

ホウキハタを水洗いしてから調理すると、旨みが半分以下に落ちます。
ホウキハタは、スズキ目ハタ科に属する高級魚で、体長は大きいものだと50cmを超えることもあります。名前の由来は、尾びれの形がほうきに似ていることから来ています。体の模様は白地に茶褐色の斑点が不規則に並ぶのが特徴で、見た目でも他のハタ類との区別がつきやすい魚です。
主な産地は九州・沖縄をはじめとした南日本の沿岸で、水深20〜100mほどの岩礁域に生息しています。市場への流通量はそれほど多くないため、スーパーよりも鮮魚店や漁港の直売所で見かけることが多い魚です。これは知っておくと得します。
旬は夏から秋にかけてで、特に6月〜9月ごろが身の締まりと脂ののりが最もよい時期とされています。夏に旬を迎える白身魚は多くありませんが、ホウキハタはまさにその代表格です。旬を逃さず手に入れることが、おいしさを引き出す第一歩になります。
身の色は透明感のある白色で、加熱するとふっくらと仕上がります。脂は多すぎず、あっさりとした上品な風味が特徴です。つまり老若男女を問わずに食べやすい魚です。クセが少ないため、魚が苦手なお子さんや高齢の家族にも喜ばれることが多い点は、主婦にとって嬉しいポイントといえるでしょう。
ホウキハタをおいしく食べるためには、下処理の順番が非常に大切です。冒頭でもお伝えしたように、水洗いのタイミングを誤ると旨みが大幅に損なわれます。正しい手順を一つずつ確認していきましょう。
まず、ウロコを取ることから始めます。ホウキハタのウロコは細かくて取れやすいため、ウロコ引きを使って頭から尾に向かってこすると効率よく作業できます。ウロコが飛び散りやすいので、ビニール袋の中で作業する方法もおすすめです。ウロコ取りが終わったら、次にエラを取り除きます。
エラとワタを取り出したら、ここで初めて流水でさっと洗います。洗いすぎると旨みの成分が水に溶け出してしまうため、内部の血やワタを流す程度に留めるのが重要なポイントです。洗いすぎは禁物です。洗い終わったら、すぐにキッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ります。
三枚おろしの手順は次のとおりです。
骨抜きは100円ショップでも購入できますが、しっかりした握りのものを使うと作業効率が大きく上がります。骨が残っていると食感を損なうため、このひと手間が仕上がりを左右します。これだけ覚えておけばOKです。
皮を引く場合は、尾側の端に包丁を入れ、皮と身の間に滑らせながら引っ張ります。皮に弾力があるため、慣れないうちは少し難しいと感じるかもしれませんが、包丁をほぼ水平に保つことで安定して皮を引けます。刺身や昆布締めにする場合は皮を引き、煮付けや蒸し料理にする場合は皮付きのままでも問題ありません。
新鮮なホウキハタが手に入ったなら、まず試してほしいのが刺身です。白身魚特有の透明感ある身は、薄切りにすると美しい見た目になり、食卓に並べるだけで料理が映えます。厚みは5〜7mm(500円玉の直径より少し薄め)を目安にすると、食べやすくちょうどよい食感になります。
わさび醤油はもちろん合いますが、ポン酢にもみじおろしを添えてさっぱりと食べるのもおすすめです。脂が控えめなため、油脂の多いソースよりもすっきりした調味料のほうが、ホウキハタの上品な甘みを引き立てます。これは使えそうです。
昆布締めにすると、旨みが格段に増します。手順はシンプルで、三枚おろしにした身の両面を昆布で挟み、ラップで包んで冷蔵庫で6〜12時間ほど寝かせるだけです。昆布のグルタミン酸が魚のイノシン酸と合わさることで、旨みの相乗効果(コク・深み)が生まれます。翌日の朝食や昼食に使えるため、前夜に仕込んでおくと時短にもなります。
昆布締めに使う昆布は、スーパーの乾物コーナーで販売されている「早煮昆布」や「日高昆布」で十分です。1枚あたり200〜300円ほどで手に入り、一度使った昆布は出汁として再利用できるのでコスパも良好です。昆布締め用の昆布は「出汁昆布」として探すと見つけやすいでしょう。
もう一つ、「湯霜造り(ゆじもづくり)」という調理法も覚えておくと便利です。皮付きの身に熱湯をかけてから氷水で締めると、皮目がぷりっとした食感になり、皮の風味もしっかり活きます。皮ごと食べるため旨みを余さず楽しめる点が魅力です。湯霜造りが基本です。
ホウキハタは加熱調理にも非常に向いた魚です。身が崩れにくく、煮ても蒸しても型くずれしにくいため、扱いやすいのが大きな特徴です。煮付けは、ハタ類全体の定番料理のひとつとして各地の家庭で親しまれてきました。
煮付けの基本レシピ(2〜3人分)
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| ホウキハタ(切り身または一尾) | 300〜400g |
| 醤油 | 大さじ3 |
| みりん | 大さじ3 |
| 酒 | 大さじ3 |
| 砂糖 | 大さじ1 |
| 水 | 150ml |
| 生姜(薄切り) | 3〜4枚 |
煮付けで失敗しやすいのが「煮すぎ」です。ホウキハタのような白身魚は、火の通りが早いため、沸騰した煮汁に入れてから中火で8〜10分程度が目安となります。煮汁が沸く前から魚を入れると、身が締まりすぎてパサついてしまうことがあるため、必ず煮汁を沸かしてから魚を加えるようにしましょう。
蒸し料理では、「清蒸(チンジェン)」と呼ばれる中国風の蒸し魚もおすすめです。塩と酒で下味をつけた魚を蒸し器で約12分蒸し、仕上げに熱したごま油と醤油を回しかけるだけで完成します。シンプルながら魚の旨みが最大限に引き出される調理法で、一度試すと手放せなくなります。意外ですね。
鍋料理にする場合は、昆布だしベースのシンプルな鍋が最も旨みを楽しめます。大根や白菜、豆腐などの淡白な食材と相性がよく、スープ全体に魚の甘みが溶け出します。鍋に入れるタイミングは食べる直前がベストで、火を通しすぎると身がバラけてしまうため、1〜2分程度で引き上げるようにしましょう。これが条件です。
ホウキハタをおいしく食べきるためには、適切な保存方法を知っておくことが欠かせません。冷蔵保存の場合、下処理済みの状態でキッチンペーパーに包み、さらにラップで包んでチルド室(約0〜2℃)に入れると、2〜3日は鮮度を保てます。丸のまま(一尾の状態)よりも、三枚おろしにしてから保存するほうが傷みにくくなります。
冷凍保存する場合は、一切れずつラップで密着させて包み、ジッパーつきの冷凍袋に入れて空気を抜いてから保存します。保存期間は約2〜3週間が目安です。冷凍焼けを防ぐために、身をぴったりと密封することが最も重要なポイントとなります。密封が条件です。
解凍は「冷蔵庫でゆっくり解凍(低温解凍)」が基本です。前日の夜に冷凍庫から冷蔵庫に移すと、翌朝にはちょうど使いやすい状態になります。電子レンジの解凍機能を使うと表面だけ半加熱状態になり、食感と旨みが大幅に落ちるため避けましょう。電子レンジ解凍は禁物です。
急いで解凍したい場合は「流水解凍」が次善策です。密封したままの冷凍袋を流水に当てると、30分〜1時間程度で解凍できます。水道代を節約したい場合は、ボウルに水を張ってその中に浸ける方法でも同様の効果が得られます。
「塩をして保存する」方法もあります。三枚おろしにした身に薄く塩を振り、30分置いてから出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取ると、余分な水分が除かれて身が締まり、臭みが取れた状態で保存できます。この「振り塩」をしてから冷蔵保存すると、3〜4日間は品質を保てることが多いです。冷凍する場合も振り塩してから冷凍すると、解凍後の食感が大きく改善されます。これは覚えておくと得します。
保存に使うキッチンペーパーは、薄手のものより厚手の業務用タイプが余分な水分を吸いやすく効果的です。スーパーや100円ショップの業務用コーナーで購入できるものでも十分で、仕上がりに差が出ます。
市場やスーパーでホウキハタを選ぶ際、多くの方は「色が鮮やかなもの」を選びがちです。しかし実際には、鮮度の最も信頼できる判断基準は「目」「エラ」「身の弾力」の3点です。これだけ覚えておけば大丈夫です。
鮮度チェックポイント
漁港の直売所や、地元の鮮魚店では「活け〆(いけじめ)」の状態で販売されていることがあります。活け〆とは、漁獲直後に神経を締めることで死後硬直を遅らせ、鮮度と旨みを最大限に保つ処理のことです。活け〆のホウキハタは通常の処理のものと比べて旨みの持続時間が大幅に異なるため、選べるなら積極的に選ぶことをおすすめします。
切り身で販売されている場合は、断面の色が半透明の白〜クリーム色をしていることを確認しましょう。黄ばんでいるものや、ドリップ(赤い液体)が多く出ているものは鮮度が落ちているサインです。パックに水分が多く溜まっているものも避けましょう。
産地直送の鮮魚を購入できるサービスを利用するのも一つの手です。近年は漁師から直接購入できる「漁師直送EC」が増えており、地方では流通しにくいホウキハタも入手しやすくなっています。鮮度の高い状態で届くため、刺身や昆布締めにも使いやすい点がメリットです。いいことですね。