

モリコーネ自身、映画音楽を「屈辱」と感じながらも500作品以上書き続けました。
エンニオ・モリコーネは、1928年にイタリア・ローマで生まれた作曲家です。父親がトランペット奏者だったため、幼いころから音楽が身近な環境で育ちました。名門ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院で作曲技法を学び、はじめはクラシック音楽の作曲家を目指していたのです。
ところが、生活のために引き受けたのが映画音楽の仕事でした。つまり「食べるため」に始めたのが、映画音楽だったということです。
それでも1960年代のマカロニ・ウエスタン(イタリア製西部劇)ブームで、その才能は一気に開花します。『荒野の用心棒』(1964年)の口笛とギターが絡み合うテーマ曲「さすらいの口笛」は、一度聴いたら忘れられない鮮烈な印象を残しました。これが映画音楽の「発明」と呼ばれるほど斬新な作品だったのです。
その後も精力的に活動を続け、生涯で500作品以上、曲数でいえば600曲を超えるサウンドトラックを世に送り出しました。これはNHKのプライムタイム番組が毎週放送されたとして、約10年分のBGMを一人で作り続けた計算になります。想像を絶する多作ぶりですね。
2020年7月、91歳でローマの病院にて永眠。その音楽は今もSpotifyで月間380万人以上のリスナーが聴き続けています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 1928年11月10日 |
| 出身 | イタリア・ローマ |
| 主な肩書 | 映画音楽作曲家 |
| 手がけた作品数 | 500作品以上 |
| 没年 | 2020年7月6日(享年91歳) |
| 主な受賞 | 第88回アカデミー賞作曲賞(87歳での初受賞) |
参考:エンニオ・モリコーネの経歴と映画音楽への道のりを詳しく解説しています。
「どの曲から聴けばいいの?」という方のために、主婦の方でも親しみやすい名曲を5つ厳選しました。これは使えそうです。
まず最初にぜひ聴いてほしいのが、『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988年)のメインテーマです。イタリアの小さな村を舞台に、映画館と少年の友情と別れを描いたこの映画の音楽は、ノスタルジックで温かく、家事の手を止めてしまうほどの美しさがあります。日本でも大ヒットし、今でもCMやテレビ番組で頻繁に流れています。
次に注目したいのが、『ミッション』(1986年)の「ガブリエルのオーボエ」です。モリコーネ自身が「自分の最高傑作」と語った曲で、オーボエの旋律が心の奥まで届く感覚があります。18世紀の南米を舞台に、宣教師が先住民族に初めてオーボエを聴かせる場面で流れる曲です。歌詞なしの純粋な器楽曲ながら、聴いた瞬間に胸が詰まる人が続出する名曲です。
3つ目は『続・夕陽のガンマン』(1966年)のタイトル曲。「ワウワウワウ~♪」という独特の男声コーラスで始まるこの曲は、西部劇を知らない世代でも「どこかで聴いたことがある」と感じるはずです。グラミー殿堂入りを果たした、映画音楽史上最も有名な曲のひとつです。
4つ目は『アンタッチャブル』(1987年)のメインテーマです。緊張感のある低音と力強いブラスが特徴で、「何かが始まる」感覚を呼び覚ます一曲。この作品でモリコーネはグラミー賞を受賞しています。
最後に紹介したいのが『海の上のピアニスト』(1998年)の"Playing Love"です。生涯船の上だけで生きたピアニストの物語を彩るピアノ曲で、ゆったりとした時間の流れる週末の朝に、コーヒーを飲みながら聴くのに最高です。
参考:モリコーネ名曲12選の詳しい紹介と視聴ができる記事です。
映画音楽の歴史をつくった作曲家エンニオ・モリコーネの名曲12選 - Esquire Japan
モリコーネの作曲方法は、他の作曲家と大きく異なるものでした。驚くことに彼は、曲を作るときにピアノもギターも一切使いません。これは意外ですね。
頭の中で鳴り響くメロディーを、そのままペンと紙でスコア(楽譜)に書き記していくという方法を取っていたのです。鼻歌で確認することすらせず、いきなり完成形の楽譜を書いてしまう。音楽家としての絶対的な聴音能力があったからこそ成せる技です。
例えば『荒野の用心棒』でおなじみのあの口笛の音色。ギターのアルペジオが流れ、鞭の音、鐘の音、「オッバッバ」という男声コーラス…これらすべてが頭の中ですでに鳴っていて、そのままスコアに書かれたものでした。口笛を担当したミュージシャンは「軽く吹いてみてと言われたら、そのまま延々吹かされた」と後に語っています。
また、モリコーネは無類の愛妻家としても知られています。数々の授賞式でも、壇上で必ず妻への感謝を口にしました。仕事のスタイルは完全な朝型で、早起きして午前中に作業を終えるのが習慣だったそうです。
そして、意外に知られていないのがチョコレート好きというエピソードです。晩年、医師からドクターストップがかかっていたにもかかわらず、こっそり口にしていたとドキュメンタリー映画の中で明かされています。天才作曲家の、ちょっとチャーミングな一面ですね。
もうひとつ驚きの事実があります。彼のキャリアのごく初期、1960年代だけで500曲以上のアレンジをこなしていました。しかし当時、モリコーネはこのアレンジャーの仕事を「秘密にしたかった」と語っています。作曲家としての名声を守りたいという思いが強かったためです。つまり、私たちが知る「映画音楽の巨匠」の裏には、膨大な量の無名仕事があったということです。
参考:モリコーネの作曲スタイルやドキュメンタリー映画の内容についての詳細解説。
映画音楽は「屈辱」だった?巨匠・エンニオ・モリコーネのドキュメンタリー映画 - CBCラジオ
「これほどの巨匠なら、アカデミー賞はたくさん取っているはず」と思っている方が多いのではないでしょうか。実はこれが大きな誤解です。
モリコーネはアカデミー賞に6回ノミネートされながら、作曲賞を受賞したのはなんと87歳のとき、1度だけです。これは厳しいところですね。
特に有名なのが1988年の第60回アカデミー賞でのエピソードです。彼の代表作のひとつ『アンタッチャブル』は作曲賞の大本命と言われていましたが、蓋を開けてみると受賞したのは坂本龍一が音楽を担当した『ラストエンペラー』でした。ドキュメンタリー映画には、タキシードを着て座っていたモリコーネがその発表の瞬間にがっかりする表情が収められています。
その後もノミネートは続きましたが受賞には至らず、ついに2016年・第88回アカデミー賞で、クエンティン・タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』の音楽でアカデミー作曲賞を初受賞しました。その年、彼はすでに87歳でした。
タランティーノ監督はモリコーネについて「彼こそがモーツァルトでベートーベンだ」と語っています。この受賞は実に6度目のノミネートにして初めての快挙で、映画音楽界全体が長年の「悲願達成」を喜んだ瞬間でした。
参考:モリコーネのアカデミー賞受賞歴と受賞エピソードについての詳細解説。
87歳でアカデミー賞初受賞!映画音楽の巨匠エン二オ・モリコーネの稀有なキャリアを振り返る - Billboard Japan
「クラシックや映画音楽って、CDを買わないと聴けないのでは?」と思っている方、それは少しもったいない考え方です。今は手持ちのスマートフォン1台で、モリコーネの全作品にほぼアクセスできます。
最もおすすめなのがSpotify(スポティファイ)の活用です。無料プランでも広告ありで音楽を聴くことができ、「Ennio Morricone」または「エンニオ・モリコーネ」と検索するだけで膨大な楽曲リストが表示されます。現在、モリコーネは月間380万人以上のリスナーを持つ人気アーティストです。
Spotifyには「モリコーネ 映画音楽特集」などのプレイリストも多数存在し、「今日は洗い物しながら映画音楽を聴きたいな」というときに手軽に流せます。
また、Apple Musicでも「エンニオ・モリコーネ」で検索するとApple Music Classicalにアクセスでき、高音質で楽曲を楽しめます。月額1,080円のサブスクリプションになりますが、他のアーティストとまとめて利用できるのでコスパは良好です。
YouTubeも見逃せません。「ニュー・シネマ・パラダイス モリコーネ」などで検索すると、公式チャンネルや高音質の演奏動画が多数見つかります。完全無料で楽しめるため、まずYouTubeで気に入った曲を見つけてから、Spotifyでプレイリストを作るというステップがおすすめです。
家事のBGMとして流すだけで、キッチンや洗濯室が映画の世界のように変わります。結論は「スマホ1台でOK」です。