

スブリンツ チーズを「硬すぎて食べにくい」と思って避けていると、家族のカルシウム摂取量が牛乳コップ1杯分以上も損している可能性があります。
スブリンツ チーズ(Sbrinz)は、スイス中央部で代々作られてきた超硬質の牛乳チーズです。原産は中央スイスのルツェルン州やシュヴィーツ州などのアルプス地帯で、原料は牛の生乳のみ。添加物は一切使われていません。
その歴史はなんと古代ローマ時代にまでさかのぼります。1世紀のローマの博物学者プリニウスが「カセウス・ヘルヴェティクス」として記録したチーズが、スブリンツの原形とされています。現代に至るまで2000年以上も同じスイスの山間部で作り続けられてきたというのは、驚くべき事実です。
名前の由来も興味深いですね。16世紀ごろ、スイス中部のブリエンツ村(Brienz)にチーズが集められ、イタリアに輸出される経路が確立されました。イタリア側でブリエンツが訛り、「スブリンツ(Sbrinz)」と呼ばれるようになったとされています。つまり、名前自体がイタリアとの交易の証なのです。
現在は2002年にAOP(原産地名称保護制度)の認定を受けており、スイス中部の26か所の渓谷およびアルプス高地の製造所のみで生産されています。この認定があるため、「スブリンツAOP」と表示された製品は品質が厳格に保証されています。これが基本です。
よく「スイス版のパルミジャーノ・レッジャーノ」と呼ばれることがありますが、両者には明確な違いがあります。パルミジャーノがイタリア産・最低12か月熟成なのに対し、スブリンツはスイス産・最低18か月熟成という違いがあります。さらに、スブリンツは全乳(脂肪分を抜かない生乳)を使うため、乳脂肪のまろやかさがより際立っています。
| 比較項目 | スブリンツ チーズ | パルミジャーノ・レッジャーノ |
|---|---|---|
| 原産地 | スイス中央部 | イタリア北部 |
| 原料乳 | 牛の生乳(全乳) | 牛乳(一部脱脂) |
| 最低熟成期間 | 18か月 | 12か月 |
| 固形分中乳脂肪 | 最低45% | 最低32% |
| 品質保護制度 | AOP(スイス) | DOP(イタリア) |
スイス政府公認チーズ情報サイト「Cheeses from Switzerland」では、スブリンツAOPの詳細な情報が確認できます。
スブリンツAOP公式情報 — Cheeses from Switzerland
スブリンツ チーズを初めて見た方は、その異様な硬さに驚かれることでしょう。外皮はアメ色から茶褐色で、麻の種子から採った油をすり込んで仕上げるため、表面はなめらかでつやがあります。内側は薄い黄色で非常に硬く、爪を立ててもまったく跡がつかないほどです。
注目してほしいのが、チーズ内部に散らばる白い結晶です。はじめて見ると「カビ?」「痛んでいる?」と不安になる方もいます。でも、これはまったく問題ありません。これは長期熟成によってたんぱく質がアミノ酸(主にチロシン)に分解・結晶化したもので、旨みが凝縮されている証拠です。食べるとシャリッとした独特の食感が楽しめます。むしろ白い結晶が多いほど、熟成が進んでいる高品質なチーズと考えてよいでしょう。
香りはナッティでバターのような風味があり、長期熟成ならではのキャラメルやトーストのようなほのかな甘さも感じられます。味わいはアミノ酸の旨みとミルクのまろやかさが絶妙で、しっかりとした塩味の後にすっきりとした後味が続きます。「くせが強くて食べにくいのでは?」という心配は不要です。意外ですね。
熟成期間によっても風味が変わります。
雪印メグミルクのチーズクラブでは、スブリンツを含むハードチーズの種類と特徴をわかりやすくまとめています。
スブリンツ チーズの最大の特徴は、「削って食べる」という食べ方にあります。これが基本です。そのままかじろうとしても歯が立たないほど硬いため、道具を使って薄く削ることが必須となります。
本場スイスでは「ジロール」や専用のカンナを使って、紙のように薄く花びら状に削りながら食べます。削った薄切りチーズをくるりと巻いて、黒こしょうをふりかけて食べるのが産地の定番スタイルです。見た目も美しく、おもてなしにも使えます。
ただ、日本の家庭に専用カンナがあるご家庭は少ないでしょう。これは使えそうです。代わりに使える道具をまとめました。
料理への活用はパルミジャーノ・レッジャーノの代わりとして使う場面が多く、特にパスタやリゾット、ミネストローネスープに少量すりおろすだけで、グッと旨みが増します。また、レタスやミニトマトのシンプルなサラダにピーラーで薄く削って散らすだけで、格上げされたひと皿になります。
高温で強く溶けない性質があるため、グラタンやピザのように溶かして使う料理よりも、仕上げに削って加える使い方が風味を最大限に活かせます。最後に加えることが条件です。
スブリンツ チーズが主婦の方に特に注目していただきたい理由のひとつが、その優れた栄養価です。長期熟成チーズは、同量の牛乳と比べて栄養がギュッと凝縮されています。牛乳のたんぱく質・カルシウムが約10倍程度に濃縮されているイメージです。
| 栄養素 | スブリンツ(30g)の目安 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| エネルギー | 約120kcal | 少量でもエネルギー補給 |
| たんぱく質 | 約8g | 筋肉・肌・髪の材料に |
| カルシウム | 豊富(骨の健康に寄与) | 骨粗しょう症予防に |
| 脂質 | 約10g(乳脂肪) | 脂溶性ビタミンの吸収をサポート |
| アミノ酸 | チロシン結晶として豊富 | 旨みの源、消化への寄与も |
特筆すべきは、乳糖不耐症の方への配慮です。牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする方は少なくありませんが、スブリンツのような長期熟成のハードチーズでは、熟成過程で乳糖(ラクトース)がほぼ分解されています。つまり、乳糖不耐症の方でも比較的食べやすいチーズなのです。「チーズも乳製品だから怖い」と思っている方は、ぜひ少量から試してみる価値があります。
ただし、注意点もあります。スブリンツは塩分がやや高めのチーズです。30gあたりで塩分が約0.5〜0.7g程度含まれます。高血圧を気にされている方や塩分制限がある方は、1日15〜30g程度の少量をアクセントとして使うのが賢い取り入れ方です。また、妊娠中の方は非加熱の生乳チーズのため、そのまま食べるよりも加熱してから使うほうが安心です。
少量で大きな旨みとなるため、「少しだけ削って料理に使う」という使い方が実は家計にも優しいのです。これがポイントです。
スブリンツ チーズは正しく保存すれば、非常に長期間楽しめるチーズです。超硬質で水分が少ないため、傷みにくいという大きなメリットがあります。
保存の基本手順は以下のとおりです。
保存期間の目安は、正しく保管した場合で開封後も1か月以上。ホールやブロックの大きな状態であればさらに長期間保存できます。他のチーズに比べても格段に保存性が高いのが特徴です。
購入先と価格の目安については、スブリンツ チーズはスーパーの普通のチーズコーナーではあまり見かけません。チーズ専門店や輸入食品店、またはオンラインショップでの購入が現実的です。
一見すると「高い」と感じる価格ですが、少量でも旨みが強く、料理1皿分に使う量は10〜20g程度です。100gあれば5〜10皿分の料理に活用できると考えると、実はコストパフォーマンスは悪くありません。これは使えそうです。
チーズ専門通販「フロマージュ」では、スブリンツAOCを100g・300gのカット売りで購入できます。