福祉クラブと生活クラブの違いと特徴や活動内容

福祉クラブと生活クラブの違いと特徴や活動内容

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福祉クラブと生活クラブの違い

福祉クラブと生活クラブの主な違い
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専門分野

福祉クラブは福祉と食材宅配に特化、生活クラブは食材宅配を中心に福祉も展開

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活動エリア

福祉クラブは神奈川県限定、生活クラブは全国展開

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組織の関係

福祉クラブは生活クラブから派生した福祉専門の生協

福祉クラブ生協と生活クラブ生協は名前が似ているため混同されがちですが、実は別の生協組織です。両者の違いを理解することで、自分のライフスタイルや価値観に合った生協を選ぶことができます。この記事では、両生協の違いを詳しく解説していきます。

 

福祉クラブ生協の特徴と成り立ち

福祉クラブ生協は、1989年に横浜市港北区で日本初の福祉専門生協としてスタートしました。現在は神奈川県内27の自治体・行政区で活動し、組合員数は1万6,140世帯(2024年4月現在)に達しています。

 

福祉クラブ生協の最大の特徴は、「市民参加型の福祉社会」の実現を目指していることです。高齢者や障がい者が住み慣れた地域で暮らし続けられる社会づくりを理念としています。

 

福祉クラブ生協では、安心・安全な食材の宅配サービスに加えて、以下のような福祉サービスを提供しています。

  • 高齢者向け住宅型有料老人ホーム(コア北鎌倉、きらり港北、みのり藤沢など)
  • 子育て支援サービス
  • 高齢者・障がい者向けの福祉・介護サービス
  • ケアプラン作成
  • 家事介護サービス

福祉クラブ生協の住宅型有料老人ホームは、全室個室(トイレ・洗面所付)で、24時間の見守りがあり、入居者一人ひとりの生活スタイルを尊重したサービスを提供しています。これらの施設は生活協同組合として全国で初めて運営する住宅型の有料老人ホームとして注目されています。

 

生活クラブ生協の理念と活動内容

生活クラブ生協は、安全な食材の共同購入を中心に活動する生協で、全国に展開しています。「自分たちの食と暮らしは自分たちでつくる」という理念のもと、食の安全性にこだわった独自の商品(消費材)を開発・提供しています。

 

生活クラブ生協の主な活動内容は以下の通りです。

  1. 食材宅配サービス:添加物や農薬の使用を極力抑えた安全な食材を提供
  2. 福祉事業:高齢者支援、子育て支援など
  3. 共済事業:「エッコロ(共済)制度」などの独自の保障制度
  4. 環境保全活動:再生可能エネルギーの普及など

生活クラブ生協も福祉事業に力を入れており、「誰もが自分らしく安心して暮らせるコミュニティづくり」を目指しています。特養ホーム・グループホーム・デイサービス・ショートステイ・訪問介護・食事サービス・移動サービスなどを通じて、高齢者を365日24時間支える体制を構築しています。

 

また、生活クラブ共済連の共済事業の剰余金を活用した「福祉たすけあい活動支援制度」を設け、会員単協の福祉・たすけあい活動を支援しています。

 

福祉クラブと生活クラブの出資金システムの違い

両生協とも出資金というシステムを採用していますが、その仕組みには違いがあります。

 

福祉クラブ生協の出資金システム

  • 加入時に1,000円の出資金が必要
  • その後、毎月1,000円ずつ8万円まで積み立て増資を行う
  • この出資金は配送センターや福祉施設の建設、厨房施設などの資金に充てられる
  • 脱退時には出資金は全額返却される

生活クラブ生協の出資金システム

  • 入会時に出資金(1,000円程度)が必要
  • 地域によって出資金の額や増資の仕組みが異なる場合がある
  • 脱退時には出資金は返却される

出資金は一見すると「会費」のように感じるかもしれませんが、実際には組合員が共同で施設や設備を所有するための資金であり、脱退時には返却されるものです。これは生協が「協同組合」であるという本質に基づいています。

 

福祉クラブのワーカーズ・コレクティブと生活クラブの関係

福祉クラブ生協と生活クラブ生協の関係を理解する上で重要なのが「ワーカーズ・コレクティブ」の存在です。

 

ワーカーズ・コレクティブとは、働く人たちが出資・経営・労働を一体的に担う協同組合型の事業組織です。生活クラブ生協の活動から発展したワーカーズ・コレクティブは、特に2000年の介護保険制度導入以降、福祉関連事業にシフトしていきました。

 

社会学者の上野千鶴子氏によれば、生活クラブのワーカーズ運動は、訪問系(および通所系)の介護を中心に伸長してきたとされています。2018年度末の生活クラブグループの福祉関連の事業所数は859カ所、働くメンバーは15,855人、全体の事業高合計は約180億7千万円に達しています。

 

福祉クラブ生協の運営する住宅型有料老人ホームも、事業主体は福祉クラブ生協ですが、実際の運営はワーカーズ・コレクティブ(W.Co)が担っています。これは、市民自らが必要なサービスを作り出すという生協の理念を体現したものといえます。

 

福祉クラブと生活クラブの食材宅配サービスの比較

両生協とも食材宅配サービスを提供していますが、その特徴や位置づけには違いがあります。

 

福祉クラブ生協の食材宅配

  • 福祉サービスと並ぶ主要事業の一つ
  • 国産素材中心の安心食材や生活用品を提供
  • 神奈川県内限定のサービス

生活クラブ生協の食材宅配

  • 生協の中心的事業
  • 「消費材」と呼ばれる独自基準の食材・生活用品を提供
  • 全国展開しており、地域によって取扱商品に若干の違いがある

配送料については、生活クラブが0~275円、パルシステム(別の生協ですが比較参考として)が0~220円となっています。価格帯は両者ともスーパーより若干高めですが、安全性や品質を重視した商品構成となっています。

 

フルタイムで働いている方でも利用しやすいよう、留守時の配達対応(保冷箱の活用など)も行っています。

 

福祉クラブ生協の独自性と生活クラブとの連携

福祉クラブ生協は「全国唯一の福祉と食材宅配を専門とする生協」として独自のポジションを確立しています。一方で、生活クラブ生協との連携も深く、特に神奈川県では両者が補完的な関係を築いています。

 

神奈川県内では、生活クラブ生協(神奈川)と福祉クラブ生協が並存しており、生活クラブが食材宅配を中心としつつ福祉事業も展開する一方、福祉クラブは福祉専門生協として深い専門性を持ったサービスを提供しています。

 

福祉クラブ生協の特徴的な取り組みとして、以下のようなものがあります。

  1. 地域密着型の福祉サービス:神奈川県内27自治体・行政区に特化することで、地域のニーズに合わせたきめ細かいサービスを提供
  2. ワーカーズ・コレクティブによる運営:市民自らが事業の担い手となることで、利用者視点のサービスを実現
  3. 複合的な福祉施設の運営:住宅型有料老人ホームなど、生協として先駆的な施設運営

一方、生活クラブ生協は全国組織としての強みを活かし、以下のような取り組みを行っています。

  1. 全国規模での食の安全運動:生産者との提携による安全な食材の開発・提供
  2. 多様な福祉事業の展開:社会福祉法人生活クラブ風の村などを通じた総合的な福祉サービスの提供
  3. 共済事業の充実:エッコロ制度など独自の相互扶助システムの構築

両生協は「市民参加型の福祉社会」という共通の理念のもと、それぞれの強みを活かした活動を展開しています。

 

福祉クラブと生活クラブの選び方と加入のポイント

福祉クラブ生協と生活クラブ生協、どちらを選ぶべきか迷っている方のために、選択のポイントをまとめます。

 

福祉クラブ生協が向いている人

  • 神奈川県にお住まいの方
  • 福祉サービスを主に利用したい方
  • 市民参加型の福祉活動に関心がある方
  • 福祉と食の安全を両立させたい方

生活クラブ生協が向いている人

  • 全国各地にお住まいの方
  • 安全な食材の宅配を中心に利用したい方
  • 食の安全運動に関心がある方
  • 共済や環境活動など幅広い活動に参加したい方

加入時のポイントとしては、以下の点に注意しましょう。

  1. 出資金システムの確認:毎月の増資がある場合もあるので、仕組みを理解しておく
  2. 配送エリアの確認:特に福祉クラブ生協は神奈川県限定なので注意
  3. 利用可能なサービスの確認:地域によって提供サービスが異なる場合がある
  4. 組合員活動への参加:生協は組合員の参加が基本なので、どのような活動があるか確認する

なお、家族に高齢者がいなくても、どちらの生協にも加入可能です。将来的な福祉サービスの利用を見据えて、若いうちから加入する方も増えています。

 

また、フルタイムで働いている方でも、留守時の配達対応などで利用しやすい工夫がされているので安心です。

 

福祉クラブと生活クラブの今後の展望と社会的役割

超高齢社会を迎えた日本において、福祉クラブ生協と生活クラブ生協の社会的役割はますます重要になっています。

 

福祉クラブ生協は、2021年に新たな住宅型有料老人ホーム「みのり藤沢」をオープンするなど、福祉施設の拡充を進めています。また、子育て支援や障がい者支援など、福祉サービスの多様化も図っています。

 

一方、生活クラブ生協は、社会福祉法人生活クラブ風の村を通じて「赤ちゃんから看取りまで」人生のすべてのステージで必要とされる支援を目指しています。高齢者支援だけでなく、子育て支援、障がい児者支援、相談支援など、総合的な福祉サービスを展開しています。

 

両生協に共通するのは、「市民参加型」の福祉社会づくりという理念です。行政や営利企業だけでなく、市民自らが福祉の担い手となることで、より人間らしい福祉サービスを実現しようとしています。

 

特に注目すべきは、ワーカーズ・コレクティブを通じた「働き方の革新」です。育児・介護といった女性の経験を活かせる職場づくりや、働く人自身が経営に参加するという新しい働き方のモデルを提示しています。

 

今後は、以下のような展開が予想されます。

  1. 地域包括ケアシステムへの参画:地域全体で高齢者を支える仕組みづくりへの貢献
  2. 多世代交流の場の創出:高齢者と子どもなど、異なる世代が交流できる場の提供
  3. 持続可能な福祉の仕組みづくり:人材確保や財政基盤の強化による持続可能な福祉サービスの実現

福祉クラブ生協と生活クラブ生協は、それぞれの特徴を活かしながら、これからの日本社会に必要な「共生社会」の実現に向けて重要な役割を果たしていくでしょう。

 

まとめ:福祉クラブと生活クラブの違いを理解して最適な選択を

福祉クラブ生協と生活クラブ生協の違いについて詳しく見てきました。両者の主な違いをまとめると。

  • 成り立ちと専門性:福祉クラブは福祉専門生協として1989年に設立、生活クラブは食の安全を中心とした生協
  • 活動エリア:福祉クラブは神奈川県限定、生活クラブは全国展開
  • サービス内容:福祉クラブは福祉サービスと食材宅配、生活クラブは食材宅配を中心に福祉も展開
  • 出資金システム:両者とも出資金制度があるが、福祉クラブは毎月の増資がある
  • 運営方式:両者ともワーカーズ・コレクティブとの連携が特徴的

どちらの生協も「市民参加型」の理念を持ち、組合員自らが必要なサービスを作り出すという点で共通しています。しかし、それぞれの専門性や活動エリアには違いがあるため、自分のニーズに合った生協を選ぶことが大切です。

 

特に神奈川県にお住まいの方は、両方の生協を利用することも可能です。食材は生活クラブから、福祉サービ