

「増粘多糖類」と表示されていても、カシアガムは隠れている。
カシアガムという名前を聞いて、すぐに何のことかわかる方は少ないかもしれません。これは、豆科植物「エビスグサモドキ(学名:Senna obtusifolia)」の種子の胚乳部を粉砕して得られる天然多糖類で、主成分はガラクトマンナンと呼ばれる水溶性の食物繊維です。日本の食品表示基準(消費者庁、令和3年改正)にも既存添加物として収載されており、人間の食品にもゲル化剤・増粘剤として利用されています。
では、なぜ猫のキャットフードにも使われるのでしょうか?答えはシンプルで、ウェットフード(パウチや缶詰)のとろみや食感を整えるためです。水分量の多いウェットフードは、そのままではべちゃっとした状態になってしまいます。そこでカシアガムのような増粘剤を加えることで、食べやすいゼリー状やムース状のテクスチャーを実現しています。猫の食いつきや食べやすさに直結する成分なのです。
類似する増粘剤としては、グァーガムやローカストビーンガム、カラギーナンなどが知られています。これらと同じ「増粘多糖類」グループに属するカシアガムは、水と混ざると粘度を発揮し、食品の形状を安定させます。天然由来であることから、一見すると安全性が高そうに見えるのも特徴のひとつです。
つまり天然由来の成分です。ただし、天然=絶対安全ではないことは、後のセクションで詳しく解説します。
▶ 食品安全委員会:EFSAによるカシアガムの食品添加物としての安全性評価(概要)
「カシアガムは猫に安全なの?危険なの?」という疑問を持つ飼い主の方は多いと思います。この点について、日本および海外の公的機関がどのように評価しているかを整理しましょう。
まず、欧州食品安全機関(EFSA)は2006年に食品添加物としてのカシアガムを評価しており、「アントラキノンの含有量を0.5mg/kg以下まで低減させた精製カシアガムについては、安全性に懸念は生じない」と結論しています。重要なのはここで「ADI(許容一日摂取量)が設定できなかった」という点で、これはデータ不足による判断保留を意味します。
さらにEFSAは2014年に、犬と猫向けのペットフード用添加物としてのカシアガムについても科学的意見を公表しています(Intercolloid社およびGlycomer社の申請に基づく評価)。この評価では「猫にとって安全だと考えられる」と結論されました。
日本では、国立医薬品食品衛生研究所が平成30年度(2018年度)に行った「既存添加物の安全性評価に関する調査研究」において、カシアガムについて「ADIを特定しない(not specified)」と評価しています。これは現状の使用量の範囲内であれば、安全上の懸念がないことを意味します。
また、国立医薬品食品衛生研究所の報告書では、猫(雌雄各群5匹)に粗精製カシアガムを13週間混餌投与したところ、最高用量の25,000mg/kg飼料(約2,410mg/kg体重/日相当)においても「被験物質に起因する毒性影響はみられなかった」という試験結果が引用されています。これは普通のキャットフードで摂取する量の数百倍以上の量でも毒性が見られなかったということです。
結論は「現状の量なら問題なし」です。ただし長期・大量摂取での研究データは限られており、完全に懸念がないとは言い切れない部分もあります。
▶ 厚生労働省:既存添加物の安全性評価に関する調査研究報告書(カシアガム含む)
安全性の評価は「現状量では問題なし」としつつも、カシアガムを含む増粘多糖類全般について、猫の腸への影響を理解しておくことは大切です。
カシアガムの主成分であるガラクトマンナンは、難消化性の水溶性食物繊維です。これは腸内で消化・吸収されにくい性質を持っています。そのため、過剰に摂取すると軟便や下痢につながる可能性があります。食物繊維を食べすぎてお腹がゆるくなる感覚は人間にもありますが、猫でも同様のことが起こりえます。
気をつけたいのは、複数のウェットフードや液状おやつ(いわゆるチュール系)を頻繁に与えている場合です。それぞれのフードに増粘剤が含まれていると、1日の合計摂取量が知らず知らずのうちに多くなる可能性があります。
また、カシアガムについては「増粘多糖類に起因する消化不良が腸内環境の悪化につながりうる」と指摘する情報もあります(フォーフーズ調査記事より)。腸内環境が乱れると、免疫機能の低下や便の状態の変化につながることも否定できません。
腸内環境への影響に注意すれば大丈夫です。普段から猫の便の状態(硬さ・回数・色)をチェックしておくことが、健康管理の第一歩になります。もしウェットフードを切り替えてから軟便や下痢が続く場合は、成分表を確認して増粘剤の量や種類を見直す視点も持っておきましょう。
▶ FOUR-FOODS:キャットフードの増粘多糖類の影響と猫の腸内環境についての解説
実際に商品の原材料表示を見てみると、「カシアガム」という名前がストレートに書かれているものと、「増粘安定剤(カシアガム)」のように括弧内に記載されているもの、さらには「増粘多糖類」とだけ書かれていてカシアガムが含まれているかどうかわからないものがあります。
この違いには重要な背景があります。日本の食品表示基準では、2種類以上の多糖類を増粘目的で使用した場合、「増粘多糖類」という一括名で表示することが認められています。つまり、カシアガムとグァーガムを両方使っていても、「増粘多糖類」の4文字で済んでしまうのです。
これは消費者にとって大きな問題です。どの成分が何種類使われているか、ラベルだけでは判断できません。
| 表示例 | 意味 | カシアガムの特定 |
|---|---|---|
| 増粘安定剤(カシアガム) | 1種類のみ使用 | ✅ 特定できる |
| 増粘安定剤(カラギナン、カシアガム) | 複数種類を個別表示 | ✅ 特定できる |
| 増粘多糖類 | 複数種類を一括表示 | ❌ 特定できない |
| 増粘安定剤(増粘多糖類) | 一括名での表示 | ❌ 特定できない |
この表のように、「増粘多糖類」と書かれている商品ではカシアガムの有無を判断できないことがほとんどです。気になる場合はメーカーに直接問い合わせるか、成分を個別に表示しているブランドを選ぶことが有効な対策となります。
成分の透明性を重視するなら、増粘安定剤を個別表示しているブランドを選ぶのが基本です。
「カシアガムが含まれていたら今すぐやめるべき?」と気になった方もいるかもしれません。ただ、結論から言えば、すべての猫にとってカシアガムが危険というわけではありません。大切なのは猫の個体差や健康状態に合わせた判断です。
まず、特に気をつけたほうがよい場合を整理します。
- 軟便・下痢が続いている猫:消化器が過敏になっている可能性があり、増粘多糖類が悪化要因になっているケースがあります。ウェットフードの種類を変えて様子を見る価値があります。
- 腸疾患を持つ猫:炎症性腸疾患(IBD)など腸に持病がある猫では、消化しにくい成分を極力減らすほうが安心です。
- 複数の液状おやつを毎日与えている猫:摂取量の累積が多くなりやすく、腸への負担が増す可能性があります。
一方で、以下のような場合は過剰に心配しなくてもよいでしょう。
- 健康な成猫で、ウェットフードを1日1〜2回程度与えている場合:通常量の摂取であれば、現在の研究では安全性の懸念は低いとされています。
- ドライフードが主食で、ウェットフードはごほうびや水分補給として少量与えている場合:トータルの摂取量が少ないため、影響はほぼないと考えられます。
フードを変えたいと考えたとき、増粘剤をなるべく使用していないウェットフードを探すという選択肢もあります。国内外に増粘安定剤不使用のウェットタイプのフードも一部流通しており、消化器に不安のある猫のフード選びに役立てることができます。ただし、成分だけでなく主原料の質やタンパク質含量など総合的な視点でフードを選ぶことが重要です。猫の健康状態に不安がある場合は、かかりつけの獣医師に相談することを優先してください。
▶ キャットフード勉強会:増粘安定剤・増粘多糖類の種類と安全性まとめ

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