

市販の醤油をそのまま使い続けていると、毎日の料理の塩分がじわじわ増えている可能性があります。
だし醤油とは、醤油にかつお節や昆布などのだしを加えて風味を豊かにした調味料のことです。スーパーでは醤油と並んで販売されていますが、法律上は「醤油加工品」に分類されます。ただの醤油とは区別される別の調味料です。
では、同じように「だしが入っている」めんつゆとはどう違うのでしょうか?材料の組み合わせはほぼ同じですが、決定的な違いは甘みの強さにあります。めんつゆは砂糖やみりんが多く甘みが前面に出ますが、だし醤油は醤油の比率が高く、甘みは控えめです。たとえば炊き込みご飯にめんつゆを使うと甘すぎてしまうことがありますが、だし醤油ならすっきりと仕上がります。
また、白だしとの違いも覚えておくと便利です。白だしは「白醤油」や「薄口醤油」をベースにしており、料理の色を変えたくないときに重宝します。ただし薄口醤油は色が薄い反面、塩分濃度は濃口醤油よりも高い場合が多いため注意が必要です。
つまり、だし醤油は「醤油の旨みとだしの香りを両立させた万能調味料」です。1本手元にあれば、和食の味付けがぐっとラクになります。
| 種類 | ベースの醤油 | 甘さ | 使いやすい料理 |
|---|---|---|---|
| だし醤油 | 濃口醤油 | 控えめ | 煮物・冷奴・卵かけご飯 |
| めんつゆ | 濃口醤油 | 強い | 麺料理・炒め物 |
| 白だし | 薄口・白醤油 | 中程度 | 茶碗蒸し・炊き込みご飯 |
自家製だし醤油は、材料さえ揃えれば驚くほど簡単に作れます。ここでは用途や好みに合わせた3つのレシピを紹介します。
① かつお節だし醤油(最もシンプルな基本レシピ)
家にある材料だけで5分以内に仕込みができます。
| 材料 | 量 |
|------|----|
| 濃口醤油 | 200ml |
| かつお節 | 10g(ひとつかみ程度) |
作り方はとてもシンプルです。
1. 清潔な保存容器(瓶やタッパー)に醤油とかつお節を入れる
2. 蓋をして冷蔵庫で1〜3日おく
3. キッチンペーパーやざるでかつお節を取り出す
冷蔵庫で3週間〜1か月程度保存できます。取り出したかつお節は捨てず、ごはんに混ぜておにぎりにしたり、ごまと和えてふりかけにするとムダがありません。これは使えそうです。
② 昆布だし醤油(まろやかな旨みが特徴)
昆布特有のグルタミン酸がじわっとしみ出したまろやかな味わいです。煮物や鍋料理に特によく合います。
| 材料 | 量 |
|------|----|
| 醤油 | 200ml |
| だし昆布 | 5g(名刺大くらいの大きさ) |
1. 昆布を固く絞ったキッチンペーパーで軽く拭く(水洗い厳禁。旨みが逃げます)
2. 3cmほどにカットして保存容器へ入れる
3. 醤油を注ぎ、冷蔵庫で一晩以上おく
昆布は取り出さずに醤油を継ぎ足しながら約1週間使えます。一晩後に昆布を取り出した場合は、2〜3週間の保存が目安です。
③ 合わせだし醤油(プロの味に近い万能タイプ)
かつお節・昆布・干し椎茸の3種を合わせることで、それぞれのうま味成分(イノシン酸・グルタミン酸・グアニル酸)が掛け合わさり、単体で使うより旨みが格段に増します。いわゆる「相乗効果」です。
| 材料 | 量 |
|------|----|
| 醤油 | 200ml |
| 酒 | 50ml |
| みりん | 50ml |
| だし昆布 | 10g |
| かつお節 | 10g |
| 干し椎茸 | 1枚 |
1. 醤油・酒・みりんを鍋に入れ、中火でひと煮立ちさせてアルコールを飛ばす
2. 昆布と干し椎茸の汚れをキッチンペーパーで拭き取り、昆布は3cm幅・椎茸は3〜4等分に割る
3. 保存容器に昆布・干し椎茸・かつお節を入れ、粗熱を取った①を注ぐ
4. 冷蔵庫で一晩おいてからキッチンペーパーでこして完成
黄金比は「醤油:酒:みりん = 4:1:1」と覚えておくだけで応用が利きます。
農林水産省の公式サイトでも、和食の黄金比として「だし10:醤油1:みりん1」が煮物の基本として紹介されています。こうした比率を知っておくと、料理の計量がぐっとラクになります。
参考:農林水産省「伝統調味料は「黄金比」で手間いらず」での出汁と調味料の黄金比についての解説
手作りだし醤油を作った後、保存方法に不安を感じる方は多いと思います。正しく保存すれば冷蔵庫で3週間〜1か月程度は問題なく使えます。
ただし、保存状態によって品質が変わりやすいため、以下の点は必ず守ってください。
手作りだし醤油は通常の醤油よりも塩分が低い(だしで薄まっている)分、傷みが早まる場合もあります。冷蔵保存が基本です。
少量を週ごとに作り直す習慣をつけると、常に新鮮な状態で使えて、風味も段違いに良くなります。作り置きの量は「200mlを2週間で使い切るサイズ」が主婦の日常使いには最もちょうどよいサイズ感です。
なお、市販のだし醤油の未開封時の賞味期限は一般的に1年〜1年半程度ですが、開封後は冷蔵庫で1か月以内の使用が推奨されています。手作り品の場合はそれよりも短いと覚えておきましょう。
参考:だし醤油の賞味期限・保存方法に関する詳しい解説(徳星醤油醸造場)
https://109star.com/column/characteristics-dashi-soy-sauce.html
だし醤油を使うと、自然と塩分の摂取量を減らしやすくなります。なぜそうなるのかを知っておくと、より積極的に取り入れる気持ちになれます。
その理由のカギは「うま味の相乗効果」にあります。かつお節に含まれる「イノシン酸」と昆布に含まれる「グルタミン酸」を組み合わせると、それぞれ単独で使う場合に比べて旨みの感じ方が約7〜8倍に増すことが知られています。つまりうま味が強いほど、少ない塩分でも十分に「おいしい」と感じられるのです。
これは研究でも裏付けられた事実です。醤油の旨み成分を活かすことで塩分を約25%カットしても同等の満足感が得られるという研究結果があります。
実際に数字で比べると。
毎日3食の料理でこの差が積み重なると、1日あたり数g単位の塩分削減につながります。塩分の取り過ぎが気になる方にとって、毎日の食事の調味料を切り替えるだけでできる対策です。
また、かつお節からとれるだしには「カツオエキス」由来の旨み成分が豊富に含まれており、血圧降下作用や疲労回復効果が期待されているというデータもあります。健康に気をつかっている方には特に積極的に取り入れてほしい調味料です。
さらに塩分が心配な方は、ベースの醤油を最初から「減塩醤油」に替えてだし醤油を作ると効果が倍増します。減塩醤油は通常の醤油の塩分を50%以下に抑えたもので、市販品もスーパーで手軽に入手できます。
参考:だし醤油の健康メリット・管理栄養士コラム(聖隷静岡病院)
https://www.seirei.or.jp/hoken/dietician-column/202412/
手作りだし醤油ができたら、次はどう使うかです。用途の幅広さがだし醤油の最大の魅力であり、ひとつ作っておけば毎日の料理がぐんとラクになります。
🥚 卵かけご飯(TKG)
だし醤油の最もシンプルでわかりやすい使い方です。普通の醤油から切り替えるだけで、旨みがぐっと深まり、少量でも十分に味が決まります。さらに黄身だけをだし醤油に1時間ほど漬けてからご飯にのせる「黄身の漬け卵」にするとトロトロ食感になり、家族全員に喜ばれる朝食メニューになります。
🍢 煮物・おでん
煮物に使う場合は「だし醤油:水 = 1:4〜5」を目安に薄めて煮汁を作ります。だしを別に取る必要がなく、時間の節約になります。おでんや筑前煮など、素材の味をじっくり引き出したい料理に特に向いています。
🧊 冷奴・おひたし
そのままかけるだけで完成します。普通の醤油では「しょっぱいだけ」になりがちな冷奴も、だし醤油を使えば旨みが足されてひと味上の仕上がりになります。小さじ1杯程度で十分味が決まります。
🐟 漬け丼
マグロやサーモンなどの刺身をだし醤油に10〜15分漬けてご飯にのせるだけで、本格漬け丼が完成します。ごま油を数滴加えたり、アボカドを添えてポキ丼風にアレンジするのもおすすめです。
🥢 焼きおにぎり・和風ハンバーグ
ご飯にかつお節を混ぜ込み、だし醤油を塗りながら焼くと香ばしい焼きおにぎりになります。和風ハンバーグには大根おろしとだし醤油を合わせてソースにするだけで、レストラン風の仕上がりになります。
活用の基本は「通常の醤油を使う場面でそのまま置き換える」ことです。料理のジャンルを問わず使えるのがだし醤油の強みです。
| 料理 | 使い方 | ポイント |
|---|---|---|
| 卵かけご飯 | そのままかける | 少量でも旨みが強い |
| 煮物・おでん | 水で4〜5倍に薄める | だしを取る手間が省ける |
| 冷奴・おひたし | そのままかける | 小さじ1で十分 |
| 漬け丼 | 刺身を10〜15分漬ける | ごま油と相性抜群 |
| 焼きおにぎり | 表面に塗りながら焼く | かつお節を混ぜるとさらに風味アップ |
参考:だし醤油を使ったレシピ多数掲載(鎌田醤油公式サイト)
https://www.kamada.co.jp/recipe/item/dashi
自家製だし醤油を作るとき、多くの方が一度は経験するのが「味が薄い」「風味が弱い」「すぐ使い切ってしまう」という悩みです。これらは実はちょっとしたコツで全部解決できます。
よくある失敗①:漬け込み時間が短すぎて味が出ない
かつお節は冷蔵庫で最低1日、できれば2〜3日おくのが理想です。「急いで使いたい」という場合は、かつお節を醤油に入れたまま小鍋で弱火で3〜5分加熱する「加熱抽出法」もあります。漬け込みより短時間で旨みが引き出せますが、風味は少しシャープになります。用途に応じて使い分けましょう。
よくある失敗②:昆布の水洗いをしてしまう
昆布の表面の白い粉は「マンニトール」という旨み成分のひとつです。水洗いすると流れ出てしまうため、必ず固く絞ったキッチンペーパーで拭くだけにしましょう。水洗いNGが原則です。
独自の工夫:昆布だし醤油の「継ぎ足し」活用
日本の老舗料亭では「継ぎ足しのたれ」が何十年も受け継がれてきました。家庭でも同じ発想が使えます。昆布だし醤油は昆布を取り出さずに醤油を継ぎ足しながら使うと、1本の昆布で約1週間使い回せます。コストを抑えながら継続的に使い続けられるのが嬉しいところです。
独自の工夫:だし素材の「二度使い」でコスト削減
自家製だし醤油に使ったかつお節・昆布・干し椎茸は、取り出した後も旨みが残っています。そのまま捨てるのはもったいないです。
素材を二度使いする発想は、家計の節約にもつながります。だし醤油を作ること自体が、食費の節約と食材のロス削減を同時に実現できる、現代の主婦にとって賢い選択です。
食材を余さず使い切るのが大切です。日常の料理がワンランク上がり、食費も節約できるとなれば、試さない理由がありません。ぜひ今週末、最初の一瓶を仕込んでみてください。