

ストリングホッパーは、スリランカでごく当たり前に食べられている朝食なのに、実は米粉だけで作られていて、グルテンが一切入っていません。
ストリングホッパーの正体は、米粉を水でこねた生地を専用の器具で細い糸状に押し出し、蒸し上げた料理です。現地シンハラ語では「インディアーッパ(ඉඳිආප්ප)」と呼ばれ、「インディ」が「糸状の細い」、「アーッパ」が「ホッパー」を意味します。英語名「String Hopper(ストリングホッパー)」はそのまま「糸のホッパー」という意味です。
見た目だけを見ると日本の素麺に近い印象を受けますが、素麺とは根本的に異なる食べ物です。素麺は茹でてほぐして食べますが、ストリングホッパーはひとつひとつが小さな「巣」のような丸い形にまとめられており、蒸したまま皿に積まれてサーブされます。1個のサイズはだいたい直径8〜10センチほどで、手のひらに収まる大きさです。つまり、麺というよりご飯の代わりとして扱われる食べ物なのです。
スリランカでは朝食と夕食に食べるのが一般的で、不思議なことに昼食ではほとんど食べられません。女性でも5〜10ピースをひとりで軽く食べてしまうほど食べやすく、スリランカのどの食堂やレストランでも手に入る「庶民の味」として親しまれています。
白米の粉から作ると白いストリングホッパーに、赤米の粉を使うと茶色がかった赤いストリングホッパーになります。この2種類を並べてサーブするのもスリランカでは一般的なスタイルです。
スリランカ発祥ではなく、元は南インドのケーララ州やタミル・ナードゥ州が起源の料理でもあります。今ではスリランカ料理の代表格として世界的に認知されています。
Wikipediaのストリングホッパーページ(発祥・製法・食文化の基礎情報)
ストリングホッパーの食べ方には、いくつかの「鉄板の組み合わせ」があります。現地での食べ方を知ることで、自宅での再現がグッとリアルに近づきます。
まず最もよく合わせられるのが「ポルサンボーラ」です。「ポル」はシンハラ語でコナッツ、「サンボーラ」は和え物の意味。削ったドライ・ロースト・ ナッツに唐辛子・塩・玉ねぎなどを混ぜたもので、スパイシーなふりかけのような存在です。ストリングホッパーに絡めると風味が一気に立ちます。これが必須です。
次に欠かせないのが「パリップ」(豆のカレー)や「キリホディ」( ナッツミルクベースのカレー)です。スリランカのカレーは日本のものより汁気が多く、ストリングホッパーがスープを吸い込んでくれるため非常に相性抜群です。特にパリップ(レンズ豆のカレー)との組み合わせは、現地に住んでいた日本人の間でも「最高の朝食」と評されるほどです。
食べ方としては、現地では右手を使った手食が基本スタイルです。手でグシャっとつぶしながらカレーと混ぜ込み、親指で口に運ぶことで、素材の温度と食感を直接感じながら味わえます。慣れていない方はスプーンを使っても問題ありませんが、手食を体験すると「なるほどこういう食べ物か」という感覚がよくわかります。
朝食の定番の一方で、お祝いや法事など人が集まる場面でも出てきます。パーティテーブルに積み上げられたストリングホッパーの山は、スリランカならではの光景です。意外ですね。
スリランカ料理専門通販サイト「スパイスカラピンチャ」では、ポルサンボーラ用のスパイスも取り扱っています。国内で本場の組み合わせを揃えたい場合の参考になります。
カラピンチャ(スリランカ料理専門店)のストリングホッパー解説記事(食べ方・器具・粉の種類を詳しく紹介)
ストリングホッパーが健康的な食事として注目される理由は、素材のシンプルさにあります。原材料は基本的に米粉・塩・水の3つだけです。これだけ潔い材料構成の主食は珍しいですね。
最大の特徴は「グルテンフリー」であることです。小麦を一切使用しないため、小麦アレルギーがある方や腸への負担が気になる方にとっても選びやすい食品です。近年日本でも「ゆるグルテンフリー」の考え方が広まっていますが、ストリングホッパーはまさにその実践例として機能します。
栄養面を具体的に見てみましょう。ストリングホッパー100gあたりのカロリーはおよそ180kcalで、脂質はわずか2gです。白いご飯100gが168kcal・脂質0.3gであることを考えると、量あたりのカロリーがほぼ同等でありながら、ストリングホッパーは食物繊維も4.8g(1カップ換算)摂れるため、より腹持ちがよい食品といえます。
| 栄養素 | ストリングホッパー(100g) | 白米(100g) |
|--------|-------------------|----------|
| カロリー | 約180kcal | 約168kcal |
| 脂質 | 約2.0g | 約0.3g |
| たんぱく質 | 約5.0g | 約2.5g |
| 食物繊維 | 約2.0g | 約0.3g |
さらに、油を一切使わない「蒸し料理」であることも重要なポイントです。揚げたり炒めたりしないので、余分な脂質を摂りません。ダイエット中でも罪悪感なく楽しめる主食として活用できます。
ポルサンボーラを合わせて食べることで、ここにナッツの食物繊維・中鎖脂肪酸も加わります。一緒に食べることで栄養のバランスが整います。それが原則です。スリランカ人の食生活の知恵が、実は栄養学的にも理にかなっていたわけです。
エスビー食品のストリングホッパーレシピページ(1食分の栄養成分・作り方の参考に)
本格的なストリングホッパーを家庭で作るには、「インディアーッパワンゲディヤ(生地を押し出す専用プレス器具)」と「インディアーッパワッティ(押し出した麺を受ける専用の小さな網マット)」という2つの道具が必要です。これらは日本国内では一般の調理器具店ではなかなか見かけません。スリランカ料理の専門通販サイトから入手するのが確実です。
しかし、専用器具がなくても代用の方法はあります。日本のクッキー作りで使う「絞り出し袋+星口金(細いもの)」でも、似たような麺状の形に押し出すことができます。完全に同じ仕上がりとはいきませんが、食感や味はしっかり再現できます。これは使えそうです。
生地の作り方はとてもシンプルです。
生地の固さが仕上がりを大きく左右します。柔らかすぎると麺が崩れ、固すぎると絞り出せなくなります。最初は少量から試すのがおすすめです。
蒸す際、蒸し器がない場合は、深めの鍋に水を張り、そこにお椀を逆さに置いてザルを渡せば簡易蒸し器として使えます。家庭にあるもので代用できるということですね。
米粉は日本国内で販売されている「上新粉」でも作れますが、スリランカで使われる専用粉(スリランカ産米粉)の方が、もちもち感とほぐれやすさが際立ちます。より本格的な仕上がりを求めるなら、前述のスパイスカラピンチャや、Amazonなどの通販でスリランカ産のストリングホッパー粉を取り寄せるのがおすすめです。
アハサ食堂のストリングホッパーレシピページ(写真付きの詳しい作り方・スイーツ応用レシピも掲載)
ストリングホッパーには、実は「余ったら次の食事で使い回せる」という家庭料理としての便利な側面があります。それが「ストリングホッパーコットゥ」です。
コットゥ(Kottu)とはスリランカのB級グルメで、ロティや麺を細かく刻んで野菜・スパイス・卵などと炒め合わせた料理です。感覚としては炒飯に近いです。本来はロティ(薄焼きパン)を使うのが基本ですが、ストリングホッパーを使ったバリエーションが「ストリングホッパーコットゥ」として現地でも人気があります。
作り方はとても簡単で、前日のストリングホッパーを細かくほぐし、玉ねぎ・ピーマン・卵・スパイスと一緒に強火で炒めるだけです。残ったカレーのルーを少量加えると風味が豊かになります。スリランカの夜ご飯の定番でもあります。
翌日の朝食や昼食に出せる「リメイク料理」として、食材を無駄にしないスリランカの食の知恵が詰まっています。主婦的な視点で見ると、まとめて作って2食分として活用できるのは時間と食費の節約になります。つまり経済的です。
コットゥに使うスパイスは、クミン・ターメリック・チリパウダーなど、日本のスーパーで手に入るもので代用できます。エスビー食品などのスパイスメーカーからカレー用スパイスセットが販売されており、それを少量使うだけで本格的なフレーバーを出せます。
辛さが苦手な場合は、チリパウダーを省いてコリアンダーパウダーを中心に使えば、マイルドな味に調整できます。子どもも食べやすい仕上がりになります。
エスビー食品のコットゥレシピページ(コットゥの基本スパイス構成と作り方の参考に)