

伏見とうがらしは、京都の伏見付近で古くから栽培されてきたとされ、1684年の「雍州府志」にも伏見辺りの産が有名だと記載がある京野菜です。さらに、別名「ひもとう」とも言われるほど細長い形が特徴で、20cmほどになるものもあると紹介されています。京都では実だけでなく、葉も「きごしょう」と呼んで佃煮にして食べてきた“捨てるところが少ない”野菜として語られています。
ここで意外に見落とされがちなのが、「伏見とうがらし=単なるししとうの仲間」ではなく、京都の食文化(家庭菜園・おばんざい・葉の佃煮)と結びついて“使い切る”前提で育ってきた点です。実の料理ばかり注目されますが、歴史的には家庭の保存食(葉の佃煮)まで含めて、台所の実用品として完成していたと考えると、調理の発想が広がります。
参考:京のブランド産品(伏見とうがらしの由来、別名「ひもとう」、葉を「きごしょう」として佃煮にする記述)
https://kyoyasai.kyoto/details
伏見とうがらしは夏に向く野菜として紹介され、食物繊維、カルシウム、ビタミンCなどが豊富な“夏バテ解消野菜”としても触れられています。旬の時期は情報源によって表現が揺れますが、少なくとも「夏に盛り上がる野菜」として扱われ、初夏〜夏の露地物が良いとされる説明もあります。家庭料理で扱うなら、「香りが立つ時期=焼くだけでうまい時期」と覚えるのが実用的です。
選び方の現場的なコツは、見た目の立派さよりも“みずみずしさと皮の張り”です。細長い野菜は、時間が経つほど水分が抜けて皮がしなび、焼いたときに香ばしさより青臭さが目立つことがあります。買った当日〜翌日で焼き物に回し、少し日が経つ分は煮物(炊いたん)や当座煮にすると、食感の弱点が出汁で補えます。
また、伏見とうがらしは「赤く熟しても辛くならない」旨の説明がある資料もあり、青だけが正解ではありません。完熟の赤は、料理の彩りとして活かしやすいので、売り場で見かけたら“辛さ警戒”より“色のアクセント”として扱うと失敗が減ります。
伏見とうがらしは丸ごと焼いたり、素揚げ・天ぷらにしたりする場面が多い一方で、加熱中に破裂しやすい点が初心者の落とし穴です。破裂の原因は、中が空洞で、加熱により内部の空気が膨張するためで、穴を開けて空気の逃げ道を作ると安全性が上がると解説されています。実際に、伏見唐辛子の焼き浸しレシピでも「破裂しないように穴を開ける」工程が明記されています。
下処理は、目的別に最適化すると効率が上がります(入れ子にせず、あえて“一覧で迷わない”形にします)。
・焼き浸し/グリル焼き:軸を切り、箸や爪楊枝で1〜数カ所穴を開ける(破裂防止)。
・炒め物:ヘタを落としてから、食べやすい長さに手でちぎる(断面が増えて味が絡みやすい)。
・煮物/当座煮:ヘタと大きな種を取り、3cm程度に切る(短時間で味が入る)。
「種を取るか問題」は、料理の完成形で決めるのが現実的です。焼き物は丸ごと食べる満足感があるので種は残しても気になりにくい一方、当座煮のように煮詰めていく料理は、仕上げの口当たりが重要なので“大きな種だけ抜く”という折衷が効きます(実際に当座煮の手順にも、ヘタと大きな種を取る工程があります)。
参考:破裂の理由と穴あけの重要性(空洞の空気が膨張)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/571c4e0bd1d50bad0fb5752ea959300be784c159
参考:焼き浸しの手順(軸を切り、箸で穴を開ける記載)
https://www.bob-an.com/recipes/16517.html
伏見とうがらしの「炊いたん」は、京都の家庭料理の文脈でも定番として語られやすく、出汁で煮含めることで香りと甘みが落ち着いて、ご飯に合う副菜になります。伏見とうがらしは焼き物・炒め物・煮物など幅広く使えるとされ、まさに炊いたんは“守備範囲の広さ”が出る料理です。さらに、ちりめんじゃこを合わせて煮る作り方も紹介されており、旨みを足す発想が王道です。
当座煮(佃煮に近い煮詰め)は、少量でも満足度が出せるのが強みです。農畜産業振興機構のレシピでは、伏見唐辛子200gに対して、だし汁・酒・砂糖・しょうゆで煮上げ、仕上げに削り節を混ぜる手順が示されています。ここでのポイントは「最初に炒めてから煮る」流れで、油をまとわせて青い香りを“香ばしさ側”に寄せてから甘辛味を入れる設計になっています。
家庭で再現する際の実務メモ(箇条書き・表・絵文字の指定があるので、ここは分かりやすさ重視で入れます)。
また、独自視点としておすすめしたいのが「当座煮を“調味料化”する」使い方です。ご飯のお供で終わらせず、刻んで
・冷奴のトッピング
・卵焼きの具(甘辛+出汁の相性が良い)
・おにぎりの芯
に回すと、少量の伏見とうがらしでも一週間の副菜設計が楽になります。京都の家庭菜園で重宝されてきた背景を踏まえると、“作って終わり”より“展開して使い切る”方が、この野菜らしい使い方です。
参考:当座煮の材料と手順(ヘタと大きな種を取り、炒めてから煮る、削り節で仕上げ)
https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000207.html
伏見とうがらしは「辛みがほとんどない」と説明されることが多く、つい“優しい野菜”として処理が雑になりがちです。けれど実際には、細長い形状ゆえに火入れの影響がダイレクトで、強火で短時間に焦がすと香りが立つ反面、果肉が痩せて食感が単調になります。ここは、料理のゴールを「歯ごたえ重視」か「甘み重視」かで、火を分けると一段おいしくなります。
・歯ごたえを残す:強火で表面に焼き目→すぐ調味(焼き浸し向き、香りが前に出る)。
・甘みを出す:弱火寄りでじっくり→塩少々で引き出す→最後にしょうゆや出汁(炒め煮、焼きびたし系の発想)。
・油と相性:最初に少量の油で表面をコーティングすると、香りが立ちやすく、煮物でも“野菜っぽさ”が残る。
意外に効くのが「切らずに焼いて、切ってから味を入れる」順序です。先に切ると断面から水分が出て、焼きの香りが薄くなることがあります。逆に、丸ごと焼いてから切ると、香りの層が残ったまま調味液を吸わせやすく、焼き浸し・炊いたんの両方で応用できます(破裂防止の穴あけは忘れずに)。
最後に、伏見とうがらしは葉まで佃煮にしてきた野菜だという説明があります。ここから発想して、実の料理でも“香りを残す設計”を意識すると、ただの青野菜ではなく、京野菜としての輪郭が出ます。たとえば、当座煮にした後に削り節を追いがけする、焼き浸しに柑橘を少量合わせるなど、香りの出口を複数用意すると、家庭料理でも印象に残る一皿になります。
参考:伏見とうがらしは細長く、葉も佃煮(きごしょう)にして食べてきた、焼き物・炒め物・煮物など用途が広い
https://kyoyasai.kyoto/details