

スギ花粉が終わってホッとしても、パンやうどんを食べると口がかゆくなることがあります。
ハルガヤ(学名:Anthoxanthum odoratum)は、ヨーロッパ原産のイネ科植物で、現在は日本全国の道端・河川敷・空き地に広く自生しています。花粉の飛散時期は5月〜7月が基本で、特に5月下旬から6月上旬にかけてピークを迎えます。ちょうどスギ・ヒノキ花粉シーズンが終わり「やっと楽になった」と感じるタイミングと重なるのが厄介なところです。
関東エリアでは、イネ科花粉全体の飛散開始は早いところで2月中旬から確認されており、12月まで長期間にわたって少量が飛び続けます。ピーク帯は4月中旬〜7月上旬。ハルガヤはこの前半のピークを担う主要な植物の一つです。
茎の高さは30〜80cmほど(だいたい小学生低学年の身長くらい)。春早くから穂を出すのが名前の由来で、黄色いおしべが目立つ穂が出た時点で開花=花粉飛散のサインです。農林水産省の調査によると、ハルガヤは5月初め〜7月上旬にわたって出穂し、開花から約4週間後には種子を生産します。
早朝から動く方は特に注意です。イネ科花粉の飛散ピーク時間帯は午前8時〜10時。朝の買い物や子どもの送り迎えでちょうど外に出る時間帯と重なります。午前中の気温が低く、午後から上がった日は午後にも飛散が増えるので、1日を通じた対策が必要です。
つまり、「スギが終わったら油断OK」は危険な思い込みということです。
参考:農林水産省「草地における難防除雑草ハルガヤの生育特性と低減対策」
農林水産省公式サイト:ハルガヤの生育特性と低減対策
ハルガヤを含むイネ科花粉症の症状は、スギ花粉症と似ていてくしゃみ・鼻水・鼻づまりが中心です。ただし、大きな違いが1点あります。それは目のかゆみ・充血などアレルギー結膜炎の症状が強く出やすいという点です。スギ花粉症の方が「今年は目が特にひどい」と感じているとしたら、実はイネ科花粉が原因というケースも少なくありません。
また、くしゃみや鼻水だけでなく、花粉症の全身症状として頭重感(56%)・ボーッとする感じ(44%)・喉のかゆみ(48%)・倦怠感(33%)・不眠(32%)といった症状が出ることもあります。「なんとなく体がだるい」「集中できない」という状態が5〜7月に続くなら、ハルガヤ花粉症を疑う価値があります。
さらに見落とされがちなのが皮膚症状です。アトピー性皮膚炎の方や肌が敏感な方は、花粉の時期に湿疹が悪化するケースがあります。鼻や目の症状がほとんどない場合でも、毎年同じ時期に肌荒れや皮膚炎が悪化するなら、ハルガヤ・イネ科花粉が原因の可能性があります。これは健康面での大きな見落としになりかねません。
意外ですね。「花粉症=くしゃみと鼻水」だけではないということです。
また、花粉そのものに直接触れると、接触した部分が強く反応する花粉皮膚炎を起こすこともあります。子どもと公園や川沿いを散歩するときに草に触れるのは避けるほうが無難です。
参考:大正製薬「あまり聞かないイネ科花粉症。種類や特徴、症状などを知って対策につなげよう」
大正製薬「イネ科花粉症の症状と対策」
ハルガヤを含むイネ科花粉症の方が見落としやすい、健康に直結する重大な知識があります。それが食物との交差反応(花粉・食物アレルギー症候群)です。
イネ科花粉に含まれるたんぱく質は、特定の食物に含まれるたんぱく質と構造が似ているため、それらを食べると免疫システムが「花粉だ」と勘違いしてアレルギー反応を起こします。これが交差反応の仕組みです。
特に注意が必要な食べ物は以下のとおりです。
症状の多くは食後15分以内に口腔内のかゆみ・刺激感として現れますが、まれに蕁麻疹や呼吸困難など重篤な症状に進むこともあります。重篤化するリスクがある点では、スギ花粉症よりも侮れません。
5〜7月に小麦製品を食べると、場合によっては救急対応が必要な事態になることがあります。これが条件です。
普段何気なく食べているものが原因になり得るため、5〜7月のハルガヤ飛散時期は「食べ合わせ」にも気を配る必要があります。口腔内に違和感を感じたら、まず医療機関でアレルギー検査を受けることを検討しましょう。アレルギー科・耳鼻咽喉科・内科・皮膚科で受けられます。
参考:ふくずみアレルギー科「花粉と食物の関係」
ふくずみアレルギー科:花粉症・食物アレルギーの知識
ハルガヤ花粉はスギ花粉と決定的に異なる特徴があります。それは飛散距離が数十〜数百メートル程度と短いことです。スギ花粉は風に乗って60〜80kmも飛ぶのに対し、ハルガヤを含むイネ科花粉は低い草から放出されるため、遠くまで飛びません。つまり、発生源から意識的に離れるだけで、症状をかなり抑えられる可能性があります。これは使えそうです。
外出時の対策として、次のことを意識してみましょう。
帰宅後の対策も重要です。玄関前で衣類の花粉を払い落としてから家に入り、洗顔・うがい・鼻うがいを行うことで体に残った花粉を除去できます。シャワーで髪や体を洗い流すのが最も確実です。
室内対策については、空気清浄機を寝室の枕元に置いて24時間稼働させる方法が効果的です。HEPAフィルター付きのものを選ぶとより効果が高まります。洗濯物は室内干しにし、布団は布団乾燥機を使う習慣をつけると、花粉の室内持ち込みを大幅に減らせます。
対策はシンプルです。「近づかない・持ち込まない・洗い流す」の3つが原則です。
毎年5〜7月になると症状に悩まされているなら、根本的な解決策として舌下免疫療法(免疫療法)を検討する価値があります。これは薬でアレルギー症状を抑えるのではなく、原因となるアレルゲンを少量ずつ摂取することで体を慣れさせ、アレルギー反応そのものを弱める治療法です。
現時点でイネ科花粉に対しては、カモガヤ花粉エキスを使った舌下免疫療法が保険適用で行われています。ハルガヤはカモガヤと同じイネ科であり、アレルゲンの交差反応性が高いため、カモガヤの免疫療法でハルガヤにも効果が期待できるとされています。
治療の流れは、毎日自宅で舌の下に少量のエキスを置いて溶かすだけ。続ける期間は一般的に3〜5年ですが、症状の大幅な改善が報告されています。毎年数千円かかる薬や医療費が長期的に不要になる可能性を考えると、経済的なメリットも大きい選択肢です。
ただし、治療を開始できる時期は花粉飛散シーズン(5〜7月)を外した非シーズン期が原則です。ハルガヤ・イネ科花粉症が疑われる場合は、症状が落ち着く秋〜冬のうちに耳鼻咽喉科やアレルギー科に相談しておくのがベストなタイミングです。
なお、まずは自分がハルガヤ・イネ科花粉症かどうか確認するための血液検査(IgE RAST)を受けることが第一歩です。「スギ花粉のシーズンが終わっても症状が続く」「5〜7月に目のかゆみが強い」「メロンやトマトを食べると口がイガイガする」という方は、イネ科花粉症の可能性が高い状態と言えます。
参考:大正製薬「イネ科花粉症の対策方法」
大正製薬「イネ科花粉症の対策と検査について」