クリームパン形なぜグローブ型|由来と誕生秘話

クリームパン形なぜグローブ型|由来と誕生秘話

クリームパン形なぜグローブ型

この記事でわかること
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グローブ型の理由

発酵時の空洞を防ぐための切れ目がグローブ型を生んだ背景

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クリームパンの誕生

1904年新宿中村屋で生まれたクリームパンの歴史

形の進化と種類

柏餅型からグローブ型への変化とバリエーション

クリームパン形の由来|空気抜きがグローブ型を生んだ

クリームパンのグローブのような独特な形は、実は「空気抜き」のための工夫から生まれたものなんです。パンは発酵すると生地が膨らみますが、中に詰めたカスタードクリームは膨らみません。その結果、パン生地とクリームの間に大きな空洞ができてしまい、せっかくたっぷり詰めたクリームが少なく見えてしまうという問題がありました。
参考)https://www.kobeyarestaurant.co.jp/magazine/detail/38

この空洞をなくすために、パン職人たちはパンの上部に切れ目を入れて空気の逃げ道を作ることを思いついたんです。この切れ目によって、発酵時や焼成時に生地内部の空気が外に逃げやすくなり、クリームと生地が密着した状態で焼き上がるようになりました。結果として、4~5本の切れ目を入れた形がまるで野球のグローブのように見えることから、この特徴的な形が定着していったんです。
参考)https://www.tokyoseika.ac.jp/news/2013/01/post-69.html

さらに、この切れ目にはもう一つの効果がありました。上部に切れ目を入れることで、中のクリームが少し顔を出すようになり、「たっぷりクリームが入ってますよ」というアピールにもなったんです。お客さまに満足してもらいたいという職人の心遣いが、この独特な形を生み出した背景にあるんですね。
参考)https://www.nakamuraya.co.jp/pavilion/products/pro_005.html

クリームパン誕生の歴史|シュークリームからの発想

クリームパンが誕生したのは、1904年(明治37年)のことです。東京の新宿中村屋の創業者である相馬愛蔵・黒光夫妻が、初めて食べたシュークリームのおいしさに感動したのがきっかけでした。夫妻は「このクリームをあんぱんの餡のかわりに使ったら、新しい風味のパンができるのではないか」と考えたんです。​
また、乳製品を使ったクリームは栄養価が高く、子どもの成長にも良いのではないかという思いもあったそうです。当時は脚病(かっけ)の治療にも使われるなど、栄養食としても注目されていました。早速作って店に出してみると、これが大好評となり、あんぱん(1874年)、ジャムパン(1900年)に続く「日本の三大菓子パン」の一つとして定着していきました。​
現在では100年以上の歴史を持つクリームパンですが、パン屋だけでなくコンビニやスーパーなど幅広い店舗で販売されており、進化系のクリームパンも次々と登場しています。抹茶クリームやチョコクリーム、生クリームを使ったものなど、バリエーションも豊富になりました。​
新宿中村屋の公式情報を確認したい方はこちら
クリームパン│商品の歴史│新宿中村屋

クリームパン最初の形|柏餅型から変化した理由

意外なことに、クリームパンが最初に作られた当時は、今のようなグローブ型ではなかったんです。元祖クリームパンは柏のような半円状の形をしていました。新宿中村屋に残されている昭和初期の営業案内の写真を見ると、切れ目のない半円形のクリームパンがはっきりと確認できるそうです。
参考)https://mofutan.net/116756

この柏餅型から現在のグローブ型に変化したのは、戦後のことだと言われています。当初の製法では、生地でクリームを包んで発酵させた際、パン生地部分だけが空気を含んで膨らみ、中に大きな空洞ができていました。空洞が大きくなってもクリームは増えないため、たっぷり詰めても結果的にスカスカの状態になってしまっていたんです。
参考)https://porta.pansuku.com/news/5308/

「お客さまを損した気分にさせてしまうのではないか」と考えた創業者の相馬愛蔵氏は、生地に切れ目を入れて中の空気を逃がすことを思いついたんです。この工夫によって、クリームと生地の間に隙間のない、満足度の高いクリームパンが完成しました。つまり、グローブ型は意図的にデザインされたのではなく、お客さまへの思いやりから生まれた結果的な形だったというわけです。
参考)https://ameblo.jp/ysksv-p/entry-12847636067.html

クリームパン種類とバリエーション|現代の進化形

現代のクリームパンは、昔ながらのグローブ型だけでなく、さまざまな形や種類が登場しています。丸型や四角型、動物の形を模したものなど、見た目のバリエーションも豊富になりました。切れ目の数もメーカーによって異なり、2個から5個まで様々です。
参考)https://yuccopan.com/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%91%E3%83%B3/

クリームの種類も多様化しており、定番のカスタードクリームだけでなく、生クリームを使った「生クリームパン」が人気を集めています。生クリームパンは口溶けが良く、デザート感覚で楽しめるのが特徴です。他にも、抹茶クリームを使った和風テイストのものや、チョコクリームを使ったバリエーションもあります。​
さらに、パン生地自体を変えた進化系も登場しています。デニッシュ生地を使った「デニッシュクリームパン」は、何層にも重ねられたサクサクとした食感が楽しめます。ドーナツ生地で作られた「クリームドーナツ」や、イタリア発祥のブリオッシュ生地にクリームを挟んだ「マリトッツォ」なども、クリームパンの進化形として人気です。各パン屋やメーカーが独自のレシピで作る自家製カスタードも、こってり系からさっぱり系まであり、食べ比べが楽しめます。
参考)https://note.com/yumika1223/n/n9eb9b818c4a0

クリームパン作り方のコツ|家庭で成形する際のポイント

家庭でクリームパンを作る際、グローブ型に仕上げるにはいくつかのコツがあります。まず、パン生地でカスタードクリームを包む際は、とじ目をしっかり閉じることが重要です。とじ目の接着面に粉がつきすぎないよう気をつけ、もし粉がついてしまったら霧吹きか少量の水をつけて、餃子を包むときのようにしっかり閉じましょう。​
切れ目を入れる際は、とじ目側に4~5か所の切り込みをスケッパーで入れます。切り込みの深さも重要で、浅すぎると空気が十分に抜けず、深すぎるとクリームが流れ出てしまう可能性があります。適度な深さで切り込みを入れることで、発酵時の空洞を防ぎ、破裂しにくくなります。
参考)https://atelier-epice.net/creampan-kirikominofukasa/

成形後は、とじ目の生地をずらしてこの向きで置くことで、焼いて膨らんでもとじめが裂けにくくなります。カスタードクリームは牛乳を多く含んでおり水分が多いため、発酵や焼成の際の膨張を考慮した成形が必要なんです。これらのコツを押さえれば、お店のようなグローブ型のクリームパンが家庭でも作れますよ。​
クリームパンの成形方法について詳しく知りたい方はこちら
初心者でも失敗しないクリームパンの成形のコツ

クリームパン栄養価と食べ方の工夫|おやつとしての楽しみ方

クリームパンは乳製品を使ったカスタードクリームが入っているため、栄養価の面でも優れています。誕生当初から子どもの栄養補給を考えて作られており、タンパク質やカルシウムなどの栄養素を含んでいます。明治時代には脚気の治療にも使われるなど、栄養食としてももてはやされていました。​
食べ方の工夫としては、冷やして食べるのもおすすめです。冷蔵庫で冷やすことで、クリームがひんやりとして夏場のおやつにぴったりの味わいになります。また、軽く温めて食べると、パン生地のふんわり感が増し、クリームの風味も引き立ちます。最近では、焼いた後にとろとろのクリームを絞り入れるタイプもあり、シュークリームのような食感を楽しめるものも登場しています。​
おやつとして楽しむ際は、生クリームを使ったタイプが特におすすめです。しっとりとした口溶けの良い生地にホイップクリームがたっぷり入っており、軽い食べ心地なので気軽に食べられます。コーヒーや紅茶と一緒に楽しむことで、午後のティータイムがより充実したものになるでしょう。​