 体色 | 最大サイズ | 生息水深 | 値段の目安 |
|---|---|---|---|---|
| アカアマダイ | 赤〜薄ピンク | 約60cm | 30〜150m | kg3,000〜8,000円 |
| シロアマダイ | 白〜薄ピンク | 約60cm以上 | 30〜80m | kg10,000〜50,000円 |
| キアマダイ | 赤+黄色みが強い | 約40cm | 80〜300m | kg2,400〜8,000円 |
キアマダイはアマダイ3種のなかでもっとも深い場所(水深80〜300m)に生息しています。深場に潜むほど漁獲コストが上がるため、水揚げ量は3種のなかで最少。市場への流通量が少なく、特に関東のスーパーではほとんど見かけません。
生息域は主に千葉県銚子・相模湾・紀伊水道から九州南岸の太平洋側、若狭湾、島根県、山口県日本海側、対馬など。主な産地は鹿児島県で、長崎県産も市場に出回ります。
つまり、キアマダイは「流通量の少ない希少魚」というわけです。
参考:キアマダイの詳細な生態・料理情報(市場魚貝類図鑑)
https://www.zukan-bouz.com/syu/キアマダイ
キアマダイの値段は、購入する場所やサイズ、季節によって大きく変わります。まず市場での取引価格ですが、業務用食材の仕入れサイト「八面六臂」によると、長崎県産キアマダイ(400〜500g程度)の税抜き価格は2,400円/kg(税込2,592円)と記載されています。ただし「入荷無し」になることも多く、それだけ流通量が少ない魚です。
一方、1kgを超えるような大型になると話は変わります。釣りニュース専門メディア「TSURINEWS」の2024年2月の記事によれば、1kgを超えるキアマダイのキロ単価は8,000円ほど。アカアマダイも同様に近年価格の高騰が著しく、大型はほぼ高級料亭向けとなっています。
スーパーでの販売価格は、以下のように購入しやすい価格帯が広がっています。
注目すべきは、スーパーに並ぶ「アマダイ」の中にキアマダイが混じっていることがある点です。アカアマダイとキアマダイは外見がよく似ており、見分けのつかない状態で「アマダイ」として販売されるケースがあります。知らずに購入していた場合でも損ではなく、実際の味はアカアマダイとほぼ変わりません。これは知っておくと得する情報です。
鮮魚としての相場は季節変動もあります。豊洲市場のデータ(2016〜2020年平均)では、アマダイ全体の値段は12月がもっとも高く、6月と比べて約7割も値上がりするというデータがあります。年末年始に向けて価格が上昇する傾向です。旬の晩秋〜冬は脂のりがよい反面、値段も高くなりがちなので、家計を考えると秋口が狙い目といえます。
参考:アマダイの値段相場・旬・調理法の解説記事
https://blog.sakama.tokyo/archives/5911
キアマダイの旬は晩秋から冬(10〜2月ごろ)とされています。この時期は脂のりがよく、身の甘みが増して食べごろです。ただし、年間を通じて秋〜春にかけて味が安定しているため、旬を外しても十分においしく食べられます。
鮮度の見分け方が重要です。なぜなら、アマダイはとくに鮮度が落ちやすい魚として知られているからです。アカアマダイと比べても、キアマダイはさらに傷みやすいという特徴があります。
アマダイは水分が多く身がやわらかいため、傷みが早い魚です。購入後すぐに食べない場合は、内臓を取り除いてキッチンペーパーに包み、ラップをかけてチルド室で保存するか、下処理してから冷凍保存することをおすすめします。
鮮度が少し落ちている場合でも、干物や昆布締めに加工することで旨みが凝縮されて美味しく食べられます。干物にすると旨味成分が凝縮されるため、むしろ「干物向き」とも言われています。水っぽい食感が気になる場合は、切り身に軽く塩をふって1時間以上置くと水分が抜けて身が締まり、調理しやすくなります。
大型ほど味がよいというのは、アマダイ全般に共通する原則です。40cm前後の個体は特に脂のりがよく、身も締まっていて食べ応えがあります。小型は手ごろな値段で購入できますが、大型に比べると味が落ちる場合があります。
参考:アマダイ3種の見分け方と特徴(釣り人向け詳細解説)
https://oretsuri.com/amadai-howto-3types
一般的に「キアマダイはアカアマダイよりも味が劣る」と言われることがあります。しかし、これは本当のことなのでしょうか?
実際に食べ比べをした専門家や釣り人の多くが「味に大差はない」と報告しています。市場魚貝類図鑑(ぼうずコンにゃく)では「アカアマダイに負けず劣らずうまい魚」と記載。釣りメディア「ORETSURI」でも、同サイズを同時に刺身で食べ比べた結果「ほぼ変わらない(違いを判断できない)」という実食レポートが掲載されています。
では、なぜキアマダイはアカアマダイよりも「味が劣る」という評価が広まったのでしょうか?
理由は主に3つ考えられています。
市場魚貝類図鑑では味の評価度を★★★★★(究極の美味)と最高評価をつけており、「食べ比べていない人が多いため不当に低評価されている」との見解も示されています。
つまり、「安い=まずい」というわけではない、ということですね。
鮮度のよいキアマダイを手に入れられれば、アカアマダイと変わらない高級魚の味を比較的お得な価格で楽しめる可能性があります。これは家計的に大きなメリットです。スーパーで「アマダイ」として並んでいる場合でも、キアマダイが混じっていることがありますが、鮮度さえよければ何も問題ありません。
参考:アマダイの色別価格差・種類の違いを詳解(サカナト)
https://sakanato.jp/7079/
キアマダイはアマダイ類の中でもとくに「皮と鱗に旨みがある」ことで知られています。アカアマダイでよく知られる「松笠焼き(鱗ごと焼く調理法)」は、キアマダイでも同様に楽しめます。これをご家庭で再現するのがもっともコストパフォーマンスのよい食べ方です。
① 若狭焼き(基本の焼き方)
若狭焼きとはアマダイの定番料理で、鱗をつけたまま焼き、最後に酒・醤油(若狭地)を塗りながら仕上げる京都・若狭の伝統的な調理法です。
表面はこんがりと鱗ごとパリパリに、中はしっとり蒸し上げたような仕上がりになります。鱗ごと食べる皮の香ばしさは格別です。
② 昆布締め(刺身が余ったとき・やや鮮度が落ちたとき)
新鮮なキアマダイは刺身でも食べられますが、購入後少し時間が経ったものは昆布締めが最適です。三枚おろしにして皮を引き、薄くそぎ切りにしたものを戻した昆布で15分ほど挟むだけ。昆布の旨みが加わって味が引き出され、身の余分な水分が抜けて食感がよくなります。
③ 酒蒸し(旨みをそのまま楽しむシンプル調理)
三枚おろしにして切り身にし、軽く塩を振って水分を拭き取ります。昆布を敷いた皿にのせて酒を振り、蒸すだけで完成です。身がほろほろとほどけ、皮と皮直下の旨みが凝縮された一品になります。
これら3つの料理法はすべて自宅でできる内容です。特別な調理器具は必要ありません。
キアマダイの身はとてもやわらかいため、三枚おろしの際は身を崩さないよう注意が必要です。包丁を軽く引くような動作でおろすのがコツ。不安な場合は魚屋さんにおろしてもらうか、鮮魚通販サービスの「下処理込み配送」を利用すると手間が省けて便利です。
旨みが濃縮されているということですね。干物なら冷凍保存が効き、1〜2ヶ月ほど品質を保つことができます。
キアマダイは料亭で食べると塩焼きだけで1,300〜5,000円、コース料理なら1万円以上になることもある高級魚です。自宅で調理すれば大幅なコスト削減になります。鮮魚を1匹(500g前後)購入して自宅で若狭焼きを作れば、材料費は2,000〜3,000円程度に収まります。家庭で楽しむ価値は十分にあります。
参考:キアマダイを含むアマダイの旬・選び方・調理法の詳細