

ピンク色のミルクティーを作るのに、食紅を使っていませんか?実は食紅なしでも鮮やかなピンク色が出せます。
カシミールチャイ(Kashmiri Chai)は、パキスタン・カシミール地方を発祥とする伝統的なミルクティーで、「ヌンチャイ(Noon Chai)」や「ピンクチャイ(Pink Tea)」とも呼ばれます。最大の特徴はその鮮やかなピンク〜ローズ色の水色(すいしょく)ですが、これは着色料ではなく、茶葉に含まれる「テアフラビン」「アントシアニン」などのポリフェノールが化学変化を起こすことで生まれます。
発色のポイントは大きく3つあります。まず茶葉そのもの、次に重曹(ベーキングソーダ)、そして全脂肪乳(ホールミルク)です。
カラワ茶(gunpowder green teaに近い緑茶系)を長時間煮出すと、ポリフェノールが抽出されて濃い緑〜黒色の茶液になります。そこに少量の重曹を加えるとpHがアルカリ性に傾き、ポリフェノールが化学的に変化して赤みがかった色素へと変わります。つまりアルカリ性が鍵です。
最後に、温めた全脂肪乳を「エアレーション」と呼ばれる動作、具体的には鍋を高い位置から低い位置へと何度も注ぎ返しながら空気を含ませることで、白い泡がピンク色の茶液と混ざり合い、あの美しいローズピンクが完成します。この工程を省くと、色が濁った茶色になってしまうため、エアレーションは必須です。
重曹の量は小さじ1/4〜1/2程度が目安で、入れすぎると味が苦くなります。少量だけ覚えておけばOKです。
家庭で本格的なカシミールチャイのピンク色を再現するための材料と手順を紹介します。材料はオンラインショップや一部の輸入食材店で入手できるものばかりです。
【材料・2〜3杯分】
| 材料 | 分量 | 補足 |
|---|---|---|
| カラワ茶葉(Kashmiri/gunpowder green tea) | 大さじ1〜1.5 | なければ中国緑茶(龍井など)でも代用可 |
| 水 | 400ml | 軟水より硬水が発色しやすい |
| 重曹(食用) | 小さじ1/4 | 入れすぎ注意 |
| 全脂肪牛乳 | 250〜300ml | 低脂肪乳では色が出にくい |
| 塩 | ひとつまみ | 伝統的な塩入りが本場の味 |
| カルダモン(ホール) | 2〜3粒 | お好みで |
| ピスタチオ・アーモンドスライス | 適量 | トッピング用 |
【手順】
1. 鍋に水と茶葉、カルダモンを入れ、中火で15〜20分煮出す。水分が約半量になるまで濃縮させる。
2. 重曹を加えてさらに2〜3分煮る。この時点で液体が赤黒〜深緑色になっていれば正常です。
3. 別の鍋で全脂肪牛乳を沸騰直前まで温める。
4. 茶液を濾してから、温めたミルクを少しずつ加えながら、2つの鍋の間でエアレーション(高い位置から低い位置へ何度も注ぎ返す)を5〜7回繰り返す。
5. 塩をひとつまみ加え、カップに注いでピスタチオをのせる。
エアレーションを行うごとに色がピンク〜ローズ色に変化していくのが目に見えてわかります。これは使えそうです。
ミルクは全脂肪乳が原則です。成分無調整の牛乳(乳脂肪分3.5%以上)を使うと泡立ちと発色が安定します。低脂肪乳やオーツミルクでも作れますが、色が薄めに仕上がる点は覚えておくとよいでしょう。
「作ってみたけどピンクにならない」という声はとても多いです。失敗の原因は9割以上が「茶葉の種類・重曹の量・エアレーション不足」のどれかです。それぞれ詳しく見ていきます。
① 茶葉の選び方が最重要
スーパーで手軽に買えるティーバッグの紅茶(アッサム・ダージリン系)では、ほとんどの場合ピンク色になりません。カシミールチャイには発酵が浅い「緑茶系」の茶葉が必要で、特にカラワ茶(Kashmiri green tea)またはガンパウダーグリーンティーが適しています。Amazonや楽天市場では「Kashmiri chai mix」として茶葉と香辛料がセットになった商品が1,000〜2,000円台で購入でき、茶葉選びの手間を省けます。
② 重曹の量は「少量」が正解
重曹は小さじ1/4〜1/2が適量です。多く入れると化学反応が強くなりすぎ、色が黒ずんだり味が苦くなったりします。少量が条件です。食用重曹(ベーキングソーダ)を使い、掃除用重曹は絶対に避けてください。
③ エアレーションは最低5回
鍋の高さを30〜40cm(雑誌を縦にしたくらいの高さ)程度離して、茶液とミルクを往復させます。回数が少ないと色が茶色〜ベージュ止まりになります。5回以上繰り返すのが基本です。
また、水の硬度も発色に影響します。日本の水道水は軟水(硬度50mg/L前後)が多く、硬水(硬度300mg/L以上)と比べると発色がやや弱くなることがあります。エビアン(硬度291mg/L)やコントレックス(硬度1468mg/L)などのミネラルウォーターを使うと、より鮮やかなピンクが出やすくなります。意外ですね。
失敗が続く場合は、市販の「Kashmiri chai mix」を使うのが最も確実です。茶葉と重曹・スパイスが最適な比率でブレンドされているので、手順だけ守ればほぼ確実にピンク色が出ます。
カシミールチャイの味は、塩気のあるクリーミーなミルクティーです。甘いロイヤルミルクティーに慣れた人には最初は少し驚くかもしれませんが、ひと口飲むとカルダモン・シナモンの香りと濃厚なコクが広がり、やみつきになる人が続出しています。
塩を入れることへの抵抗感は最初だけです。ひとつまみ程度の塩は味をまとめる役割を果たし、砂糖の代わりにはちみつを加えると甘塩っぱい仕上がりになります。砂糖を使う場合は小さじ1〜2が目安で、あまり甘くしすぎるとスパイスの香りが飛んでしまいます。
【おすすめアレンジ】
| アレンジ | ポイント |
|---|---|
| ローズウォーター追加 | 数滴加えるだけでより華やかな風味に。色も少し濃くなる |
| スターアニス追加 | 甘い八角の香りが加わり、深みが増す |
| コンデンスミルク使用 | 甘みとコクが増し、子どもにも飲みやすい |
| アイスで提供 | 氷を入れたグラスに注ぐと、ピンク色がより映える。SNS映え抜群 |
| バラの花びらトッピング | 食用バラの花びらを浮かべるとカフェ風の演出に |
主婦の方に特に人気なのが、来客時のおもてなし用ドリンクとしての活用です。見た目のインパクトが大きく、「これ何ですか?」と必ず話題になります。鮮やかなピンク色は食卓を一気に華やかにします。
子どものいるご家庭では、スパイスの量を少なめにしてコンデンスミルクで甘くすると、カフェインが気になる場合もありますが、一般的な緑茶(1杯あたり約20〜30mg)と同程度のカフェイン量なので、夕方以降の飲用は控える程度の配慮で問題ありません。
SNSでの「#ピンクチャイ」「#カシミールチャイ」タグでは、インスタグラムを中心に国内でも投稿数が増えており、2024年以降は特にカフェメニューとしての普及が進んでいます。自宅で作れると知ったら、試さない手はないでしょう。
カシミールチャイに使われるスパイスには、それぞれ健康面での注目成分が含まれています。ただし「体にいい」という情報が先行しがちなため、主婦として知っておくべき正確な知識と注意点も合わせて整理します。
カルダモンはショウガ科の植物で、消化促進・口臭ケアに古くから使われてきました。精油成分「1,8-シネオール」が胃腸の働きをサポートするとされています。
シナモンはインスリン感受性の改善に関する研究が複数あり、血糖値のコントロールに関心がある方に注目されています。ただし、市販のシナモンパウダーの多くは「カシア(Cassia)」という品種で、クマリンという成分を多く含みます。欧州食品安全機関(EFSA)は、カシアシナモンの1日許容摂取量を体重1kgあたり0.1mgと設定しており、体重50kgの人であれば1日5mgが上限の目安です。スパイスとして少量使う分には問題ありませんが、健康目的で大量に摂取するのは避けたほうが無難です。
カルダモン・シナモン・クローブを毎日取り入れる場合、チャイのスパイスとして適量(各ホール1〜2粒程度)を使うのであれば、一般的な食生活の範囲内です。スパイスの量は適量が条件です。
また、カシミールチャイは塩を使うため、塩分摂取量が気になる方は1杯あたりひとつまみ(0.5〜1g未満)を守るようにしましょう。厚生労働省が推奨する成人女性の1日の食塩摂取目標量は6.5g未満(2024年版日本人の食事摂取基準)とされており、チャイ1杯程度では心配するほどの量ではありません。
妊娠中の方は、シナモンやクローブなどのスパイスを大量摂取することで子宮収縮を促す可能性を示唆する研究もあるため、少量にとどめるか医師に確認することをおすすめします。
参考:日本人の食事摂取基準(2024年版)のミネラル・ナトリウムに関する情報は厚生労働省の公式ページで確認できます。
健康効果を期待するよりも、おいしい特別感のあるドリンクとして楽しむのが、カシミールチャイとの一番いい付き合い方です。それが基本です。スパイスの香りとピンクの見た目の組み合わせは、日常の食卓を少し贅沢にしてくれる存在として、ぜひ取り入れてみてください。