

市販のリコッタは「チーズ」という名前なのに、法律上はチーズに分類されません。
リコッタという名前を聞いて、「なんとなくチーズの一種だろう」と思っている方は多いはずです。実際にはもう少し複雑で、知ってみると面白い背景があります。
まず名前から説明しましょう。リコッタはイタリア語の「Ricotta」から来ており、「ri(再び)+cotta(煮る)」、つまり「二度煮る」という意味を持っています。この名前が示すとおり、製法そのものが名前に刻み込まれているのです。
通常のチーズは、温めた生乳にレンネット(凝乳酵素)を加えて固め、そこから分離した固形分を集めて作られます。しかし、この工程で大量に発生する液体、いわゆるホエー(乳清)はそのまま捨てられてしまうことが多いのです。リコッタはこのホエーを捨てずに再加熱し、熱によって表面に浮かんでくるたんぱく質を丁寧にすくい取って作られます。つまり、リコッタはチーズを作った「副産物」を原料にした乳製品です。
これが原因です。日本の食品表示法では、チーズとは「乳から乳脂肪を取り出してではなく、乳たんぱく質を固めて作ったもの」と定義されています。リコッタはホエーを原料にしているため、この定義に当てはまりません。そのため、スーパーでリコッタチーズと書かれた商品のラベルをよく見ると、「種別:乳又は乳製品を主原料とする食品」と記載されているはずです。
国際的にも、リコッタは「ナチュラルチーズ」には分類されません。名前に「チーズ」とついていても、正式には別のカテゴリーというわけです。つまりリコッタはチーズではないということですね。
タカナシ乳業公式FAQ「リコッタはナチュラルチーズではないのですか?」
(リコッタが法律上チーズに分類されない理由について、メーカーが丁寧に解説しています)
産地はイタリアが発祥で、使われる乳は牛乳が主流ですが、本場イタリアでは羊乳や水牛乳を使ったリコッタも存在します。水牛乳のリコッタは濃厚でコクが強く、牛乳のものよりも個性的な味わいが特徴です。ヤギ乳を使ったものは酸味が強めになります。日本で一般的に手に入るのは牛乳を原料としたものがほとんどです。
スーパーでリコッタチーズを探すと、隣にカッテージチーズやクリームチーズが並んでいることがよくあります。見た目が似ているため混乱しやすいのですが、それぞれはまったく異なる乳製品です。
まずリコッタとカッテージチーズの違いから見ていきましょう。原料の出発点が根本的に違います。
| 項目 | リコッタ | カッテージチーズ | クリームチーズ |
|---|---|---|---|
| 原料 | ホエー(乳清) | 脱脂乳 | 生クリーム入りの乳 |
| 脂肪分 | 中程度(約11%) | 低い(約5%以下) | 高い(約30~40%) |
| 味わい | ミルクの甘みとまろやかさ | さっぱり・淡白 | 濃厚・クリーミー・酸味あり |
| 食感 | ふわっとほろほろ | 粒感がある | なめらか・のびる |
| カロリー(100g) | 約159kcal | 約105kcal | 約313kcal |
カッテージチーズは、脂肪分を取り除いた脱脂乳に酸を加えて固まらせて作ります。製造工程でしっかり水分を絞るため、粒々とした独特の食感が残ります。あっさりしていてダイエット向きな面があります。
一方、クリームチーズは生乳に生クリームを加えて脂肪分を高め、乳酸菌で発酵させて作ります。食感はリコッタよりずっとなめらかで、コクと酸味が際立っています。これは使えそうです。
料理での使い分けも重要です。リコッタはパスタの具材やケーキ、パンケーキ、サラダのトッピングなど幅広い料理に向いています。カッテージチーズはサラダや低カロリースイーツに活躍し、クリームチーズはベーグルに塗ったりチーズケーキに使うのが王道です。
代用の目安ですが、リコッタの代わりにカッテージチーズを使う場合は、裏ごしして粒をなめらかにすることで近い食感に仕上がります。カッテージとクリームチーズを1:1の割合で混ぜると、さらにリコッタに近い味わいになります。
私のチーズ辞典「クリームチーズとカッテージチーズそしてリコッタその違い」
(3種類の見た目・風味・製法の違いをわかりやすく比較した解説ページです)
リコッタは、見た目のふんわりとした柔らかさからカロリーが高そうに見えますが、実際はチーズの中でもかなりヘルシーな部類に入ります。数字で確認しておきましょう。
リコッタ100gあたりの栄養成分は以下のとおりです(文部科学省・日本食品標準成分表より)。
同じ量のクリームチーズが約313kcalであることを考えると、リコッタのカロリーは約半分です。これは大きな違いです。
タンパク質も100gあたり7.1gとしっかり含まれています。おぼろ豆腐(100gあたり約5g)と比較すると少し多めで、やわらかい食材のわりに栄養がつまっていることがわかります。
脂肪分が少ない理由はホエー由来にあります。チーズを作る過程で脂肪分の多くは固形のチーズ側に移ってしまうため、残ったホエーは比較的低脂肪です。そのホエーから作るリコッタは、自然と脂肪分が抑えられた乳製品になるのです。低脂肪が原則です。
ダイエット中でも取り入れやすい食材として、最近ではリコッタへの注目が高まっています。たとえば、こってりしたクリームチーズを使ったレシピをリコッタに置き換えるだけで、カロリーをほぼ半減できることもあります。チーズケーキ、パンケーキ、ディップソースなど、さまざまな場面で使えます。
カルシウムも豊富なので、子どものいる家庭でも積極的に取り入れたい食材です。牛乳の甘みや風味がそのまま残っているため、子どもが嫌いになりにくい味わいでもあります。
文部科学省 食品成分データベース「リコッタの栄養成分表」
(リコッタの詳細な栄養成分値が確認できる、信頼性の高い一次資料です)
リコッタのやわらかな甘みとふわっとした食感は、幅広いジャンルの料理と相性抜群です。イタリアでは昔から家庭料理に欠かせない存在として使われてきました。
🍝 パスタへの活用
リコッタとパスタの組み合わせは定番です。茹でたパスタにリコッタをそのままのせ、オリーブオイルとレモン汁、塩少々を和えるだけで本格的なクリームパスタが完成します。ほうれん草とリコッタを合わせてラザニアの具に使うのも有名な使い方です。
さっぱり仕上げたいときは、トマトソースに大さじ2程度のリコッタを加えて混ぜるだけで、コクのあるトマトクリームソースになります。生クリームよりカロリーが低く抑えられるので嬉しい使い方です。
🥞 スイーツへの活用
リコッタを使ったリコッタパンケーキは、一般的なパンケーキより軽くてふわふわに仕上がります。生地にリコッタを混ぜ込むと水分が適度に保たれ、焼きあがりがしっとりします。
イタリアの伝統菓子「カンノーロ」は、パリパリの生地にリコッタクリームを詰めたものです。シチリア島発祥のお菓子で、リコッタチーズにシナモンや砂糖を混ぜたクリームが使われます。リコッタを使えば自宅でも本格的なイタリアンスイーツの雰囲気が楽しめます。
🥗 そのまま・サラダへの活用
リコッタはそのままパンにのせて、蜂蜜をかけるだけでも絶品です。これがシンプルな食べ方の王道です。フルーツとの相性も非常によく、ベリー類やイチジク、桃などのフルーツをのせると見た目もおしゃれになります。
サラダのトッピングとしては、崩してまぶすと全体にコクと甘みが広がります。ルッコラとトマト、リコッタの組み合わせはイタリアンレストランでもよく見られる定番です。
実は、リコッタは自宅で簡単に作ることができます。必要な材料は牛乳・レモン汁・塩の3つだけです。これは使えそうです。
🧾 基本の手作りリコッタチーズ(牛乳約1Lで約150〜200g程度)
手順:
牛乳1Lから作れるリコッタは約150〜200gほどです。市販のリコッタ200g入りパックと同じ量が、牛乳1本分の原価で手作りできます。経済的ですね。
保存方法と賞味期限の目安:
開封後は冷蔵庫で保管し、ラップや密閉容器でしっかり密封することが大切です。水分が出てきた場合は、使わずに捨てましょう。保存が鍵です。
なお、リコッタは水分が多いため、冷凍すると解凍後に食感が変わりやすいという特徴があります。冷凍後は生食よりも加熱調理(スープ・パスタ・グラタンなど)に使うのがおすすめです。
妊娠中の方へのポイントも押さえておきましょう。日本で市販されているリコッタチーズの多くは加熱殺菌された乳を使用しているため、基本的には問題なく食べられます。ただし、パッケージに「パスチャライズ(殺菌)」の表示があるものを選ぶと、より安心して使えます。加熱調理するならさらに安全です。
ヒロクリニック「妊婦のためのチーズ選び:安全な種類と注意点【医師監修】」
(妊娠中にどのチーズが安全か、医師監修でわかりやすくまとめられています)