

ナスを丸ごと素揚げにして作ったのに、冷蔵庫で翌日食べる方が断然おいしくなります。
「イマムバユルドゥ(İmambayıldı)」はトルコを代表する伝統的な家庭料理のひとつです。正式名称は「パトゥルジャン・イマム・バユルドゥ」といい、トルコ語で「パトゥルジャン=ナス」「イマム=お坊さん(イスラム教の指導者)」「バユルドゥ=気絶した」を意味します。つまり「坊さんが気絶するほどおいしいナス料理」という、なんとも衝撃的な名前がつけられているのです。
この料理の名前の由来には、実はいくつかの説があります。最も広く知られているのは「あまりのおいしさにイマムが気絶した」という説ですが、それ以外にも「使われるオリーブオイルの量があまりにも多くてイマムが驚いて気絶した」「食材費の高さに驚いて気絶した」「嫁入り道具として持ってきたオリーブオイルが12日間で尽きてしまい、13日目に気絶した」などの諸説が残っています。意外ですね。名前の由来がひとつではないところが、いかにも長い歴史を持つ料理らしいといえます。
トルコ料理はフランス料理・中国料理と並ぶ「世界三大料理」のひとつに数えられています。トルコの宮廷料理のレシピ数は約1万ともいわれ、なかでもナス料理は180種類以上あるともされています。イマムバユルドゥはその代表格のひとつで、トルコではどの家庭でも作られる定番中の定番です。ケバブだけがトルコ料理ではありません。野菜を主役にしたイマムバユルドゥのようなシンプルな料理にこそ、トルコ料理の本当のおいしさが詰まっています。
また、このイマムバユルドゥに挽き肉を加えると「カルヌヤルク」という別料理になります。どちらもナスを器に見立てて具材を詰める点は同じですが、肉を加えるかどうかで名前が変わるほど、トルコではこの料理のバリエーションが細かく文化に根付いているのです。
参考:世界三大料理のひとつ、トルコ料理のナス文化について詳しく紹介しています。
イマムバユルドゥの材料は非常にシンプルで、スーパーで手軽に揃えられるものばかりです。2〜3人分の目安として、ナスが3〜5本、トマト2個、玉ねぎ1個、にんにく1〜2片、オリーブオイル適量、塩・砂糖・クミンパウダー少々、仕上げにイタリアンパセリがあれば十分です。これが基本です。
作り方は大きく3ステップに分かれます。
完成したら常温まで冷まし、冷蔵庫でよく冷やしてから食べるのがトルコ流の食べ方です。出来立てより冷やした翌日の方が味がしっかりとなじみ、ナスとトマトソースの一体感が増します。これは使えそうです。エスビー食品の公式レシピでは1食あたり約307kcalと算出されており、脂質の多くはオリーブオイル由来の健康的な不飽和脂肪酸です。
作り置きとして週末にまとめて仕込んでおけば、忙しい平日の副菜や、おもてなしの一品にもなります。冷蔵保存の目安は翌日中が推奨されていますが、衛生的に保存すれば2〜3日間はおいしく食べられます。
参考:エスビー食品によるイマムバユルドゥの公式レシピ。カロリーや塩分の目安も確認できます。
坊さんの気絶 ~パトゥルジャン・イマム・バユルドゥ – エスビー食品
イマムバユルドゥを作るとき、初めての方が失敗しやすいポイントがいくつかあります。ここを押さえておけば、ぐっとおいしく仕上がります。
まず一番重要なのが「ナス選び」です。細長いナスよりも、短くて太めのナスの方が具材を詰めやすく、舟型に開いても崩れにくいため作りやすいです。長さは16cm前後のいわゆる「中長なす」が理想的です。スーパーでナスを選ぶときにひとつ意識してみてください。
次に、ナスの皮をストライプ状(縞模様)にむくことにはちゃんと理由があります。全部むいてしまうと煮崩れしやすく、見た目も悪くなります。交互に皮を残すことで形がきれいに保たれ、仕上がりに美しい縞模様が出ます。見た目がおしゃれな一皿になるのも、この一手間のおかげです。
トマトソースは「水っぽいと失敗」が原則です。仕上がったソースをスプーンで持ち上げても流れ落ちにくいくらいのもったりとした状態が目安です。水分が多すぎるとナスの上に乗せたときにこぼれてしまい、見た目がぐちゃっとなってしまいます。しっかりと炒めてトマトの水分を飛ばすことが大切です。
また、オリーブオイルはケチらないことが重要です。イマムバユルドゥの名前の由来のひとつが「オリーブオイルの量に驚いた」という説があるくらい、この料理においてオリーブオイルは欠かせない存在です。ナスはオリーブオイルとの相性が抜群で、コクと風味がぐっと増します。他の油で代用すると風味が大きく変わってしまうため、エクストラバージンオリーブオイルを使いましょう。
参考:イマムバユルドゥの詳しい材料と調理のコツが丁寧に解説されています。
イマームバユルドゥ – 世界の料理 NDISH(エヌディッシュ)
「ナスは栄養がない」と思っている方も多いですが、これは大きな誤解です。実は、ナスの皮には「ナスニン」と呼ばれるポリフェノールの一種(アントシアニン系色素)が豊富に含まれており、これが非常に強い抗酸化作用を持っています。
ナスニンは、老化の原因となる活性酸素の働きを抑制し、動脈硬化・高血圧・生活習慣病の予防に役立つとされています。日本医科大学の広報誌でも、ナスニンの抗酸化作用が紹介されているほどです。さらに夏の紫外線が引き起こすシミ・シワ・たるみを防ぐ効果も期待されており、美容を気にする方にも嬉しい成分です。
イマムバユルドゥのレシピでは、ナスをストライプ状にむいて皮を一部残すため、このナスニンをしっかりと摂取できます。全部むいてしまう料理と比べて、抗酸化作用を無駄なく取り込める点がポイントです。ナスは皮が大切です。
また、この料理に欠かせないオリーブオイルにも注目です。オリーブオイルには「オレイン酸」という不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、LDL(悪玉コレステロール)を減らしながらHDL(善玉コレステロール)を維持することが知られています。さらにビタミンEの抗酸化作用、食後の血糖値急上昇を抑える効果なども報告されています。
さらにトマトには「リコピン」という強力な抗酸化成分が含まれており、これもがん予防・美肌効果・生活習慣病予防に効果が期待されています。リコピンは加熱することで吸収率が上がるため、炒めて使うイマムバユルドゥは栄養面でも理にかなった調理法です。つまり、ナス・オリーブオイル・トマトが合わさったイマムバユルドゥは、美容と健康を意識した「食べる美容食」ともいえる一皿です。
参考:ナスの皮に含まれるナスニンの抗酸化作用について、管理栄養士が解説しています。
イマムバユルドゥは基本の作り方を覚えれば、アレンジの幅が広い料理です。ここでは日々の食卓に取り入れやすいアレンジと、献立のヒントをご紹介します。
まず、デリッシュキッチンで紹介されているアレンジ版では、トマトソースにツナを混ぜるレシピが紹介されています。ツナを加えることでたんぱく質がプラスされ、ボリュームと旨みが増します。肉なし料理ながらしっかりとした食べ応えが生まれるため、夕食のメイン料理にも使えます。これは使えそうです。
また、サーモスの真空保温調理器「シャトルシェフ」を使う作り方もあります。煮込み時間に合わせたシャトルシェフ版レシピでは、フライパンで炒めた後に保温容器に入れてほっておくだけで調理が完成するため、コンロを使う時間が大幅に短縮できます。光熱費の節約にもなりますね。
献立の組み合わせとしては、同じトルコ料理の「メルジメッキ・チョルバス(赤レンズ豆のスープ)」や「チョバン・サラタス(羊飼いのサラダ:きゅうり・トマト・玉ねぎのサラダ)」と合わせると本格的なトルコ風ランチになります。日本の食卓には、温かいご飯や焼きたての薄切りバゲットを添えるのもよく合います。冷製のイマムバユルドゥは温かい汁物との相性が抜群です。
また、子どもが食べやすくするには青唐辛子の量を減らし、クミンパウダーをひとつまみ程度に抑えると食べやすい味になります。クミンの代わりにパプリカパウダーを使うと、色もきれいな仕上がりになります。クミンは省いてもOKです。
この料理は一度作ると冷蔵で2〜3日楽しめるため、週末に作り置きしておくと月曜日の夕食準備がぐっと楽になります。夕食の副菜に困ったときに冷蔵庫から出してそのまま出せる点は、忙しい主婦にとって非常に便利です。
参考:サーモスによるイマムバユルドゥのレシピ。保温調理器を活用した作り方も紹介されています。
パトゥルジャン・イマム・バユルドゥ(トルコ風ナスの詰め物) – サーモス