

ナラタケを生のまま洗おうとすると、傘がボロボロに崩れて半分以上がゴミクズ状になります。
ナラタケは、ナラ・ブナ・コナラ・サクラなど広葉樹の枯れ木や倒木に群生するきのこで、北海道では「ボリボリ」、秋田では「サワモダシ(サモダシ)」、東北地方では「サワモダシ」や「ナラモタシ」など地方によって愛称が異なります。全国で親しまれてきた食用きのこです。
傘の直径は成長段階によって異なり、幼菌のうちは直径が約4cmほど(名刺の短辺くらい)で半球形ですが、成長すると最大15cm(はがきの長辺ほど)の皿型に開いていきます。傘の表面中央部には黒いつぶつぶのような鱗片があり、縁まわりには放射状の縦縞(条線)が入っているのが大きな特徴です。
くせが少なく、汁物に入れるとぬめりが出て旨みのある出汁が取れるのがナラタケの魅力です。旨みが出るということですね。ただし、食べすぎると腹痛や下痢を起こすことがあるので要注意。北海道立総合研究機構の資料によれば、胃腸が弱い方や幼児は特に多量に食べないよう注意が必要とされています。一度に大量に食べないのが基本です。
また成長が非常に早く、芽が出てから2〜3日で傘が全開してしまいます。腐るのも早く、2〜3日でほとんど使えなくなることも日常的に起きます。そのため入手したらできるだけ当日中に下処理まで済ませることが大切です。
参考:ナラタケの発生時期・特徴・地方名などの詳細情報(秋田の森づくり活動サポートセンター)
https://www.forest-akita.jp/data/kinoko/naratake/naratake.html
ナラタケを料理する際に多くの方がやりがちな失敗が、「生のまま水洗いする」ことです。生の状態のナラタケは傘が非常にもろく、水洗いすると傘がボロボロになり、半分以上がゴミクズ状態になってしまった例も報告されています。これは大きなロスです。
正しい手順は次のとおりです。
| 手順 | 作業内容 | ポイント |
|------|----------|----------|
| ① | ハサミで石づき(柄の根元の硬い部分)を切り取る | 茹でる前に済ませる |
| ② | 強めの塩水(水1ℓに塩大さじ1杯程度)に20〜30分浸ける | 虫を追い出す「虫出し」処理 |
| ③ | 洗わずそのまま熱湯に入れて茹でる | 茹でる前に洗わないのがコツ |
| ④ | 茹でて傘が丈夫になったら、水洗いしながらゴミを取り除く | お湯から上げた直後に洗う |
| ⑤ | ザルに上げて水をよく切る | 煮汁は出汁として活用可 |
特に③が最重要のポイントです。茹でると不思議なほど傘が丈夫なきのこに変身するため、そこから水洗いすることで効率よくゴミを取り除けます。茹でてから洗うのが原則です。
茹でた後の煮汁はナラタケの旨みが溶け出しているため、出汁として味噌汁や煮物に使うと風味がアップします。捨てずにそのまま保存袋に入れておくと後で大活躍しますよ。これは使えそうです。
なお、生食は中毒の原因になります。一部では「さっと熱湯をくぐらせれば生食っぽく食べられる」という情報もありますが、必ず十分に加熱することが大切です。加熱が条件です。
十分に下処理が済んだナラタケはさまざまな料理に活用できます。ぬめりと出汁の旨みが特徴なので、汁物との相性は抜群です。代表的な3つのレシピを紹介します。
🍲 ナラタケの味噌汁(最もオーソドックスな食べ方)
材料(2人分):ナラタケ100g・豆腐50g・だし昆布2〜3cm・水700ml・味噌大さじ1〜1.5杯・ネギ少々
作り方は非常にシンプルです。水とだし昆布を入れた鍋を弱火にかけ、下処理済みのナラタケを加えます。沸騰前に昆布を取り出し、豆腐を加えて中火で5分ほど煮たら、火を止める直前に味噌を溶き入れてネギを散らして完成です。ナラタケのぬめりが出汁になじみ、格別の旨みになります。
🍚 ナラタケの炊き込みご飯
材料(2合分):ナラタケ80g・米2合・醤油大さじ2杯・みりん大さじ1杯・酒大さじ1杯・だし昆布1枚
洗ったお米に調味料を入れて2合分の水加減に調整し、下処理済みのナラタケをのせて炊くだけです。秋の香りと旨みがご飯に染み込み、主食がそのままごちそうになります。
🍝 ナラタケとベーコンの和風パスタ
材料(1人分):パスタ100g・ナラタケ50g・ベーコン30g・ニンニク1かけ・オリーブオイル大さじ1・醤油大さじ1/2・顆粒和風だし小さじ1/2・塩コショウ適量・ネギ少々
フライパンにオリーブオイルを熱してニンニクを炒め、ナラタケとベーコンを加えて中火で炒めます。茹で上がったパスタをゆで汁少量とともに加え、醤油・和風だし・塩コショウで味を整えます。洋食感覚でも楽しめるので、普段の食卓に変化をつけたいときに最適です。
東北地方では、里芋・豚肉・白菜・大根・コンニャク・豆腐・ネギを合わせた「芋煮鍋」にナラタケを加えるのが定番です。汁物全般との相性が良いということですね。
参考:ナラタケのおいしい食べ方と下処理・保存方法(山菜名人)
https://sansai-meijin.sakura.ne.jp/autumn/naratake.html
ナラタケは一度に大量に手に入ることが多いきのこです。採取期間が短く、腐りも早いため、保存方法をしっかり覚えておくと食材ロスを防げます。目的別に使い分けるのが賢い方法です。
🧊 冷凍保存(保存期間:約6ヶ月〜1年)
最も手軽で一般的な保存方法です。前述の手順で下処理・茹でたナラタケを冷ますまで待ち、1回分ずつの量に小分けして保存袋に入れます。このとき、茹でた煮汁も一緒に袋に入れるのがポイントです。煮汁に旨みが溶け出しているため、乾燥・冷凍焼けを防ぎながら風味を維持できます。空気をしっかり抜いて密封し、急速冷凍するとより品質が保たれます。解凍は室温での自然解凍か、流水解凍が適しています。
🧂 塩漬け保存(保存期間:1年以上)
昔ながらの伝統的な保存方法です。茹でたナラタケを冷水で冷やし、水を切ってから保存袋や容器に入れ、ひとつまみ〜たっぷりの食塩を加えて密封します。塩が多いほど保存期間が延びるのが特徴で、冷暗所に置くだけで1年以上保存可能とされています。調理する際は水に浸けて塩抜きをしてから使用します。塩が濃すぎると塩抜きに時間がかかるので、最初は控えめにして様子を見るのがおすすめです。
🫙 水煮保存(保存期間:1年程度)
ナラタケのような崩れやすいきのこに最適な方法です。熱湯でさっとくぐらせた後に水洗いし、保存ビンに7分目ほど入れ水をビンいっぱいまで加えて蓋をします。鍋に入れて沸騰後1時間煮た後、取り出して蓋を締め直し、さらに20〜30分煮ます。脱気に成功すると数時間後に蓋がへこみます。塩漬けに比べて本来の風味が残るのが利点です。
| 保存方法 | 保存期間 | 難易度 | 特徴 |
|----------|----------|--------|------|
| 冷蔵保存 | 3〜5日 | 簡単 | 風味そのまま・短期向け |
| 冷凍保存 | 6ヶ月〜1年 | 簡単 | 最も手軽・長期保存向き |
| 塩漬け | 1年以上 | やや簡単 | 昔ながらの方法・塩抜きが必要 |
| 水煮保存 | 1年程度 | やや手間 | 風味が残る・崩れにくい |
参考:きのこの始末と保存方法の詳細(春日山きのこ園)
https://kasugayama-kinokoen.com/mushroom/
ナラタケを食べる際に最も注意しなければならないのが、猛毒きのこ「コレラタケ」との混同です。コレラタケはナラタケと同様に朽ちた木や切り株周辺に群生し、見た目もよく似ているため毎年誤食による食中毒事故が報告されています。
コレラタケを食べると、食後6〜24時間後に激しい嘔吐・腹痛・下痢(コレラ様の水様性下痢)を引き起こし、脱水症状→肝臓・腎臓へのダメージと進行します。最悪の場合は死亡事例もあります。厳しいところですね。
ナラタケとコレラタケの見分け方まとめ
| チェックポイント | ナラタケ | コレラタケ(危険)|
|----------------|---------|----------------|
| 傘表面の縦縞(条線) | ✅ あり | ❌ 乾燥時はなし(濡れると少しある) |
| 傘中央の黒いつぶつぶ(鱗片) | ✅ あり | ❌ なし |
| 傘の大きさ | 4〜15cm | 2〜5cm(小さめ) |
| 柄のツバ | ✅ あり(白〜淡黄色) | ツバの位置が異なる |
| 柄を折ったときの感触 | ✅ ポキッと音がする | 音はしない |
見分ける自信がない場合は絶対に食べないことが最大の安全策です。「食べてから調べる」は絶対にNGです。
また、ナラタケの仲間である「ナラタケモドキ」も存在します。ナラタケモドキは柄にツバがないことが見分けるポイントで、食用にはなるものの消化が非常に悪く、食べすぎると消化不良・腹痛を起こしやすいとされています。柄の消化が特に悪いため、柄は短めに切るか取り除いて傘部分を中心に使うのが安心です。
万が一、きのこを食べた後に激しい腹痛・嘔吐・下痢が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。その際、食べたきのこの写真や現物を持参すると診断の助けになります。判断が難しいので確認することを強くおすすめします。
参考:ナラタケとコレラタケの見分け方を詳しく解説(grapee.jp)
https://grapee.jp/2013172
参考:厚生労働省によるキノコ食中毒の注意喚起ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kinoko/index.html
きのこ料理の本やレシピサイトでは「茹でこぼす(茹で汁を捨てる)」と指示されていることが多いですが、ナラタケにおいては茹で汁こそが最大の宝です。ナラタケの旨みの多くはグルタミン酸などのアミノ酸成分で、茹でることによって煮汁にたっぷり溶け出します。東北や北海道の山間地域で昔から「サワモダシの汁は捨てるな」と言い伝えられてきたのはこのためです。
茹でた煮汁の使い方は幅広く、そのまま味噌汁のだしとして使う、炊き込みご飯の水代わりにする、パスタのゆで汁として利用するなどが挙げられます。旨みが溶け込んでいるということですね。
また、冷凍保存するときに煮汁ごと保存袋に入れると、解凍時に旨みが流れ出ることなく料理に活かせます。これが冷凍保存のクオリティを決める一番のポイントです。
さらに、ナラタケの出汁成分は市販のきのこでは代替しにくい独特の旨みがあります。生のナラタケが手に入ったときは積極的に煮汁を活用することで、同じ食材でも料理のレベルが大きく変わります。
🍵 煮汁の保存方法
- 茹でた後の煮汁を冷まし、製氷トレーに入れて凍らせる
- きのこと一緒に保存袋に入れて冷凍する
- 翌日に使う場合は冷蔵庫で保存(2〜3日以内に使い切る)
ナラタケはその美味しさの8割が出汁にあると言っても過言ではありません。煮汁を活用すれば、普段の味噌汁や鍋物のレベルが格段に上がります。これだけ覚えておけばOKです。
秋にナラタケが手に入ったときは、ぜひ煮汁も大切にしながら料理に活かしてみてください。ナラタケの旨みを余すところなく楽しめるはずです。